ポケモンストーリーズ!投稿板
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  •   [No.2693] オムライスの作法 投稿者:久方小風夜   投稿日:2012/10/18(Thu) 17:59:30     153clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:※ポケモンほとんどでないよ!】 【隔月刊「Poke Life」】 【11月号】 【コーナー「街を歩こう」】 【第13回

    ――今日はオムライスがおいしいと評判の喫茶店に来ています。


    「どうも。オムライス担当、バイトの宇品鉄男です。店ではトレインって呼ばれてます」

    ――えっ、バイト? 評判のオムライスを作っていたのはバイトの方だったんですか?

    「はい。れっきとしたバイトです。大学生です。2回生です」

    ――はー、そうだったんですか。この店で働き始めてどの位になりますか?

    「俺が大学1年の秋ごろからだから……1年とちょっと、ってところですかね?」

    ――意外と短いですね。それでここまで評判になるとは。

    「オムライスだけは小さい頃から作っていたので、自信はありますよ」



    ――どうしてこの喫茶店で働くように?

    「元々、俺はこの喫茶店の常連だったんです。ちょっと、趣味で小説のようなものを書いていて」

    ――ほほう、小説ですか。

    「まあ、今はそれは置いといて(笑) で、よくこの店で執筆させてもらってて、店長とも顔なじみになって」
    「トレイン、ここに来たらいっつもコーヒーとケーキセット頼んでたからねー。嫌でも覚えるよー」

    ――あ、店長さん。

    「……で、ある日料理の話になりまして、俺がオムライスだけは自信あるって言ったら、店長がじゃあ作ってみろって」
    「それがあんまり美味かったからさー、お前ここでバイトしろ! とりあえず明日から来い! って」
    「無理やりでしたね(笑)」
    「無理やりだったなあ(笑)」

    ――そんなに簡単だったんですか(笑)

    「いやー、俺は最初、ちょっとばかり躊躇したんですけどね。俺そんなに生き物好きな方じゃなかったし、トレーナーの免許も取ってないし」

    ――そういえば、このお店は通称『冥土喫茶』と言われるほど、たくさんのポケモンが住み着いているんでしたね。主にゴーストタイプが。

    「住み着いてるって言うか、勝手に居付いてるって言うか」
    「そもそも副店長からしてヨノワールじゃないですか」
    「僕より働き者だしな」
    「(笑)」
    「トレインも大学卒業したら正式に雇うからな!」

    ――もう就職先も決定済みですか(笑)

    「まあ、このご時世、ありがたいことですけどね。でも店長がますます働かなくなりそうです(笑)」
    「ひでぇ! でも言い返せねぇ!(笑)」
    「あ、副店長がすごく冷めた目でこっちを見つめてる」
    「お前ら本当ひどいな!(笑)」



    ――そういえば、トレインさんは小さい頃からオムライスを作っていた、と。

    「そうですね。中学校に入るちょっと前にはもう作ってました。しかもほぼ毎日。だから……もう10年くらいになりますかね?」

    ――それはすごい! 親が料理人だったとか、そういう感じですか?

    「いいえ、両親は普通の会社員でした。共働きで、毎日遅くまで働いていて。それで毎日、自分で夕食を作っていたんです」

    ――なるほど。しかし、なぜオムライスを?

    「ハル……ああ、俺の幼馴染で近所に住んでた、鈴ヶ峯陽世って奴なんですけど、そいつがオムライスが大好きで。ハルの両親は海外出張が多かったから、自然と一緒に夕飯を食べるようになったんです。ハルが壊滅的に料理が下手だったから、いつも俺が作ってて。で、そいつがいっつも、オムライス食べたいしか言わなかったんです」

    ――毎日ですか。

    「ほぼ毎日です(笑)」

    ――そりゃ上手くなりますね(笑) そのハルさんは今どこに?

    「……。……5年前に、事故で……」

    ――あ……こ、これは申し訳ありませんでした。

    「いえいえ、気にしないでください」



    ――では、この喫茶店のオムライスは、トレインさんとハルさんの思い出の味と言うことですね。

    「まあそうとも言えますけど、俺としてはあまりその辺は意識しないでもらいたいかな」

    ――と、言いますと?

    「これは、俺がこうやってお客さんたちに料理を出していて思うようになったことなんですけど」


    「ただ単純に、おいしいものをおいしいって食べてもらえるのが、一番幸せなんですよ。ハルとの間も元々そうでした。おいしいって喜んでくれるから、もっと上手くなろう、おいしいものを作ろう、って思うんです」

    「だから、俺のオムライスを食べてもらう時は、難しいこと何も考えず、とにかく食べることを楽しんでもらいたいんです」


    「おいしいってことは、幸せじゃないですか」



    ――なるほど。「おいしいものをおいしく食べる」。それがトレインさんの示す、「オムライスの作法」なんですね。

    「作法って言うほど大それたものじゃないですけど(笑)」
    「おう。トレインのオムライスはすげー美味いから、とにかくまずは食べてもらいたいな」

    ――あ、店長さん。

    「言っておくけど、僕だってコーヒーには自信あるよ? ここ一応喫茶店だからな! メインはコーヒーだからな!」
    「確かに店長のコーヒーはおいしいです。悔しいですけど」
    「おい(笑)」

    ――なるほど、店長さんも自分の腕には大いに自信あり、ですか。

    「そう! 僕のコーヒー、副店長のケーキ、そしてトレインのオムライス! 3つそろえばうっかり天国に行けちゃうレベルだと自負しているね!」

    ――本当の意味で「冥土喫茶」になってしまいますね(笑)

    「面子は野郎ばっかりだけどな(笑)」
    「そのうち1匹はポケモンですしね(笑)」


    ――では、その自慢の3品、私も頂いてよろしいですか?

    「もちろんです!」
    「そうこなくちゃ! おーいみんなー! お客さんだぞ!」




    ++++++++++

    いずれリセットされるし、と心おきなく投げ込んでおく。


      [No.2636] Re: ■チャット会テーマ募集 投稿者:フミん   投稿日:2012/09/22(Sat) 09:36:47     124clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    フミんです。お世話になっております。

    まだこちらに通い始めて日が浅いですが、私個人が思うことは、また文章のコンテストをしてくれると皆のやる気が出てくるのではないかと感じました。

    短いですが失礼します。


      [No.2584] 宿題終わった? 投稿者:神風紀成   投稿日:2012/08/23(Thu) 09:15:44     74clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    弟の宿題を手伝うことになった。
    バスケ部、塾、学校の宿題。彼の夏休みは夏休みじゃない。こんなことを言うと世の大学生や社会人の皆さんに怒られるかもしれないが、彼もまともな休みはお盆のみだった。
    でもまあ、川に遊びに行ったりプールに行ったり遊びの面でも充実はしていたようだが。

    さて、宿題の話である。塾の課題は親と一緒にやるため、どうしても時間が押してしまう。
    この十三年間、一度も誰かに宿題を手伝ってもらうことがなかった弟が、下でポケモンをしていた私に『姉ちゃん宿題手伝って』と頼んできた。
    『何でだよ』『だって暇そうじゃん』『暇そうなら誰にでも宿題頼むんかいお前は』『大丈夫だよ、数学じゃないから』『じゃあ何』『短歌作って』『……は?』

    話を聞けば、去年の夏休みの宿題の進化版で、今年は短歌を作ることになったらしい。

    「俳句はなんとかなったんだけど、短歌って難しいんだよね。ラストの十四文字」
    「普通の俳句の後に『そしてかがやく ウルトラソウル』って付ければ何でも短歌になるよ」
    「えwww ちょwww ブフォッww」

    ツボッたらしい。一分間近く笑い転げていた。放っておこう。
    自慢じゃないがこういう物は得意である。中三の冬休みの宿題で俳句を作り、某飲料水の俳句コンクールに出したら佳作をもらったこともある。あれは私の数少ない栄光の一つだ。『言われている人は舞台へ上がってください』と言われてスッと立ち上がった時の周りの視線が忘れられない。
    まあ最も……その日は一がついた通知表が返ってくる日でもあったのだけど――

    「できた」


    人工の 青に映るは 水の色 瞳の裏に 焼きつく光

    「ボツ」
    「何で!?」
    「アンタさあ、弟がこんなの作ると思う?」
    「思いません」
    「もっとこう……中二男子が作りそうな物をだな……」

    母親と談義している横で、当の本人は漫画を読んで笑っている。カチンとくる。

    「『兄弟に 宿題任せる 馬鹿一人 お前もやれよ この野郎』」
    「ナイス」
    「えー……」
    「つべこべ言わないでお前も作れ!もう二度と漫画貸さんぞ!」

    何度目かの『私何でこんなことしてるんだろう……』という気持ちが胸を包む。疲れた。もう怒る気力もない。
    仕方ないので『中二男子』らしい物を作ってみる。

    「『歯にしみる アイスキャンディー もう一本 今年は何本 いけるかな』」


    ―――――――――――――――――
    余談。
    実際にこういうことが我が家で起きているので書いてみた。ポケモン出てこないけど気にしない。
    俳句・短歌は得意です。作者名言えないけど。

    【宿題終わった?】


      [No.2531] ふたりごと 投稿者:久方小風夜   投稿日:2012/07/27(Fri) 17:03:43     133clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:納涼】 【シオンタウン】 【読み解き方は次記事

    「お腹空いたな」
    「もう昼飯時だもんなあ」
    「ハンバーガーでも食べようかな」
    「えー、もうちょっといいもん食おうぜー」
    「……確かクーポンがあったはずだし」
    「あーそっかー、それじゃあしょうがないなー」

     相棒は、鞄から畳んだ地図を取り出した。

    「次の町はシオンタウンか」
    「イワヤマ抜けなきゃいけないんだな」
    「ちょっと遠いなあ」
    「大丈夫だって。お前のポケモン強いんだからさ。ま、あんまり無理させるのはよくないけどな」
    「薬を多めに買っていくか」
    「それがいいな。一応、あなぬけのヒモも買っておいたほうがいいんじゃないか?」
    「わざマシンあるから……」
    「ああ、そういえばこの間もらってたな」
    「資金も十分だ」
    「準備万端だな」
    「とりあえず、ショップで売ったり買ったりしてくるか」
    「おう」



     相棒と俺の出会いは数年前。
     場所は俺たちが生まれた町の小さな公園。ベンチと砂場とブランコしかない。
     俺はいつもそこにいたんだけど、その日こいつがひとりでやってきた。半べそかいたような情けない顔ぶら下げて。

     辺りを見回して、そいつはつぶやくように言った。

    「誰もいないのかな?」
    「ここにいるぞ」

     俺はそいつを呼んだ。そいつは俺の近くにあったベンチに座った。俺も隣に座った。

    「お前、いつも他の奴と一緒だよな? 髪の毛立ててる奴。今日はひとりか?」
    「…………」

     そうしたら、そいつが涙をぼろぼろこぼし始めた。

    「ああぁぁごめん、悪かったって。泣くなよ。……ケンカでもしたのか?」

     こいつとその友人の仲の良さは、何回か見かけたことがあるからよく知ってる。
     まあ、言っても子供同士だ。ケンカくらいするだろう。

    「やっぱり、僕は意気地無しなのかな?」
    「そんなこと言われたのか?」
    「でも、町の外に出るなんてやっぱり怖いよ」
    「オイオイ、そりゃ危ないだろ」
    「この辺りにはポッポとかコラッタとか弱いのしかいないから大丈夫って言ってたけど」
    「あのなあ、ポケモンってのはどんなに小さくて弱そうに見えても、危ないもんなんだよ。お前、コラッタの集団にあの前歯で一斉に襲いかかられるの、想像してみ?」
    「……やっぱり危ないよ」
    「そうだよ。な? だからさ、どうしても出たいんならあの博士だか何だかに頼んでみろ」
    「もう少し大きくなったら、博士にポケモンをもらえるんだ」
    「おぉ! 最高じゃないか!」
    「だからそれまで待とう、って言おう」
    「そうそう。お前はいい子だな」

     少し明るい表情になったそいつを見て、俺はため息をついた。

    「あぁ、俺もやっぱり、ポケモン持つべきだったんだよなぁ……」
    「あいつ、やっぱり旅に出るかな?」
    「そりゃ出るだろ絶対」
    「僕が行かなくても、やっぱり行くんだろうなあ……」
    「俺も、友達みんな旅に出ちまったよ。ポケモン持って」
    「それじゃあ、独りぼっちだ」
    「ああ。あれからずっとな」
    「……寂しい」
    「わかってくれるか」
    「独りぼっちは嫌だな」
    「本当にな。でも、俺の方こそ意気地無しだったんだ。『ポケモンをください』っていう、たったそれだけが言えなかった」

     深いため息をつく。そいつもため息をつく。
     しばらく何か考えている様子を見せて、そいつはつぶやいた。

    「……やっぱり、僕も町を出る」
    「……そうか。お前も行っちゃうのか」

     そうしたら、そいつが言った。

    「一緒に旅に出よう」
    「……えっ?」
    「いいよ、って言ってくれるかな?」
    「当たり前だろ!」

     ずっと独りぼっちだった俺は、そいつの言葉が本当に嬉しかった。
     その日から、俺と相棒はずっと一緒だ。




    「それにしても高いタワーだなあ」
    「これが全部お墓なんだよな」
    「町の人は幽霊が出るって言ってたけど……」
    「やっぱりあのカラカラのお母さんだろうな」
    「ねえねえ、あなた」

     青白い顔をした女の子が、声をかけてきた。

    「あなた、幽霊はいると思う?」
    「そりゃーいるに決まってるだろ! な?」

     俺は相棒の右肩に手を置いた。
     すると、相棒は笑って言った。

    「いないよ」
    「えっ」
    「いるわけないじゃんそんなの」

     青白い顔の女の子は、苦笑いを浮かべた。


    「あはは、そうよね! あなたの右肩に白い手が置かれてるなんて……あたしの見間違いよね」


     当たり前だろ、と相棒は笑った。
     俺はそっと、相棒の右肩から手をどけた。





     少年がタワーの中へ入ると、幼馴染がとある墓石の前に座っていた。

    「おう、久しぶりだな」
    「やあ。……それって、もしかして」
    「……ああ。旅に出て最初に捕まえた相棒」
    「そっか……じゃあ僕からも」

     少年はリュックの中からミックスオレの缶を取り出し、墓前に置き、手を合わせた。

    「呆気ないもんなんだな。命が終わるのなんて。もう少し早くポケセンについてりゃ……」
    「ポケモンはずっと、僕らの代わりに戦ってるんだもん。気をつけないといけないね……本当に」
    「気を抜きすぎてたな。強くなったから、多少は平気だろうって……」
    「ポケモンは本当に見かけによらないからね」

     幼馴染は深いため息をついた。

    「……悪かったな。小さい頃、嫌がるお前を無理やり町の外に連れていこうとしたことがあっただろ」
    「ああ、懐かしいなあ。そんなこともあったね」
    「ポケモンの強さとか、危なさとか、理解してりゃあんなことしなかったのによ。しかも断ったお前に散々悪口言ってさ……」
    「いいよもう。昔のことだ」
    「あのあとじいちゃんに、昔ポケモンを持たずに町を出て、死んだ奴がいたって聞いてさ……俺、本当に……」
    「いいってばもう。おかげさまで僕は元気だよ。一番の親友のおかげで、楽しい旅に出る決心もついたし」
    「……そうかい」

     幼馴染と少年は、顔を見合わせて笑った。





       「……やっぱり、僕も町を出る」
                                             (……そうか。お前も行っちゃうのか)
       「一緒に旅に出よう」
                                             (……えっ?)
       「いいよ、って言ってくれるかな?」
                                             (当たり前だろ!)





    「でもさ、お前、昔っから言ってるけどさ、ひとりごとを延々とぶつぶつ言う癖は直した方がいいと思うぞ。気持ち悪いし」

    「いやー僕も直そうとは思ってるんだけどねぇ。なかなか直らないんだよなぁこれが」





       「きっと大丈夫だよ。あいつは僕の、一番の親友なんだから」


                                             (これからはずっと一緒だな、相棒!)







    (2012.7.27)


      [No.2479] ファースト・コンタクト 投稿者:aotoki   投稿日:2012/06/22(Fri) 15:52:36     94clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
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    正直言ってこの仕事は辛い。と俺は一人、埃っぽい部屋で思う。

    絶え間ない権力争い、終わりの見えない研究作業、次から次へと舞い込む不確実なデータ、おべっか買い、妙な誤解、それを巡る果てしない論争…
    よほどのバカか物好きでない限り、この職業は勧められないと俺はいつも思う。

    じゃあもし、俺が俺に仕事を勧める機会があったとして、俺は自分にこの仕事を勧められたか、と聞かれると、答えは『ノー』になる。正直言って、何故今もここにいるのか俺自身が一番良くわかってない。
    …惰性?それを言っちゃ何もかもおしまいだろう。



    実の所、その「答え」は出ているのかもしれない。
    ドアの向こうから誰かが走ってくる音がする。
    その音はだんだんこちらに近づいてきて、バン、と部屋の扉が乱暴に開かれて止まった。
    「カイドウ室長!こちらにいらっしゃったんですか!」
    「あーなんだようるせいな…もうちょっと静かにこれないのかよ」
    両手一杯に資料を抱え込んだ部下は、俺の机にカッカッと歩み寄ってきた。明らかに機嫌が悪いが、おおかた俺を捜して小一時間歩き回ってたんだろう。俺が部屋に居るなんて普段なら考えにくいことだろうから。
    「静かに、ってこの状況でどう静かに開けろっていうんですか」
    「言葉のアヤだ」
    「アヤ過ぎます」堅物に定評のある部下は、器用に眼鏡を直した。それくらい器用ならドアだって開けられただろうにと思うが、心内にとどめておく。
    「あーもうそこはどうでもいいよ…それより何だ本題は。お前だってヒマじゃないだろ?」
    不機嫌そうに俺を見下ろしていた部下の顔が、ワンテンポおいてにやりと笑った。そして、抱えた紙の束からガサガサと一枚の紙を俺の前に差し出した。「今日はどうしても室長に見せたいものがありまして」
    紙にはずらずらとした外国語の文章と、一枚の写真が載っていた。
    「・・・・なんだこれは?」俺は答えを知りながらそれを聞く。


    「今日付けで出された新個体の情報です。今度のはかなり面白そうですよ」


    俺の口が、にやりと曲がったのが分かった。
    「場所は?」
    「ten.イッシュです」
    ten.― tentative、つまり仮称。
    「…要するに新しいポケモンって訳か」
    「まだ学内では確定的な意見は出されていませんが、研究者間での非公式見解では十中八九そうだろうと」
    「…よしわかった」
    俺は勢いよく机から立ち上がった。
    「カシワギ!」「はい!」「今ある資料はこれだけか?」俺は部下から資料を全てひったくる。ざっと目を通していくが、まだしっかりとした根拠は出揃っていないらしい。
    「はい。資料科から取れるだけもってきました」
    「もっかい行って探してこい。まだρ-DNA関連のデータがあるはずだ」
    「それは僕も探しましたが、まだ出てないようで…」部下の視線が少し泳ぐ。そこに俺は紙の束を叩きつけた。
    「そんならうちで出すしかないだろ?遺伝子解析室の割り当て見てこい。あとこの公開試料」さらに資料を部下に押し付ける。
    「こいつの個体データも。この辺りだと…イカリ辺りが専門か?」俺は普段おぼろ気な研究員のリストを脳内で引っ張りだす。
    「じゃあρ-DNAについては僕とイカリでまとめておきます」
    そう言って部下は机から離れた。
    「おう、そうしてくれ」俺は資料を漁りながら片手を上げた。部下のいう通り『取れるだけもってきた』らしく、信憑性の高いデータから関係ないジャンクまでよりどりみどり。これをより分けて裏付けするのだけでも一週はかかりそうだ、と何となく見当をつけてみる。
    まぁ学内のレジギガスとまで揶揄される俺のカンだから、果たして当たっているのかどうかはわからないが。
    「…あとカイドウさん」扉の方から、部下の声が聞こえた。
    「なんだ?」俺は手を休めず答えた。
    「…こちらのサポート人員も集めてきます。データの裏付けだけなら外の人間でも平気ですよね?信頼できるツテがあるので辿ってみます」
    俺は首だけなんとか扉に向けた。
    「…悪いな、カシワギ。いつもいつも」
    部屋から出ようとしていた部下も、首だけでこちらを振り返った。
    「だって室長が本気で動くのを見られるのは、こんなとき位ですから。こちらだって数少ないチャンスを無駄にはできませんよ」
    では、失礼します。そう笑いながら、部下は扉の向こうに小走りで消えた。


    「…ったく、よく出来た奴だよ」
    また一人になった部屋で、俺は紙の山から一枚をつまみ上げた。
    蛍光灯の安い光に透けて映るのは、見たこともないポケモンの姿。これから俺達が出会う、まだ見ぬ誰かの"仲間"の一匹だ。
    「…へへっ」
    俺はその輪郭を指でなぞる。
    果たしてこいつは本当に新しいポケモンなのか、それを調べるのが俺達研究者の一番の仕事だと、この世界の片隅に居る俺は少なくともそう思っている。
    こいつを、こいつの仲間たちを、生涯一緒に過ごせるパートナーに出会わせるための仕事。
    星の数ほどの出会いのいくつかが俺の手から、汗から、涙から、生まれる。それだけで、その喜びだけでこの世界にいるだけの価値があるってもんだ。
    …誇大妄想?それを言っちゃ何もかもおしまいだろう。


    「………さて、と」
    俺は紙を山の上に戻す。
    これからこの部屋も忙しくなってくる。多分この手柄を狙って、全ての研究室が動きだすだろう。こういう競争主義な所が俺は一番嫌いだが、まぁこの世界に身を置く以上仕方ない。

    案ずるより生むが易し。

    「…さぁ旅立つとしますかね」
    俺は紙の山をかき分けた。



    ****
    「・・・・ん」
    珍しく新聞を読んでいたら、珍しく友人の名前を見つけた。
    『カント―学会カイドウ博士・新個体を発見か』『「ファーストコンタクター」またもや快挙』
    地方紙にも関わらず四分の一の紙面を割かれたその記事には、友人が見つけたらしいポケモンの詳細と、友人の研究がすこし誇張された文体で書かれていた。
    「ファーストコンタクター、か」
    まぁ確かにポケモン図鑑はポケモンとの出会いのきっかけにはなるけれど、それにしても凄いあだ名だと少し笑ったとき、後ろからヨノワールが覗き込んできた。
    「?」
    「あぁ、これか?俺の昔の友達だよ。大学で一緒だったんだ」

    窓の向こうには広い空。
    今日もどこかで、あいつの作ったファーストコンタクトが生まれてるんだろう。



    "Contacter" THE END!


    [あとがきのようなもの]
    初めましての方は初めまして。
    また読んで下さった方、ありがとうございます。aotokiと申すものです。

    何が相棒との出会い?こっちゃ先に会ってるんだよ!!というポケモン学者のお話。
    作中の単語は全て創作です。スイマセン。
    現代のポケモン図鑑はきっとたくさんの研究者さんが関わってできていくのかな〜とか思っています。
    安全なポケモン・危険なポケモン・生態・能力・習性・・・・それが分かって初めて素敵な出会いが成り立つ。
    縁の下は大事。そんな作者の妄想なのでした。

    ちなみに最後の「俺」は、「日曜は(ry」のお父さん・・・・のつもりです。


      [No.2428] 過去作品ですがポケライフ登録します。 投稿者:No.017   《URL》   投稿日:2012/05/19(Sat) 19:31:26     58clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
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    このように過去作品に【ポケライフ】タグをつけても構いません。
    イラストにしたら面白いものあればぜひ。


      [No.2377] Re: タブンネの体力が回復した! 投稿者:   《URL》   投稿日:2012/04/09(Mon) 23:44:39     61clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
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    |ω`)<どうもです!

    お読みいただきありがとうございます。感想嬉しいです!
    上手くリクエストに応えられるかハラハラしてました(実話
    気に入っていただけたようで何よりです。

    >2も、あるんですよね?
    最初は一編の話にしようと思っていたのですが、ある程度話を組み立てていくうちに広がりを見せてきて、
    いくつかの話に分けようという判断に至りました。
    同じような路線で、近々直系の続編である【2】も投稿しようと思います。

    またお読みいただければ幸いです(`・ω・´)


      [No.2322] 春コミ無料配布本でした 投稿者:No.017   《URL》   投稿日:2012/03/26(Mon) 01:05:12     52clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5
    春コミ無料配布本でした (画像サイズ: 600×648 33kB)

    出張で北海道に行く機会がありまして、小樽でガラスの浮き玉を見ながら妄想した話です。
    春コミ無料配布本にしておりました。

    冬コミで出した単行本「携帯獣 九十九草子」
    http://pijyon.schoolbus.jp/off/index.html
    の増補的な位置付けになっております。

    気に入っていただけた方がいたなら幸いです。


      [No.2271] みみ 投稿者:巳佑   投稿日:2012/03/03(Sat) 03:33:37     82clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5
    みみ (画像サイズ: 374×549 86kB)


     三月二日の夜、彼女が布団に潜った先にあったのはカチューシャ屋さんでした。

     都会のデパートなどでよく見かけるような、オシャレな雰囲気を漂わせているお店で、様々なカチューシャが置かれてあります。ただ、そこのカチューシャ屋はノーマルタイプのカチューシャは売られておりませんでした。
     そこにあったのは獣の耳がついたカチューシャだけでした。
     
     黄色で細長く、先端が黒く染まったそれはピカチュウの耳カチューシャ。
     水色と青色に染まった細長いひし形(サイド付き)のそれはグレイシアの耳カチューシャ。
     茶色の毛にクリーム色のもこもこがついた、長い垂れ耳のそれはミミロップの耳カチューシャ。 
     ぷち模様に渦巻き一つ乗せたそれはパッチールの耳カチューシャ。
     
     他にもキュウコンの耳カチューシャや、タブンネの耳カチューシャ。
     それからオタチに、プラスルに、マイナン。
     更にルカリオや、チョロネコと……このように実に多種多様な耳カチューシャがそろっていました。

    「お客様、どれかお探しのカチューシャはありますか?」

     店員さんらしき人に問われた彼女はグレイシアの耳カチューシャを手にとって、これが欲しいと伝えますと店員さんは彼女に、もう一度つけてみてはいかがでしょうかと促します。
     その言葉に彼女が再びグレイシアの耳カチューシャをつけますと、店員さんがにこっと笑いました。

    「お買い上げありがとうございました」

     彼女がカチューシャ屋さんを出ると、そこは自分の布団の上でした。  
     不思議な夢を見たものだと彼女が起き上がり、鏡を見ると、あら不思議。

     グレイシアの耳(サイド付き)が彼女の頭の上に乗っていました。
     右にぴこぴこ。
     左にぴこぴこ。
     どうやら本物らしいです。
     カチューシャではなく、本物のグレイシアの耳(サイド付き)でした。
     
     彼女は目を丸くし、頬をつねりましたがなんともなく、このまま外へ出ても大丈夫なのだろうかと心配しながら窓の先に映る風景を見やると、そこにはポケモンの耳をつけた人達が歩いていました。

     今日は三月三日、耳の日。
     
     魔法のカチューシャで、それぞれお好みのポケモンの耳に世界は彩られていました。
     


    【書いてみました】
     今日は三月三日、桃の節句もそうですが、耳の日でもありますよね!(ドキドキ)
     ポケモンの耳に限らず、エルフ耳や、もちろん人間の耳など、とにかく皆も好きな耳を愛でればいいと思うよ(

     ありがとうございました!

    【何をしてもいいですよ♪】


      [No.2219] Re: 【意見募集】本棚設置に関して 投稿者:イサリ   投稿日:2012/01/23(Mon) 22:55:56     68clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
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    えーと、議事録読みました。
    今までの流れだと、

    ポケスト(短編)版→そのまま維持
    ロング版→本棚に統合

    という認識でよろしいでしょうか。


    個人的には現在の掲示板に不都合は感じていませんし、今のままでも、本棚を設立してもどちらでも良いと思います。長編の投稿は最初から本棚に投稿と規定してしまうと、作者同士の交流が減ってしまう懸念もありますが。その反面、シリーズ物を探しやすくなる点では便利だと思います。


    ……あ、すごく個人的なお願いなのですが、「傾向・要素」の項目に「ホラー(or 怪談)」を追加希望です。
    グロテスク項目に入らないホラー物もあるかもしれないと思いましたので。
    むしろ是非そういうのを読んでみたいです(黒

    全然参考にならなそうな意見でごめんなさい。
    民俗の話題で名前を挙げてくださってありがとうございます……!w


      [No.2164] 辰年 投稿者:イサリ   投稿日:2012/01/01(Sun) 13:41:47     102clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
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    辰年 (画像サイズ: 360×480 30kB)

    「謹んで新年のご挨拶を申し上げます
     本年もなにとぞよろしくお願い致します」



     ……と入れようとしたらスペースが無かったぜ!

     マサポケの皆様方にも年賀状を出したいと思い、しかし住所を知らないので掲示板に投稿しました。
     正直な話、こんなんが実家の郵便受けに入っていたらビビる(真顔)

     辰年なのにドラゴンタイプを書かないのもどうかと思い、チルタリスにするか一寸悩んだのは内緒。


     ドラゴンといえば最近流行のマルチスケイルカイリューさん。効果から"scale"は「目盛・規模」だと信じて疑ってなかったのですが、「ウロコ」の意味もあると知ってポッポ肌が。
     ダブルミーニングとはゲーフリ流石だな…… 

     こんな私ですが今年もどうぞよろしくお願いしますm(_ _)m




     一応タグをつけておきますね。
    【(年賀状を)書いてもいいのよ】
    【明けましておめでとうございます】


      [No.2113] 一匹変なのが混じってる 投稿者:No.017   投稿日:2011/12/14(Wed) 20:06:43     54clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
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    まさかの続編wwwww
    しかもなんか、深いwwww

    どうもこの家系はピジョンに呪われてるみたいですね
    我々の業界ではご褒美ですが。




    眼鏡……ピジョン……?


      [No.2062] 数えられたぜテレポのカオス 投稿者:音色   投稿日:2011/11/13(Sun) 22:42:06     62clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
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    へろーマコさん、わざわざカウントありがとうございます!

    > テレポートの回数は7回です!
    > ですから、最終カウントのあった「そこは金色の大地」での回数が13だったので、後6回です。
    > 私のヒロイン(マイコちゃん)がヒメリの実をあげているはずなので、テレポートに使うか、他の技に使うか、他の話に出てくるポケモンについばむとか虫食いされるか。
    > 其処ら辺を楽しみにしてます。

     よし、ついばまれて虫喰われましょう。
     だってビリリダマのどの辺に口があるのか分からないもの!

    【そろそろ終わらせたいんだけどどうしよう】


      [No.2008] 『フライングニート』感想(仮) 投稿者:りえ   投稿日:2011/10/17(Mon) 22:51:00     58clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
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    (作者には既出)
    ・起承転結がきちんとあって、終盤にかけてきちんと盛り上がる。すごいと思います。

    ・難を言うのであれば
    「主人公のおかあさんがひとりだけ報われない」(未回収フラグとして残っている)。
    これを回収するために、引きこもっていた主人公の自転車がパンクして使えず、おかあさんのママチャリ(うしろに子供のせるのがついてるような古いやつ)を
    貸してもらって走りに行くみたいなところがあればいいのではないかと思います。

    ・さらに、親友に嘘をついているということの重みを増すために
    ネット上のやりとりすら主人公にはできない(=世界とのつながりは親友だけ)という状況を作り出すのが、いちばん手っ取り早いのかと感じました。
    ネット上の交流が主人公にあると、彼の感じている孤独が、なまぬるくなってしまうような気がして。


      [No.1951] おうふくビンタと拳 投稿者:いろは四季   《URL》   投稿日:2011/10/01(Sat) 21:20:57     61clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
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    「父さん、これ、どうかな?」
    息子は父親に真新しい帽子を被ってみせた。
    父親は満足げな表情で
    「よく似合ってるぞ」
    と喜ばしげに笑い、息子も少しばかり頬を染めて笑った。

    旅立ちの朝は、誰にでもやってくる。
    今日の天気は良好。
    自分の息子の一生に深く刻み込まれるであろうこの日が、恵まれた日和であったことに父親は感謝した。
    が、父親には少し気がかりなことがあった。
    「――ウツギ博士にもらうポケモンは、もう決めたのか?」
    すると、息子はまるで宝物を見つけたような表情で告げた。
    「もちろんワニノコだよ!俺だって、父さんのオーダイルみたいに強く育ててみたいんだ!」
    「そうか・・・」
    父親の表情は相変わらずの笑顔だったが、内心がっくりと肩を落とした。
    ――血は、争えんな・・・・・・。
    自分がかつて最初に選んだポケモンと同じポケモンを息子が選ぶ――普通の親としては喜ばしいことなのだろうが、彼にとってはそうではなかった。
    なにせ、かつて彼はその選択によって酷い目に遭ったことがあり――旅立ちの日は、その出来事と共に苦い思い出として今も心にある。
    『あの頃は、俺も若かったからなぁ・・・』
    父親は、息子の決断と自分の過去をなぞるように、【あの日】のことを思い出していた。

    父親がまだ少年だった頃。
    そう、ちょうどこんな風に天気に恵まれた日。
    自分の旅立ちの日のことを。


    ***************************************


    「ワニノコ!ひっかく攻撃!!」
    まだ幼さを残したアルトの声色で、少年は命じた。
    「ワニャ!!」
    パートナーのワニノコもそれに応え、相手のコラッタとの距離を一気につめる。
    「くっ・・・まだだ!コラッタ、でんこうせっか!」
    相手トレーナーの指示が飛んだ瞬間、紫色をした子ねずみポケモンの姿が残像になり、消える。
    ワニノコは技を決め損ね、状況が理解できない様子で周囲を見渡した。
    と、次の瞬間コラッタはワニノコの懐に入り込み、見事なアタックを決める。
    「ワニャーーッ!」
    まともに攻撃を食らったワニノコは、数メートル吹っ飛ばされ、その場に倒れこむ。
    「わ、ワニノコ!大丈夫か!?」
    少年は慌ててパートナーのそばに駆け寄った。
    相当なダメージを食らってはいるものの、ワニノコは弱々しく笑った。
    「よかった・・・!」
    一方、相手トレーナーである短パン小僧は、ニヤニヤと笑いながら
    「どうした?それでおしまいかよ!」
    と余裕を残し、煽るように叫んだ。
    だが、彼の手持ちも残り1体。そのコラッタも随分疲弊している。
    呼吸が浅いのがその証拠だ。
    『まだ・・・まだ勝機はあるはずだ・・・!』
    策を練ろうと思考をめぐらせるが、今日旅立ったばかりの少年にはバトルでの戦術など皆無に等しい。
    少年は思わず拳を握り締めた。
    ――その瞬間。
    ワニノコが立ち上がった。
    「ワニノコ、お前まだ・・・
    「ワニャニャワーーーーーーーッ!!」
    信じられないような音量の怒号が辺りに響き渡った。
    その声だけで、草むらにいたポッポたちがいっせいに飛び立っていく。
    短パン小僧もコラッタも、あまりの驚きで声ひとつ出せない様子だ。
    「ワニノコ・・・?」
    ワニノコの目は血走り、端から見ても力がみなぎり、溢れている。
    先程受けたダメージがまるで嘘だったかのような力強さ。
    少年はその様子を見てハッとした。
    『これが・・・ワニノコの特性――げきりゅう!』
    特性げきりゅうは、体力が危うくなると水タイプの攻撃の威力が上がる効果がある。
    『いける!これなら!』
    少年は颯爽と立ち上がると、鋭い声で言い放った。
    「ワニノコ!みずでっぽう!!」
    天を裂く鳴き声と共に、激しい水流がコラッタ目がけて放たれた。
    「こ、コラッタ!避け・・・」
    短パン小僧の指示も虚しく、特性の発動に怯えきっていたコラッタは一歩たりと動けぬまま攻撃を受け、撃沈した。


    その後、短パン小僧がなけなしのおこづかいを少年に泣く泣く渡したのは言うまでもない。


    ***************************************


    気分は上々だった。
    先程の勝負での起死回生は逆転サヨナラホームランに等しい。
    満面の笑みで空を見上げると、爽やかな青い空。時折流れる白い雲は穏やかに。
    「最高の旅立ちだなぁ!」
    思わず声を上げて叫ぶと、突然、ソプラノの声が少年を呼び止めた。
    「あなた、トレーナーね?私と勝負しなさい!」
    相手は、ミニスカート姿の少女だった。セミロングの栗色の髪が、艶めいている。
    両腕には、少年にはこれっぽっちの縁もないシュシュやアクセサリーを身につけ、爪にはマニュキュアまで。
    いかにもチャラチャラしたオンナノコだな、と少年は思った。
    とても可愛いのだが――出来れば友達にはなりたくないタイプだ。
    しかし、勝負となれば話は別。
    「もちろんだ!受けてたつぜ!」
    少年は余裕たっぷりと答えた。
    「そうこなくちゃぁね!行くわよ、マリル!」
    ミニスカートが放ったモンスターボールから、水球のようなポケモンが現れる。
    みずねずみポケモン、マリルだ。
    ジョウト地方では珍しい部類に入るポケモンで、なるほど可愛らしさは抜群。
    いかにもミニスカートのトレーナーが手に入れたがるようなポケモンだ。
    『何から何までチャラチャラしてんなぁ』
    心の中だけでミニスカートをあざける。
    これなら苦労もせずに勝てそうだ。何せ今のワニノコは特性の発動で強いのだから。
    「いくぜワニノコ!」
    少年の背後をついて歩いてきたワニノコが素早く前に出る。
    「ワニャニャニャーー!!」
    先程までの、燃えるような戦意がまだワニノコにみなぎっていた。
    鼻息を荒くし、しきりに地面を蹴っている。
    「先手を取るぞ!ワニノ――
    「ちょっと待ちなさい!」
    ミニスカートが少年の指示をさえぎる。というよりも、ぶった切る、と言ったほうが正しいか。
    彼女の瞳は真剣で、先程までのわくわくした表情から一変、心なしか冷徹な面差しをしている。
    「なんだよ!ビビってんのか!?」
    ミニスカートは挑発の言葉にも顔色を一切変えなかった。
    「・・・あなたのワニノコ・・・随分息が荒いみたいだけど」
    「へへっ、こいつは今特性が発動してるんだ!今なら誰にだって勝てるぜ!」
    彼女の表情が徐々に曇っていく。
    「その子とは、戦えないわ」
    そう言うと、ミニスカートはマリルをモンスターボールに戻してしまった。
    「なっ?なんで?そっちから勝負を仕掛けてきたくせに、何やってんだよ!」
    まるで、困惑や疑念をすべて見通したような彼女の冷たい視線だけが、少年を捉えた。
    「あなた、自分のパートナーの様子も見てないの?」
    一瞬、問われた意味が判らず、少年は言葉を失う。
    その時だった。

    ワニノコの身体がぐらりと傾き、地面に伏す。

    「ワニノコ!?」
    少年は、パートナーの突然の異変に慌てて駆け寄り、そっと地面から抱き上げた。
    ワニノコは浅い呼吸を繰り返していて、苦しげな表情を浮かべている。
    「今すぐこれを使ってあげて」
    ふと顔を上げると、ミニスカートがきずぐすりを差し出してくれていた。
    今にも泣き出しそうな表情に見えたのは――気のせいだろうか。
    「え、あ・・・」
    突然の出来事に、突然の申し出。
    少年が更に困惑するいとますら与えない勢いで
    「いいから早く使いなさい!!!!」
    ミニスカートが怒鳴った。
    自分より少し年上に見える外見ということも相まって、少年は大いに萎縮しながらも彼女の指示に従った。
    そして倒れてしまったワニノコの身体をよくよく見れば、引っかき傷や打撲の跡がたくさんある。
    『こんなに傷ついてたなんて』
    少年は自分の未熟さを呪った。

    一通り薬を与え終わると、ワニノコの表情がほんの少し緩む。が、依然ワニノコの意識は戻らない。
    それでも、ワニノコの苦痛を少しでも軽減できたことに少年は感謝した。
    「良かった・・・ありがt――
    パァン!!
    いっそ清々しいほどの破裂音。
    少年は、自分の身に何が起きたか理解するまでたっぷり10秒は消費した。
    「なにすんだよ!!」
    左の頬がビリビリと痛みを訴えていた。
    簡潔に説明するなら――少年はミニスカートに力いっぱいのビンタをまともに食らったというだけのことなのだが。
    「あんた、バカじゃないの!?」
    噛み付くように彼女は怒鳴った。
    「げきりゅうが発動するような体力でこんな何もない道を延々歩いて連れ回して、その状態でバトル?傷だってこんなにたくさんあるじゃない!!あんたの脳みそどうかしてるわ!!」
    彼女の言い分が正論すぎて、言い返す言葉が見当たらない。
    「その上きずぐすりのひとつも持ってないなんて!!この辺りには毒状態にする野性ポケモンもいるのに!!その様子だと、毒消しも持ってないんでしょう!?」
    「それは・・・」
    バシッ!
    二回目のビンタも右の頬にクリーンヒット。
    「言い訳なんか聞かないわ!!」
    せめて毒消しはひとつ持っているということは聞いて欲しかったのだが。
    「見たところ新米トレーナーよね?ポケモンに関する知識は一通りセミナーで習ったはずじゃないの!?」
    「お、俺はそんなもん・・・」
    バシィン!
    左に再び。痛みが増した。
    「そんなもんですって!?あんた、その程度の軽い気持ちでトレーナー修行に出たわけ!?」
    『その程度』の一言で、少年の理性が焼き切れた。
    「ふざけんなよ!!俺はチャンピオンになるために今日旅立ったんだ!!ミニスカートでチャラチャラしたお前に指z
    ガンッ!
    ボキャブラリーのなさを責めないでいただけるだろうか・・・。
    ついに彼女の拳が出た。それも、顔面に。
    「そうやってね!!見かけで人を判断するような奴も最低よ!!人を見た目で判断するような奴はね、人を大切になんか出来ない!!そして人を大切に出来ない人間がポケモンを大切に出来るはずなんてないわ!!」
    「は、はなひ・・・(訳:は、鼻血・・・)」
    当たり所が悪かったのか、少年は両方の鼻の穴からポタポタと血を垂らして――
    もう泣くしか選択肢はなかった。
    「何よ!鼻血くらいで!小さい男!!」
    少年が泣きながら、そして鼻血を出しながらわめいている間に、ミニスカートは彼のモンスターボールを素早く奪い取って、ワニノコをボールに戻した。
    更に少年の髪の毛を強引に引っ張ると、鬼のような形相で言う。
    「モンスターボールってのはね、ポケモンが本来丸くなって体を休めるっていう本能を元に作られてるの!!」
    そして次に少年の腕を掴む。白い肌が鼻血で汚れることも厭わずに。
    「ついて来なさい!!次の町はすぐそこよ!!まずはポケモンセンターにワニノコを預けなさい!!ついでにその町に私の家があるから、うちで最低でも1週間はみっちり猛勉強することね!!私のパパはポケモンドクター、ママはベテラントレーナーだから!!」
    もはや少年には、異論もプライドもなく。
    泣きじゃくりながら、ガミガミと説教を垂れ流すミニスカートの彼女に腕を引かれて歩く他はなかった。
    「あたしのママはよくこう言ってるわ!すべてのポケモンは愛されるべきだって!!そして、すべての人間もね!!みんなみんな、すべての生き物は愛されるために生まれてくるのよ!!」
    そう言われて、少年はひとつだけ思った。

    ――じゃぁ、俺のこと、殴らないで欲しかったなぁ・・・


    *********************************


    「じゃぁ、行ってきます!」
    「おっと、待て待て。お前に教えなきゃならないことがある」
    いよいよ玄関での見送りになって、父親は息子に切り出した。
    「何?」
    「いいか、ポケモンが傷ついたらすぐに回復させてやるんだ。あと、きずぐすりは多めに買っておきなさい。毒消しや麻痺治しなんかもそうだぞ。なにより、ポケモンに無理をさせちゃぁいかん」
    かつて自分の未熟さを厳しく指摘したミニスカートの教えを、息子に教えておきたかった。
    それが、彼が父親として、息子に送る何よりのプレゼントだ。
    彼女に会わないままだったら、自分は一体どんなトレーナーになっていたのだろうか。考えそうになるだけでも恐ろしい。
    しかし息子は当然のことのように
    「そんなこと、セミナーでちゃんと習ったよ」
    あっけらかんと答えた。
    「・・・そうか・・・」
    息子は父親に似ず、まじめでしっかりした男の子だ。
    若かりし頃の自分のような過ちは犯すまい。
    きっと優秀なトレーナーになるだろう。父親にはその様子が容易に想像できた。

    しかし、まだ。
    何より重大なことを伝えていない。
    父親は真剣な表情でこう告げた。
    「だがな、一番気をつけなくちゃならないのは、トレーナーだ」
    息子は疑問符を頭の上に浮かべるような表情をした。
    「特に、ミニスカートのトレーナーには気をつけるんだ。そして、出来れば戦わないほうがいい」
    「どうして?」
    「それはだな・・・」

    「随分楽しそうなお話をしてるのねぇ?」

    背後からかかった声に、父親の背筋が凍った。
    「母さん!」
    息子が明るい笑みを浮かべたので、父親も恐る恐る後ろを振り返る。

    そこには、花のような笑みをたたえたエプロン姿の美しい妻が立っていた。

    ミニスカートをはいていたあの頃より、ずっと穏やかになった彼女の微笑みは、けれど、あの時少年だった自分にとってのおうふくビンタと拳という凶器と同じであるということは、今になっても変わらない。


    Fin.




    【描いてもいいのよ】
    【お手柔らかに批評してもいいのよ】

    人もポケモンも、愛されるべきなのよ


      [No.1900] 陰から覗く日向 投稿者:銀波オルカ   投稿日:2011/09/22(Thu) 21:37:38     64clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
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     私の腕を木の枝がかすり、手を木の葉が切り裂いていく。
     ――気にした事ではない。もうすでに、私は体中傷だらけなのだから。



     これまでに、何度かポケモンハンターに追われた経験はあった。自分が比較的珍しい種族であると自覚していたし、なにより普段からハンターではなくとも追われる事は多かった。トレーナー、そのポケモン、野生のポケモン。そしてその原因が自分の能力――“ナイトメア”という、私達ダークライのみが持つ特性にある事も知っていた。
     この特性のせいで、一ケ所に長く留まることもできない。各地を転々とし、時には追われ、生きてきた。

     すさまじい恐怖感から逃れたくて、ただひたすらに森を突き進む。追ってきてはいないだろうか? 体力の限界が来れば、もういつ動けなくなってもおかしくない。できるだけ遠くへ。受けた傷の痛みと、疲れからのだるさ、眠気で、少しずつスピードが落ちているような気がしてくる。ふと、恐ろしさが心に触れてまたスピードを上げる。……何度繰り返しただろうか?

    『ゼイ……ハアッ』

     息が苦しい。どこかで休みたい。
     今回の相手はどうやら、最初から私を捕まえるために追ってきたようで、手持ちのポケモンやその本人もまた、相当な熟練だった。つけられていた事自体、迂闊だったのだろう。不意に襲われ、ぎりぎりのところで撒いてきたが、ダメージが半端でない。

     身体に降りかかる陽の光を感じ、急停止する。上を向くと、木の葉が無く、昼間の青空が見えた。森の中のちょっとした空き地に出たのだ。そこには長い下草も無く、木が一本生えているのみ。反射的にその木に寄りかかる、というよりも身体が言う事をそこまで聞かず、根元に倒れこんだとする方が正しい。しばらくたったらまた逃げなければいけないだろう。だが、ずっとこうしていたいという思いが心の片隅にあるほど、自分が疲れきっているのを感じた。

     どれくらいそうしていただろうか。もしかしたら、少し寝てしまったりもしたのかもしれない。
     目の前の草むらから聞こえる物音で、私は現実に引き戻された。刺すような恐怖感に襲われ、無意識に身体が震えてしまう。攻撃してこない相手であることを祈るしかない。この状態で攻撃などされたら、まず勝ち目などあるわけないのだから。動こうとしたが、無駄だった。力を入れても、鈍い痛みが身体のあちこちに響くだけ。もう本当に動けなくなってしまったのだ。頭の中が痺れたように真っ白になった。草むらが揺れる音は確実に近づいてくる。そして、ついに目の前の草むらが揺れ、現れたのは――
     一匹の、ロトムだった。

    『――ッ!』

     頭が痺れたようになって、全身に緊張が走る。ポケモンなら、選択肢は二つ。襲い掛かってくるか、私に恐れをなして逃げるか。そのロトムは私に気付き、驚いた顔になった。

    (え……キミ、大丈夫? 傷だらけだよ!?)
    『……?』

     今、彼は何と言った? 

    (待ってて、ナツキを連れてくるから!!)

     そう言うとロトムはあわてた様子で、今出てきた草むらにまた飛び込んでいった……。
     身を心配する言葉をかけてもらった事など、今の今まで一度もない。彼は……私の特性を、種族を、知らないのか?もしかしたら、これは私が浅く眠って見ている、夢なのではないだろうか?それとも、ただ逃げるための嘘だったのか。
     さまざまな考えが、頭の中を駆け巡った。

     突然の足音が、自分が考え忘れている事を気付かせる。“ナツキ”というのは、人名なのか? さっきのロトムは、トレーナーの手持ちなのだろうか。トレーナーによっては、私を殺す指示を手持ちに出す事もありうる。

    「……本当に、こっち?」
    (こっちだよ!!)

     少女の声だろうか。女のやや高い声と、さっきのロトムの声。おそらく、ロトムがその女性を案内しているのだろう。
     目の前の草むらから現れたのは、ロトムと、日に焼けた少女。薄めの茶髪の髪が、頭のてっぺん近くで短く一つに束ねてある。年は十、十一くらいだろうか。少女は私を見ると何も言わずにかがみこんで、倒れている私を見下ろすような姿勢をとると、手を伸ばした。すっ、と突然腕を取られ、身体がびくっと反応する。が、気にも留めない様子で私の傷だらけの腕を持ち見つめながら、彼女は肩を動かし背負っていたリュックサックを地面に下ろす。隣のロトムが、赤い十字の印の付いた白い箱を中から取り出した。

    「えーと、消毒液と包帯とって」

     少女が言った言葉はそれだけ。ロトムからそれらを渡されると、あっという間に私の両腕を消毒した後包帯でくるくると巻き、必要な事をてきぱきと全てやってしまった。
     手当てが終わるころには、もう殺されるとか、そんな警戒心は持っていなかった。――私の特性を知られるまでではあるが。どうやらこの少女たちは、ダークライという種族を本当に知らないようなのだ。まあ、彼女のおかげで助かったのは事実。礼は言っておくべきだろう。少女はうーん、と曲げていた膝に手を当て、伸ばした。

    「もう大丈夫だよ。あ、私ね、ナツキっていうの」

     にっこりと微笑む少女。

    『すまない、手当てまでしてもらって』
    「あれ、日本語話せるんだ? 珍しいね」

     私の言葉は、人間に通じる。まあ、話し相手になる人間は、これまで会ったことは無かった。

    「ま、ダークライ自体珍しいからかなー」

     ナツキは笑顔のまま言ったが、私は身体が硬直する思いだった。周囲の空気が、凍りついたような気がする。彼女は、私の種族を知っている……? なら、特性は……? 無意識のうちに身体に力が入り、腕につきん、と痛みが走る。

    「あ、動いちゃ駄目!! ……ちょっと、いいかな」

     驚く私に対して、ナツキはさっきのようにもう一度かがみこんだ。

    「あなたの特性も知ってるよ。でも、私は知ってて助けたんだよ? いまさら襲う必要なんて無いじゃない」
    『…………』

     確かに彼女が言う事は、考えれば普通の事。だが――
     本当のことを言うと、信じられなかった。というよりも、信じたくなかった。裏切られたくなかった。彼女は、私の特性を知っている。知っていても、私に手当てをしてくれた。……なら、一緒にいたとして、本当に悪夢を見せてしまったら、彼女はどうするだろうか……。悲しい事に、私が生きてきたのは、信じるということを許されなかった、暗い陰の中の世界。

    「ハンターに襲われたんでしょ? その傷、治るまで一緒にいてあげるよ。ポケモンセンターには行きたくないでしょ、人の沢山居る所には」

     確かに、人目に付く所には行きたくない。しかし、それよりもこの彼女自身が一番心配だった。私に初めて、優しく接してくれた少女が。
     まだ浮かない表情をしているであろう私に、ナツキはもう一つ言った。

    「私ね、ホウエン地方から、旅をしてるんだけど」

     ホウエン地方。ここから遠く、南にあるという一年中緑が絶えない場所であると聞いたことがある。彼女は、そこからはるばるこのシンオウまで旅をして来たと言うのだ。

    「あなたを、連れて行きたい所があるんだ」
    『連れて行きたい、所…?』

     つい、私は好奇心に負けてしまったのだった。



     周囲は森だった。

    「見つけたぞ」

     ハッと振り向くと、無精髭を生やした男。何かバイクのような、変わった形の乗り物に乗っている。

    「数ヶ月、追ってきた甲斐があったなぁ。まあそれだけの価値があるだろ。捕獲、しくじるなよ」

     男は、手に取ったボールから、数匹のポケモンを繰り出す。……価値? 捕獲? ふざけるな。身の自由を奪われるなんて、どんな形でもごめんだ。両手からダークホールを繰り出す……が、瞬時に相手の技に相殺される。逃げるしかないと確信し、振り返るとそこはもう森ではなかった。無機質な壁に囲まれ直線に伸びた、暗い道。この道を逃げろと、直感が告げた。
     後ろから幾つもの技が飛んでくる。直前で避けたりもしたが、背中に命中する。腕をかすっていく。しかし私は止まらなかった。進むうちに光――出口らしきものが見えてくる。しかしその直後、すさまじい電撃が私の動きを止めた。身体が重力に逆らえきれなくなった私は、なすすべもなく墜落した。後ろから飛んでくるのは、私の意識を無くすための最後の一撃。



     がばっと、文字通り飛び起きた。
     心臓が落ち着いてから、記憶をゆっくりとたどる。――ここはナツキの張ったテントの中だ。昨日、あの空き地にナツキはテントを張って、そこで野宿をしていたのだ。記憶が戻るにつれ、冷えた身体が徐々に温まっていくような感覚だった。悪夢を見せるもの自身が悪夢にうなされるとは。少し自嘲的な笑みが漏れる。
     外は薄明るい。ナツキは隣でまだ寝ている。その顔はうなされているような顔でも、なんでもない寝顔だった。ナイトメアは、はたらいていないのか? まあ、考えるのは後でもいいと思った。眠気もあの夢のせいで覚めてしまったので、外に出てみることにする。

     外に出て、少しの間動けなくなった。まず目に入ったのは、黄金色の光。眩しいが、でも昼間の太陽よりは弱い、日の出の初々しいような光。空は淡い水色。入道雲は、朝焼けの光で朱鷺色に染まっていた。……なんとなく、その透き通った風景に見入ってしまっていた。

    (ふあぁ……ダークライって早起きなのねー)

     隣にいたのはメスのアブソル。ナツキの手持ちの一匹だと、昨日紹介された。空に見入っていて、喋られるまで気付かなかった。なんとも眠そうな様子。なんというか、緊張感がまるで無い。悪夢にうなされて起きてしまった、と答えるのも流石にどうかと思ったので、いつもこうなんだ、と答えておく。

    (ねえ、ダークライって空を見るのが好きなの?)
    『いや……今日はたまたま綺麗だったからな』

     いつも、景色を眺める事などめったに無い。というよりも、気にする事が無かった。自分でも、今朝の空の色に惹かれたのは不思議だと思う。しばらく黙って、二人で空をそのまま見つめていた。

    (幸せな時の風景って、綺麗に見えると思わない?)

     アブソルは、ぽつっと呟いた。その目は、何を思っているのか遠い風景を見ている目だった。
     彼女の言葉が合っているのなら、私は今、幸せを感じてでもいるのか。その感覚自体、馴染みが無い。むしろ違和感さえ覚えるかも知れない。

    (そういえばさ、ダークライって悪夢をみせるんだよね?)

     不意にアブソルが聞いてくる。私の心の内を思ったのか、別に私は見なかったよ、と付け足す。

    『お前は、災いを感じ取るんだろう?』
    (そうだよ)

     アブソルという種族は、耳にしたことがある。なんでも、姿を現すと災いが起きるというので、人間に毛嫌いされているというのだ。

    (私はこの能力のせいで、両親を殺されたの。最近はまだ、人間もそれほどでも無くなってきたんだけどね)

     この、親しみやすいような、緊張感の無い喋り方と性格のアブソルが、過去にそんな目に遭っていたとはとても信じがたかった。彼女の気持ちを思うと、まともに表情を見ることができない。

    (あなたの方も、けっこう酷い話じゃない? 悪気は無いのに、防衛手段として身についた能力で、人に悪夢を見せては嫌われるなんてさ)

     アブソルは、似たような境遇にいる私を理解してくれている。本当のことを言えば、アブソルという種族は人間には嫌われても、ポケモン達から見ればそうでもないのだろう。災いをいち早く感じ取り、身の危険を知らせてくれる存在なのだから。そのことはアブソルは口にしなかった。私も、正直そんな事は本当にどうでもよかった。人に忌み嫌われ、辛い思いをしてきた事はどっちにせよ、同じなのだから。なら、彼女も、私も一番信頼している人間の……

    『ナツキとは、どういう風に出会ったんだ?』

     アブソルは、うーんと唸って、何か悩んでいるようなそぶりを少し見せた。

    (出会った……っていうと、なんというか、幼馴染なのよね)

     ナツキが生まれたのは、ホウエン地方の、山奥の村。古い習慣が残るそこで暮らしていた彼女は、早くに両親を亡くし、親戚に助けられながら暮らしていた。幼いころから山に入っては、ポケモン達と遊んでいるうちに友達になったのが子供のアブソル。当時の彼女は、村のおきてなど知るよしも無かった。……アブソルは、退治しなければならない。災いを呼ぶのだから。おきてを知ってからは、彼女にとってアブソルは“秘密の親友”。幼いころのナツキとアブソルは、こういう関係だったらしい。

    (私たちが村を出たのはね……)

     ナツキが九歳のときの事。人前に出て吼えれば、即座に鉄砲で撃ち殺されてしまうアブソルの一族は、もうこの一帯にはほとんど残っていなかった。唯一の生き残りであった、彼女の友達、そしてその両親のアブソル。
     ある日、その両親は災害を感じた。――この一帯に雨が降り続き、大規模な土砂崩れ、酷ければ山崩れが起きる。
     しかし、人前に出れば自分たちはすぐ殺されてしまう。せめて、娘だけでも生かしたい。そう思ったその両親は、子供を彼女に託した。アブソルを見ても人々が撃ち殺したりしない遠い所へ、連れて行ってほしいと。
     彼女は、故郷を捨てて、アブソルと一緒に逃げ出した。もともと、父母もいない。親戚からは、年頃になれば嫁に出されて、用済み。大きくなるにつれて、辛い現実も分かるようになっていた。どこか広いところへ行きたかった。そう、ナツキはアブソルに語ったのだ。
     土砂降りの雨が降りしきる中、村に背を向けたアブソルとナツキが最後に聞いたのは、両親の遠吠えと、二発の銃声。



     話を聞くと、想像していた以上に酷い過去だった。そんな古い習慣を持つ村が、まだあるのか。ただ、話を聞くと、気になるところがある。

    『ナツキは、お前の言葉が分かったのか?』

    (伊達に幼馴染やってるわけじゃないもん、気持ちはちゃんと通じるよ。もちろん今もね)

     友情で、相手の心が分かる。なんという羨ましい関係だろう? 出会った相手に心が通じた事など無かった私は、そう思ってしまった。いくら言葉が人間に通じても、である。

    『……友情、か』
    (大丈夫、ダークライにもきっと分かるよ)

     笑顔のアブソルは、確信した口調で私に言った。

    「ふあ……おはよー。あれ? アブソルとダークライ早いねー」

     テントからナツキと、ロトム、そしてジュゴンが出てきた。このジュゴンも、彼女の手持ちのようだ。ポケモンと飼い主……もといトレーナーは似る、とはこういうことだろうか。彼女と、さっきのアブソルの仕草がそっくりで、私は笑ってしまった。

    「……何笑ってるのよぉ」

     ナツキもポケモンも、みんな笑い出した。“笑う”という事自体、ずいぶん久しぶりな気がする。心が暖かい。彼女らといると、陽の光に当たっているように心が暖かくなっているのが分かる。
     朝日はすでに昇りきって、辺りは明るくなっていた。



     テントを片付け、簡単に朝食を食べた後、少し歩くと小さな町に出た。アブソル達は、もちろんボールの中。私はどうしたかというと、ナツキの足元の影に隠れた。雑踏の中を、ナツキは進んでいく。どうも人ごみの中を進むのは苦手なようで、町のポケモンセンターに着くころには、彼女はフラフラになっていた。とりあえず今夜の宿、センターの個室を借り、ベッドにぼふんと倒れこむナツキ。個室は小ぢんまりとした、ベッドと机と椅子がある程度の一人部屋だった。

    「暑苦しいし……疲れたぁ……眠…い」

     それだけ途切れ途切れに呟くと、すぐに寝息を立て始めた。長く旅をしているだけあって、いつでもどこでも眠ることができるようだ。そのままにしておいてやることにする。その時私は気付いていなかったが、やはり彼女はうなされていなかったのだ。
     彼女の腰のボールから突然、音を立てて光と共にポケモン達が全員出てきた。それでもナツキは目を覚まさない。

    (ボールの中よりもやっぱ外の方がいいわ)
    (まあ、あの人ごみだったし……いくら私達外にいるのが好きっていっても、しょうがないと思う)

     ナツキは普段、あまりポケモン達をボールに入れることはしないらしい。その彼女が寝ている時に、彼らに聞きたいことがあった。

    『ナツキが私を連れて行きたい所があると言っていたんだが、知っているか?』

     彼らはお互いに顔を見合わせた後、私を見て言った。

    (知ってるよ)
    (でも、私達からは言えないわ)
    (ダークライもきっと気に入るよ。素敵な所だもん)
    『素敵な所……』

     呟くと、ニッコリした顔でアブソルはうんと頷く。

    (その時までの、お楽しみにしといて!)



     ナツキの横顔に、目を落とす。
     ――何故、お前は私のことを助けてくれたんだ?

     その問いかけは声になる事も無く、私の心の中にとどまった。まだ彼女に聞いていないこと、聞きたいことが沢山ある。何か彼女の中に、訳がある気がした。それこそ単なる同情などではなく、もっと深い、それこそ私が長く味わったような深い闇を。…罪、という言葉が自然に浮かんだ。
     その考えを私は振り払った。今まで見た彼女の表情が浮かんだとき、暗い顔をした表情は無かったからだ。知らないだけかもしれない。が、やはり暗い顔のナツキは思い浮かべる事ができなかった。彼女には、明るい顔が一番似合う。単に自分が疑い深いだけだろう。
     そう自分に言い聞かせても。伸びをしたナツキが目覚めるまで、私は物思いから覚める事ができなかった。



     町に少し出て昼食を食べてから、ポケモンセンターに戻ってきた。
     センター内のレストランで夕食を食べた後、私達は部屋に戻り、ゆったりとくつろいでいた。私以外のポケモン達は、もうボールの中で眠っている。昼間、気になった思いを素直にナツキに聞いてみた。……一瞬彼女の顔に陰がかかったような気がして、少しどきっとした。

    「私がね、ずっと昔、村で暮らしていた時の話なんだけど…」

     するとナツキは、自分の生い立ちを突然語り始めたのだ。アブソルからも聞いた、あの話を。

    「アブソルと仲良くしてたのね。ずっと秘密の友達でいるはずだった。なのに、バレちゃったの。私が、災いを呼ぶポケモンといつも遊んでるってことが」

     ……秘密の友達という関係は、外にばれてしまったのか。
     災いポケモンと、遊ぶ子供。同じ世代の子供達の目には、どう映るか?
     ――「あのおねえちゃん、ポケモンなんでしょ?」と指を差される幼いナツキが、容易に想像できた。


    『――お前は、本当に人間か?』

    『この辺りに、まだアブソルが残っていたのか!』

    『どうして言わなかったんだ! まさかお前も、災いを呼ぶんじゃないだろうな!!』


     いつの間にか私は、数人の大人に囲まれていた。唾を飛ばすほどの大声で、私を罵っている。
     …違う、罵られているのは、私の足元にいるナツキだ。ずいぶんと容姿が幼い。でも、一目で彼女だと分かる。これは、ナツキの記憶なのだ。私のナイトメアが、彼女の記憶を映し出しているのか。あるいは、私自身が夢を見ているのだろうか。夢にしては、随分とはっきりしている気もするが。
     私の足元にいるナツキとは別に、今のナツキは私の一メートルほどの所にへたり込んで、顔を手で覆っていた。

    「私がばらさなければ、アブソルのお父さんとお母さんは……っ」

     “ばらした”のは、彼女自身なのか!?

    「死なずに済んだかもしれないのに……!」

     泣きながら言うナツキ。……体が、今にも消えてしまいそうに透明になっている。今まで見たどの表情とも違う彼女に、驚くしかなかった。普段は、あんなに明るい顔で笑っているというのに。私自身はというと、頭が混乱するばかりだった。

    『でも、彼らが撃ち殺されたのは、災いを知らせるために人前に出たからじゃないのか?』

     アブソルから聞いた話では、そうだったはずなのだ。

    「それもあるけど、違う。それより前に、私がアブソルが生き残ってるって事を、言っちゃったから。一番の友達だった、幼馴染に」

     ナツキは、手で涙を拭いながら答えた。すると突然、場面が変わった。どうやら、彼女の意思によって風景が変わるようだ。
     幼いナツキと、隣を歩くもう一人の女の子。その女の子が、幼いナツキにたずねた。

    『ねえ、なっちゃんさぁ、いつも山に行ってるよね、何してるの?』
    『友達とね、遊んでるの』
    『山に友達がいるの…?』

     その女の子は、いぶかしげな顔になった。

    『うん。これね、他の人には秘密だよ。…私の友達はね、アブソルなんだ』
    『アブソル!?』

     ナツキの、恐々といった感じの返答に、文字通り飛び上がる幼馴染。

    『でもね、全然怖くないよ。優しいもん』
    『そうなんだぁ…。分かった、言わないよ。約束する』

     ほっとする笑顔を見せながら、指きりげんまんをするナツキ。…これか。
     “裏切られたこと”それ自体、彼女には信じ難い事実であっただろう。それに、自分自身が親友を“知らせて”しまったこと……。

    『こいつに知らされたんだな、お前の友達がアブソルだと』
    「そう……裏切られてたの、最初から」
    『最初から?』
    「その子の親はその子に、私に近づくように言って、私のことを探ろうとしていたの。両親のいない、ポケモンの子のことを。アブソルがまだ生き残っている事を大人達に知られて、結局アブソルのお母さん達は撃ち殺されるしかなかった」

     ……やはり、彼女は暗い影を感じたことがあったのだ。それも、私よりもっと酷いかもしれないほどの。だから、私の心も理解してくれた。そして、今だ消える事のない、裏切られた憤り、罪悪感……。
     思わずナツキに近寄り、肩を掴んだ。透き通って消えてしまいそうな体だが、触れることができて多少安心した。

    『でも、アブソルの母親達が助けられなくても、ナツキは私を助けただろう!?』

     私の目からも、涙がこぼれていたかもしれない。
     はっとした様に、ナツキは顔を上げ、そして、涙で顔を濡らしたまま、微笑んだ。

    「…ありがとう」



     気が付くと、床に寝ていた。窓から差し込んでくるのは、朝日。……夢、だったのか?
     起き上がると、ナツキはすでに起きていて、髪をとかしている最中だった。目を合わせると、いつものような笑顔になった。

    「おはよっ」

     昨夜の出来事は、やはり現実だったのだ。微笑む彼女を見て、直感だが、でもそう確信した。
     ナツキは笑顔のまま、私に言った。

    「なんかね、報われた気がするんだ……ダークライのおかげだよ。ありがとう」

     あの夢(だったのだろうか)の中のように、もう一度言われた。
     身支度を整えた後、ナツキはセンターの個室を出て、目的地へ出発するよと言ったのだった。



     薄暗い雑木林を、無言で進んでいくナツキ。私は後に続く。細々とした、人が二人ほど並んで歩けそうなほどの道をゆっくりと。時折、ナツキの足元の落ち葉や枝がパチパチと音を立てた。それ以外の音は聞こえない。鳥ポケモンのはばたきや、何か別の気配を感じたりもする。が、何故かその音さえも沈黙を深くしているように思った。
     その沈黙が、これから何かが起こるであろう事を示しているようで、なんとなく胸騒ぎがした。私の心を感じたのか、ボールから勝手にあの三匹が飛び出した。ナツキは、もうすぐだもんね、と言っただけ。
     気が付けば、小道の先に見えているのは、白い光の差し込む出口。

    (ダークライ先に行けば?)

     アブソルにうなずき、ナツキを追い抜いた。白い光が、身体に近づいてくる。雑木林の出口の向こう――



     やっと、出られる。



    『……! ここは……』


     ――そこは、一面の向日葵畑。

     背の高い、向日葵が咲き乱れているのだった。
     一面の黄色は、陽の光でまるで黄金に輝いているようにも見えた。暗い林を抜けてきたせいで、眩しくも感じる。それほどの黄色。

    『ナツキ! ……?』

     目を疑った。疑わざるをえなかった。

     私がナツキ達の方を振り向いたとき、ナツキと、アブソル、ロトム、ジュゴンの身体は――透き通っていた。ナツキが、夢の中で泣いていた時のように。身体の向こうに、今さっき進んできた林の木々が見えているのだ。
     彼女が地面を蹴ると、その身体はふわっと、まるで重力を感じていないかのように“浮き上がった”。

    「黙ってて、ごめん」

     宙に浮くナツキが、語りかける。向こうに透けているのは、夏の青空と、入道雲。彼女の身体を通して見ているのに、いつかの朝焼けのように鮮明に、美しく見えた。きっと今私は、驚きで目を見開いた表情のままに違いない。

    「私はね、今から二十年前死んでるの。それから、姿かたちは変わってない」

     今の彼女を見れば、一目で人間ではない何かであることが分かる。が、目の前の光景を見ても、その自分が見ている事の理解に苦しんだ。ただこれで、一つ納得がいくことがある。私のナイトメアがナツキ達に効かなかった理由だ。彼女達は、すでに生きてはいなかったのだ。だから、夢も見なかった。そう考えれば、説明が付く。死んだのが……二十年前。アブソルが古い風習で狩られていたのは、そのもう少し前になる。

    『おまえは……幽霊なのか?』

     ナツキは浮いたままクスクスと笑う。

    「この世に未練があった訳じゃないよっ。私達はね、“向日葵前線”なんだ」
    『向日葵前線?』
    「毎年夏になると、南から北へ上っていって、向日葵を運ぶんだ。南風を引き連れて、ね」

     南から北へ、というあの言葉。あれは、ナツキの生前の旅と、向日葵前線、二つの意味があったのか。

    (今年は、ちょっと遅れ気味になっちゃったかな? 普段はけっこう飛んだりするんだけど)

     隣で同じように透き通ったロトムが言う。

    「ううん、異常無し、だから大丈夫」

     しかし、何故ナツキが?

    「それが、今でも分からないの。でもね、何でなっちゃったのかも分からないけど、別に後悔なんてしてないよ」
    『後悔してない、か……』
    「だって、ダークライみたいな、素敵ポケモンとたくさん出会えたもんね」

     周りのポケモンたちが、笑顔で頷く。

    『……罪滅ぼしだと』
    「?」
    『罪滅ぼしだと思えば、楽じゃないか? 他人を悲しませた分だけ、他人を喜ばす向日葵を運ぶんだと思えば』

     少し言葉に戸惑ったが、言わずにはいられない何かがあった。

    「ダークライって、本当に優しいよね」

     ナツキは目の前に降りて来ると、私の手を握った。もう透明な、すかすかした手で。彼女を見上げると、その身体の色が、徐々に薄くなっていた。シンオウは、北の地。彼女達の旅もここまで、ということなのだろう。

    『……またいつか、会えるか?』
    「大丈夫、約束する。あ、私の“ナツキ”って名前はね“夏希”――夏の奇跡って書くんだ」

     その言葉を最後に、握っていた手が、身体が――彼女達はふっと、わずかな光を残して消えてしまった。
     奇跡を、信じたい。またいつか、彼女達と出会える奇跡を……。ポタッと、自分の腕にしずくが落ちる。初めて、自分が泣いていたことに気付いた。



     風に揺れる向日葵畑を眺める。黄金に輝く、向日葵畑。陽の光の下へは出られぬ私。出口へ連れ出してくれたのは、向日葵前線ことナツキ。彼女もまた、暗い陰の中から出る事を望んでいたのだ。

    『日陰の中からだとさぁ、日向って明るく、綺麗に見えるよね』

     ナツキの言葉が、頭の中に響いた気がした。
     そう。でも、陰の中から見る景色はただ見ているより、その場に行った方がずっといいのだ。冷たい陰より、暖かい日向がいい。夏の日差しのように暑くとも、向日葵のように堂々と花開けばいいのだ。明るいということは、とてもありがたいものなのだから。








     向日葵の花言葉を知ることになったのは、それから随分後だった。

     ――『あこがれ』



    ――――
    はい、無茶振りを受けてからどれだけ経ったでしょうか。11111字完成です。流月さん本当にお待たせしました。

    ・紀成様から『向日葵前線』を書かせていただく許可をとったのに、もう九月終わるよー
    ・中二病バリバリダーどころの話じゃないと思う

    実は、「明るい少女とダークライ」の構図は、ポケモンの小説を読んで間もない頃の小四くらいの時の私が、一番初めに考えた自分の小説の構図でもあるのですw。超大幅に改造して、やっとここに投稿できました!レベルとかはまあともかく。好きに書かせていただき、流月さん本当にありがとうございました。


    【書いてもいいのよ】 【描いてもいいのよ】 【どうか感想をください】


      [No.1847] 【書いてみた】黒い犬 投稿者:キトラ   《URL》   投稿日:2011/09/12(Mon) 20:19:59     50clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
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    「やあヘルガー君」
    「誰だ間抜けな声。ポリゴン2……だったか?ここはどこだ?さっきまでリン……ああ、主人と一緒にいたんだが。使うボックスを移動した時に、気付いたら俺はここにいた」
    「ここ?ここはポケモン亜空間さ。君みたいな転送ミスが起きたポケモンがこんな所に来るんだよ」
    「なに!?それはどうしたらいいんだ?リンの元に戻らなければならない」
    「それは難しいんだ。僕も何度も試しているけれど」
    「けれど?」
    「この世界には記憶の限界があってね、その記憶が全て消し飛ぶ瞬間ならば新しく生まれ変わってここから出れるんだ」
    「生まれ変わる!?リンとは会えないのか!?」
    「そうだね、その世界の人間も全て消えてしまうから。今のポケモンたちはみんな消えてなくなる運命なんだ。でも大丈夫」
    「どうしてだ?もう会えないのだぞ!」
    「世界の約束だからさ。僕は元々電子ポケモンだから君たちよりすっとこの世界の法則がなじみやすいだけで、そうだね、あと数年後にまた……」




     草木も眠る丑三つ時。燃える炎のガスを吹き付けるデルビルとオーダイルが戦っている。オーダイルの後ろには女の子がいる。そしてその子は空のモンスターボールを投げた。誰もいない草むらで一人跳ねる。

     また、よろしくね!


      [No.1796] コメありがとうございます♪ 投稿者:みなみ   投稿日:2011/08/27(Sat) 12:48:59     47clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
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    おおっ。こんな駄文にコメありがとうございます♪
    確かにリーフィアとブースターは能力値的に物足りないですよね(汗   ゲーフリさん、何とかしてほしいです(泣)
    でもかわいさは全く物足りなくないのでこの通りのキャラ配置に♪

    技に関しては鋭いですね(汗     当初の計画ではリーフィアの改造技はハードプラントと地震だったのですがハードプラントはよくよく考えてたら特殊技だったので没にorz
    では地震はどうしたのかというと描写力が足りずに挫折してしまったのですorz    まず技の発動とかどうすればいいのかイメージがわかずに惨敗してしまったのですorz

    と、まあ。裏話的なコメになっちゃいましたね(滝汗
    なにはともあれ、コメありがとうございましたっ♪


      [No.1741] 【再稿】 数十年と千年過ぎ去りても――。 投稿者:巳佑   投稿日:2011/08/12(Fri) 03:25:20     76clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
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     ある昔のことでした。
     とある場所に小さな王国があり、そこには仲つまじい、王様と妃様がいらっしゃいました。
     その王様と妃様の愛が示されるように、王国は平和に包まれていましたが、
     それは何時までも続くほど、甘いものではありませんでした。
     王様と妃様は年を老いていき、息子や娘たちが王位継承の為に様々な策略を張り巡らしあいます。
     アリアドスの巣のようにまとわりつく、その重い感覚が王様と妃様は大嫌いでした。
     ついにその居心地の悪さに限界を覚えた王様と妃様は王国を飛び出し、小さな森の中に消えました。



     その森の中には丸太で作られた小さな小屋がただずんでおり、
     誰も住んでいないことを確認した王様と妃様はそこで暮らし始めます。
     静かで穏やかな日々は王様と妃様に幸せをもたらしましたが、それも長くは続きませんでした。
     時が重なっていく度に王様と妃様は年をとっていき、やがて老衰していき、二人そろって床に伏せる日も珍しくありませんでした。
    「なぁ……我らは死んだらどうなってしまうのか、分かるか?」
    「うむ……分からんのう……ただ」
    「ただ?」
    「なにがあるのか、分からなくて、怖いというのはあるのじゃ。それと」
    「それと?」
    「お主と一緒にいれるかさえも分からないというのが、一番、怖いのう」
    「……確かにな」
     やがて訪れる死を王様と妃様は恐れていました。
     もっと、一緒に生きていたい。
     もっと、もっと、この世界で二人一緒に愛しあいたい。
     日を重ねるごとに、そのような気持ちが強くなっていました。


     ある日のことでした。
     王様が目を覚ますと、体の異変を覚えます。
     やけに体が軽い、昨日まであんなに重かったはずなのに、といった具合にです。
    「目が覚めたかのう、お主。驚いたじゃろう? 妾も最初は驚いたが、意外とこの体に馴染んでおってな、まるで最初っから、この姿だったような気がしてもおかしくないぐらいじゃ」
     王様の目に映ったのは妃様の声と、白銀の九つの尾を揺らしている狐――キュウコンでした。
     王様はすぐさま外に飛び出て、近くにある川までいき、水面を覗きこむと、
     狐の顔と立派な金色のたてがみに長い耳がありました。
     そして自分の九つの尾に気付くのも時間はかかりませんでした。
    「お主もキュウコンになって、妾も驚いたぞい」
     後から追ってきた白銀のキュウコン――妃様が声をかけてきました。
     その声音はやけに明るいものでした。
    「なんだ……やけに楽しそうだな? いきなり、このような姿になって、少しは――」
    「何を言うておる、お主。お主も妾たちがなったポケモンのことは知っておろう?」
    「キュウコン、だが、それがなんだ?」
    「まったく、勉強不足じゃのう。キュウコンは千年生きる獣と書物には書かれておったんじゃぞ?」
    「せん、ねん……?」
     その数に赤色に生まれ変わった目を丸くしている王様の顔に妃様の顔が近づきます。
    「なんじゃ、嬉しくないのか? あと、千年もお主とこの世界で一緒にいれるのじゃぞ? もちっと、喜ばんかい」
     日に照らされた白銀の妃様の笑顔と言葉に王様はやれやれといった顔つきになりました。
    「まったく……お前さんのその前向きさにはいつも敵わん」
     そう言いながらも、王様の顔は悪くないといったような感じでした。
    「さて、善は急げと言うしのう! 折角じゃから、色々なところに旅してみたいのう♪」
    「やれやれ……だが、これでまたお前と一緒に――」
    「この世界で愛しあえるのう」
     不意打ちの白銀の口づけ。
    「それは、我に言わせてくれ!」
     金色のキュウコンと白銀のキュウコンは走り出しました。



     愛しあって百年。
     食べたことのない赤いトゲトゲの木の実を食べて顔を真っ赤にしたお主の顔を忘れぬ。

     愛しあって百年。
     海の中を平然と泳ぎまわるお前を見て、我のあごが外れそうになったことは鮮明に覚えておる。

     愛しあって百年。
     お互いに毛づくろいしあって感じた温もりは、いつまでも忘れない。

     愛しあって百年。
     満月に向かって吼えた(ほえた)お主の姿はかっこよかったぞい。

     愛しあって百年。
     お前の寝顔は何度見ても飽きることはなかった。

     愛しあって百年。
     人間だったときの頃のように、金と銀を重ねあう、熱くて、そして温かい夜を過ごした日もあった。

     愛しあって百年。
     仲違いをしたとき、
     お主が仲直りの証に、妾の大好きな花を持ってきてくれて……嬉しかったのう。

     愛しあって百年。
     お前の変わらぬ正義感の強さを我はいつまでも誇りに思う。

     愛しあって百年。
     世界の隅々まで金色と白銀の足跡を残してきた。


     更に愛しあって百年――。



     金色の王様と白銀の妃様はとある廃墟に入り込みました。
     ところどころ、ガレキの山がただずんでおり、足元に気をつけながら、奥にあるボロをまとった建物の中に入りました。
     建物の中は屋根が点々と抜けており、
     そこから入り込んでくる長細い光が奥に続く道を照らしていました。
     そのまま続いていくと、やがて一つの広い空間に出ました。
     金色のふさがついた赤いじゅうたんがボロをまといながら王様と妃様を出向かいます。
    「……もう、こんなになってしまったとはのう、あやつらは一体、何をしてきたのだろうかのう」
    「噂には聞いていたが、これが、この国の顛末(てんまつ)といったところか……」
     王様と妃様は呟きながら、辺りを懐かしむように見渡しました。
     王様と妃様が入り込んだ廃墟は、昔、王様と妃様が住んでいた、あの小さな王国でした。
     王様と妃様が王国を出たときから、王位継承を巡る内乱が激しくなり、
     なんとかその件が片付いた矢先、今度は異民族との戦が連続的に起こり、最終的に、この王国は滅びてしまったといわれてます。
     立派な二つの王座は跡形もなく消え、
     悠然と立っていた白いオブジェたちの体は砕けても、なんとか立っているといった感じでありました。
     王様と妃様は数段の階段を登り、影をなくした、二つの王座があった場所につくと、その場で座りました。
    「あっという間に千年か……」
    「不思議よのう、数を数えていたわけではないのにな」
    「体の方が覚えていたのかもしれんな」
    「むふ、そうじゃな」
     姿がキュウコンに変わって早千年。
     王様と妃様に本当の寿命が迫っていました。
    「さて……今度こそ、我らは死んでしまうのだな……」
    「お主は、怖いかのう?」
    「お前の方こそどうなんだ?」
    「まぁ、怖い部分も、もちろんあるのじゃが……」
     妃様は王様の頬に一つ、白銀の口づけをしました。
    「お主とは千年以上も愛しあったのじゃ。そして、死んだ後も、ずっと愛していくんじゃ。じゃから大丈夫じゃ」
    「でも…………」
    「でももへちまもないわ。妾とお主のラブラブに神様も手を触れることはできんじゃろう。触れたら大やけどしてしまうからのう」
     こんなときまで、前向きにそんなことを言える妃様に王様はやれやれという顔になりました。
     しかし、その顔は――。
    「まったく、千年の内にお前の前向きさは、無敵の武器になってしまったな」
    「まぁ、お主がいてくれなければ、真の無敵とは言えんがのう」
    「どの顔でそういう?」
    「ん? 妾の可愛い顔に決まってあろう」
     妃様の優しい微笑みにつられて、王様も微笑みました。
     思い返せば、求婚の告白も妃様に先を越されており、
     そのおてんばで、だけどその背中はどんな者をも奮い立たせる妃様が王様は大好きでした。
     しかし、このまま、妃様に先を越されては男として恥かもしれないと思った王様は妃様に一つ提案します。
    「なぁ、お前、尻尾に大きな桃色のリボンを持っていただろう? それを出してくれぬか?」
     妃様は言われたとおり、九つの尾の中から大きな桃色のリボンを取り出しました。
     昔、旅の途中、人助けをしたときにもらったモノです。
     「どうするつもりなのじゃ?」
     「こうするんだよ」
     王様はそう言うと、その大きな桃色のリボンを自分の体と妃様の体に巻きつけていきます。
     胴体はもちろんのこと、尻尾までも絡めて、簡単には外せない、複雑な結びをしました。
     王様と妃様の体は密着状態になりました。
    「お主も、考えるのう」
    「やはり、心配だからな……だが、こうすれば離れぬことはないだろう」
    「むふ、相変わらずな心配性よのう、お主は……じゃが」
     妃様が王様の鼻を一舐めしました。
    「お主の、そういうところも、妾は大好きじゃ」
    「我は、お前のその強気なところも大好きだ」
     王様が妃様の鼻を一舐めし、
     妃様がなにやら思いついた顔を浮かべます。

    「なぁ、主よ。死というものに見せ付けてやらんか?」
    「なにをだ?」
    「決して離れぬ、妾とお主の愛を」




     白銀が一つ、金色に口づけを。
     金色が一つ、白銀に口づけを。

     そこから鳴り続く口づけの音色は、
     王様と妃様が描いてきた一つの物語の終焉。

     そこから鳴り続く口づけの音色は、
     王様と妃様がこれから描き始める一つの物語の序章。

     決して変わらぬ、とこしえの愛。





    【書いてみました】

     一応、この漢字は、と思ったものの読み方を。

     妾:わらわ
     終焉:しゅうえん

     遅いよ!! と言われそうですが、気が付けばイラストからもらった刺激が手を勝手に動かしていました。
     最初、えるさんのイラストを見て、「タグもついているし書いてみたい!」と思っていたのですが、中々、思いつかず。
     しかし、改めて、えるさんのイラストを見て、「あれ……そういえば、ここって、どこかのお城とかかな……?」と思った途端、
     今回の物語を思いつきました。
     えるさんのタイトルやイラストにちゃんと沿っているかなぁ……と内心ドキドキしながら、
     書いてみましたが、いかがだったでしょうか?(汗)

     改めて、遅いよって感じでごめんなさい。

     そして、えるさん、素敵なイラストと『書いてもいいのよ』おいしくいただきました。

     ありがとうございました!


     追記:2011年8月12日のチャットにて、
        イケズキさんからのラブコールを受けまして、再投稿させてもらいました。
        イケズキさん、ラブコールありがとうございます!


     
     それでは失礼しました!


    【狐の恋で、もふもふ♪】


      [No.1688] チョコケーキ戦争 投稿者:銀波オルカ   投稿日:2011/08/04(Thu) 23:14:11     39clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
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     ピンポーーン
     
     がちゃ。
    「はいー?」
    「お届けものですーー」


     玄関で交わされる、ごくごく日常的な会話。
     お届けものの受け取り主は、ダダダダダッと箱を抱えてリビングのテーブルまでひとっ走り。
     そぉっと、さっきの足取りとは打って変わってやさしくその物体をテーブルに置く。

    「ついにきたきたきたきたあぁ!!!」

     
     オルカの奇声が聞こえて、まあいつもの事だと思いながらシェノンは向かってみる。
     彼の主が小説や絵のしょうもないアイデアをひらめき、よく奇声を上げるところを見ることがあるのだ。
     見てみると、テーブルに置いた何か……紙箱を見つめて、にやけているオルカの姿があった。

    「オルカ? ……なんだそりゃ」
    「チョコケーキ♪」
    「すっげえいいにおいしてんなあ」
    「そりゃそうでしょ。なんたって予約して、来るのに半年かかるんだよ? 誰が人に渡すかと」
    (なるほど、情報通りだ……)

     オルカには分からなかったが、シェノンは口の端に微かな笑みを浮かべていた。

    「話は聞いたなおまえら!!!」
    「了解っ!」
    「!?」

    物陰から、待ち構えていたナイトとカゲマルが飛び出し、オルカを三匹で囲む。

    「オルカからそのチョコケーキをうばうんだーーー!!!」
    「な、なんでそんなに準備万端なのっ?」
     
     慌てふためくオルカ。

    「昨日、チャットできとらさんと話してるのを一匹見てたやつがいてな。」
    「影に隠れて見てたんだ。すっげーにやけてたよなあオルカ?そんなに評判なのかそのケーキ?」

     そう言ったのはナイトだった。

    「そのケーキは俺たちで三等分だ!! かかれぇ!」

     シェノンの掛け声とともに、二匹が飛び出し……なんと表現しようか、歴史ドラマの『盗賊に襲われる旅人(?)』のような雰囲気である。三匹がそれぞれ武者と騎士と忍者モチーフなので、いささか変な図だ。



    「ええい!!ヤケクソだあ『絶対零度』!!」

     シェノンには あたらなかった! ▼  ナイトには あたらなかった! ▼  カゲマルには あたらなかった! ▼

    「命中率どうかしてるだろおお!!」

     叫ぶオルカに、カゲマルが持ち前のスピードで接近し、抱えられていた箱をさっと奪う。

    「いただいたでござる!」
    「よし、目的達成! トドメを刺して逃げるぞ!」

     シェノンとナイトがオルカに向き直る。

    「食らえっ! ダブルメガホーン!!」

     見事な連携攻撃。左右からオルカは挟み打ちにされ、そのまま二匹の容赦ないトドメを刺された。大丈夫だろうか、と心配したそこのアナタ。結論から言うと、大丈夫だ。オルカはとてつもない、もしかしたらポケモン以上かも知れない生命力を持っている。それに、オルカがメガホーンを食らったりするのは、ここでは日常茶飯事なのだ。床は血の池状態だが、いつの間にか復活するだろう。

    「よし、復活する前にさっさと食べるか!」

     シェノンが箱の取っ手に器用に手を掛ける。
     ……と、その瞬間飛んできたのは、朱色の『気合球』と青白い『波動弾』。すさまじい爆音と共に、辺り一面に粉塵が舞い上がった。

    「リーダー!」
    「な、何事でござる!?」

     しかし、驚く二匹をよそに、粉塵の中から姿を現したシェノンはあわててもいない。いつの間に抜いたのか、アシガタナでさっきの攻撃をガードしていた。むしろ、予想通り、というような表情。
     舞い上がった粉塵の向こうから現れたのは、二匹のコジョンド。そして、奥にはウルガモスが六枚の羽を赤く輝かせ、今まさに『熱風』を繰り出そうとしていた。

    「お前ら、俺の後ろに隠れろ!!」

     彼が叫び、二匹が間一髪で隠れると同時に、熱風が吹いてくる。虫タイプの二匹が食らったらひとたまりもない威力のその風を、シェノンはすばやく抜いたもう一本のアシガタナを交差させ、真正面から受け止める。その表情には、明らかな余裕が見えていた。受け止めきり、口を開く。

    「ティラとレッセにナスカか。お前らも、これが目当てなんだろ?」
    「言うまでも無く、ね」

     二匹のコジョンドのうち、一匹がそう答える。声色は紛れも無くレッセのものだった。ティラたちゾロアークは幻影を操る種族。変装などたいしたことではない。人に化けて、買い物をする事もあるのだ。さらに、ティラは変声術を使う事ができ、鳴き声までそっくりに操る。これがかなり厄介なのを、旅を共にしたシェノンはよく理解していた。

    「そのケーキは私達がいただくわ」

     同じ仕草で、同じセリフを発する二匹。普段のバトルから鍛えられた二匹のコンビネージョンは半端ではない。決定的な違いが一つ、と言えば、それは二匹の技の種類。
    だが、それを見破るには猛スピードで動き回る二匹を目で追えるほどの動体視力が必要であり、しかも、彼女らが最も得意とするのは、『とんぼ返り』を使った入れ替わり戦法。これを見破る事のできる者は、かなり限られる。

    「いつもみたいに、決めるか?」

     シェノンの赤い目に、燃える闘志が揺らぐ。普段はなかなか見る事の無い、リーダーの貫禄ポケモンとしての威圧感がにじみ出る。それを見て、戦闘体勢をとる周りの五匹。
     ピン、と張られた緊張感がつかの間、音の無い空間を造りだした……。というか、ケーキ一つでこんな事態になるとは、オルカも予想していなかっただろう。いろいろな意味で凄いポケモンたちだ。七等分にする、という選択肢は無い。単に喧嘩好き、というのが一番の原因だろう。

    (久しいな、この感覚……。最近動いてなかったからな……)

     六匹が目を閉じ――ほぼ同時にカッと見開く。

    「いざ!三対三のケーキ争奪戦を始めるとするぞ!」

     ガキンッ。
     次の瞬間、レッセの『燕返し』がシェノンの目にも止まらぬ速さで振り上げたアシガタナに防御された。それでも傷一つ付かないアシガタナ。

    「おまえは、本物の方だな?」

     ニヤリ、とレッセ(本物)は笑みを浮かべる。そして、腕の体毛をムチのように使い、ものすごいスピードで連続の『燕返し』を繰り出し始める。
     それに合わせてアシガタナを操り、攻撃を受け流すシェノン。風のひゅうひゅうと鳴る音と、攻撃を受け止めるキン、ギャンという金属音のような音が響き始めた。そしてそのわきでは……
     ナイトとカゲマルが、ナスカとレッセの姿をしたティラに苦戦していた。
     彼らは虫タイプ、シュバルゴのナイトに至っては鋼も入っているため、もともと相性的に分が悪い。カゲマルが素早く動く事で、ナスカの得意とする『熱風』が出されるのは抑えていたが、ティラがその動きを妨害する。そのティラが動きを止めたところを、ナイトが『シザークロス』で狙う。お互いに決定打を打つことのできない、ぎりぎりの攻防だった。
     
    「熱風は打たせないでござる!」
    「相変わらず素早いわね、カゲマル」

     ナスカの羽は、さっきからずっと光り続けている。『熱風』は、いつでも繰り出すことが可能なのだ。二匹が同時に技の射程範囲に入ってしまえば、なすすべも無く焼き尽くされるだろう。
     ナイトとカゲマルは、お互いの位置がかぶらないよう常に考えて動いていた。
     突然、ティラがカゲマルの目の前に飛び出す。

    「ナイトバーストォ!!」
      
     ティラを中心にして、暗黒の衝撃波が発せられた。目の前にいたカゲマルはこの距離では完全に回避する事ができず、衝撃で後ろに吹き飛ばされる。

    「ぐあっ!?し、しまったでござるっ!」
    「カゲマル!」

     ナイトが素早く後ろに回りこみ、飛ばされたカゲマルの身体を空中で受け止め、かばった。しかし、二匹の身体がもろに重なり、

    「隙あり、ね」

     二匹同時に『熱風』の射程範囲に入った。

    「畜生っ!」
    「ここまででござるか……」

     覚悟を決めた二匹に向かって吹いてくる、灼熱の風。避けることもできない。
     しかし、二匹に命中する寸前、横からアシガタナが一本飛んで来、『熱風』を防いだ。シェノンが片方のアシガタナを投げて、床に突き刺したのだった。
     
     しつこいようだが、これは『ケーキ争奪戦』である。そして、戦っているのは、オルカの家のリビングなのである。当然床は傷だらけ。辺りは散々な状態である。そしていつの間にか生き返ったオルカは、その光景を眺めてため息をつくしかなかった。当然ながら止められる気なんて微塵もない。
     
     

     その騒ぎを見ていたのは、オルカだけではない。過去累計一番出番の少なかったドレディア、サワンと、くだらない争いには首を突っ込まない性格のペンドラー、ファルも戦争を見ていた。こんな喧嘩はよくある事、の一言で済ませることができるこの二匹。出番をもらえないのはその性格のせいかもしれない……。

    「あらら、刀が一本になっちゃったわね、お侍さん」
    「まだ一本残ってる、と言った方がいいんじゃないか?」

     そんな会話をしていても、二匹の攻撃はお互い止むことはない。『燕返し』は相手に必ず当たる攻撃なので、ガードしていなければあっという間に倒されてしまう。アシガタナが一本になったシェノンは、さっきと比べて少し劣勢にあった。風の音が止むことはない。しかし、受け止める金属音も、途絶えることは無かった。

    「リーダー、流石ですね。一本になっても受け止め続けるなんて」

     まるでテレビでバトルを観戦でもしているかのような、サワンの感想。

    「いい加減、止めないか? サワン」

     ファルはもはや呆れながらその一連の戦いを見ていた。
     少し目を逸らすと、シュバルゴとアギルダー、そしてウルガモスの脇で動き回る、変身も解けたゾロアークが見える。
     そのゾロアークはシュバルゴに接近するやいなや、

    「今日の夕飯はシチューよ〜!」
    「そんな挑発に乗るかよっ」

     どこかの名探偵のアニメのセリフを思わせる……。ちなみにサワンの声。
     本物の彼女はそれを見て、はぁとため息を吐いた。

    「今晩シチュー作ってやれば?」

     苦笑いしながら、ファルが言う。

    「止めないといけないみたいですね……」
     
     サワンはうなずくと、テーブルの上に置きっぱなしのケーキを持ってきた。
     すぐそこでは、戦争が展開しているのだが気にも止めないサワン。よほど慣れていることが仕草から分かる。そして、台所へ……。

     そして、サワンは六等分されたケーキを皿の上に載せ、戻ってきた。
     時計の針は午後三時。

    「おやつの時間です〜」

     ピタリと、戦争が止まる。
     
     シェノンは、しばらくサワンを見ていたが、やがて振り返ると率直に、食べるか? と五匹に聞いた。

    「はーいっ」
    「もちろんでござる」
    「腹減ったー」
    「賛成ね」
    「食べましょ食べましょ」

     緩む空気に、微笑むサワン。ファルも、安堵の表情を浮かべていた。

    「それじゃ、食べるか!」

    「いただきまーす!」



     いつもの事だったなー、とオルカは思う。 
     いつも通り。一回喧嘩して、誰か(大体の場合ファルかサワン)が、止める。そして一件落着。そんなこんなで、このメンバーは成り立ってきたのだ。
     ただ……おいしそうに食べる六匹を見ていると、やっぱり……。

    (……頼んだ私の分は……?)

     虚しく、アイスを舐めた。やっぱりチョコケーキは惜しい。命と比べたらまだ軽い方だったとは思うが。
     独り占めしようとしてたとはいえ、容赦無い。

    (今度、ポフィンとかポロックでも作ってみようかな)

     
     ……きっと、一個足りなくなる。



    ――――――
     
     やっとこさ完成しました、きとらさんからの無茶振り、『ケーキ争奪戦』です。
     ……次回はパーティメンバー以外のを書きますよ。そろそろまともなのも書かなければですので。
     ちなみにどうでもいいですが、ティラの「シチュー」のセリフの元ネタが分かった方は挙手を。
     あ、誤字脱字報告は見つけたら是非お願いします!

    【書いてもいいのよ】 【描いてもいいのよ】 【批評してもいいのよ】


      [No.1637] トワイライト 投稿者:紀成   投稿日:2011/07/25(Mon) 21:12:34     72clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
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    −●さんが入室しました−
    ●:こんばんわー
    △:こんばんわー●さん 遅かったですね
    ●:すみません、ちょっと電話してて
    △:電話?
    ●:ええ。嘘にしてはちょっとマジっぽく話すもんだから
    △:?
    −燐さんが入室しました−
    ●:ばんわー
    △:こんばんわー燐さん
    燐:気になったから入ってみました 何の話ですか?
    ●:あれ ご存知ありませんかー 最近じゃ見たって人も多いんですけどね
    燐:??
    ●:友達がねー

    黄昏堂を見たって言うんですよー


    一人の少女が、泣きながら道を歩いている。目元は真っ赤に腫れ、また頬も腫れていることからかなり長い時間泣いているようだ。
    『二学期にはね、学校行けそうなんだ』
    『そう、良かったね』
    そう言って笑った後で、彼の母親から聞かされた、真実。
    『あの子…あと二ヶ月ちょっとしか生きられないのよ』
    寒気がして、吐きそうになった。どうして。どうして。あんなに元気だったじゃない。またポケモンバトルできるって喜んでたじゃない…
    そこで、少女はふと立ち止まった。嗚咽がスッと止まる。彼女の見る先に、一つの建物があった。
    「…」
    綺麗なレンガ造りの建物だった。煙突がついてて、煙を吐き出している。まだ夏なのに…
    違和感がある建物だが、不思議と目を逸らすことが出来なかった。夕方の光が建物を照らして、とても素敵な雰囲気に見える。まるでおとぎ話の世界のようだ。
    誘われていたのかどうかは、分からない。だが少女は誘われるかのように建物に近づいた。木で造られたドアには、こんな立て札が。

    『黄昏堂 お悩みのある人はお入りください お力になれると思います』

    変なキャッチコピーだ。まるで悪徳商法みたい。それでもボロボロになった彼女の心は、自然とドアノブに手をかけるように命令していた―

    店内は英国を思わせる造りになっていた。絨毯が敷かれ、可愛らしい小花模様の壁紙が張られている。壁にはガラスに入れられた商品が展示されている。
    サイドに置いてある白木の机には、人形やポケドールが所狭しと並べられている。かなり精巧な作りだ。まるで生きているかのように。
    「素敵…」
    「いらっしゃい」
    ハッとして前を見た。いつの間にか、一人の女性が小さなソファに座っている。黒くて長い髪、蝋のような白い肌。そしてスラリとした長身。細い指が、煙管を巧みに操る。
    「あの」
    「分かってるさ。アンタの悩みは。いい子じゃないか。不治の病にかかったボーイフレンドを助けたいなんて」
    「なっ…」
    顔が真っ赤になっていくのが、自分でも分かった。
    「彼はボーイフレンドじゃありません!只の幼馴染です!」
    「はいはい。でも治してやりたいことに変わりは無いんだろ?」
    図星だった。だがそれでも良かった。本当のことだから。また一緒にバトルをしたい。一緒にバトルサブウェイに挑戦したい。
    「さて、出す商品が間違わないように最初から詳しく話してくれないか?」
    「…はい」
    言われるがままに、私は話していた。

    彼と私は、幼稚園の頃からの幼馴染。いつもはしゃいでドジばかりする私に比べて、彼は先に考えて行動するタイプの人だった。小学校に入ってから、彼は成績優秀のいい子、私は万年ビリに近い駄目な子のレッテルを貼られるようになっていった。
    でもそんな私に彼は構わず接してくれた。勉強も教えてくれたし、十歳になってポケモン取り扱い免許を貰った時も色々教えてくれた。先生よりも分かりやすいくらいだった。
    おかげで成績も中の上くらいまでになって、皆喜んでくれてたんだけど…
    それは去年の春頃だった。中学入学式に彼が来ていなかった。家は近かったから、帰りに見に行ったんだけど誰もいなかった。隣の人に聞いたら、一週間前に救急車の音が聞こえて以来、戻って来たのはお母さんだけだって。
    不安になって病院に行ってみた。彼は特別病棟にいた。その時は面会できなかったけど、後で聞いたら一刻を争う容態だったんだって。
    やがてお母さんに聞いたら、突然倒れて入院することになったんだって。その時はあんまり大事とは思っていなかった。彼おろか、私も。
    だけど彼が学校に来ることは無かった。会いに行く度にやせ細っていくのが分かった。昨日は調子がいいから面会できたんだけど、お母さんから聞いた。
    彼、癌だったんだ。あやゆる手を尽くしたけど、病状は悪化するばかり。このままいけば、あと二ヶ月。何とかしてあげたい。出来るなら、私が代わりに苦しみを背負ってあげたい。
    でもどうにもならない。どうすればいいの…

    途中からまた泣いていた。彼女は煙を吐き出すと、いつの間にか用意していたテーブルをこっちに寄せた。そして側にあった革の椅子を私に促した。
    「座りな」
    私は座った。彼女が一冊の本を取り出す。古めかしい、アンティークみたい。
    「彼を助けたい。そのためなら自分が苦しんでも構わない。…その気持ちに、偽りは無いね?」
    「…はい」
    「分かった。ならチャンスをやろう」
    本を開いた。絵が動いている。ポケモンのようだ。古いタッチで分かり辛いけど、多分これは…シャワーズと、イーブイ二匹、それにポチエナだ。目の前にある川を渡ろうとしているようだ。
    「話だけなら聞いたことがあるかもしれないな。川渡りパズルだ。ここにある通り、シャワーズとイーブイの親子、そしてポチエナが川を渡ろうとしている。それで…」
    彼女が言うには、こんな内容だった。
    『ポチエナとイーブイは、自力じゃ川を渡れない。そこでシャワーズが、口に咥えて運ぶことにした。ただし一度に運べるのは一匹のみ。しかもシャワーズが一緒じゃないと、ポチエナはイーブイと喧嘩してしまう。
    さて、無事に渡り切るにはどうすればよいか?』
    私は頭を抱えた。友達にパズル好きがいるけど、こういうのは見たことが無い。悩んでいると、彼女が思い出したように言った。
    「あ、そうそう。日没までに解けなきゃりゃ、商品はやらないからな」
    「!!」
    落ち着け。落ち着くんだ私。えっと、多分ポチエナを最初に…

    二時間後。午後五時五十二分。私は彼女に声をかけた。
    「解けました」
    「ほう」
    私は解説した。
    「まず最初に、シャワーズがポチエナを向こう岸に連れて行く。そして何も咥えずに戻って来る。次にイーブイ一匹を咥えて連れて行く。そしてポチエナを咥えて戻って来る。そしてまたイーブイを連れて行く。何も咥えずに戻って来る。そして最後にポチエナを連れて来れば、完成」
    彼女が笑った。見る者を不安にさせる笑みだ。ゾクリとする。
    「正解だ。じゃあ、それに見合った品を渡してやろうか」
    彼女が指を鳴らした。途端に、手の上に薬のような物が現れる。不思議な色合いだ。
    「ホウオウの羽を煎じて作った、フェニックス・ドラッグ。万病に効くと言われている」
    「これで、彼は元気になるの?」
    「ただしあくまでこれは薬。使っても、彼の気持ち次第では全く反対の結果を生み出すかもしれない」
    私は話を聞いていなかった。お辞儀をした後、走って店を出た。そう。彼女が不適に笑うのを見ずに…


    「キリ!良い物が手に入っ…て」
    病室のドアを勢いよく開けた私の目に映った物は、誰もいないベッドだった。カーテンが夜風に揺れている。白いシーツは全く乱れていない。
    「キリ?」
    「何」
    「うわっ」
    後ろに彼が立っていた。相変わらずの無愛想な顔だ。パジャマ姿も見慣れている。
    「こんな時間にどうしたの」
    「あ、あのね、さっき綺麗な物を見つけたから、見せてあげようと…」
    キリの顔は青白かった。ふらふらとベッドに座り込む。
    「どうしたの…」
    「知ってたんだろ。僕がもう永くないってこと」
    「え」
    キリの目が鋭くなっていた。今まで見たことがないくらい、鋭い目。
    「さっき屋上に行ったんだ。風に当たろうと思ってね。そうしたら僕の母さんとお医者様がいた。僕の話をしていたよ。もうあと二ヶ月ちょっとだって。なんて可哀想な子。
    …君は知っていたんだな!?知っていながら、知らないふりをしていた」
    「だって、キリを悲しませたくなかったから」
    「もう嫌なんだ!ずっと白の世界を見ているのも、ポケモンバトルができない生活も!僕のポケモンはもう僕のことを忘れかけている。たとえ回復したとしても、もう二度と僕はバトルが出来ないんだ」
    「そんな!」
    キリが睨んだ。
    「…もういい。出て行ってくれ。奇跡でも起きない限り、僕はもう」
    私はだんだん腹が立ってきた。そして気がついた時には―

    パン

    「…え」
    「何よ、このヘタレ!どうして諦めようとするの!?貴方を思って泣いてくれている人がいるのに!
    …貴方を思ってくれている人がいるのに」
    私の手から、薬を入れたビンが落ちた。パリン、という音と共に薬が消えていく。
    「奇跡だって、あるんだから!」

    私は走った。もう黄昏堂は閉まっているかもしれない。でも奇跡が起きたら―
    「そんなに慌てなくても、店は逃げないよ」
    後ろから彼女の声がした。側に一匹のゾロアークが立っている。まるで執事のように。
    「あのボーイフレンドの目を覚ます方法」
    「ええ」
    戻れない。もう戻ることが出来ない。

    「私を犠牲にして、彼の病気を無かったことにしてくれる?」


    ●:その友人が言うには、自分には六年生から中一までの記憶が全く無いって言うんですー
    △:へー キオクソウシツとかじゃなくて?
    ●:ちがいますよー でも時々、何か大切なことを忘れている気がするって
    燐:どんなでしょうね
    ●:で、今日の帰り道にコンクリで造られた建物を見つけて、今まで無かったから入ってみたら、すごく変な感じがしたっていうんです
    燐:デジャビュみたいな?
    △:何かロマンチックー
    ●:そしたら中にいたすっげー綺麗なお姉さんが、『待ってたよ』って
    燐:キターーーーー
    △:運命の出会いっすか
    ●:まだまだ そのお姉さんが一つの人形を差し出して、『もらってやってくれ』って腕に押し付けたんだそうです
    燐:人形!?
    ●:友人曰く、『何か気になるからもらっとく』って言ってそのまま持ち帰って部屋に置いてるそうです
    燐:うかつに女の子部屋に呼べませんねww
    ●:ですねー でも何か捨てたり出来ない感じだって言ってましたね あ ちょっと落ちます
    −●さんが退室しました−
    燐:おつかれです
    △:では私も
    −△さんが退室しました−
    燐:あらら 一人になっちゃった


    ソファに座って、マダム・トワイライトはパソコンを見つめていた。藍色の画面に、白い文字が映える。
    「人の口に戸は立てられず…か」
    「いいんじゃないか?広まれば広まるだけ、コレクションも増えるだろ」
    ゾロアークが紅茶を運んできた。オボンの実を使った、五味の紅茶だ。
    「それにしても、ちょっと残念だ。彼を人形にした方が雰囲気に合った気がする」
    「はいはい」
    ドアが開いた。マダム・トワイライトが立ち上がる。
    「いらっしゃい」


    黄昏時に現れる不思議な店、『黄昏堂』。
    貴方の知力、そして時には肉体と引き換えに、貴方の願いを叶えてくれる―

    ―――――――――――――――――
    以前チャットで音色さんに話した物。カクライさんでも大歓迎ですよ!
    ただしファントムと鉢合わせすることもあるかもしれないので、その点は。
    [来てもいいのよ]
    [実は着ぐるみ話の続編になるのよ]


      [No.1586] Re: 隔世遺伝 投稿者:イケズキ   投稿日:2011/07/11(Mon) 16:35:47     54clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
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    焦りまくる夫に対して、呑気な奥さんに笑いました
    ポケモン世界じゃ、覚えるはずのない技(もしくは特性)が浮気のバレるパターンNo.1に違いない!


    今回の彼ら夫婦はどうだったかわかりませんが(おい
    キトラさんのおかげで分かりました!
    メロスは隔世遺伝だったんですね!
    これで池月はの疑いは晴れました。あーよかった、よかったw

    【メロスも隔世遺伝だったのよ】


      [No.1535] 夏だから、 投稿者:音色   投稿日:2011/07/07(Thu) 23:56:37     59clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
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    夏だから、カキ氷でも食べようか。オニゴーリを呼んだ。溶けかけていた。
    夏だから、アイスでも食べようか。バイバニラ呼んだ。溶けかけてた。
    夏だから、みんなで涼もうか。チリ―ンを呼んだ。とても良い音色だった。



    ※100字


      [No.1484] レアポッポ 投稿者:音色   投稿日:2011/07/06(Wed) 23:53:44     50clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
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    ひょいと目を覚ましてみればどうも調子がおかしい。気分は悪くない。いつもの朝の目覚めのはずなのだが。
    自分の姿を見て納得した。ポケモンになっていた。お腹が減ったのでその辺のポッポを食べた。おいしかった。


    ※99字詐欺


      [No.1433] 神鳥! 投稿者:キトラ   《URL》   投稿日:2011/07/05(Tue) 20:47:55     38clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
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    とてもゴッドバード的な描写に思わず。それが空を飛ぶでも、鋼の翼でもカマイタチでもなく、本当にゴッドバード。
    初代ではピジョットに覚えさせて突っ込ませてたほど、かっこいい技。けれど自分が文章にすると、とてもじゃないものしかできないし。
    いいものを見ました。そして燃えました。

    【その才能よこs(】


      [No.1382] 春風に導かれ 投稿者:キトラ   投稿日:2011/07/03(Sun) 02:25:10     68clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
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     目を開けた。朝日が入って来ている。堅いソファの上。あちこちが痛い体を起こし、ユウキは軽くあくびをする。もう何日も研究室にこもりきり。風呂に入る余裕などなく、自分でも体臭が解る。べとつく髪をかきあげ、昨日から行なっている実験の観察にかかる。
     大学院。ポケモンのことを詳しく研究するために進学した。しかし学部生だった時の予想通り、時間がない。身分は学生だというのに、家に帰れない。今は就職活動もしなければいけない時期。だがユウキを救ってくれたのは昔のツテ。デボンコーポレーションという大きな会社にすでに決まっている。同じ研究室の同級生は彼をうらやましがり、裏ではコネをつかわないと入れないような小物とバカにしている。そして、その自分ではどうにもならない恨みを、ユウキ一人に実験を押し付けることで晴らしていた。
     教授も感知していない。あるのは、便利に動く院生のユウキ、というくらい。一流企業に就職が決まっていることを誇らしく思ってくれていることだけが幸い。そうして同級生と距離がどんどん出来ていてー


     実験が終わった。結果をメモしたレポートをメモリに移し替え、鞄に入れる。何日分かのゴミをまとめ、研究室にカギをかけると、やっと家路につく。
     昔はポケモンが好きだった。どんどん知識が増えて行くのが楽しかった。けれど今では、ポケモンの知識が増えていくごとに苦痛が伴ってくる。なぜこんな自分の生活を犠牲にしてもやらなければならないのか。就職活動という名目でなぜ代わりに実験を一人で請け負わないといけないのか。
     外に出ると、やわらかな春の風がユウキをなでる。もういつの間にか春一番が吹き、道路脇では小さな青い花が咲いている。もうすぐ桜の季節だ。昔から好きだった。次々と芽吹いてくる植物と、冬眠から覚めてくるポケモンたち。春を喜ぶように、いろんなものと出会えるから。ああ、少し寄り道していこうか、こんな春風の中、公園で寝ていくのも悪くない。道の途中にある河川敷の公園にユウキは立ち寄った。そして木陰のベンチに座ると、今までの疲れか、そのまま眠ってしまっていた。

     かさりと音がする。その音にユウキは目を開ける。そして目の前の人物は起こしちゃったね、と笑っていた。ユウキは寝ぼけているのかと目をこする。まぎれもなく本物だ。もう子供ではなく、大人の女の人。けれど面影だけは変わらない。子供の頃に一緒にホウエン地方を駆け回っていたハルカだった。
    「久しぶり! 元気してた?」
    「ハルカ!? ハルカだ!」
     思わぬ再開に、研究室での嫌な気分は吹き飛んでしまった。ハルカもユウキと会えたことが嬉しそう。そして実験がいいタイミングで終わったことに感謝する。
    「今、大学の近くで一人暮らししてんだ。散らかってるけど寄っていきなよ」
    「すごーい! ユウキって家事できなそうなのに」
    「ほっとけ」
     家までは後少し。それにしてもハルカはこの体臭なんとも思わないのか。ユウキは不安になってきた。こんなことならば、体を拭くくらいすればよかった。後悔しても遅い。玄関のカギを開けると、何日かぶりの自宅に入る。


     ハルカにお茶と適当なお菓子を出し、まず体を洗う。濡れてない風呂場が、どんどん湯気にそまっていく。久しぶりの水が伝わる感触は何とも言えず気持ちがいい。研究室にもシャワーくらいあればいいのだが、そんな施設はない。そもそも、研究室に泊まること事態が、学校側の許可が下りていないのだ。
     急いで着替え、今まできていたものは、全部洗濯機に放り込む。そしてバスタオルで髪を拭きながらハルカの前に出て行く。
    「はやいね。ちゃんと乾かさないと」
     座ってるユウキのバスタオルを取ると、その手で優しく頭を拭く。一緒にフエンタウンの温泉に行った時もこうしてもらっていた。そしてあの時は……
    「背伸びたね」
     ハルカも覚えてるのだろうか。まだ子供で、どうしていいか解らなかったあの感情。そして今、それが蘇ったようにユウキの心臓は鳴った。そのまま離ればなれになって、数年が経ったけれども。ハルカはバスタオルを取った。
    「はい、終わり」
     バスタオルをベランダにかけていた。そこまでしなくてもいいのに。戻ってきたハルカは気にするなとしかいわない。久しぶりに会って、ハルカもぎこちないような感じがあったのかもしれない。
    「ハルカ、ちょっといい?」
     手招きして自分の隣に引き寄せる。ハルカのいい香りが近づく。
    「どうしたの?」
     聞くまでもなかった。肩を抱き、懐に寄せる。慌てるハルカに、ユウキは冷静に言った。
    「ハルカ、覚えてる? 俺はあの時、ハルカが好きだった」
    「え、そ、そんな昔のこと……」
    「でも言えなかった。だから、今からでもいい。俺と……」
     ハルカは答えを言わなかった。そのかわり、ユウキの唇はやわらかいもので閉ざされる。長い歳月を超えた二人の想いが、そこにあった。ユウキの手に力が入る。ハルカを離さないように。
    「私も好きだよ、ユウキ」
     今度こそは間違いないように。気づかないフリをしないように。再び唇を重ねて、誓った。



     オダマキのやつ、彼女できたらしいぞ
     デボンだし、まじリア充だよな
     いいじゃねえか、あいつに全部任しておけばよ
     来たぞ、黙ってろ


     ユウキがホールに入る。今日は研究の発表の日。実験を代わりにやって、データをとって集計してやった同級生たちも発表する。自分の研究よりも時間がかかったやつもいた。ユウキは進行役。教授のお気に入りだから仕方ない。
    「それでは、研究発表を始めます。わたくしは司会、進行のオダマキ ユウキと申します。さて、発表してもらう前に、冊子をごらんください」
     聴衆が配られた冊子をめくる。何か訂正かと文字に釘付けだ。
    「この中に、いくつか間違ったものがあるのですが、それは各人で発表していただきます。各人が解れば、の話ですけど」
     人任せにしておいた分、隅々に目を通してるはずだ。そうでなければ、間違いを即座に訂正し、恥をかかせてやる。ユウキのただならぬ目つきに、同級生はうろたえた。まさかまじめなユウキが偽のデータを渡すわけはないとたかをくくっていたからだ。
    「では、順番通りに始めたいと思います」
     どこでユウキが訂正を入れるかなんて予想ができない。発表の順番が早く終われとみな願っていた。


     発表も終わり、テーブルや片付けをしている。担当教授からは、人のことまで解る素晴らしい院生だとユウキをほめたたえた。恥をかかされた院生たちは、気まずそうにしている。彼らをみて、なぜ院生で就職が決まらないかが少し解った気がした。そして自分がコネだけでなんとかなったわけでもないことに。
    「自分のことも自分で出来ないなんて、大人としてやっていけませんからね、俺はまじめにしますよ」
     思わずハルカに話した、学校での現状。それを聞いたハルカが泣き出してしまったのには驚いた。そして今の自分をやっと解ってくれる人に会えたのと、つられたのでユウキも泣き出す。涙が止まらないのに、ハルカを泣かせてしまったことを悔やんだ。二度と泣かせないよう、この現状を変えてやる。
     ユウキの決意は、ただならぬものだった。時にはデータをかえ、計算を一つ間違ってやったり、学部生との交流の際には、あちらの方が詳しいと自分に来ないようにしたり。それを面倒見のいい相談役だと思っていたのだから。今まで人にばかりやらせていた罰だと、心の中で思った。



     それから1年が過ぎた。卒業式の日で就職が決まっていたのは10人中4人。他にもいたのだけれど、あの発表の事件から学校をやめてしまったのが何人かいて、卒業する頃にはここまで減った。
    「じゃあ、連絡するから」
     就職してから住むところも決めていた。すでに移り住み、ユウキは家で待ってくれるハルカに伝える。わかったとハルカは言った。
    「研究室だもんね、最後の集まり?」
    「最後じゃないだろうけど、なんとか解ってくれた貴重なやつらだよ」
     あれから改心してまじめにやるようになった。そのおかげで、ユウキは何日も家に帰らないことなどない。毎日布団で寝て、ご飯も食べて。こんな当たり前のことが出来なかったのが不思議なくらい。
     ユウキは家を出る。式典と、かつての仲間に会うために。そして一つ、小さな箱を持って。見送ってくれるハルカに手を振った。
    「ハルカ!」
    「どうしたの!?」
    「ありがとう!」
     大学院の生活を変えてくれた人。愛しい人。愛すべき人。気づかなかったなんてもう言いたく無い。大切にしよう、これからも。ずっと。


     
     卒業式は学部生も院生も一緒だった。まだ若い学部生のノリというのが懐かしい。そんなに年をとったわけじゃないけれど、傍目でみるととても若いのだ。サークルでは胴上げしたり、騒いだり。昔はああだったなと、卒業証書を手に急ぐ。研究室のやつらはもう二度と会わないかもしれない。
    「オダマキ、これからどこか行かないか?」
     研究室の同級生が集まっていた。最後かもしれないけれど、ユウキは断る。問いただそうとする彼らより先に、ユウキは口を開く。
    「待ってるやつがいるんだよ」
     後ろからはリア充リア充とはやし立てる声がする。それは陰湿な言い方ではなく、むしろ祝福に近い言葉。ユウキは渡すものを確認すると、約束の場所へと行く。


     春の冷たい風が吹く。けれど植物は黄緑色の新芽を出し始めていた。ホウエンの田舎町、ミシロタウン。ユウキの実家がここにある。卒業式のこの日、実家で騒ごうということになっていた。もちろん、ハルカも一緒に。
    「卒業おめでとう。オダマキ博士Jr.だね」
     ハルカはそう言って大きな花束をくれた。父親はこれが世代交代というものか、と少し寂しそうだった。そんな父親を吹き飛ばすように、パーティは始まる。
    「父さん、母さん」
     乾杯の前に、ユウキは改まって止めた。どうした、と両親はユウキを見る。
    「俺が今日ここにハルカを呼んだのは、もう決めたんだ。結婚するって」
     ハルカは聞いてないという顔をしている。それもそのはず。渡すはずのものは、まだユウキの手の中。驚く両親を前に、ユウキはそれを渡す。銀色の婚約指輪。ハルカが寝てる間にサイズを計ったり、それはそれは意外なところで努力をして手に入れたもの。
    「ありがとう、ユウキ」
     ハルカの左手の薬指にぴったりとはまる。どんな美しい宝石よりも輝いて見えた。


    ーーーーーーーーーー
    チャットでの恋愛もののことで、書き始めたら予定と違うものができあがりましたすみません。
    予定のものは全く進んでおりません
    ので、忘れてないよという意味もこめて。

    【すきにしてください】【このリア充め】【ホウエン組ばかりうんざり?いいじゃねえか愛してる】


      [No.1331] Re: 君の長さは地下百キロ■感想です■ 投稿者:スウ   投稿日:2011/06/16(Thu) 23:32:42     48clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
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    はじめまして。想像力が刺激されてめちゃくちゃ面白いです。ダグトリオのことでこんなに考えたことは今までありませんでしたね。

    >「ハイスピードカメラで映しても、爪らしきもの影も形も見えない。テッカニンも真っ青のスピードだ」

    この箇所が一番傑作でした。
    こいつらのきりさくには、なにか、スピード以外の要因でもあるのでしょうか……?


      [No.1280] あちらの世界にありそうな物 投稿者:紀成   投稿日:2011/06/04(Sat) 17:44:29     42clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
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    まずはカフェ、ドリンク

    ・レシラム

    ご存知GEK1994でいうミルク。アイスミルクは『キュレムレシラム』ミルクコーヒーは『レシラムゼクロム』になる。ジョウトから産地直送のミルタンクのミルクらしい。

    ・ゼクロム

    GEK1994のブレンドコーヒー。苦いような酸っぱいようなの絶妙な味で人気。

    ・キュレム

    冷やすことを言う。関係ないけど時々名前が長すぎて注文しにくいというクレームがくる。

    ・サンダース

    ジンジャーエールのこと。一気に飲むと大変なことになる。

    ・シャワーズ

    サイダーのこと。迷いの森にある新鮮な水を使っているとかいないとか。

    ・イーブイ

    ココアのこと。カップの中心に巻かれたクリームが特徴。

    ・フリージオ氷

    そのままフリージオの形の氷。本人の前で噛み砕いてはいけない。

    他にもあるかもね


    食品1

    ・ダルマッカとヒヒダルマのパスタ

    マトマの実を使った激辛パスタ。ダイエットにいいということで、女性に人気。

    ・ノクタスサンド

    とにかくそれらしい物を…と考えた結果。緑色の木の実とオリーブを挟んである。

    ・ピカチュウのオムレツ

    そのまんま。目はオリーブ、ほっぺはケチャップ。中身を変えればオムライスになる。

    ・チュリネのサラダ

    苦い。とにかく苦い。だが体にいい。苦いのが好きなポケモン向け。

    ・サブウェイサンド

    裏メニュー。知る人ぞ知る商品。サブウェイマスターの噂を聞いたユエが試しに作ってみた。
    白はクリームチーズ、黒はブリーの実のジャム。

    まだあるけど忘れた(

    おやつ

    ・三猿棒アイス

    それぞれ抹茶、アセロラ、サイダー。音色さんすんません

    ・ランクルスゼリー

    夏季限定。ライムのゼリーとサイダーと中にグミとか。作っていただいたことがある。

    ・ビクティニチーズケーキ

    ネタをいただいた。注文する時に言えば+百円でアップルチーズケーキにしてくれる。

    ・サクラビス餅

    俗に言う桜餅。春季限定。ヒレ部分は紫の小花の砂糖漬け。長い。

    ・クッキー色々

    簡単な形の物なら大体ある。小さいポケモンとか。

    ・キャンディー類

    アーケオス、クリムガン、ミロカロスなど、カラフルなポケモンをモチーフにした棒キャンディー。
    色々増える予定。

    ・ユキカブリカキ氷

    宇治金時。今年出す予定の夏季限定商品。間違っても氷を服に入れてはいけない。

    ・ペンドラーパイ

    ベリー系のパイ。間違っても人に台ごと投げてはいけない。


    グッズとか

    ・レシラム・ゼクロムカップ

    白と黒のカップ。持ち手はそれぞれの羽の形になっている。飲み干すと底に『もえるーわ』『ばりばりだー』とプリントされている。

    ・キュレムタンブラー

    お冷とか出る時使う。『ただのタンブラーじゃん』と言ってはいけない。底に薄く『ひゅららら』とプリントされているが、気付く人があまりいないことが悲しい。

    ・ディアルガ・パルキアコースター

    ミドリがデザインしてくれた。彼らの胸部が元になっている。ひっくり返すと裏に『ぐぎゅぐばあっ』『ぱるぱるぅ』とプリントされている。
    彼女や彼氏と来る時にひっくり返してはならない。吹くから。

    ・製氷皿

    フリージオ氷を作るために必要不可欠。オーダーメイドのため失くすとユエにこれ以上無いってくらい怒られる。


    ネタグッズ

    ・シザリガー鋏

    ユエがエプロンのポケットに入れている。はっきり言って使いにくい。

    ・ジャローダボールペン

    ミドリ愛用。尻尾がノック部分になっている。本人曰く、『デザインはいいけど使いづらい』

    ・マメパトマウスパッド

    レイナさんが使っている。ハート部分は本物のマメパトの毛を使っているとかいないとか。もふもふ。

    ・クリムガンジャージ

    ミスミがよく着ている。色が色なので汚れが目立たなくていい。

    ・シェイミプランター

    マスターの部屋の窓際にある。ランドverとスカイverがある。


    もっとありそうですね!

    [書いてもいいのよ]
    [描いてもいいのよ]


      [No.1228] 全てが君の力になる 投稿者:でりでり   《URL》   投稿日:2011/05/25(Wed) 18:24:39     70clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
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    「ウソつきゲーチスめ。皆をたぶらかそうと必死に弁舌を振るっておる」
     僕の隣でこのイッシュ地方の頂点に立つポケモントレーナー、チャンピオンのアデクさんはそう毒づいた。
     僕たちの目の前では下っ端を従えたゲーチスがお得意の演説を披露しているところだ。
    「そうなのです!」
     ゲーチスはわざとらしく両手を横に広げ、民衆の注目を一挙に集める。
    「我らが王、N様は、伝説のポケモンと力を合わせ! 新しい理想の国を創ろうとなさっています! これこそイッシュに伝わる英雄の建国伝説の再現!」
     強い語調でそう言い切ると、興味本意で演説を聞きに来ていた街の人たちも驚きを隠せないようで、各々思ったことを口に出している。
    「え、英雄だって?」
    「ドラゴン!? そんなことが……」
    「伝説! す、すげっー!」
     そんな反応をゲーチスは見渡すと、体を九十度捻らせて二歩進む。アスファルトに鳴り響くゲーチスの靴の音は、硬いものを打ち付けるような、やけに大きい音がする。
    「ポケモンは人間とは異なり、未知の可能性を秘めた生き物なのです」
     演説の続きが始まれば、再び辺りが静まり、ゲーチスの声が計画的に並んだビル街に響き渡る。
     ほどなくしてまたゲーチスは体を捻らせ左に四歩歩く。この響く靴の音も、きっと注目を惹かせるための演出なのだろう。
    「ポケモンは我々が学ぶべきところを数多く持つ存在なのです」
     話の抑揚、強弱に合わせ、ゲーチスが歩く靴音の強さも上下する。その様相はまるで舞台の上で行われるショーだ。
    「その素晴らしさを認め、我々の支配から解放すべき存在なのです!」
     そこまで言って、ゲーチスは奇妙かつ大きな法衣から左手を出して突き上げる。二メートル近くもあるこの大男のその挙動は、見るものをすくませる威力がある。知り得ている。何をすれば人はどういう感情を取るかを。
    「か、解放だと?」
    「ポケモンを……?」
     ポケモンたちと共に長く暮らしていたはずの大人たちが、可哀想なくらいにも動揺している。僕だって何も知らなければ彼らと同じようなことになっていたかもしれない。
    「我々プラズマ団とともに新しい国を! ポケモンも人も皆が自由になれる新しい国を創るため、皆さんポケモンを解き放ってください。というところでワタクシ、ゲーチスの話を終わらせていただきます。ご清聴感謝致します」
     続けて街の人たちの不安を煽るだけ煽ると、ゲーチスは下っ端を引き連れて街の向こうに消えていった。
     残された聴衆は皆がみな、今の演説に戸惑っている。
    「そうか、わしらは……ポケモンを苦しめていたのか……」
    「うぐぐ……。プラズマ団の言う通り、ポケモンを解き放とうか……」
    「……そんなぁ。ポケモンがいないとあたし、寂しくてダメになっちゃう!」
     悲鳴に近い声を聞くたび、胸が苦しくなる。悲しそうな顔を見るたび、心が痛くなる。
     僕がそう思うくらいなんだ。隣にいるアデクさんもきっと同じことを思っているだろう。
     あいつらの言っていることは嘘っぱちだ! そう言いたかった。ただ、僕みたいな子供がそう確証ないことを言ったところで、大人の心さえ揺るがしてしまったゲーチスの演説に勝ることなど叶わない。
     人々が悲しげに普段の営みに戻っていく中、僕はただ拳を握りしめるしかなかった。
    「なんなのよう! 今のお話おかしーじゃん!」
     聴衆が立ち去った後、聞き覚えのある幼い声が耳に入る。声の方に目をやれば、そこには白髪の老人とその隣に立つアイリスがいた。彼女はヒウンシティで幼馴染みのベルのボディーガードをやっていたんだっけ。
     僕たちに気付かない老人は、アイリスをなだめるように声をかける。
    「……このイッシュは、ポケモンと人とが力を合わせ創りあげた。ポケモンが人との関係を望まぬというのであれば、自ら我々の元から去る……。たとえモンスターボールといえど、気持ちまで縛ることなど出来ぬ」
     しんみり語る老人の言葉に耳を傾けているとふと、右肩をアデクさんに叩かれた。
    「行こうかトウヤ」
     そう言って老人とアイリスの方に歩き出すアデクさんに僕は続いた。
    「久しいな。アイリスにシャガよ」
    「あっ! アデクのおじーちゃんにあのときのおにーちゃん!」
    「……どうした。ポケモンリーグを離れ、各地をさ迷うチャンピオンが一体何の用だ?」
     厳しく言い放つシャガと呼ばれた老人に対し、アデクさんは突然、迷うことなく頭を下げた。
    「ずばり! 伝説のドラゴンポケモンのこと教えてくれい!」
     頭を下げて頼み込むアデクさんに、シャガさんはいささか虚を突かれたようだ。
    「ゼクロムのこと? それともレシラム? どーしたの? いきなり」
    「先程の演説でゲーチスなる胡散臭い男が言っていたな。Nという人物がゼクロムを復活させたと……」
     とたんにアデクさんは頭をあげ、右手の拳で左手の平をぽんと叩く。
    「おうよ! そのNというトレーナーが、ここにいるトウヤにもう一匹のドラゴンポケモンを探せ! と言ったらしいのでな」
     アデクさんがそんなことを言ったがために、シャガさんが僕の方を見る。まるで品定めをされるような視線に、たまらずたじろぎそうになった。
     一通り僕を見るとまるで興味なさげに僕から目を離し、アデクさんに向き直る。
    「……解せぬな。自分の信念のため、二匹のドラゴンポケモンをあえて戦わせるつもりか、そのNとやらは……?」
     シャガさんがその疑念を口にすると、驚いたアイリスはその場で軽くジャンプして、大きな声を出す。
    「えっー! ドラゴンポケモンたちはもう仲良しなんだよー!」
    「そうだよなアイリス。ポケモンを戦わせるのはトレーナー同士……。そしてトレーナーとポケモンが理解しあうためだよ」
     慈愛に満ちた目でアイリスを見つめたアデクさんは、そっとアイリスの頭を撫でた。その姿はまるで本当の孫と爺だ。
    「さてと……」
     アイリスの頭から手を離したアデクさんは、僕の方を向く。
    「わしはポケモンリーグに向かう! いや、この場合は戻ると言うべきかな……?」
     今までアデクさんは僕が見ていた限り、いつも子供を見守るような優しい目をしていた。だけど今の彼は違う。誇り高き戦士の目だ。覚悟を持って戦う人間の目だ。
    「もちろんNに勝つ! トレーナーとポケモンが仲良く暮らしている今の世界の素晴らしさ、きゃつに教えてやるのだ!」
     僕の両肩に、アデクさんのごつごつした両手が乗る。
    「そしてトウヤ! チャンピオンとしてお前さんを待つとしよう! だからソウリュウのジムバッジを手に入れてリーグに来い。もっとも、ソウリュウのジムリーダーは手強いぞ!」
     ニッと少年のように笑うアデクさんに、僕もつられて顔がほころぶ。
    「じゃあな、頼んだぞシャガ、アイリス!」
     最後にそう言ってアデクさんは徒歩で街の向こうへ消えて行った。
    「……あーあ、おじーちゃん行っちゃった。大丈夫かなあ? なんだか怖い顔してたけど」
    「……アイリス、心配ないよ。彼はイッシュで一番強いポケモントレーナーだからね」
     不安がるアイリスに、シャガさんが優しく語りかける。アデクさんはゼクロムを連れたNと戦う覚悟を決めた。僕も、託されたホワイトストーンからゼクロムと対となると言われているドラゴンポケモン、レシラムを蘇らせて少しでも手助けをしなくてはいけない。まずは彼らからそのヒントをもらわなければ。
    「さて、トウヤと言ったか。私の家に来なさい。アデクの言う通り、伝説のドラゴンポケモンについて教えられることをお教えしよう。アイリスや、案内してあげるんだ」
     シャガさんが僕にそう言うと、一足先にヒウンシティ程ではないがビルの並び立つ街に消えていった。僕にドラゴンポケモンについて教えてくれることから察するに、どうやら僕のことを認めてはくれたようだ。ほっと胸を撫で下ろす。
    「ゼクロムとレシラム、二匹のお話! あたしたちが教えてあげる! ソウリュウなら案内出来るし! こっちだよ!」
     ズボンの裾を小動物のようにじゃれるアイリスに引っ張られる。その勢いでポケモンセンターの側の交差点を曲がると、その突き当たりにはとりわけ周囲よりも立派な建物が聳え立っている。またもや跳ねるようにはしゃぐアイリスにその入口まで引っ張られると、ここだよ! と言って建物の中に一足先に入っていく。
     追って建物に入ると、暗めの照明が点いている室内でシャガとアイリスが待っていた。
    「……では話そう。君が持っているのはライトストーンだな。ライトストーンから目覚めるだろうレシラム、既に目覚めたゼクロムは、元々一匹のポケモンだった――」
     シャガ、アイリスの口から語られたのは、イッシュに伝わる英雄伝説だった。
     僕が幼い頃に母から聞かされたことがある話よりも、より詳しく語られた。理想と真実。レシラムとゼクロム。そしてイッシュの、成り立ち。
    「……確かにポケモンはものを言わぬ。それゆえ人がポケモンに勝手な想いを重ね、辛い思いをさせるかもしれぬ」
     シャガさんの口調は徐々に重く、深く、そして強くなっていく。
    「だがそれでもだ! 我々ポケモンと人は、お互いを信じ必要とし、これからも生きていく……」
    「そーなのッ! だから、だからねっ。ポケモンとあたしたちを別れさせようとするプラズマ団なんか絶対許さないんだからッ!」
     そうだ。僕がここ、ソウリュウに来るまで歩んだ長い道のり。その中で人とポケモンは互いに足りないところを補いあい、笑顔で暮らしていた。その素晴らしい姿勢を見て、僕はより互いの存在が不可欠なものだと改めて気付かされた。
     プラズマ団はポケモンと人とを別れさせ、ポケモンを完全な存在にすると言った。そうではない。真の完全とは、互いに互いを支えあう、共存していく世界なんだ。それをなんとしてもNに伝えなければならない。
    「……すまない。最後、話が逸れてしまったが私たちが知っていることは以上だ。残念ながら伝説のドラゴンポケモンを目覚めさせる方法は分からぬ……」
     チャンピオンのアデクさんが頼るほど、ドラゴンタイプに精通しているはずのシャガさん達が分からないのであればもう八方塞がりか……。いや、それでももしNと戦うことになっても、僕と共に旅を続けてくれたポケモンが、仲間がいる。僕たちの未来のためにも負けない。負けられない!
    「……さて、アデクとの約束だったね。君はソウリュウポケモンジムのジムバッジを手に入れねばならない。ではトウヤ、ポケモンジムにて君の挑戦を待つ!」
     そうだ。まずは目の前に立ちはだかる試練を乗り越えなくてはならない。僕の横を通り過ぎ、先にジムに向かったシャガさん。まずはこのシャガさんに僕の、僕たちの力を見せつけてやらねばならない。
     ここまで歩いてきた僕たちの絆を、力を。



     ドリュウズの渾身のシザークロスを受け、オノノクスは大きい音をたてながら前に崩れていく。
     ジムの時が止まったかのような沈黙がしばし流れた。
     シャガさんは倒れたオノノクスをモンスターボールに戻すと、称賛の拍手を送る。僕もワンテンポ遅れてバトルが終わったことに気付き、最後の一匹となっても戦い抜いたドリュウズをボールに戻す。
    「素晴らしい。君と出会い戦えたこと、感謝する」
     僕の目の前までゆっくり歩いてきたシャガさんは、これがレジェンドバッジだ。と、竜の頭を象った細長いジムバッジを手渡す。最後の、八番目のジムバッジ。これで僕のバッジケースは全て埋まった。ついでにシャガさん曰くお気に入りのドラゴンテールのワザマシンも受け取った。
     礼を言おうと手元からシャガさんに視線を戻したが、そこにはらしからぬ暗い表情があって、思わず怯んだ僕は礼を言うタイミングを失っていた。
    「……君に頼みがある。アデクを追いかけてポケモンリーグに向かってほしい」
     そう言ったシャガさんの表情は弱々しく、先ほどまでいた屈強なドラゴン使いのトレーナーは目の前からいなくなり、ただの一人の老人がそこにいた。
    「ポケモンリーグはソウリュウから繋がる10番道路の先。チャンピオンロードを越えたところにある。アデクの強さは知っているが、Nという男の強さ、底知れぬのだ」
     そうか。Nはチャンピオン、アデクさんを倒すと言った。その過程でジムリーダーのシャガさんとも既に一戦交えていたのだ。
     ――Nという男の強さ、底知れぬのだ。
     今までの旅の中、僕とNは幾度となく戦って来た。確かに彼は強敵だった。とはいえ、シャガさんにギリギリで勝てた僕なのに、そこまで言わせたNともし戦うことになっても僕は勝てるのだろうか。……いや、僕が弱気になってどうするんだ。信じなきゃ。僕のポケモンと、僕の力を。
     そう思いながらジムを出たときだった。
    「……ハーイ。シャガさんはたくましかった?」
     聞きなれた明るい声。顔を上げれば正面にはアララギ博士がいた。
    「あっ、伝説のレシラムを復活させる方法についての報告に来たんだ。ライブキャスターで伝えるのもなんだか申し訳ないしね」
     Nのゼクロムに唯一対抗出来うると言われるレシラム。その復活方法の報告……。固唾を飲めば、ごくりと喉を通る音が聞こえた。
    「で、結論をいっちゃうと……。まだ解明出来ていないの。きっとポケモンが誰かを認めたときに目覚めるのね……」
     沈黙が流れる。僕もなんだか申し訳なく、顔を伏せる博士に何を言って良いのか分からない。
     すると博士は暗い話を止めようと、すぐさま笑顔になって口を開く。
    「それよりも凄いじゃない! イッシュのジムバッジを八個揃えたんでしょ、すごくたくましくなったよね! 自分では実感ないかもしれないけど、カノコを出たときとは大違い!」
     それは決して作り笑いやただの誉め言葉じゃなく、博士は本気でそう言ってくれたということが目で分かる。嬉しかった。ここずっとプラズマ団のことで必死だったから、そう言ってくれた博士の言葉がなおのこと優しく響く。
    「では、ポケモンジム巡りを終えたポケモントレーナーが次はどこへ向かうべきか、わたしが案内するわね」
     そう言ってジムから東に進むアララギ博士の後を追えば、ソウリュウ北のゲートまで案内された。ゲートの向こうにはチャンピオンロードと呼ばれる切り立った崖が挑戦者を拒むかのように聳え立っている。
    「あのゲートをくぐり、10番道路を抜ければバッジチェックゲート。その先にあるチャンピオンロードを越えてようやくポケモンリーグよ」
     この先には全てのトレーナーの目標がある。そう考えると、自然と目が乾き拳に力が入る。
    「カラクサのポケモンセンターを案内したこと、思い出しちゃった」
     僕たちが初めて生まれ故郷のカノコから隣のカラクサに着いたとき、博士は僕たちにポケモンセンターの使い方をレクチャーしてくれた。確かに、あのときと同じだ。
    「ねえトウヤ。ポケモンと一緒に旅立ったこと、後悔している?」
     そんなことはない! 僕はポケモンと旅が出来て、辛いこともあったけども楽しいこともいっぱいあった! 他にも伝えたいことがいっぱいありすぎて、うまく舌が回らない。とにかく首を強く横に振れば、博士の歓喜の声がする。
    「ありがとッ! 最高の返事よね! わたしも君たちにポケモンをプレゼント出来てすごく嬉しかったの! だって、また人とポケモンのステキな出会いが生まれたから! トウヤ、これ。プレゼントよ」
     アララギ博士から手渡されたのは、紫に輝く究極のモンスターボール、マスターボールだ。その存在自体は聞いたことがあるが、実物を見るのはこれが初めて。
    「そのマスターボールはどんなポケモンも絶対に捕まえられる最高のボール。こんな形でしか応援出来ないけれど……」
     そこまで言って、博士は言葉を区切る。
    「トウヤはトウヤ。どんなことがあっても迷わずにポケモンと進んでね!」
     博士はこれ以上ないくらいの笑顔でそう言った。きっと、本当は復元に関してなんかではなくこれを伝えに来たかったのかもしれない。お陰で張りつめていた緊張も、表情と共に自然とほぐれた気がする。
    「じゃーねー!」
     と去っていく博士の背中を見送ってから、僕は再び手元で妖しく輝くマスターボールを見つめる。
     ……博士には悪いけど、僕はこのマスターボールは使わない。もしもレシラムと戦うことになっても絶対に使いたくないんだ。マスターボールを使うっていうことは、マスターボールという道具の性能に頼るということだ。
     それじゃあダメだ。僕とレシラムの真剣勝負に水を刺すのと同等だ。互いに全力をぶつけあうことに本当の意味があると僕は思う。
     僕はソウリュウのポケモンセンターに戻り、マスターボールをダゲキに持たせてユニオンルームに入った。
     そこには、あらかじめ連絡をしておいた僕と同年齢の女性トレーナー、トウコがいる。僕は、この親愛なる彼女にこのマスターボールを託す。博士には悪いけども、僕じゃあこのマスターボールは扱えない。身に余る贈り物だ。彼女は僕より優秀なトレーナー、彼女の方がきっと有用に使ってくれる。ポケモン交換装置にモンスタ ーボールをセットすれば、マスターボールを持ったダゲキは彼女の元に。そして彼女のズルッグが僕の元に。
     交換が終わると彼女は満面の笑みでありがとう、と僕にだけ伝わるようにひっそりと言った。そして、お疲れ様。とも。


     ゲームの電源は消された。マスターボールを手放したトウヤのソフトの記録を消して、再び新たなトウヤの冒険が始まる。
     マスターボールを集め、それをトウコに渡す作業という名の冒険が今。

     最初から はじめる

    ───
    【最初からはじめていいのよ】
    【好きにしていいのよ】

    POKENOVEL春企画投稿作品。
    これのためだけにブラックを最初からプレイしました。プレイ時間9時間、執筆時間ほぼ3〜4時間。
    やりたいことはやった。

    余談ですがトウヤよりトウコの方が鬼畜イメージがあるのでトウコがマスボを回収していることにしてます。
    また、ゲームを最初からやり直してるときにシャガと戦ったんですが、ドリュウズの地震三回で終わりました。
    気付いていると思いますがほとんどのセリフはゲームより。トウヤが喋っていないのはこだわりです。


      [No.1177] 昨日のリアル状態だったりするのです。 投稿者:ふにょん   投稿日:2011/05/11(Wed) 17:08:30     53clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    > こんばんは。そしてお久しぶりです。マコです。
     お久しぶりです!

    > マヨネーズしか食べられなかった(飲めなかった)ガーディが可哀想過ぎます……。
    > 主食副菜のない状態からのマヨネーズはきついでしょう。ベタベタしますし。しかも冷蔵庫には到底そのままで食べられそうにないものばかりで……。
     直飲みはさすがに出来ませんw 
     健康的にも、味覚的にも、きついものがあります。
     あ、でもワサビなら直飲みしたことありますy(ry


    > ちなみに、こんなことを言っている私はマヨネーズを食べられません。
    > もしそんなことになったら親や友人に頼んで三日間何とかしてもらう自信があります。
     三日間何も食べないという手もあr(ry
     
     実はこの話、実話から出来たお話なのです。
     昨日の夜、夕飯食べようと冷蔵庫開けると、

     異様な存在感を放ちつつ、ド真ん中に一つだけ置いてあるものが。

     それこそ、『マヨネーズ』だったのである。
     
     それ以外は何も入っていない。
     どうしろって言うんだっー!

     感想、ありがとうございます。
     ポケリアのほうも、引き続き応援しておりますよ〜!


      [No.1123] 【再掲】Poooooooon!! 投稿者:久方小風夜   投稿日:2011/05/02(Mon) 23:00:34     417clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:てこさん超リスペクツ】 【たのしい】 【なかまが】 【ぽぽぽぽ〜ん!】 【……自分、何やってるんだろう
    【再掲】Poooooooon!!  (画像サイズ: 2340×800 120kB)

    ぜんぶでけた。
    途中で冷静にならないように必死だった。
    (自分、何やってんだろ……」とか思い始めそうだったから)

    ポーズは最後の全員集合したところのものではないのであしからず。
    全体的にひどいけどとりあえずウツドンの格好が謎だ。
    そしてやっぱりウパーがキモい。マッギョもきもい。
    背景は力尽きました。

    描いてる間に何回テレビで「ぽぽぽぽ〜ん」って言ってただろう。
    60秒ver.には遭遇しませんでしたが。

    ぴくしぶ投稿したら2011年3月20日付のイラストデイリーランキング488位に入りました。笑。


      [No.1068] メリークリスマス![ネタ投下] 投稿者:サトチ   投稿日:2010/12/24(Fri) 21:34:21     42clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5
    メリークリスマス![ネタ投下] (画像サイズ: 400×400 14kB)

    ということでネタを投下!(笑)
    ローストチキンでもヤンキー座りのバシャーモでもなく、怖すぎると蝶・不評だったリアルタイプデリバードです(^^;)
    挑戦者求む!

    【悔しかったら書いてみやがれ!(笑)】
    【とりあえず何のネタにしてもいいのよ】


      [No.1016] サイト改装 投稿者:No.017   《URL》   投稿日:2010/12/05(Sun) 22:43:07     82clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    http://masapoke.sakura.ne.jp/pokemonstory-contest.html

    殺風景だったのでサイトももう少し企画らしい装いにしてみました。
    解釈によっては物騒ですが(笑)

    生命力燃やされても読みたいほどの小説が来ればいいな!wwww
    との思いを込めています(笑)

    そんなわけだから皆さん応募してください。
    お願いします(笑)!
    審査員も募集してます。

    やりたい人はメール(pijyon★fk.schoolbus.jp)ください。


      [No.962] コメントありがとうござます 投稿者:MAX   投稿日:2010/11/14(Sun) 03:33:27     49clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
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    >No.017様
    コメントありがとうごじます。
    伝承系は考えて楽しく書いて楽しく、人様のを読んでまた考えて楽しく、と自分も気に入ってます。
    ギラティナに限らずレジギガスとかレックウザとかBWの3匹目(名前出して良いのか?)とか、増えてくれると良いですね。

    ありがとうございました。


      [No.910] 急いで書きますからその手にあるボングリを置いてください; 投稿者:リョウナ   投稿日:2010/11/02(Tue) 18:48:38     63clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
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    ポケストをのぞいてみたら自分の小説に感想が!?
    しかもNo.017さんから!!Σ(°Д°;)

    あわわ、はじめましてリョウナです!ご感想ありがとうございます!
    グダグダな小説ですが気に入って頂けたようでなによりです(^∀^)

    そ、それはなんという偶然……(°Д°;)
    しかも同じことを思っていらっしゃったとは!
    やっぱポケモンの世界に陰陽師がいたとしたら式神はポケモンですよねー。

    「カマキリ」の表記についてですが、漢字のほうの「蟷螂」は思っていたより難しい漢字だったのでカタカナにしました。
    というか単に私が読めないというだけですがorz

    琥珀丸君を主人公にしたおかげでとても書きやすくて助かってます(こっちはいい迷惑だよ by琥珀丸
    実は霧彦さんも琥珀丸君が一番面白いと思っていたり。
    さーて、次回はどうなるのかなぁー?( ̄∀ ̄)ふっふっふ。

    さて、次回は琥珀丸と霧彦以外に梅姫ともう一人新しい登場人物が出てきます。
    私は学生なのであまり書く時間がありませんがなるべく早く投稿できるように頑張ります。
    だからボングリ投げないでぇー!!((´Д`;))ヒィィ

    でわこれにて失礼します。



    PS.
    投稿してから気づいたのですが、霧彦さんの式神初ゲット歴がなぜか「一年」から「四カ月」になってました(爆
    いやああああああああああああああああああ!!何これええええええええええええええええええええ!!(; Д )     ° °
    マジすいませんorzちょっと頭にボングリ食らってきます。


      [No.859] どういうことなの…… 投稿者:兎翔   投稿日:2010/10/27(Wed) 04:02:56     64clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
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    朝起きたら、自分の思いつき書きなぐり小説の主人公が救助されていた。
    びっくりしました。
    それもお二人に…!
    ありがとうございます!ありがとうございます!とりあえず助かってよかったなぁ主人公!これでヒトカゲや手持ち達を泣かせずに済むぞ!
    これをハッピーエンドに持って行くのは主人公を窮地に追いやった私の役目でしょう。
    一生懸命考えてきます!
    取り急ぎ、お礼と感動の意を表明しに。クーウィさん、CoCoさん、そして救援信号を発信してくれた鳩さん(笑)、ありがとうございました!


    【もっと救援してもいいのよ】


      [No.685] 黒色徒然草 投稿者:   投稿日:2010/10/01(Fri) 18:06:55     74clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
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    俺は大学生だ。大学つっても、農大携帯獣獣医学科なんだが。まぁ、それもあって俺は今日からアパート暮らしを始めることになった。しかも運良く発見したアパートは超格安。俺の新しい船出を、神様も祝福してくれてるってことか、うん!

    ――――――と、数十分前までは俺もそう呑気に思っていた。

    「ここが幸薄荘……?」
    俺はその新しい住居を見た途端一瞬で絶句した。正直に感想を言おう。クソボロい。下手すれば、ここ本当に人が住んでいい場所なんだろうか、と疑ってしまうほどだ。念の為パソコンから印刷した地図を見たが、やっぱり間違いなさそうだ。てか、アパートの門の近くに『幸薄荘、新規入居者募集中』と書かれた古い板が打ちつけられているから当たり前か。傍らの相棒・くろろ(種族名で言うならグラエナ)が、不満げな鳴き声を上げる。お前も嫌か。嫌だよな、分かるよその気持ち。だって俺も嫌だし。……だがしょうがない。
    「……行くぞ、くろろ」
    そう言った刹那。
    ビシャアア!!
    激しい水音と共に、全身を冷たい水の感触が襲った。身体を見ると全身泥水まみれ。くろろも被害を受けたらしく、全身真っ茶色。なんてこった、くろろが色違いになってしまった。呆然とする俺を尻目に、大型トラックが呑気に走って行った。……入居初日からこの大惨事。さすが幸薄荘、その陰気な名前は伊達じゃない。一瞬走って行って文句を言ってやろうかと思ったが、やめた。もやし男の俺にそんな脚力はない。仕方なく、そのままとぼとぼ歩いて大家さんに挨拶しに行く。初っ端から大家さんに驚かれた。そりゃそうか。
    とりあえず俺の部屋に直行。部屋入ったら着替えるか。くろろも洗ってやんないと。そう思いながら、俺は何気なく部屋のドアを開けた。
    …………真っ黒いテルテル坊主が部屋を埋め尽くしていた。
    ピシャッとドアを閉める。何あれ。前の住民のいやがらせか。いや、でもあのテルテル坊主見覚えが……あ、そうだ、思い出した。カゲボウズだ。なんだポケモンか、なら平気だよな、ということでドアを開ける。今度は青い無数の眼とばっちり視線が合ってしまった。本能的な恐怖で反射的に再び閉める。傍らのくろろが苛々したように吠えた。分かってるって。くそ、こうなりゃ男は度胸だ。思い切ってドアを開けた。
    「……あれ?」
    部屋は空っぽだった。少し古びた感じの埃まみれの部屋だけが視界に広がっている。ふと窓を見ると空いている。あそこから入ってきて、再び出てったんだろうか。でも何でカゲボウズが民家に? 腑に落ちないまま着替えて、くろろを連れて外に出る。
    アパート外に水場があるのを発見。運のいいことにたらいも置いてある。俺はたらいに水を張ると、再び部屋に戻って家から持ってきた『携帯獣専用ボディシャンプー・長毛タイプ用』を持ってきた。この際洗ってやれ。戻ると、くろろは既にたらいの中で待機している。こいつはシャンプーが好きなんだ。シャンプーを適量掌に取った時だった。頭にこつんと何かがぶつかった。何気なく顔を上げた俺は、次の瞬間たらいの中に尻もちをついてしまった。くろろが痛そうに悲鳴を上げる。俺達の頭上にはかなりの数のカゲボウズ達が浮遊していた。おそらくさっきのやつらだろう。興味津々の目で見下ろしてくる。唖然としていた俺の尻に、突然痛みが走った。悲鳴を上げて立ち上がると、くろろが牙をむいて唸っている。噛みつかれたらしい。ごめん、お前のこと忘れてた。
    とりあえずシャンプーを開始する。といっても、カゲボウズ達に凝視されながらのシャンプーなので、なんだか落ち着かない。くろろも同じなのか、時折周りを威嚇する。こら動くな、目に泡が入るぞ。カゲボウズ達は自分達も洗ってほしいのか、俺の頭にまとわりついてくるが、こいつらに毛は生えてないからこのシャンプーでは無理だ。だが向こうはそんなこと気にしないのか、平気で金だらいの中に飛び込んでいく。そこでくろろがとうとう堪忍袋の緒が切れたのか、突然1匹のカゲボウズに飛びかかった。寸前で抱きつき止める。唸り声を上げながら歯をむき出すくろろの首にしがみつきながら、俺は慌てて叫んだ。
    「く、くろろ待て! ウェイト!」
    俺の指示に渋々くろろは動きを止めた。やれやれ。ゴーストタイプに噛みつくは効果抜群だ。下手したら引っ越し初日から大ごとになるところだった。
    噛みつかれそうになったのが怖かったのか、カゲボウズ達は潮が引くようにくろろの周りからいなくなった。代わりにいっそう俺にまとわりついてくる。真っ黒い体のせいで手元がよく見えない。「ごめん、ちょっとどいてくれ」と声をかけながら、俺はカゲボウズを掻き分けてシャンプーを強行する。
    カゲボウズ達のせいで進行速度が格段に落ちたシャンプーは、午後5時半にようやく終了した。あぁ、しゃがみっ放しで首が痛い、腕が痛い、膝が痛い。ついでに噛みつかれた尻も痛い。ぐったりして部屋へと戻る俺達の後ろを、カゲボウズ達がついてくる。部屋の中にまで入ってきたが、追い返す気力もない。実家から持参した弁当を食べるが、その間もカゲボウズ達は俺達の周りを飛び回っている。くろろはカゲボウズが自分のポケモンフーズの皿に近づくたび、また唸り声を上げている。疲れるから騒ぐなよ。
    あぁ眠い。食器を片づけた俺は、部屋の床に大の字に寝転がった。傍らにくろろがうずくまって眠り始めた。ぼんやりと開けっぱなしの窓を見ると、外は夕焼けだった。橙色の空を背景に、空を漂うカゲボウズの影が不思議なシルエットとなっている。何故かその風景に見とれながら、俺は意識が薄らいでいくのを感じた。顔を覗きこむカゲボウズ達の顔がぼやけてくる。
    ……明日になったら、カゲボウズ達にえさでも買ってきてやろうかな。
    その思いを最後に、俺の意識はブラックアウトした。




    おわるのか

    【書いてもいいのよ】
    【描いてもいいのよ】
    【批評してもいいのよ】

    ――――――――――――――――
    カゲボウズ人気の勢いに便乗してこんな新参者が書いてしまいました。
    ちなみに携帯獣とはポケモンのことです。


      [No.508] Re: 収穫したい 投稿者:兎翔   投稿日:2010/08/23(Mon) 22:10:20     37clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    > 兎翔さん、描いてみたありがとうございます。
    > お手数をおかけしてすみませんでした。
    >
    > とりあえず左端の眠そうな子は貰った!
    > ぷちっ!
    >
    >
    コメントありがとうございます!
    カゲボウズ狩り、一匹二十円!
    幸薄荘にて、随時開催中!

    …なんて言ったら、住民のみなさんに怒られそうですね(汗


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