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そのイスは薄青色で塗られていた。細長いそれの下からは、暖かい空気が流れていた。
イスに座ったマスターは、本を取り出して読んでいた。その本は、封筒みたいな色の紙で覆われていた。何の本を読んでいるのか、周りに隠しているらしい。けれど下から見上げたぼくには、うっすらと中身がすけて見えていた。字は見えないけれど、何か十字架みたいな絵がかいてある事は分かった。
電車の中は揺れていた。ちゃんと線路の上を走れているのか、心配なくらい揺れていた。けれど誰もよろけてはいなかった。立っている人は、天井にぶら下がっている輪っかの中に、しっかりと手を入れていた。ぼくは床まで伸びている銀の棒を、前足でつかんで、転ばないように気をつけた。
電車の中は、そんなに混んでいるわけじゃなかった。けれど立っている人が多かった。みんな遠慮して座らないので、細長いイスの上には、まだたくさんの薄青色があまっていた。
ぼくの見える範囲には、学生さんがけっこういた。学生さんは大きいかばんを床において、股に挟みながら立っていた。どうして股に挟むのか、前から疑問に思っていた。盗まれないようにするためだろうか。
ぼく以外にポケモンはいなかった。少しさみしく感じた。
窓の外に視界をずらした。無限の静止画が右から左へと、通過していった。中途半端ないなかの風景がそこにあった。田んぼと畑が少しずつあって、家と工場がほとんどだった。ときどき大型のスーパーが、ドヤ顔でその地にそびえ立っていた。
外の景色を眺めていると、いつの間にか変な妄想をしていた。家の屋根から屋根、建物から建物へやたらと跳躍力のある人間が次々と飛び越えていき、電車と同じスピードで並走して走っている、という妄想。電車に乗っている時、これは必ずやっていた。(ような気がする。よく覚えていない。)こんなおかしい事をやっているのは、ぼくだけだろうきっと。妄想に出てくるのは、電車と同じスピードで走れそうな、素早いポケモンである事が多かった。今日はサンダースだった。マルマインは無理。どうやって飛び越えるのか、分からないから。
背中に当たる暖かい風が、だんだんうっとうしく感じてきた。ぼくは、炎タイプのロコンなので、十分暖かい。これ以上あぶられても困る。座席の下にたくさんの穴があって、そこから暖かい空気が流れてくる。電車の中の暖房は、こうなっている事が多いけれど、これがどういう仕組みなのか分からない。
もしかしたら、ぼくみたいな炎タイプのポケモンが中に閉じ込められていて、その子がかえんほうしゃやひのこを使っているのかもしれない!
……さすがにそれはないか。
中はどうなっているのだろう。どうやって暖かくしているのだろう。それを確かめようと思った。たくさんの穴からひとつを選び、そこに片目を近づけた。
するとどうだろう。
アチッ。
額がものすごく熱かった。いや、炎タイプだからやけどはしないんだけど。それにしても熱かった。このなんていうか鉄? ステンレス? 穴のあいた銀のかべ。ここに額が当たって、ものすごく熱い。
炎タイプでも熱いという事は、人間だったらとんでもなく熱いんだろう。足もやけどする人がいそう。
結局、中がどうなっているのか分からなかった。一瞬だけのぞく事ができたけれど、暗くてよく見えなかった。
なぜだろう。体が熱い。炎タイプだからもともと熱いのだけれど、それにしても自分で少し異常だと思う。額の熱がじわっと全身に広がって、体が燃え上がりそうな感じ。もしかしたら風邪をひいたのかもしれない。
後でぼくの特殊攻撃力が、1.5倍上がっていた事が発覚した。
【何をしてもいいのよ】
> ついにmossさん書きましたか!!
やっとですねー。これをルーズリーフに書き上げてからどのくらいたったんでしょうねー、もうわすれちゃいましたねー。
「これが処女作とかどんだけクオリティ高いんだあ!!」
高くないです!みなさんの処女作スレ見ればこんなの……(爆)
とりあえずこんな感じが私の頭の中ですね。中二病ですね、はい。
> 登場人物の心理描写がもう。読んでて展開が読めませんでした。
> こういう『どんでん返し』的な?作品すっごく好きです。
どんでん返しは自分も好きなので取り入れました。ていうかもう、最初の書き方と最後の書き方が変わってるやんって思いながら書き上げました(オイ
とりあえず次のネタは頭の中にあるので、もしかしたらまた投稿するかもです。
そのときはまたよろしくおねがいしますねーw
(※本編とは関係ありません)
あぁ、Mewよ。全てのポケモンの祖なる者、Mewよ。
汝のその遺伝子は何処でその道を踏み外した。汝の遺伝子はどう間違えて彼らを生み出したのか。
あぁ、Mewよ。愚かな私にその答えを――。
(ページが破りとられている)
――彼らは未知の地にある湿地の中にその姿を隠していた。私は最初に彼らを見たとき、思わず言葉を失った。これは、本当にポケモンなのか、と。どこかの誰かが勝手に作った置物かと思った。
彼らの姿は言葉にし難かった。
魚の片側に両方の目がある、というのだろう。身体の構造的にはマンタインに近いものがあるかもしれない。(彼らの目は側面についているが)だが、そんなことを言ってはマンタインに失礼な気もする。茶色く平たい身体。薄いというわけではない。百科事典を二、三重ねたくらいだろうか。愛嬌のあるとはお世辞にも言えない目。その間に、上向きの口。何故か、分からないが尾びれだけはアクセントカラーのように黄色い。背中にも同じ色の黄色の点が存在している。一体、何の為に……。
――日
今日、湿地の調査中に私の同僚が彼らを踏んだ。彼いわく、踏んだ瞬間、びりりとしたらしいがそれ以外は何もなかったのだそうだ。噛み付いたり、暴れたりもせず、動かなかったらしい。皮膚は以外にも硬く、丈夫なのだそうだ。彼らは凶悪ではない。
――日
彼らは一応魚らしいが、水が苦手らしい。何故、湿地に住んでいるのだろう。
――日
今日、私達は彼らに名前をつけることにした。泥の魚。彼らの名前は――(水でインクがにじみ、読み取れない)
(最後のページ)
――あぁ、私達は愚かだった。光陰矢の如し。後悔したときには既に遅く、もうあの日には戻れない。
Mewよ。何故、彼らはこの世界に生まれたのだろう。何故、彼らを生んだのだろう。
Mewよ。何故、何故私は彼らを――。
――――
意味不明でごめんなさい。分かった方はありがとう。
本編を少しお待ちください。(序文と本編に関係はありません)
連載にもなりません。
彼らのことを馬鹿にしてると思われそうですが、とんでもない。
愛しています。
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