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テストがてら過去記事を編集してタグ付けてみました。
今のところ問題はなさそうですが、どうでしょう。
試しに削除キー入れなかったら無事エラー出ました。よかった。
でも実のところエルフーンをもふもふしてみたいです。もふもふ。
追記:拍手してもタグ消えませんでした。やったね!
「ブースターだ!」
「いや、シャワーズ!」
家が敷き詰められた住宅街のある一戸建て。まだ幼く元気のある兄妹が、言い争いをしていた。
喧嘩の理由は単純だった。二人の家に住むイーブイを、どの種類に進化させるかということである。
二人はまだ年齢が若すぎるため、自分のポケモンを持っていない。両親に何度もお願いして、漸く家に来たのが一匹のイーブイだった。
イーブイという種族は、様々な種類に進化することができる。住んでいる環境によって様々な個体へ姿を変えることができるため、他のポケモンよりも進化の数が圧倒的に多い。例えば、とても寒い地域に住んでいれば凍えて死なないためにグレイシアに進化する傾向があるし、森に囲まれて育ったイーブイはリーフィアに変化することもあると言われている。
それ故に、人間が故意的に進化を操作することも多い。理由は、様々だが、大方は人間の都合である。そのため、人間が管理しているイーブイは、環境以外の要因で何に進化するか決まってしまうことが殆どだった。
話は戻るが、兄弟は、イーブイを何に進化させるかで揉めているのだ。
「ブースターは可愛いじゃないか。赤い体にふわふわした体毛、ずっとぎゅーってしていたくなるんだよ」こう
言うのは、兄の方。
「シャワーズにすれば、ひんやりして気持ち良いし、一緒にプールで遊べるもん。だからシャワーズが良いの!」
そう述べるのは、妹の方。
この二人は、いつも意見が食い違っていた。例えば、兄の方は冬が好きだし、妹は夏の方が好みだった。他にも兄は走るのが好きだし、妹は泳ぐのが好きだったりと、常にこの兄妹はぶつかりあっているのである。
そのため、今回のことも珍しいことではなかった。
「シャワーズに進化させたら冬はどうするのさ。冷たくて触っていられないぜ?」
「ブースターなら冬に抱きしめられるもん。お兄ちゃんだって、真夏にブースターをずっとぎゅってしてるの?」
「ああ、俺だったら真夏でも真冬でもブースターを抱きしめるもんね」
「そんなことしたら暑さでお兄ちゃんが倒れちゃうよ。だから、シャワーズにしようよ」
「そんなこと言ったら、冬に無理にシャワーズを抱きしめたら、お前が風邪引いちゃうじゃないか。だから、ブースターにしようぜ」
「嫌だ! シャワーズ!」
「俺だって嫌だ! ブースターが良い!」
お互いに眉間にしわを寄せ、睨みあう兄妹。彼らはまだ、譲り合うということができなかった。両親がいると大人しくなるのだが、生憎、この子達の両親は、まだ仕事で帰って来ない。
イーブイは、そんな兄妹を毎日見ているのに目もくれずソファーの上で昼寝をしていた。
散々続いた言い争いが終わったと思うと、兄弟はイーブイの目の前に立ち見下ろしている。
何事かと顔を上げると、先に兄が言う。
「ブイルは(イーブイの名前である)、ブースターに進化したいよな?」
妹。
「ブイルはシャワーズに進化したいよね。私のこと大好きだもんね」
「ブイルはお前のことなんか好きじゃないって。ブイルが好きなのは俺だよな」
「そうやって、人のことをいじめるような最低な人間をブイルが好きになるわけないじゃない。ねーブイル」
「あーあ、やだやだ。強引に姿を変えられるのは嫌だってさ。他人のことを思っているように見せかけて、実は自分の都合を突き通そうとしている人って、タチが悪いんだよな」
「お兄ちゃん。そろそろ怒るよ」
「やるか」
「手加減しないよ」
彼らは拳を握り、今にも喧嘩を始めそうになる。怪我をしたら流石に洒落にならないので、ブイルと呼ばれたイーブイは起き上がり、自分の気持ちを堂々と伝えた。
「僕は、昔からサンダースになりたいと思っているんだ」
胸を張り、しっかりと自己主張をするブイル。
すると、二人の表情は一変する。
「何言ってるんだ。サンダースになったら静電気が大変だろう。それに、ふわふわした体毛が少なくなっちゃうじゃないか」これは兄。
「そうよ。サンダースだと一緒にプールで泳げないよ? だから考え直そうよ」これは妹。
「だから勝手に決めるなって。ブースターが良いに決まってるだろ」
「違うの! シャワーズが良いの!」
「ブースター!」
「シャワーズ!」
ついには殴りあいの喧嘩を始めてしまう二人。さすがにここまでくると放っておけないので、ブイルはなんとか止めさせる。
「これ以上喧嘩するなら、何に進化するかお母さんに決めて貰おうかなあ」
さり気なく呟くブイル。
お母さん、兄妹にとって大切な家族であり、恐れる対象である。
兄妹は理解していた。お母さんが主導権を握れば、全ての物事は強引に決定してしまうのである。そのため、ブイルが何に進化するかを母親に頼むということは、自分達の意見が通らなくなることがほぼ確実だった。
「ごめんブイル、俺達が悪かった」
「お願いブイル、それだけは止めて」
母に決定権が移ることだけは、何としても阻止しなければならない。兄妹の態度は一変した。
「もう喧嘩しない?」
「しないしない。絶対にしない」
「うん。お兄ちゃんと私は仲良しだもん。喧嘩なんてしないよねー」
「ああ、しないとも」
ぎこちない笑顔で肩を組む兄妹。それならば、とブイルは言う。
「僕が何に進化するのか、仲良く決めてね」
兄妹は黙って頷いた。とりあえず、今日の兄妹戦争は回避できた訳だ。
しかし、明日には同じことを繰り返すのだろう。そう思うと、このままイーブイの姿で一生を終えた方が良いのではないかと思うブイルだった。
――――――――――
地味にお久しぶりです。
夏コミ82に来てくれた方がもしいたら、ありがとうございました。またちょくちょくイベントには参加していると思います。
9月のチャレンジャーは他のイベントで売り子を頼まれた為、参加を断念しました。鳩さんの新刊はまた今度になりそうです。
現在、冬コミに向けてワープロ打っています。こういうネタは直ぐ思いつくのですが、遅筆なのが悩みです。
フミん
【批評していいのよ】
【描いてもいいのよ】
宇治金時のかき氷が食べたくなってきました。こんにちは、小春です。
> 以前テレビで見たポケモンバトルで、ポケモンの名前を顔文字で設定していた子がいてびっくりした覚えがあります。
顔文字……、なんて発音してボールを投げるのか気になります。「ゆけ! (・p・)」とかかしら……あ、そもそも顔文字じみた記号が用意してありましたね。フワンテには「(・×・)」とつけられるので万々歳です。
漢字不使用でも脳内NNはキラキラしています。コスモと名付けたシンボラーの漢字NNは宇宙(
> 今ではあまり考えませんが、中二の時にイタリア語にやたらとハマりまして。
> ツンベアーに『ギアッチョ』と付けたのはやりすぎだったかな……と今更ながら思います。ちなみに『氷』です。
そんなとき、お役に立つのが漢字辞典&ネーミング辞典&各語辞典! 冒険のお供に数冊いかが!? 気づかぬうちにアナタもマッチョになれるかも!
感想&お読みいただきありがとうございました!
ひばなは水面に映る自分を見つめていた。コモモの言葉を思い出す度に、涙が流れて頬を伝った。
「改、造」
言葉にするにも忌まわしい。どうしてそんな人間がいるんだろう。コモモは悪くない、そう思うのに。誰かを憎みたくて、でも自分は人見知りで、知ってる人間なんてコモモしかいない。コモモは悪くないのに……!
そんなことをグルグルと考えていたら、足音が聞こえた。振り返るとそこには今しがた自分が考えていた人間がいて。
「コモモさん……?」
「ひばな……ゴメン!」
コモモは地面に膝と手を付いた。土下座の格好になられて、ひばなはうろたえる。
「そんなことしないでください……!」
「いや、私はしなきゃいけないの!」
コモモは目をぎゅっと閉じ、喋りだした。
「あの時の私はどうにかしてた! どうしても覚えさせたい技があるからって、改造ポケモンに手を出すなんて! トレーナー失格よ!」
「コモモさん……」
「GTSであの子が送られて来た時、私はあの子のトレーナーを呪いたいと思った! 人間の勝手な都合で、ポケモンの運命を弄ぶなんて信じられなかった! でも私も同罪よ……! あの時、落ち着いて考えていれば、あの子にもあなたにもつらい思いをさせずに済んだのに……!」
いつの間にか流していた涙を拭うこともせず、コモモはただ喋り続けた。
「ひばな……本当に、ゴメン……!」
「コモモ、さん……」
コモモもひばなも泣いていた。そのまま暫く沈黙が続く。辺りには、啜り泣く声だけが響く。上空には、言葉を失ったトゲキッスが佇んでいた。
その時、ガサリと物音がした。思わず振り向けば、そこには6匹目の仲間がいて。
「ピンキー!?」
「ピンキー……さん」
ピンキーと呼ばれたのは、桃色の体にふわふわの体毛を持ち、腹に「たつじんのおび」を締めたハピナスだった。
「……まったく、あんた達は。さっきから聞いてりゃウジウジウジウジと……!」
「ピンキー……?」
すっかり怒り心頭の様子のハピナスは、小さな手を腰に当て、声を張り上げた。
「確かに改造は問題よ。それに、トレーナーとして誤った選択をしたコモモにも責任があるわ。……だからもう2度と謝らなくていいように、トレーナーとして出来ることをしなさい!」
びしっと、コモモに指を指すピンキー。
呆然としているコモモとひばな。
ピンキーの横に、遠慮がちに足を付くハピリル。
「ピンキー、決まったとこ悪いんだけど……それ、ボクのセリフじゃ」
「うるさい! ♂は黙ってなさい!」
「ひいい……はい」
まるで夫婦漫才のようなやりとりを見ていたコモモは、クスッと吹き出す。
「コモモ! 笑ってんじゃないわよ!」
「ゴメンゴメン。……うん、ありがとうピンキー」
「は?」
コモモは立ち上がると、ハピリル、ピンキー、そしてひばなの順に目をやり、口を開いた。
「私、みんなの笑顔を守りたい。もう2度とこんなことが起きないように、私なりに頑張ってみる!」
「コモモ……」
「コモモさん……!」
「うん、よく言った。それでこそコモモよ!」
「……じゃあ、みんなも手伝ってね! 1人1人に出来ることは少ないけど……みんなの力を合わせれば、なんだって出来るよ!」
END
ーーーーあとがきーーーー
どうしましょう、ラストが意味不明なことに(汗)ちょっとクサかったかな……?
えーと、これはほぼ私の実話です。今ガチパにいるキュウコンの親の親の親のそのまた親……くらいの位置に、GTSで手に入れてしまった改造産ガーディがいます。
Lv58の時にライモンシティで出会ったって改造ですよね……。
作中でも書かれているように、私はそのガーディを親にしてタマゴを作ってしまいました。タマゴから熱風を覚えたガーディ♂が生まれたら改造の子は逃がし、生まれた子を親にして熱風を覚えたロコン♂が生まれたら逃がし……そんなことを何回かやって生まれたのがひばなです。
今は後悔しています。2度とこんなことが起きないように、私も頑張るつもりです。
【書いても描いても批評してもいいのよ】
【改造、ダメ、絶対】
サザナミタウン。
夏のリゾートとして有名なこの場所に、防寒具を着込み、双眼鏡を構えて立つ私は、場違いに見えるだろう。それ以前に、今は冬なのだから季節外れだ。
幸いシーズンオフでもあるから、奇妙な格好をして双眼鏡を海に向ける私に気を止める者は、誰もいない。私は安心して双眼鏡を構え、海を見る。変わらない、鈍色の塊を見つめている。
不意に潮が吹き上がった。はい、と手を挙げるみたいに。
「ねえ、このホエルコ、遠い場所から来たんだよ。ホウエン地方だって」
幼い手の中の赤白のモンスターボールを、少女は高々と上げる。少女の遊び相手に選ばれた少年は、柔和な笑みを浮かべてそれを見る。その笑みと、彼のパートナーのツタージャは、似合っていた。どちらも草の雰囲気がした。
昔々、といっても十年少し前のことだが、まだ少女だった私は、親がもたらす恩恵を自分のものとして、当たり前のように享受していた。そして、それを当たり前のように周りに見せびらかしていた。私の遊び相手、というより生贄に選ばれた少年は、いつも穏やかに笑って、私の自慢にもならない自慢を聞いていた。
全く、私は馬鹿だったと思う。もしも過去に行けるのならば、過去の私を殴ってホエルコのボールを取り上げたいものだ。そんな私だったけれど、彼はいつも相手をしてくれていた。この時も、近くの川にホエルコを放って観察するという私の提案に付き合ってくれた。草の匂いのしそうな、あの柔和な笑みを浮かべて。
河原を歩き、ちょうど良い滝壺を偶然見つけて、そこにホエルコを放つことにした。思えばそれだって、無茶な行軍をしたものだ。河原のすぐ上の道は気まぐれに切れていて、私と彼は何度も河原に降りて進まねばならなかった。道がすっかり低木で覆われていて、小枝を体で折るようにして進むことも度々あった。これでは満足に進めないと、私たちは河原を行くことにした。足に優しくない石ころにふうふう言いながら、川沿いをずっと進んだ。道中で現れた野生のミネズミやクルミルは、彼のツタージャに追い払ってもらっていた。そこまでされていて、滝壺に着いた私はお礼のひと言もなかった。彼がそうして従者みたいに付いて来るのを、当たり前に思っていたのだ。今なら分かる。過去の私は調子に乗ったクソガキで、彼は得難い友であった。そういうことは、いつも失ってから気付くのだ。昔々の人々が、何度も繰り返し言ってきたように。
私たちは滝壺でホエルコと触れ合った。私はすぐ飽きてしまって、河原に転がっている、一見綺麗そうな石を見繕い始めた。その時の石ころも、持って帰ったのにいつの間にか失くしてしまっていた。
彼はというと、ずっとホエルコに向きあって、肩にツタージャを乗せたまま、そのゴムみたいな肌をいつまでも触っていた。「お前はどんなところから来たの。ホウエンって暑いところらしいね。こっちは寒かないかい。あっちの海もこっちと同じくしょっぱいのかい」……そんなことを言っていたように思う。
ツタージャの冷たく赤い大きな目と、彼の草を思わせる目が、ずっとホエルコに注がれていた。人間である彼はともかく、ポケモンであるツタージャがずっとホエルコを見ていたことが、印象に残っている。
それから年が少し巡ったが、私と彼の関係は変わらなかった。私は相変わらず親の力でポケモンを手に入れては、彼に見せびらかしていた。彼は黙って、ツタージャ一匹を連れて、いつも微笑んでいた。ツタージャしか連れていない彼に、私のポケモンをあげようかと言ったこともある。彼はもちろん穏やかに断った。全くもって愚かな人間の子どもの言うことだが、最後にそれだけは果たしたことになる。
少し変わったのは、あの夏のこと。
中等学校の一年目を終えた私は、その日、女友達数人と意味のないことではしゃいでいた。町の中心部に出てカラオケかウィンドウショッピングか、その他その年頃の女の子が考えつきそうなことを計画していた。その行く先の、道の真ん中に彼が立っていた。
「あ」私は嫌な顔をしたはずだ。中等へ上がって以来、彼と人前で話すのは極力避けていたのだから。クラスメイトに彼と付き合っていると思われるのが嫌だという、子供っぽい理由だった。私は彼を避けた。そして、その内彼と話すこと自体なくなっていた。
「こんにちは」と彼が言った。その声は低く穏やかで、柔な草が若木になったような、そんな印象を抱かせた。ただ、それは後で感じたことで、その時は……彼が私の知らない間に声変わりしているのが、悲しいような、悲しくないような、そんな衝撃を受けた。
「少し、いいかい」声変わりした声で、彼が言った。女友達が何かを暗示するように私を見る。「大事な話なんだ」彼の言葉が彼女たちの妄信に拍車をかけた。意味のない音を漏らしつつ、彼女たちは私の肩や腕を叩き、やたらとにやにやしながら彼を避けて道の先へ消えていった。
後には彼と私だけが残された。
「何の用なの」つっけんどんに私は言った。彼はいつかと同じ、柔和な草を思わせる笑みを浮かべて言った。
「旅に出ようかと思ってさ。ほら、夏休みだし」
旅? と私はオウム返しに聞いた。そう、旅、と彼は返した。
旅には、本格的なものには中等を出てから行く人が多いのだけれど、その時の彼みたいに、長期休暇を利用して行く人も、結構いる。長期休暇が始まると旅立って、終わる頃戻ってくる、そんな期間限定の旅。
「いいんじゃない」
私は何故か安堵して、そう言った。男子はよく行くし、夏休みが終われば帰ってくるし、いいんじゃない。私はそんな風に安心したのだ。
「そっか」彼はまた柔和な笑みを浮かべて言った。「じゃあ行こうか、ツタージャ」
不意に草蛇が、彼の背中から生えてくるようににょっきりと顔を出した。涼やかな赤い目が彼を見つめ、ぴうい、と小さな声で鳴いた。
「皆、行っちゃったね。ごめんね」
彼は女の子たちが去って行った道の先を眺めていた。そして、私を振り返ると、「君には言っておきたかったんだ」と言った。
「別にいいよ」言ってから、ぞんざいな返事だと気付いた。
「別に、今生の別れってわけじゃないんだしさ」
彼は戸惑ったように目を迷わせて、「それじゃ」と言った。私は「またね」と言った。彼の服の背に手足を引っ掛けたツタージャが、赤い大きな目で私を見た。悠々、といった風格を漂わせるツタージャに、私は何故か、負かされた気がした。
彼がいない夏休みは、別段寂しくはなかった。友達とは遊びに出るし、宿題もするし、ポケモンの世話もする。ただ、強いて言えば乳歯が抜けた時のような、座りの悪い思いをしていた。
私は夏休みの大方を、ポケモンを強くすることに費やした。親に貰ったホエルコを中心に、やはり親に貰ったアブソルやマイナンやスバメなど、ポケモンバトルの訓練をした。私は、親に貰ったポケモンもその内飽きて、結局親が世話をしているということが多かったのだけれど、彼に見せたのと同じあのホエルコだけは、自分で面倒を見ていた。
そうして夏が過ぎた。私は夏休み中にホエルコを進化させようと頑張っていたのだが、それは叶わなかった。学校が始まり、私は教室で彼の席をちらりと見る。始業式には彼は来ていなかった。彼が戻ってきたのは、新学期が始まって二日目になってからだった。少し、日焼けしていた。けれど、ツタージャは変わらずツタージャのままで、私は少しだけホッとした。
「ごめんごめん、少し遅くなって」
放課後、私は彼と話をした。学生がよく行くファーストフード店で、私はジュースだけ頼んで席に座った。彼はハンバーガーセットをひとつ頼んでいた。そんなによく食べる方ではなかったのにな、と私はふと思った。
旅に出て、なんとなく、彼が変わったように感じていた。話し方や行動が、ほんの少しだけ、きびきびしている。多分それは若木が樹皮を固め始めたような、確固たる芯を手に入れたような、そんなものなのだ。
彼のツタージャはまだ、ツタージャのままだけれど。
ちょっと道に迷って、と付け足したのは、新学期に遅れた言い訳なのだろう。私に言っても仕方ないのだけれど、と思いながら相槌を打った。
「旅先では色々あったよ。道に迷って、海に落ちて、ランセ地方まで行っちゃって」
「ちょっと待って、それ、どこ?」
彼は頭を振って、よく知らない、と答えた。とにかく、彼はツタージャと共に海に落ちて、ランセ地方まで流れてしまったのだそうだ。
「右も左も分からないし、本格的に道に迷ってしまって、困ってるところをアオバの国の」
そこで彼は言葉を切った。私は別なところに引っかかった。
「国? 地方の中に国があるの? 普通逆じゃない?」
「ランセ地方ではそうなってるんだよ」
だとすれば、彼は見当もつかない、よっぽど遠い場所まで行ったのだ。
「国って呼ばれてるけど、規模は僕らの言うタウンぐらいだよ。そこのブショー……ジムリーダーみたいな人に助けられてね」
彼が漏らした言葉を気にしつつも、跳ね上がった彼の語尾に注意を取られる。私はストローを口に咥えなながら、「それで?」と先を促した。彼は話した。若木みたいな声で、本当に楽しそうに話した。
ジムリーダーみたいな人、モトナリさんに助けられ、ずいぶん世話になったこと。そのモトナリさんもツタージャを連れているそうで、モトナリさんと彼はそれで息が合ったらしい。きっとモトナリさんも、彼みたいな草っぽい人だろうな、と私は密かに思った。
ランセ地方では変わったファッションが流行っているようで、全体的にゆったりしたものが好まれているらしいこと。例えばモトナリさんは、二段構えの不思議な帽子を被っていたらしい。これは説明を聞いてもよく分からなかった。
ランセ地方でポケモンを育てられるのは、才能ある限られた人だけ。皆がモンスターボールを持ってポケモンを持てる地方じゃないんだね、と私が言うと、そもそもモンスターボール自体ないんだと彼が言った。私は声に出して驚いた。
「モトナリさんも驚いてたよ」彼は笑った。
モトナリさんはモンスターボールにいたく興味を示し、出来ればじっくり研究したいとまで言ったそうだ。しかし、彼はツタージャのボールしか持っていなかったので、その件は保留にしたと言った。
「今度行く時に、ボールをいっぱい持って行くんだ」
モンスターボールだけじゃなくて、他の種類のもねと彼は嬉しそうに言った。
その今度がいつなのか、どうやって行くつもりなのか、私は尋ねなかった。
その夜、私はベッドに寝転んで、電気も消さないまま、ぼうっと天井を眺めていた。家に帰ってから、私はまず地図を調べた。けれどランセ地方という文字は、私の持っている地図のどこにもなかった。探し方が悪かったのかもしれない。地図に載らないような、遠い、遠い場所なのかもしれない。私はホエルコの入ったボールを高く上げた。赤と白の球体の向こうは、どうしても見透かせなかった。そして、思い描いた。
誰もポケモンをモンスターボールに入れない世界。一部の人だけがポケモンを連れて歩いている。人は皆ゆったりした服を着て、畑を耕したり、山菜を取ったりしている。二段構えの帽子を被ったモトナリさんはそんな国の人の様子を眺めて、傍らのツタージャに話しかける。
うまく想像できなかった。
「お前もそんな遠くから来たのかい」
ボールの中のホエルコに話しかける。返事はない。生まれ育ったところと余りにも勝手の違うところへ来たら、寂しかろうなと私は思う。それとも、余りに遠すぎて、故郷を思うことさえ辞めてしまうだろうか。
お前は帰りたいかい、ホエルコ。それとも……
いっそのこと、もっと遠くへ行きたいかい。
私は心の中でだけ、ホエルコに問いかけた。
彼の二度目の旅立ちは、中等卒業の時にやってきた。ホエルコはホエルオーに進化して、ツタージャはツタージャのまま、私たちはその日を迎えた。
彼は、色んなモンスターボールが入った袋を背負っていた。
「じゃあ、行ってくるよ」
「うん」
夏のサザナミ湾から少し南に外れた、ひと気のないビーチで、彼は言った。それから、ホエルオーをしばらく貸してほしいと言った。ランセ地方へは海を渡らねばならない。ランセ地方から帰る時は野生のホエルオーに頼んだが、こちらで同じことは出来ないと言う。きっと、モトナリさんがホエルオーに頼んだのだろう。
「いいよ」
快諾して、私はホエルオーのボールを彼の手の中に落とした。
「でも、ちゃんと返してよ」
「分かってるよ」彼は枝葉を広げ始めた木の趣きの笑みを浮かべて、言った。
「まずは一年ほどで戻ってくるつもり。少なくとも、再来年の年明けまでには帰るから、待っててね」
そう言って、彼はホエルオーに乗って大海を行った。私は彼の姿が見えなくなっても、しばらく水平線に向かって手を振り続けていた。
後はお察しの通り。年が明け、一年経ち、二年経っても、彼は戻らなかった。
鈍色の海の中から、不意に玉を撒くような、潮の柱が立ち上がる。何度目だよ、と思いながら私は見ている。もう、今年はこれくらいにしておくか。
私は荷物をまとめ、冬のサザナミタウンから引き上げることにする。来年はもう、来ないかもしれない。いや、やっぱり来てしまうだろう。
だって、彼は帰って来なければならないのだから。貸しっぱなしのホエルオーを、返してもらわなければならない。モトナリさんがどれだけモンスターボールを喜んだか、アオバの国の外はどうなっていたのか、話してもらわなければならない。それとも、お前はランセ地方に根を張ってしまったか? あるいは、ランセ地方からさらに、遠い場所まで行ってしまったか?
「帰って、来おい」
私のささやかな願いは潮騒に消える。鈍色の海は変わらず、陽の光を物憂げに弾いている。
ランセ地方ってどこにあるのでしょうか。地方というからには地球上にありそうな、でも遠そうな、簡単には行けなさそうな、そんなふいんき(何故か変換できた)
【何してもいいのよ】
こちらこそ初めまして、くろまめです。
ギャグはほとんど勢いで書いてるんですけどね(笑)
案外考えない方が良いアイディアが浮かんだりしますよ。
最近の悩みは、会話文と地の文の比率が悪いことです。
いっそのこと地の文だけにしたいくらいです(笑)
ご感想ありがとうございました。
日増しに暖かくなり、外に洗濯物を干すことも苦ではなくなった。石畳の小道に面した私の部屋。ベランダの手すりにシーツ、タオルを並べていく。端っこにはシェイミをモチーフにしたプランター。
金属製のハンガーには下着とYシャツ。あの双子のは、少し離れて別のハンガーに干す。男性、しかも五十を超えた男に若い女性の私物は干せないので、ドレディアに頼む。
部屋の中にあるロトム型のラジオから、ハスキーな女性の声が聞こえてくる。全国的に晴れ渡り、花粉が非常に多い日になるでしょう。
下の通りを歩く人達の中に、花粉マスクをつけた人が沢山いた。私は花粉症ではないが、洗濯物に花粉が付くのは好きではない。バイクに黄色く汚れが付くのもいただけない。
「……晴れたことだし、水仕事をしようか」
ドレディアが頷いた。
アパルトマンの裏。ガレージがあり、住人の自転車やバイクが置いてある。ここに子供連れで住んでいる人間はいない。若い女性や男性はいるが、それでも結婚はしていない。
ホースを使うと周りに飛び散るので、バケツに大量の水を入れて持って来た。ゴム手袋に雑巾、洗剤も忘れない。
黒がメインカラーなので、白ほどではないが汚れが目立つ。案の定、花粉と砂埃が猛威を奮って表面に模様を作っていた。少しずつ洗剤と水を使って落としていく。
ふとガレージの屋根の隙間を見れば、梅の花が咲いているのが見えた。濃いピンク色。今年は芯まで冷える日が多かったせいか、桜の蕾はまだ固い。やっと梅が咲いてきた頃だ。例年より五日ほど遅いという。
腕まくりをした腕に日光が差し込む。ドレディアが横で久々の日光浴を楽しんでいた。
終わった時には、時計が十時半を指していた。
あの二人はまだ帰ってこない。確か今日は答案返却と大掃除だと言っていた。双子とはいえ、高二になればほとんど変わってくる。文系、理系の差ではなかった。勉強が苦手なのは二人とも変わらなかった。
昼食と夕食の買出しをするため、ドレディアと一緒に部屋を出た。もうコートはいらない。薄いセーターだけで平気だ。
パン屋に行ってフランスパン、スーパーに行って野菜と果物を買い込む。ついでに珈琲店に行って豆を買う。帰る時に、学生達とすれ違った。いい顔をしている者もいれば、その反対もいる。後者はしきりに鞄を気にしている。試験の結果の問題だろう。あの二人は、どんな顔をして帰ってくるのか。
石とレンガが多く、近代的な印象をあまり受けない街。私が移り住んで五年以上が経つ。沢山の人との出会いに支えられて生きてきた。私がポケモンを手に入れるなんて、全く考えていなかった。
ここに留まることも……
帰った私がまず一番初めにしたことは、手を洗うことだった。その後にキッチンへ向かい、鍋に水を入れて沸かす。ほうれん草を洗って切り、バターでいためる。途中でベーコンと卵を入れてとじる。
水がお湯になったらそこに玉ねぎ、人参、キャベツを刻んでいれて茹でる。火が通ったらコンソメを入れ、溶けたらチーズを入れる。
「ただいまー」
二人が帰ってきた。どことなく声に張りがない。おかえり、と言った私の目に飛び込んできた物はテスト用紙だった。妹の方はため息をついた。
「今回はいけると思ったんだけどなあ」
「でも赤点は免れましたし。私も現代文が」
「いいよねヒメは。あたしなんてとりえは体育だけ……」
珍しくネガティブな発言が目立つ。買ってきたフランスパンを切り、皿に盛った。
「さあ、先に食べなさい。ヒナさんは部活があるんだろう」
「そういえばマスター、春休みどうすんの?あたし達はこの一年で溜めたバイト代でどっか行こうかと思ってるんだけど」
パンにチーズを塗り、かじる。粉がテーブルに落ちる。
「どうせなら遠い所に行こうかと思って、色々パンフ持って来た」
彼女の鞄から、色とりどりのパンフレットが出てきた。カントー、ジョウト、ホウエン、シンオウ。そしてイッシュ。ヒウンの港が表紙だ。
「ジョウト行こうかな。食べ物が美味しいらしいし」
「各地の名産品を味わいながらっていうのもいいですね」
「ポケモンも見てみたい」
「二人とも、読むか食べるかどちらかにしなさい」
友人と約束がある、ということでヒメは出て行った。皿を洗い、一息ついたところでパンフレットが目に入る。春休み。自分の場合休みと平日の違いはあまりない。
「……」
二人が行く場所とは別の場所だろう、と思っていた。ただ行くかどうかは分からない。行くとしたら――
まだ梅しか咲いていない。だが確実に桜の蕾は膨らみ、開花を待ち続けている。
春が近づいていた。
知恵袋に寄せられた相談:
5日程前、エンジュシティの南の方で良い雰囲気なゾロアークのカップルを見かけたんですが、何と片方が色違いだったんです!
色違いなんて初めて見たので物凄く印象に残っています。そこでふと気になったのでお聞きします。皆さんが見た色違いのポケモンを教えて下さい!
回答1:
私も4ヶ月程前にヤドンの井戸の辺りで色違いのゾロアークを見掛けました。ロコンと一緒に歩いてました。
ロコンが鬣を触りたそうに見てました。実際少し触ったりしてました。微笑ましかったです。
回答2:
先月の下旬にキキョウシティの西の方で同じく色違いのゾロアークを見ましたね。
確かコジョンドと手を繋いで歩いていたと思います。紫色の鬣が綺麗でした。
回答3:
クチバシティに色違いのゾロアークと通常色のキュウコンの夫婦がいました。可愛いロコンの子供もいてとても幸せそうでした。
ゾロアークがキュウコンに一途なのが凄く伝わって来たっす。あれこそ夫の鑑っすね。
あと、質問者さんのゾロアーク達は絶対カップルじゃないです。決して良い雰囲気でもないです。
回答4:
うちのイーブイが色違いです! 銀色でもっふもふで超かわいいです!
この子タマゴから生まれたんですが最初見た時汚れてるのかと思って洗いそうになりました(笑)
進化させるか悩んでますがそれは別の話ですね。
回答5:
いつだったかは忘れましたがウバメの森で色違いのゾロアークを見た事があります。
キュウコンの尻尾を枕にして気持ち良さそうに寝てました。羨ましかったです。……羨ましかったです。
あの時からいつかキュウコンを手に入れて同じ事をするのが私の夢になりました。羨ましかったです。
回答6:
ゾロアーク大杉ワロタwwwwwwまあ俺が見たのもゾロアークなんだがwww
確か2ヶ月位前にヨシノシティの北辺りで普通のゾロアークと一緒に鬣を梳かし合ってたな。ゾロアークたんカワユス。
まぁ何が言いたいかって言うと、リア獣末永く爆発しろ。
回答7:
僕もこの間ラジオ塔の入り口付近でゾロアを抱いてる色違いのゾロアークを見掛けました。
ゾロアは普通の色でしたが非常に可愛かったです。
それにしてもゾロアークの目撃情報多いですね。同じ個体だったりして(笑)
――――――――――――――――
どっかの誰かに似てますねぇ、フヒュヒ。本人じゃないと良いですねぇ、ニヤニヤ。
という訳で某ゾロアークをお借りしたかも知れませんしお借りしてないかも知れません。どっちでしょうねぇ、ニタニタ。
知恵袋のスレは既にありますが、これは毛色が違うので別で立てました。
とりあえずキュウコンの尻尾を枕にしたいです。
【書いてもいいのよ】
【描いてもいいのよ】
【回答してもいいのよ】
【浮気してもい……浮気はだめなのよ】
【回答3はベストアンサーにはならないのよ】
【尻尾を枕にしたいのよ】
あけましておめでとうございます!
☆受験ガンバルゾー
☆あと二ヶ月で解放→ネタ解消に向かう
☆文章力を底上げしたい
☆とりあえず書きたい
お題でもあるドラゴンにも手を付けたいですし!
神の鐘を鳴らせ!雪ふぶく風の上、神を呼ぶ鐘を!
マフラーに顔をうずめて、あたり一面真っ白な街を歩く。後ろには彼女のパートナーが雪の上に足跡を残して歩く。
「冷たい!」
ゾロアークがしぶそうな顔をしている。森に住んでいる時から雪は苦手。
「もうすぐだからね、ごめんね」
「おれはツグミと違って毛皮があるから多少の寒さは平気だ」
気遣うツグミをこれ以上心配させないよう、ゾロアークは言う。けれどそれにも限界があることは、寒さで震える足を見ればすぐ解る。
ツグミは歩きなれない雪道を早足で歩く。それにゾロアークもついていく。
ポケモンセンターもない山間の街にツグミたちはたどり着いた。夜をあかすには野宿というのは無理がある。
宿を探していると、街外れの教会に行けば一晩くらい泊めてくれるだろうと教えてもらった。
しかしその教会の遠いこと。街のまんなかから雪をかぶった屋根が見えていたが、雪道では歩みも遅い。
日が落ちて目の前が紫色の吹雪になっても、ツグミは一生懸命歩いていた。ゾロアークは彼女を信じてついていく。
坂を登り、吹雪で凍りついた教会の扉に触る。ツグミが叩くと、すぐに落ち着いた声が帰って来た。
「すみません!ポケモントレーナーなんですが、一晩止めてもらえないでしょうか!」
手袋をしても指先は冷たく、ブーツに入った雪がツグミの足を凍り付かせている。扉の向こうの暖かさを期待して、ツグミは返事を待った。
「おや」
扉が開き、出てきたのは背の高い男の人だった。聖職者のようで、左手には厚めの本が握られている。
「ポケモントレーナーとは珍しい。これも神のお導き。お入りなさい」
男は穏やかな口調で微笑む。ツグミは大きく息を吐く。
「ありがとうございます!」
「ありがとう!」
ツグミに続いてゾロアークも中に入る。そして一瞬だけゾロアークは男を振り返り、すぐさまツグミの側へ行った。
中は石造りなのにとても暖かい。ツグミはさっそくコートを脱いだ。マフラーも手袋も取り、暖炉に当てる。ブーツを脱ぎ、濡れた靴下を干すと、冷たくなった足を火に当てた。
「ゾロアークは何を食べるのでしょうか?」
男はツグミにホットチョコレートを渡す。受け取りながら、ツグミがここまで得たことを話した。
「ゾロアークはタマネギチョコレート鳥の骨魚の骨以外なら食べても大丈夫です!」
「では暖かい野菜のスープとパンで大丈夫でしょう」
ツグミが話している間、ゾロアークは落ち着かない様子だった。暖炉の側にいながら、天井につるされたシャンデリアや、壁に灯されたろうそくを交互に見ている。
「どうしたのゾロアーク?」
「いや、その気になって…」
「神の鐘、でしょうか?」
男が指さした方向。それはつるされたシャンデリアに隠れるようにして見える金色の何か。
「屋根裏になっていますが、あそこまでいく階段も梯子もないため、現在では鳴らせません。けどあれは神の鐘といって、昔あらわれた邪悪なポケモンを神が鐘を打ち鳴らし全て葬ったと言われています。そのため、あの鐘は神にしか鳴らせないあんなところにあるのです」
野菜スープが皿に盛られる。硬めのライ麦パンと共に。暖かい食事に、ツグミとゾロアークは夢中になった。
「神の誕生祭では教会の外にある鐘を使います。神の誕生と共にあの鐘があると言われていることから、あちらの方が相応しいとは思いますが、神の御心次第なのです」
ゾロアークがパンをかじりながら男の話を聞いている。ここに入った時から気になって仕方ないのだ。ツグミは気にならないのか、いつもの通りだった。
ツグミのベッドの足元にゾロアークは丸くなって眠る。毛がつくからたいていの人間は嫌な顔をするものだ。毎朝、ゾロアークの毛だらけになりながらもツグミは笑っていた。
ツグミに会ってから数ヶ月。季節は巡って冬になってしまった。ゾロアだったのがゾロアークとなった。時間と共に変わっていく景色。そして関係。
ゾロアークは目を覚ます。うたた寝してしまったようだ。気づけばツグミの気配がない。トイレにでも起きたのかと寝床に臥せる。
それにしても遅い。ゾロアークはベッドから起き上がると部屋を出た。
「ツグミー!」
ゾロアークの声が石造りの教会にこだまする。自分の声が重なって、ゾロアークは少し頭がクラッとした。
「まったく、世話のやけるトレーナーなんだから」
これだから一人で行動してはいけないと…。ゾロアークはぶつぶつ言いながら次の扉に手をかける。
「うぶっ!?」
熱風を食らったかのような暑さ。先ほど食事をしていた場所と同じところとは思えない。
「あ、暑い…」
「起きたんですかゾロアーク」
男の声がする。その脇には寝間着のままのツグミが抱えられている。
「ランプラー、ちゃんと薬は混ぜたんですか?」
石造りの壁一面に灯るヒトモシ、そしてランプラー。ゾロアークの感じていたものはこれだ。
「マゼタヨ。ケドゾロアークガタフナンダモン」
「そうですか。仕方ないですね」
「ちょっと待て、どういう意味だ。そんでツグミをどうするんだ」
「ゾロアークバカ。ニンゲンナンテタベチャエバイイノニ」
「ランプラー、口が悪いですよ。ゾロアーク、ここにいるヒトモシたちはみな人間に弱いからと捨てられた子たちでね、人間が嫌いなんですよ。この子たちは人間の生命力を使って生きる。弱いから要らないと言われたヒトモシたちに食われる人間の滑稽なこと」
「お前ら…あいつらみたいだな」
すでにゾロアークの毛は逆立っている。そして素早い動きで男に飛びかかる。ツグミの体が男から離れた。
「私を殺しても、恨みは消えない」
男の顔を殴りつける。けれど当たったのはやわらかい紫のメタモンだった。
「早く、出るぞ」
ツグミを見る。起きる気配は無さそうだ。主犯のメタモンがやられてヒトモシたちは動揺している。逃げるなら今だ。
「お待ち!久しぶりの獲物、逃がさないよ!」
声が響いた。動揺していたヒトモシが一斉に静かになる。どこから聞こえるのか解らない声が、ゾロアークの頭に響く。
直後、ゾロアークの上に衝撃が走る。気絶し、床に臥せたままのゾロアークは無視し、ツグミを抱える。
「シャンデラママ!」
次々にヒトモシたちが盛り上がる。ランプラーは落ちてきたシャンデラのまわりを嬉しそうに囲んだ。
「よしよしボウヤたち。お父ちゃんがやられちまったからね、今度はゾロアークに邪魔されないところでご飯にしようね」
「ハーイ」「ハーイ」「ハーイ」
凍えるほどの寒さで目を覚ます。ゾロアークが再び目を開けると、灯りもなにもない、真っ暗な空間。その中で唯一見える、雪明かりに反射する神の鐘。
手を探ってみれば、何かやわらかいものをつかむ。それが先ほどのメタモンだった。
「おい!」
「なんだ」
「ツグミはどこだ。どこへやった」
「知らないさ。シャンデラと共に食事中だろ」
ゾロアークはその拳で再び殴った。
「ふざけるな。捨てられたがなんだか知らないが、お前らみたいにひねくれ過ぎてんのは初めてだ」
「人間に必要とされてるポケモンに何が解る!」
「何も解るか!解りたくもない!自分の環境を嘆くのは勝手だが、ウダウダ昔にとらわれすぎなんだよ!これでツグミに何かあったらお前ら皆殺しだ」
ゾロアークは立ち上がる。焦げた匂いの中に残るツグミの匂い。それをつけていけばたどり着ける。
「待て」
「なんだよ」
「神の鐘の言い伝えは本当だ。ここにかくまってくれた男がそういっていた」
「その男も食ったのか」
「そうだ。ヒトモシたちを養うにはそれしかなかった」
「お前らとんだ恩知らずだな」
それだけ言い残してゾロアークは走る。入ってきた扉を開けようとノブに手をかける。
「開かない!?」
どのドアもそうなのだ。ガチャガチャとゾロアークの力でも開く気配がない。
「溶接までしていったか」
「おい、メタモン!」
吠えるようにゾロアークはメタモンを怒鳴りつけた。
「お前がやつらに何とか言え。恩知らずが偉そうに語るなと」
「…お前はなんでそんなに人間に肩入れするんだ。人間など…」
「ツグミだからだ」
ゾロアークは上を見る。雪明かりに鈍く光る神の鐘。邪悪なポケモンを追い払った神が鳴らしたならば…
「あの鐘を鳴らす」
しかし階段も梯子も見当たらない。ゾロアークが石造りの壁に手をかける。少しずつ壁を登っていく。
落下したら命はない。そんな高さである。けれどゾロアークは躊躇なく登った。神の鐘が近くなる。
鐘は壁からも遠かった。梁から吊されてればまだマシだった。天井からただ吊されてるだけの鐘。ゾロアークの爪も届かない。
「ゾロアーク!」
ドンガラスがゾロアークの目の前を飛ぶ。追い払うがまとわりつくように飛んでいた。やがてゾロアークの頭の上に乗ると、紫のメタモンへと姿を変える。
「黒い鉄球になる。それを投げつけろ」
「どういう風の吹き回しだ」
「お前みたいなポケモンに初めて会った。私が会うポケモンみな目が死んでたのに、お前は人間といると楽しそうだった。不思議だった。羨ましかった」
「…お前、好奇心が強いタイプか?」
メタモンはすでに黒い鉄球へと変身していた。
落ちないようにしっかりと壁をつかみ、反対の手で黒い鉄球を握る。そして雪明かりの鐘めがけて投げつけた。
神の鐘はとても美しく、クリスタルのような透き通った音色だった。
シャンデラもランプラーもヒトモシも、その鐘を耳にして動きが止まる。
「あ、あ…」
「みんな、みんな助かるんだ」
「ママ、アタラシイトコロコワイヨ」
「大丈夫、神様がみんな楽しいところに連れて行ってくれるから」
ヒトモシたちの姿が徐々に消えて行く。神の鐘に導かれるように。
その音量にゾロアークは思わず手を離してしまう。床に真っ逆様に落ちるが、下にあったのはカビゴンのやわらかい腹だった
「いてて…どうなったんだあいつら…」
「シャンデラの気配が消えた。浄化されたようだ…あいつも出会った時はヒトモシだったんだけどな」
メタモンはその姿のままぽつりと言った。
マフラーをする。手袋をはめて、コートを羽織る。
「今回はゾロアークに感謝ね!」
朝になってツグミが起きた。ゾロアークとメタモンが夜のことを話した。驚いたようにしていたが、ツグミが次に言ったのは「もう出よう」だった。
「じゃあねメタモン」
ツグミが入り口の扉を開けた。昨日の吹雪が嘘のよう。晴れた雪景色。
それよりも教会に集まって来ている大勢の人たち。ツグミを見るとひれ伏し始める。
「神様だ…」
「神様の生まれ変わりだ…」
「神様の誕生を告げる聖母ではないか」
「神の鐘を鳴らした、神に違いない!」
「こんなタイミングで鳴らすのは、神の誕生に関わった聖母しかいない」
ツグミが鐘を鳴らしたのはゾロアークだと言おうとしても、それ以上の人数で神様に祭り上げられる。
「神様が誕生祭にやってきたぞ!」
あっという間に神様にされて、ツグミは何をどうしていいか解らない。けれど教会の奥でツグミが何か言うのをワクワクして待っている人たちに対して、無言では気まずい。
「あ、あの…」
「おおっ、神のお言葉が…」
「静かにしろ、奥まで聞こえないだろ」 大変なことになっちゃった、とツグミは後ろのゾロアークを振り返る。
「お願いがあります。弱いからってポケモンを捨てないでください。ポケモンは人間が好きです。私のゾロアークも人間が大好きです。だから、ポケモンを捨てないでください。好きな人と離れて悲しいのはポケモンも同じです」
人々はツグミの言葉をじっと聞いている。ツグミはさらに続けた。
「私はこれから、このことを各地に伝えなければなりません。ですから私はここに留まることが出来ないのです。どうか皆さん、このことを忘れずに、今日の誕生祭を楽しんでください」
人々が何とか留まるように頼むが、ツグミはそれは出来ないと言って教会を出て行く。後にはゾロアークが護衛のようにくっついていた。
ゼクロム:勇者といったら俺だ
ピカチュウ:おや、勇者の飼い犬のゼクロムくんではないか。ふはは、勇者といえばポケモンの売上に貢献した俺に決まっている
ライコウ:俺の方が人気があるだろ、だから俺だ
サンダー:俺がいちばん古参だろうg
ピカチュウ:人気なら断然俺。だから俺n
ライチュウ:すっこんでろ進化前
サンダー:(ちっ電気ねずみが)
デンリュウ:可愛さで俺の勝利
サンダース:とろいやつは黙ってろ
エレキブル:素早いだけの針狐は地震をお見舞いしてやるぜ
パチリス:アイテム使いの勇者は俺に決まってる
プラスル:おれたちおれたち
マイナン:俺たち一番だよ俺たち
エモンガ:何いってんだよ、美しすぎるジムリーダーが2匹も使ってた俺しかいねえだろ!かげぶんしん!かげぶんs
ライボルト:ベギラゴン・・・ではなくオーバーヒートも使える俺しかいない
ゼブライカ:かえんぎり・・・ではなくてニトロチャージは私も使える。甘く見るな小僧!
ランターン:俺は船なくても海進めるから俺だ
マッギョ:は?俺なんて泥の中でも使えて、しかも待ち伏せもできてネタにもできる、最高のポケモンなんですけど。俺の人気は公式認定ずみだぜぇー ……ネタ? そんなバカなー
シビルドン:天敵、地震が当たらない俺が大勝利だろ!それ以外何があるんだよ
ジバコイル:地震?なにそれおいしいの?スクルトもぶきみなひかり・・・じゃなかった、かたくなるも金属音も使える俺、かっこよくね?
マルマイン:なあ、お前ら、俺を忘れてないか?最後はこれで決めるぜ
メガンt!
マルマイン:大爆発だ!
ボルトロス:なーんか地上が騒がしいが・・・今日も平和じゃのう
ーーーーーーーーーーー
ごめんなさい。
【お題:電気タイプ】ドラクエの勇者は、デイン系(かみなり)の呪文を必ず持ってるので、電気タイプは勇者なんです多分。
るっきー、みおりん、ズキーニ、きとかげさんありがとうございました。むしろこんなくだらないものになってしまってすいません。
閲覧さん追加。使ってしまってすいません。
【好きにしてください】【バトルにログイン歓迎】
『ジャンケンポン!』
「お前グーしか出さないよな」
「拳一つで戦うのが僕の信条だから。でもハッサムさんには絶対勝てるよ。彼はチョキしか出さないもの。それにしても君は強いよね」
「だって俺いつも後出しだもん」
―――――――――――――――――――――――――――――
【描いてもいいのよ】
【書いてもいいのよ】
【何をしてもいいのよ】
長いのが書けないなら短いのを書けばいいじゃない!
ということでブームは去ったけれど百字で。エビワラーさんとヤミラミさん。
でも後出しもアンコールには敵わなかったり。
この話をする前に、電気を消そう。
そして、蝋燭に火を灯そう。
うん、いいね。それじゃあ、話を始めよう。
昔の話になる。小学生の時分、尻尾の生えた少年が転校してきた。先端に火が灯っている。私が彼に、それは何? と訊ねると、生まれた時から生えてるんだ、と答えてくれた。
火蜥蜴という妖怪に呪われたんだと彼は説明していた。火蜥蜴というのは紅い身体をした、尾の先に火を点した妖怪だ。普通に生活していて見ることなど滅多にない。私は彼が興味深かったのもあって、親しくなろうと努力した。もっとも、努力などせずとも、子ども同士はすぐに仲良くなれる。私と彼はすぐに打ち解け、親友と呼んでも差し支えのない関係になった。お互いあまり裕福ではないことや、少し頭が悪いことも、仲良くなる秘訣だったのかもしれない。
しかし、人間に尻尾が生えていて、尚且つ火が灯っているともなれば、おかしな目で見られるのは必至だ。彼は当然好奇の視線を浴びることとなった。彼は学校ではずっと後ろの席にいたし、水泳は出来なかったし、雨の日には学校に来なかった。身体的におかしいだけならまだ救いがあったのかもしれないが、そうした、集団から外れた行動を多く取っていたこともあって、次第に疎まれることも多くなった。それでも、私は彼と友達だった。彼と一緒にいることで、今まで付き合いのあった少年たちと疎遠になることもあったが、私はそれを受け入れた。彼は優しい少年だったのだ。そんな少年を、見た目の悪さや、行動のおかしさで仲間外れにすることは、良くないことに思えた。
彼が転校してからしばらくが経った頃、私と彼の仲がぐんと深まる事件が起こった。彼の家は非常に遠くにあり、学校から歩いて一時間ほどがかかる距離にあった。ある日、私と彼が一緒に下校していると、ぽつぽつと、雨が降り始めた。夕立という季節ではなかったので、単純に天気が崩れたのだろう。私の家は学校から二十分もかからぬところにあり、雨が降り始めた頃には、丁度近所だった。傘でも貸してやろう、と思い、私が彼を見ると、彼は人生の終わりだとでも言うように、顔面蒼白になり、立ち尽くしていた。
何が起きたのかを訊ねるより先に、私は彼を家に招いた。それまでにも、彼を家に上げたことはあったので、母は別段驚きはしなかった。少し濡れた頭を拭きながら、彼と部屋で向き合うと、彼は少しずつ、秘密を話してくれた。
彼の尻尾に灯った火は、生まれてからずっと絶えず燃え続けているらしい。そして、彼に尻尾が生えているのは、呪いではなく、彼が火蜥蜴の子どもだからと言った。どういうことか、と訊ねると、彼は半妖なのだと言った。親が火蜥蜴と人間なのである。私はひどく驚いたが、嫌いになろうという考えは起こさなかった。彼は、その話をしたら私に嫌われるのではないかと随分心配していたらしい。しかし、当時の私にとってみれば、親の話など、どうでもいいことだった。
また、彼はさらに、尻尾の秘密も話してくれた。彼の尻尾の火が消えると、命は尽きるというのだ。親から強く教えられていることだという。本来であれば、火蜥蜴たちは外の世界には出ないのが普通だという。人里は愚か、森にも出ない。ずーっと奥深くにある洞窟の中に住み、そこで一生を終える。何故なら、雨に打たれたら、そこで命が消えてしまうからだ。彼が絶望していたのはそういうことだったのか、と私は合点がいった。また、彼が雨の日に学校に来なかったり、水泳の授業を休むのも、納得することが出来た。
しかしあとに残ったのは疑問だ。そんなに危なっかしいのに、何故学校に来るのか。彼の答えはこうだった。友達が欲しかったんだ、と。半妖とは言え、半分以上は人間である。妖怪らしいところは、尻尾があることぐらいなのだから、人間の友達が欲しいと思うのも当然だろう。曰く、洞窟内での遊びと言えば、岩壁に手足を投影して影絵を作ることぐらいであるらしい。しかし、人間である彼は、もっと身体を動かす遊びがしたいし、少年らしく遊びたかったのだそうだ。彼は私が友達になってくれて嬉しかったと言った。そして、秘密を知っても嫌わないでくれてありがとう、と言った。この秘密を知られたら、人間とは一緒に暮らしてはならないと教えられていたそうだ。だからこの秘密は誰にも言わないでくれ、と言われた。私は固く約束をした。決してその秘密を漏らさないと、握手を交わした。
ところで、噂というのは風に乗ってやってくるという話があるが、どうやらそれは事実であった。私と彼だけが共有していたはずの秘密が、何故か学校に知れ渡っていたのだ。
大雨があってから一週間ほど過ぎた頃、級友の一人がこう言った。こいつ、尻尾の火が消えると、死んじゃうらしいぜ。私は耳を疑った。何故それをこいつが知っているのだろう。あとになって思い返せば、水を避ける生活をしているのだから、そうした考えに至っても不思議ではない。しかし当時の私は、そんなことを冷静に考える余裕がなかった。
咄嗟に彼の方に視線を向けると、彼は、ひどく複雑そうな表情で、私を見ていた。違う、私ではない、そういう類の言葉が喉まで出かかったが、私の喉が動く頃には彼はもう教室を飛び出していた。慌てて追いかけたが、彼はもう見えなくなっていた。そして、その日から彼が学校に来ることはなくなった。
私は彼の安否が心配になり、担任に彼の住所を聞いて、休みの日に単身彼の家を訪れた。一時間ほどかけて歩き、頂き物の缶に入ったクッキーを、そのまま風呂敷に包んで持って行くことにした。
彼の家はとても深い森の中にあった。戸を叩くと、中から背の高い男が現れた。彼の父親であるらしい。そっと中を覗くと、紅いおぞましい皮膚がこっそりと覗いた。あれが母親の火蜥蜴なのだろう。少々怯えながら彼の様子を訊ねると、君とは会いたくないそうだ、と彼の父親が説明してくれた。無理に会っても話せそうにない気がしたので、私はクッキーを預け、家をあとにした。気の利いた手紙でも書けば良かったと後悔しながら家に帰り、居間に向かうや否や母にひどく叱られた。クッキーを無断で持ち去ったことが良くなかった。クッキーの缶はとても有用で、利用のしがいがあったからだ。理由を説明すれば分かってもらそうなものだが、当時の私は、頑なに理由を説明しなかった憶えがある。
それからも彼は学校には来なかった。私はその時にはもはや友達がいなかったので、退屈な時間を過ごした。彼がいなくなったことを嘆く者はほとんどいなかった。ただ、皆彼を傷つけたのだという意識はあったのか、時折私に、彼の様子を聞いてきた。私は、何も知らないよ、と答えるだけだった。
一週間後、彼の家を再び訪れた。しかし、今度は戸を叩いても誰も出て来なかった。昼寝でもしているのかと戸に手を掛ける。鍵は掛かっていなかった。恐る恐る家の中に入り、そこがもぬけの殻であることを知った。彼らは引っ越していたのだ。
休みが明け、担任に話を聞くと、転校してしまったことを内緒で教えてもらった。その事実は広めずにおくように、ということだった。どうやら、私が考えている以上に、彼らの生活は苦しいものだったのだろう。心臓を剥き出しにして生きているようなものだ。冗談で水をかけようものなら死んでしまうのだから。漠然と、もう彼とは会えないのだな、ということを悟り、私はひどく落ち込んだ。それから何日か味気ない日々が続いたが、ほとんど記憶には残っていない。
秋が過ぎ、冬が訪れた。彼がいなくなった心の部屋を埋めるように、私はまた友達を作った。まるで嵐のように彼との日々は過ぎて、消えてしまった。幻だったのかもしれないと思うことだってある。陽炎のような日々は終わった。妖怪はやはり妖怪で、人間とは相容れないのかもしれない、と思い始めた頃だった。
夜更けに、しんしんという音を聞いた。雪の降り積もる音だった。寒さで目が覚めたのだろう、身体を起こすと、手足が凍ったように冷たかった。布団を多くかけようと起き上がったところで、私はあるものを見た。
縁側へ出る障子戸に、彼がいた。いや、彼の影が映っていた。自らの火を明かりにして、影絵のように映り込んでいた。私はあっと声を上げた。急いで近寄ろうとするが、障子戸の影は、ゆるゆると首を振ったように見えた。私は動きを止めた。近寄ってはいけないという、不思議な力を感じていた。
彼はその場で、私に影絵を披露してくれた。彼の影絵を見るのは初めてだった。それはまるで、一つの劇団が行うように、多彩で、美しかった。私は彼が会いに来てくれたのだということをすっかり忘れて、その影絵に見とれた。障子戸の舞台には、しんしんと降り積もる雪の音だけが聞こえていた。
どれくらい見ていたのだろう。あっと言う間だったような気もする。彼が礼をしたのを合図に、幻想は解けてしまった。
私がまた近づこうとすると、彼は今度は口頭で、もう会えないんだ、と言った。どうしてだい、と訊ねると、人間にはなれないからさ、と、悲しそうに答えた。
私は、あの秘密を喋ったのは自分ではないと言うべきか、とても迷った。この期に及んで言い訳をするのか、と思われるのも嫌だったし、かといって勘違いをされたくもなかった。悩んでいると、彼はゆっくりと、君じゃないってすぐに分かったよ、と言った。でも、君が優しくても、君とだけは生きていけないから、と、彼はまた、寂しそうに言った。
クッキーをありがとう。缶は返すね。彼はそう言って、縁側に缶を置いた。乾いた金属の音がした。それじゃ、さようなら。去って行こうとする彼に、私は一つだけお願いをした。どうしても欲しいものがあったのだ。彼はそれを快く引き受けてくれた。クッキーの缶にそれを立てて、彼は去って行った。少しずつ遠くなっていく彼の明かりと、近くの明かりが、幻想的な世界を創り出していた。
私と彼の話は、これで終わりになる。
その後、彼がどうなったかは知らない。私は彼を含め、妖怪とは全く縁のない生活を送り、今に至る。彼は半妖であるから、きっと長寿だろう。私よりももっと長く生きるだろうから、いつかまた会えるかもしれない。それじゃあ、こんなところで、話を終わりにしよう。
ああ、火は消さないでおいてくれないか。
それは、ずっと消してない、大切な火なんだ。
こんにちは、中二病真っ盛りの荒塩飴@夏蜜柑でございます。
えーと、3作目‘‘家出ムクホとトレーナーの物語”を読んでいただき誠にありがとうございます。
ネタが入り、よし書くぞ!と思い書きました・・・・・・が、曲の歌詞をパクったようなものが!出来てしまいました(汗) 只今冷や汗出てます。
最後の文、‘‘ハッピーエン”で終わっておりますが、これは打ちミスではないです。
じっくり考えていただければ、その意味がわかると思います(^^)
これからもよろしくお願いします(^ω^)/
感想ありがとうございますです!!
> ◆大半の他のキャラクターはサザンドラ(てこさん)に乗っている中で自力で飛行(我が道を行くスタイル)
トトロは乗らなくても自分で飛べるのです! (爆)
> ◆でかい図体(見たまんま)
トトロですから!
> さすが風間さんの後輩(になる可能性が高い)mossさん! 既にセンスが素晴らしいです(´ω`)
センスが素晴らしいなんて……ありがとうございます、照れますおw
後輩には何が何でもなるです! 意地でもなるです! (爆)
> 素晴らしい絵をありがとうございました!
お褒めいただき大変恐縮です! 見ていただきありがとうございました!!
野生で、他のポケモンと話すということを知ることが出来たのが、池月くんですから、きっと金柑にとっては良いヤツなんでしょう。多分、良いヤツなんです、ただ浮気癖があるだけの・・・
そのイーブイは、ピジョットに攫われそうになったときに金柑が助けた捨て子です。
そして、のちの金柑の・・・・・・
その事もあるから、きっと池月は「いいやつ」という評価がついて、金の貸し借り程度では動じない評価なんだろうと思います。
あと、金柑が腹黒ライチュウだという噂もあったので、評価上がったのは嬉しいです。
確かに、高利貸し、キャバ経営、飲食店経営となれば、闇の帝王を思わせる職業ですg(
感想ありがとうございました。
ポナヤツングスカ支店はあまりのインパクトにプレイヤーの印象に残りますよね。
いえいえ、とんでもないですー。お忙しかったようで一区切りついたようで何よりです。大きい生物の方、盛況になることを願っておりますー。
こちらは半年以上も空いての勝手な書いてみたなので(笑)この場を借りての勝手の書いてみたご無礼お許しくださいねー。
構想あるということでそれだけでも嬉しいです。気長にのんびり待ってます。
No.017さんが焼き殺されては大変なので(笑)まずは長編やほかの作品頑張ってください!
こんばんは。百字にハマりすぎて、謎のサイトまで建てかけてしまったレイニーです。(URL→企画)
というわけで、以下書きためた百字小説からお気に入りの物をマルチポッポ。
尚、全てスペースは字数に含みません。あしからず。
【全て何をしてもいいのよ】
メタグロスとか
ガブリアスとか
ごついのはいっぱい見るけれど
アニメの第一回から主人公だった彼のこと
最近忘れちゃあいませんか?
目指せ、タワーにサブウェイ百勝
もう一度初心に返って
今こそ集めよう、スーパー電気玉
我慢じゃないのです。忍耐なのです。じっと耐えるのです。それしか取り柄がないのです。
「ソーナンス!“カウンター”!」
「そーぉなんっすぅぅ!」
それが特技です。自慢です。誇りです。こればっかりは負けません。
※100字
白と黒の綺麗なコントラストを想像しました。
恨みを食べるカゲボウズや雨の風景のはずなのに、何だか晴天の様な爽やかな感じでいいですね。
フリーザー「最近、サンダーさん来ないね」
ファイヤー「そうだね。すっかりぼくたちも忘れ去られたけど、友達から忘れられるのは悲しいね」
フリーザー「そうだよね。忘れられたよね。昔は“こころのめ”と“ぜったいれいど”で引っ張りだこだったんだけど」
ファイヤー「君はまだましだよ。ぼくなんてあんまり使ってもらえた記憶ないし、おうちを2回も勝手に変えられたし。その上忘れられるなんてさんざんだよ」
フリーザー「君は最初から不遇だったよねぇ、」
ファイヤー「みなま言うな。みなまで言うな。言いたまうな」
フリーザー「でも、実際はぼくはフロンティアくらいでしか使われていないなぁ」
ファイヤー「逆にぼくは“だいもんじ”や“ソーラービーム”とか覚えてさ」
フリーザー「あれ? 何かぼくは最初が良いだけだ」
ファイヤー「サポートが必要だからだろうね。上級者じゃないと中々扱いにくい」
フリーザー「ヴィジュアルには自信あるんだけどなぁ」
ファイヤー「スケッチすれば美しく、デフォルメすればかわいらしく。羨ましいよ」
フリーザー「ファイヤー君、設定は温かくて良いと思うよ」
ファイヤー「それってヴィジュアルはいまいちって言っているようなものじゃないかなぁ」
フリーザー「そうじゃなくてさ、シンプルなんだよ。大型鳥ポケのベースって感じでさ、可愛いとかそういう評価は駄目だと思うんだ。唯一神なんだよ」
ファイヤー「皮肉を言われている気がする。サンダーさんみたいにトゲトゲもしていないし、君みたいに雅でもないって言われているってことでしょ」
フリーザー「まあでもサンダーさん来ないってことはさ、用事があるってことだよね。むじんはつでんしょが無くなったときはほんとに困ってたけど良いことだよね」
ファイヤー「ぼくたちのおうちに泊めたりね。誰も知らない幕間劇だよね」
フリーザー「うん。初代伝説同士、困ったときは助け合ってきたよね」
ファイヤー「ぼくたちはほんとに良い友達だと思う」
フリーザー「そうだね」
ファイヤー「ポケモンでもさ、最近は『じゆう』が欲しいってやつがいるけど、それだけじゃ足りないかもしれないんだよね」
フリーザー「難しいことは分からないけど、百獣の王だって一人で生きるのは難しい。それくらいは当たり前のことなんだ」
ファイヤー「でもさ」
フリーザー「ん?」
ファイヤー「ぼくたちって割と気ままだよね」
フリーザー「あははは、そうだね。こんなこと言っても説得力ないや」
ファイヤー「こんな気ままでいられるのも暇だからだけどね」
フリーザー「どうだろう。サンダーさんお仕事あっても気付いたら遊びに来てた」
ファイヤー「あの頃はみんな忙しかったから。ぼくだって色んなところに行ったんだよ」
フリーザー「忙しいから時間が経つのも早かったからってこと?」
ファイヤー「そういうことだね」
フリーザー「言われてみればそうかも。あの頃は毎日が矢の如しだった」
ファイヤー「シンオウに行ったりホウエンに行ったり。でもまだイッシュには行っていないんだよなぁ」
フリーザー「分かる分かる。遠いもんねー」
ファイヤー「君はどこに行ったの?」
フリーザー「ファイヤー君とそんなに変わらないよ。でもホウエンに行った時はちょっと参ったかなぁ。暑いし、だからといって雪山作るわけにもいかないし」
ファイヤー「分かる分かる。ぼくもシンオウに行った時はいつもくたくただった。たとえば山登った時、雪を融かして雪崩れ起こすわけにもいかないしさ。気を遣った」
フリーザー「ファイヤー君とぼくとが一緒にいれるのはカントーかジョウトくらいってことかぁ」
ファイヤー「そうだね。気候もそうだし、気質もそうだよ」
フリーザー「気質?」
ファイヤー「ポケモンとか人とか、動植物とか色々」
フリーザー「ふぅん。でも寒い所の方が君が来るのを待っているんだけどね」
ファイヤー「それは承知しているんだけどね。喜んでくれてぼくも嬉しいんだけど、どうも、駄目なんだ」
フリーザー「んー、ぼくも暑い所の気質ってのは不慣れなのはあるけど」
ファイヤー「ホウエンの平地とかにさ、君がたまに来るとね、喜ぶんだよみんな」
フリーザー「もちろん知っているよ。だから行くけどさ、ここはぼくの居場所じゃないって思う。ぼくは喜ばれて良いとは思っていない」
ファイヤー「君は優しいよ。優しくていて、それでいてやっぱり怖いんだ。そういうことだよね」
フリーザー「うん。ぼくは怖くちゃいけないんだよ。ファイヤー君もそうだよね」
ファイヤー「ぼくの方はほら、エンテイ君がいるから」
フリーザー「やっていることが違うでしょう。エンテイ君は噴火は起こすけど春は呼ばない」
ファイヤー「ちぇ、君は厳しいな。冬のようだよ」
フリーザー「冬だもん」
ファイヤー「冬過ぎて春来るらし。ぼくを見習うべきだね」
フリーザー「春過ぎて夏来るらし、でしょ」
ファイヤー「春も夏も一緒だよ。ぼくが過ぎれば夏になる」
フリーザー「春に動き始めて君が元気になれば夏になる。その間ぼくは休んで、君が疲れてきた頃にぼくがまた顔を出す。それで秋になり、やがて君が休んで冬になる」
ファイヤー「うん。そうやってずっとやってきた」
フリーザー「毎年やっているからね。みんなぼくたちのことは覚えている」
ファイヤー「忘れたくてもじわじわ攻めるからね」
フリーザー「あははは」
ファイヤー「ぼくたちこれまでも、これからもこうあるんだよね」
フリーザー「ぼくたち以外にもこういうことは色々あるけど」
ファイヤー「うん」
フリーザー「そういうのも含めて、ぼくたちのことを忘れてほんとに良いのか、ちょっと問いたいね」
ファイヤー「どういう意味で?」
フリーザー「色んな意味で」
ファイヤー「色んな意味で、か。むつかしいね」
フリーザー「どうして?」
ファイヤー「忘れることだって、大事なことだから」
フリーザー「世界は有限だから?」
ファイヤー「世界は有限だから」
フリーザー「有限だから良いこともあるんだけどね」
ファイヤー「ジレンマだね」
フリーザー「じゃあ、無限なものがあるとすれば何があるんだろう」
ファイヤー「有限を突破するという意味で?」
フリーザー「うん。無限にしなくても良い、有限を1から2に拡げるために」
ファイヤー「想像、じゃないかな」
フリーザー「想像、ね」
ファイヤー「一番良い例は精神だよ。有限の精神も、その中にある無限の想像力でいくらでも拡げられる」
フリーザー「でもそれってさ」
ファイヤー「うん?」
フリーザー「想像のベースが必要だよね」
ファイヤー「時間と接触、興味と恐怖」
フリーザー「そのあたり」
ファイヤー「でも、やっぱり入るのかな、忘れることも」
フリーザー「想像は無限でも頭は有限だからね」
ファイヤー「参ったな」
フリーザー「それに誰しも、“自分だけは”と心の奥底で思っている。誰しも災難には遭うし、誰しもその内、死ぬ」
ファイヤー「全てが全てじゃないだろうけど、そうしないと精神を保てないから」
フリーザー「純然たる事実を忘れることて保たれる精神。その精神で無限の想像を得る」
ファイヤー「どんな結果が待っているかは、まあみんなその内分かることなんだよね」
フリーザー「分かったときには大概、手遅れだけど」
ファイヤー「手遅れだね」
フリーザー「過信は破局を招く。破局を免れるためには破局を読み取って動くしかない。でも精神は、本質的にそれを嫌う」
ファイヤー「想像が精神に依存することの最大の問題点ってわけだ」
フリーザー「もちろん、するかしないかを別にすれば、想像することは出来るわけだけど」
ファイヤー「それにしても、サンダーさん来ないね」
フリーザー「来ないね。久しぶりに三鳥で飛び回りたいんだけどなぁ」
ファイヤー「あの人のことだからどこかで良い雲を見つけて暴れているのかもしれないけど」
フリーザー「ありうるね。大いにありうる」
ファイヤー「雲を減らしておけば良かったかな」
フリーザー「ちょっと暴れて来てもらうくらいが良いんだけどね。そうでないと、むじんはつでんしょが無くなってからあの人、びりびりしているから」
ファイヤー「うん。こっちは鳥だっていうのにね」
フリーザー「あの人も鳥だから、鳥が電気に弱いってちょっと認識が足りないんだよ」
ファイヤー「君も氷で攻撃すれば良いのに」
フリーザー「そりゃあ、ぼくとあの人じゃ相性で五分五分だけどさ」
ファイヤー「うん?」
フリーザー「ファイヤー君が仲裁に入っても、炎にはサンダーさんよりぼくの方が弱いんだから。ぼくが損するだけだよ」
ファイヤー「それもそうか」
フリーザー「喧嘩はあまりしたくないしね」
ファイヤー「ドードーがどうしてそらをとべるのか、口喧嘩してからずっと喧嘩してないなぁ」
フリーザー「何年前の話なんだろう」
ファイヤー「“ねこにこばん”はどうしてお金が出るんだろうとかね」
フリーザー「あったあった、そのお金は本当に使えるか試したいってサンダーさんが言っていた」
ファイヤー「人間じゃなくて、鳥なのに」
フリーザー「鳥なのにねぇ」
ファイヤー「鳥、といえばさ」
フリーザー「うん?」
ファイヤー「最近、カントー飛んでると夜暗いよね」
フリーザー「色々大変そうだよね」
ファイヤー「うん」
フリーザー「思うんだけどさ、どうしてぼくたちって忘れられたんだろう」
ファイヤー「色んなポケモンがいるからだろうね」
フリーザー「色んなポケモンがいるから、ね。その通りなんだろうけど、」
ファイヤー「どうしたの?」
フリーザー「何かを忘れて、何かを覚える。それは良いんだ」
ファイヤー「その意味が何か、ってこと?」
フリーザー「うん。忘れるのは自然なことだけど、何かを覚えることは選ぶことだ。どうしてぼくたちは選ばれなかったのか、その意味が何かなと思って」
ファイヤー「新しい何かがぼくたちより優れていたんだろうね」
フリーザー「でもどこまで優れていたんだろうかとは思う」
ファイヤー「どういうこと?」
フリーザー「大した意味はないんだ。でもね、選ぶことは独立していないといけないんだ。その判断に本当に必要なことだけを抽出して選び取らないといけないだ」
ファイヤー「ぼくたちは、ぼくたちの評価だけで選ばれなかったわけではないってこと?」
フリーザー「可能性としてはあるでしょう? ほんとのことをいえば、その評価さえも可変的なものだ。その上で、選ばれなかった意味はどこにあるんだろう、ってね」
ファイヤー「ぼくには分からないなぁ」
フリーザー「ぼくにも分からない。でもさっきからそればっかり考えている」
ファイヤー「想像は無限だから」
フリーザー「うん。時間だけはあるからね」
ファイヤー「時間があると君も理屈っぽくなるんだね」
フリーザー「どういう意味?」
ファイヤー「君のヴィジュアルで哲学するなんて、聞いている方からすれば怖い先生に怒られているように見える」
フリーザー「ひどいなぁ」
ファイヤー「そんなんだから、ふたごじまから引っ越しせずにすんでいるのかもしれないけどね」
フリーザー「ファイヤー君は、口車に乗りやすいから引っ越したの?」
ファイヤー「少なくとも、そんな毒舌をはかないってことは間違いないなぁ」
フリーザー「そうだったかなぁ」
ファイヤー「そうだったよ」
フリーザー「あ」
ファイヤー「うん?」
フリーザー「聞こえなかった?」
ファイヤー「サンダーさん?」
フリーザー「うん」
ファイヤー「でもあの人、最近はぼくたちがびりびりしないように、先に1発雷落とすけど」
フリーザー「それはないけど、聞こえたんだ」
ファイヤー「聞こえなかったな」
フリーザー「本当だよ」
ファイヤー「……本当だね」
フリーザー「サンダーさん、お久しぶり」
ファイヤー「随分顔見せなかったね」
サンダー「うん、久しぶり。ごめんね、ずっと来られなくて」
フリーザー「今日はびりびりしないね」
サンダー「電気使ってきたからね」
ファイヤー「何かあったの?」
サンダー「色々あったよ。で、今さっきまではつでんしょにいた」
フリーザー「はつでんしょ? 昔のおうちのあったところの?」
サンダー「うん、あの谷間のはつでんしょ」
ファイヤー「分かった、また昔のすみかが恋しくなって、中へ入れないのに遊びに行ったんでしょ」
サンダー「違う違う。来てくれって言われたんだ、人間に」
フリーザー「えっと、またあそこを、むじんはつでんしょにするの?」
サンダー「それが一番嬉しいんだけどね、違うんだ」
ファイヤー「そうだよね、建て替えるから出て行けって言われたんだからそんなわけないよね」
サンダー「うん。ずっとあそこで発電の手伝いをしていたのに、追い出されたからくらいだからそれはない」
フリーザー「えっと、じゃあ何なの?」
サンダー「電気が来なくなって足りないから、手伝って欲しい、だってさ」
最近、サンダーさん来ないね 了
【好きにしていいのよ】
もう要らないよってそんな
2002年11月21日に貴方が速攻で帰って来てから出会った仲じゃないですか。貴方はそこで私に会った仲じゃないですか。
一体なにが不満だというのですか?
貴方は私に気に入った名前をつけて、ミズゴロウを手に入れて、それからずっと貴方とホウエン地方をまわってポケモンリーグチャンピオンにだってなった。
バトルタワーだって挑戦しました。みてください、まだこの子たち50戦勝ち抜いたリボンを大切につけてるんですよ?
それから貴方がホウエン地方の話を書きたいというから私だってがんばったじゃないですか。すごいハードだったの覚えてるんですよ、今でも。
そのために一日に何匹も捕獲して、腕が疲れても貴方のためだと思ってがんばったのに。
そして貴方が友達と対戦したいっていうから、私は一日のうちずっと自転車にのって走り回ってたくさんのタマゴを孵したじゃないですか。
要らないものは全部逃がしましたし、今でも逃がしたばかりのウパーがロゼリアの餌食になった光景は覚えてます。
それでも貴方の為に我慢しました。対戦で負けてやつあたりされて、私のポケナビがひび割れたのは今でもとってあります。
私のファンが増えていくのを貴方はあんなに喜んでいたのに。
コンテストがやりたいというから、私はベストなポケモンをボックスからずっと眺めて選びました。
ほら、このフシギソウ覚えてますか?うつくしさコンテストで友達にも勝ちましたよね?
なぜですか、シンオウ地方に行くからなのでしょうか。
シンオウも行かないのですか?ああ、最新のモデルがないからなのですね。
ではなぜ私など要らないというのですか。貴方のためにこんなに尽くした私を。
尽くし方が足りないというのでしょうか。サーナイトのように命をなげうってでも貴方に尽くさねばいけなかったのでしょうか。
知ってますか、最近、私のまわりの時間は止まりました。木の実を植えても芽が出ません。
一時期、そのような時は近くの詳しい人に聞いて原因を探って色違いのジグザグマを連れてきたというのに。
その前はジラーチを手に入れる為にお金だって出した。
なぜですか、なぜそこまで心変わりしてしまったのですか?要らないなんて言わないでください。私が生まれてこのかた、ずっと貴方しかいないのに
ずっと貴方の身代わりだったのに。
電源が落とされて、意識はなくなった。ロムを抜くと、何の躊躇もせずにゴミ箱へ放り投げた。ルビーをイメージした赤いそれは、他のゴミと一緒に砕かれ、二度と冒険することはなかった。
ーーーーーーーーーーーーー
ルビーを最初からやり直してから思いついたネタ。
発売日に買った主人公は今でも健在ですが、時間が止まってしまいました。
木の実栽培が趣味だったので、それが出来なくて少し寂しいですが、シンオウで栽培することにしました。
【なにしてもいいのよ】
■ポリゴン
ポリゴンの瞳は物事の本質をよく捉えている。傍目にはどこを見ているのかわからない事が多いが、何事においても実によく観察している。その瞳から得た情報を体内でデータ処理し、必要があらば書き換えてしまう。この機能をテクスチャーと呼ぶ。
トレーナー達がこのテクスチャーを用いる例として、最もよく目にするのが、格闘タイプのポケモンと対峙した時だろうか。
まず、ポリゴンにシャドーボールという技を覚えさせておく。これはゴーストタイプの技だ。ゴーストタイプの技は、このシャドーボール一つだけにしぼり、残りの技をノーマルタイプのものばかりで固める。
こうしておけば、テクスチャーを使用した際、ポリゴンは失敗の心配なく、ゴーストタイプのポケモンに変化することができるのだ。相対した格闘タイプのポケモンはご自慢の格闘技の威力を振るえず、返り討ちにされるという寸法である。一時、この戦術はポリゴン好きの間で流行ったが、それも今は昔の話だ。
今は、適応力を身に付けたポリゴンZが、その反則的な威力のトライアタックや破壊光線で、相手に行動の暇さえ許さず、一撃で黙らせてしまう。
時代は変わってしまった。
観察の必要が無くなり、テクスチャーで遊ぶことができなくなったポリゴンは、ただ単に、事務処理を行うだけの砲台と変わりないのではないだろうか。
そびえ立つ塔がどんどん高くなり、地下鉄の線路がどんどん遠くまで伸びる昨今、ポケモンバトルというものは遊びの一環ではなく、もはやただの作業となりつつある。
テクスチャーを奪われたポリゴンはよく知っている。
■またまたヌケニンのお話
きっとこれまで幾人もの人間が、ヌケニンの背中の隙間を恐る恐る覗いてみたことだろう。
そしてその後、彼らは内心冷や冷やとしながらも、自分の肉体がまだちゃんとある事に安堵して、こうほくそ笑んだことだろう。
「いやあ、別になーんにも起こらなかったよ。やっぱり、あれは迷信だった。
だいじょーぶ。ぜんぜん平気へいき」
で、彼のその声が、友人達やオーキド博士に届くことは、もう決して無かったりするのだ。
うちのペンドラ―はでかい。
どのくらいでかいかというと、かなりでかい。
数字で言っちゃうと、10メートル強。普通の奴の約三倍。
行きずりのトレーナーと戦えば「ドーピングか廃人!」と罵られ
友人に相棒として見せてみれば「何を食わせたらこうなるんだ」と怪しまれ
家族に写メを送って見せたら「おおきくなったねー」と感心され
つまり うちのペンドラ―はでかい
けど昔からこんなに大きかったわけでもない
俺の家はヤグルマの森のすぐそばで、よく庭に野生ポケモンが入り込むことがよくあった。
ある日の夏休みのラジオ体操から帰ってみれば、観察日記用のアサガオを食いつぶしているボロボッロのフシデを発見した。
ご丁寧に鉢植えのそこの方から根こそぎ食ってくれていて、一から育てなおそうかという俺の気力さえも根こそぎ潰してくれた。
てめーこのヤローとばかりに蹴っ飛ばした拍子に毒の棘が刺さったのはなかなか嫌な思い出だ。
瀕死に近い野生のポケモンに八つ当たりなんかしようものなら世間の非難の目は俺に向かうこと間違いないし、しょうがないからアサガオのかわりにこいつを観察してやることにした。
なんか『ポケモンの回復日記』なんて格好つけた名前にして、観察開始。
とりあえずポケモンフーズと傷薬与えようと近づいたら足に噛みついて全力で俺を拒否。
なんだよ、あれか、そんなに上から目線が嫌なのか。だったら匍匐前進してやったら問題ないんだろうなえぇ?
はいつくばってじりじり近づいてやった逃げるのはやめた。相変わらず触角震わせて威嚇しまくってるけど。
ポケモンフーズを口元に投げてやっても一向に食う気配がない。あれか、俺が食べて見せないと食わないってか。
だが俺は食って見せた。さもうまそうに食って見せた。くそ不味かったけど笑顔で食って見せたさ!
そしたらあいつは・・よっしゃくったぁぁあ! なにこれものすごい嬉しい。あのときの快感に近い喜びは今でも覚えている。
・・つまり、その時は普通のフシデよりも小さかったってことが言いたいんだ。
夏が終わることにはすっかりフシデは俺に懐いてしまい、家族公認でゲットが許された。
何か名前をつけないのか、と言われてその場で食っていた『あんみつ』と命名。
『ペンドラ―にあんみつ!?』とかなりの確率で驚かれる。
いや、別にあんみつって名前可愛くねぇ?あんみつ本人は多分気に入ってる、と思う。
名前呼ぶたびに尻尾振って喜んでるからそう思ってるだけかもしれないけど。
別にホイーガ時代もでかいという事はなかった。きっと普通だった。
・・・。
わからん、何故こいつがあんみつがここまででかくなったのかがさっぱり分からん。
うちのペンドラ―はでかい。
だが何故か恐ろしく素早い。
あの図体で先制ハードローラーは反則だ、なんて何回言われたことか。
うちのペンドラ―はでかい。
細長くてスタイルが良い。そこ、太いなんて言ったら殺す。
あんみつは女の子なのでそこは言葉に気をつける。
うちのペンドラ―はでかい。
しかし気は優しくて力持ちだったりする。
俺なんかひょいと持ち上げて背中に乗せてくれたりする。
うちのペンドラ―はでかい。
ずしんずしんとあるかない。
かろやかにのしん、のしんと揺れる。
・・そう言えば、昔、小猿どもがフシデだったころのあんみつにのって楽しそうに走り回ってたなぁ。
お前、大きくなって俺も乗せてくれよ、そんなことを言ったような気もする。
・・・。
まさか、なぁ。
あんみつの背中は ひろくて 温かい。
うちのペンドラ―はでかい。とにかくでかい。何もかも包みこんでくれそうなくらい、でかい。
おまけ テレビで30メートルという驚異のでかさを誇るマダツボミが映っていた。
あんみつはわりと可愛らしい部類なのかもしれない
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余談 脳内バックアップとは。ログが飛んでしまっておまけに自分の頭の中にしかバックアップがないものを書き起こすことを指す。
書く側は大変な労力とうろ覚えの記憶でそれっぽいものを空気を変えずに書かねばならず、結構きつい作業である
【こんな感じだったよね】
【なにしてくれてもいいのよ】
ホウエン地方に単身赴任している父親の元に、母親と共に引っ越すことになったハルカ。
夢見ていた家族3人でのありふれた日常がついにやってくる。――そのはずだった。
ハルカはホウエン地方に向かうトラックの中で、希望に満ちた平穏な日常を想像しているうちに、うたた寝してしまう。
そこで見た夢は、見たことのない犬型のポケモンに襲われるおじさん、そしてやはり見たことのない水色のポケモンの姿であった。
そして、ミシロタウンに到着したハルカを待ち受けていたのは、犬型のポケモンに襲われるおじさんという、見覚えのある光景。
おじさんに、モンスターボールからポケモンを出して助けてくれといわれたハルカは、言われたとおりポケモンを出す。
そこに現れたのは、夢で見たあの水色のポケモンだった。
そして、そのポケモンはハルカにこう語りかける。
「僕と契約して、ポケモントレーナーになってよ!」
そしてハルカはこの後、ホウエン地方全土を揺るがす、非日常的な大事件に巻き込まれることになるのである――
※タイトルは「トレーナーしょうじょ」と読んでください。
ポケスト再掲作品の頭がこれなんて、こんなの絶対おかしいよ!
【どうしてもいいのよ】
【もう何も怖くな……ログ消失怖い】
感想がこらっしゃっただと!?
わーいわーい。ちょっとこ踊りしてきます。
> 現代の生命倫理問題とうまくポケモンをからませた、とても面白い話でした。
> 「カミサマ」がそもそも人工的なものだと考えると、「ツー」さんの悩みも吹き飛んでしまいそうですね。
ポケモンの世界ってちょっといびつな感じがしたんですよ。
違和感みたいなものがありまして、それを表現してみました。
なんでも覚えることができる「あの子」は始まりだと思ったんです。
でも、完全なものって作らない限りないなあって思ったらこうなりました。
> 僕も「あの子」は腹黒と心の底から信じています。アニメじゃきっと、かわいらしい声して、とんでもないこと言ってますよ。
同じことを思ってくださる人がここにもいた!
かわいらしい格好をして毒舌ってなんかいいですよね。
映画で吹っ飛ばされた時はすっごい事言ってそうですね。
> 楽しいお話ありがとうございました。
こちらこそ楽しんでいただきありがとうございます。
※ちょっとした、本当にちょっとしたホラーです。いや、ホラーもどきです。何しろ私の腕なのであまり怖くないと思いますが、極端に無理という方はご遠慮ください。でも本当に怖くないです。この注意書きは一応つけています。
―――… 喉が痛い。夜の冷たく吹き付けてくる空っ風が、喉の中に直接入り込んでくるからだろう。ぐったりとしたリナを腕に抱き締め、必死になって走る。ポケモンセンターの屋根に付いているモンスターボールのマークを探すが、見つからない。見つからない見つからない。段々速くなる鼓動と共に、焦りが大きくなっていく。腕の中のリナが冷たくなっていく気がする。どうしようどうしよう。いつの間にか、路地裏に入っていた。背の高い塀で、視界が狭まれる。振り返る。壁。前を見る。壁。何処も彼処も壁。壁。壁。リナの首がかくん、と傾いた。慌てて額に手を当てる。体温が急速に下がっているのが素人の私にもはっきりと伝わった。どうしようどうしよう。どうしよう! リナが死んじゃった。死んじゃった。死んじゃった。此処は何処? 私は何をしているの? 何で? 如何して? 何故私のリナは死んじゃったの? 如何して、如何して、如何して!! …―――
―――… ぺたり、と、何かが張り付いたような音が自動ドアの方で、した。哺乳瓶を持ったまま振り返る。が、何も見えない。外が暗いからだろう。手元でまだ赤子のルリリがミルクを催促して泣き出した。ミルクをあげなきゃ。しかし、外も気になる。彼女は一瞬迷ったが、隣で包帯を片付けていたラッキーにルリリの世話を頼んでドアに向かうことにした。パートナーのラッキーは優しく彼女の頼みを受けてくれた。哺乳瓶をそっと渡す。すぐに慣れた手つきでゆっくりと、ラッキーはルリリの口元に哺乳瓶のゴムの部分を当てた。するとルリリはすぐに泣き止んで、嬉しそうに表情を和ませミルクを飲み始める。ほっとして、彼女はドアに近付いて行った。すぐ近くにまで着くと、滑らかな機械音と共に自動ドアが開く。しかしそこには誰もいなかった。顔だけ外に出して辺りを確認したが、気配すらない。空耳かしら…戻ろうと視線を戻した時、自動ドアにはっきりと手形が付いているのに気が付いた。小さな手形が。 …―――
―――… 今日は今年一番の冷え込みだ、と今朝のニュースで聞いたが、本当らしいな。コートの襟元をきゅっと狭めて速足で歩く。如何してこんな日に限って、いつもは無い残業があるのだろう。田舎では無いが都会でも無いこの町の電車の本数は少ない。夕方の終電はとっくに通り過ぎていた。つるつるに凍った水溜りに足を滑らせそうになり、慌ててバランスをとる。転ばなくて済んだが、もうこんな歳だ…腰が痛んだ。手を背中に当てて歯を食いしばる。ぎっくり腰を経験したこともあるし、最近は少しでも衝撃があると腰が悲鳴を上げる。そして、そんな時は、こうやって手を当ててじっとしていると大抵の場合は痛みが引いていく。ふと、腰の痛みの原因である氷に映る、苦悶の表情の自分の顔が目に入った。皺だらけだ。いつの間にこんなに歳をとったのだろう。若い時だったら、滑って転んだってどこも痛くなかったのに。むしろはしゃぎ回って転んでばかりいた。そういえば、今の家内にプロポーズした時も転んだな。結局承諾してくれて今の夫婦になっている訳だけれど、確かその時の台詞は「貴方ひとりだと心配だから」だったな。恥ずかしい、苦い思い出である。氷に向かって笑ってみた。痛みに引きつった笑いであったが。その時、ふと、影が入ってきて氷に何も映らなくなった。おや、と顔を上げると、何も無いのにすっと影だけが落ちている。きょろきょろと影の落とし主を探したが、気付いたら影も消えていた。気味が悪いな…と、もう一度氷に向かって顔をしかめて見せた時、腰の痛みが無くなっているのにはっとした。 …―――
―――… 夜風が髪の毛を乱す。ケタケタケタ。冷たく体温を奪ってゆく。ケタケタケタ。さあ怖いなら泣けば良い。ケタケタケタ。さあ泣きながら叫ぶが良い。ケタケタケタ。何処からか笑い声が聞こえてくる。それと共に、何かを誘うような甘い声も。でも、私はちっとも怖くなんかなかった。何故なら、私にはリナがいたから。ぴくりとも動かないけれど、でも、肉体は私の腕の中にあるんだもの。ケタケタケタ。ケタケタケタケタ…。ああ、煩いな。今私はリナと二人きりなのに。邪魔されてる気分。私も気持ちも知らないで、こんなに悲しいのに…。リナが死んじゃった。私の唯一のトモダチが、死んじゃった。悲しい。苦しい。私も一緒に死んでしまいたい。ケタケタケタ。お前からは悲しみの感情が出ていない。ケタケタケタ。偽って言葉を操るのは止めときな。ケタケタケタ。お前から溢れ出ているその感情は、言葉にするなら、喜びだな。ケタケタケタ。ふざけないでよ、私から喜びの感情が出ている? そんな訳無いじゃない。今も胸がいっぱいなのよ。涙を堪えるので精一杯。リナが死んじゃった。リナが死んじゃった。悲しい以外の感情が出ているはず無いわ。ケタケタケタ。人間ってのは良く分からん奴だばかりだな。ケタケタケタ。お前みたいなのは初めてだ。ケタケタケタ。俺を怖がらないのは勿論のこと、死んだ相棒を見下ろしながら喜んでる。ケタケタケタ。お前はきっと俺の仲間だ。ケタケタケタ。仲間? 私は誰にも所有されて無いの。私は誰にも分かってもらえる訳がないの。ていうか、貴方誰? 知らない変なひとに仲間呼ばわりされる程嫌なことも無いわねえ。ケタケタケタ。良い根性してる。ケタケタケタ。そんなに言うなら、見せてやろう俺の姿を。ケタケタケタ…ケタケタケタ…。 …―――
―――… 気が付くともう外は真っ暗だった。夢中でパソコンを操作していると時が経つのを忘れる。画面の左上の一時保存のアイコンをダブルクリックし、身体を伸ばす。目が随分疲れている…冷蔵庫に閉まってある目薬を取りに行こうと椅子から立ち上がり、部屋の中も真っ暗だということに気が付いた。照明をつけようと手を伸ばすが、カーテンの方が近いと思い、先にカーテンを閉める事にする。留めてあるボタンを外し、ギンガムチェックの斜光カーテンを手繰り寄せる。シャっと気持ち良い音と共にきっちりと閉めてから、改めて照明のスイッチに目を向けた。不意に光が横切る…いや、横切った気がして、目で追うと、そこにはツインテールの小さな女の子みたいな形が光っていた。何だこれは。確かにさっきまではネットサーフィンしていて、こんな感じの幻想的かつ可愛らしい幼女の絵を見た気もするが。驚いて瞬きをする。目を開けると、もうそこには何も無かった。きっと本当に目が疲れているんだろう、ということにして、今度こそ部屋を明るくする。パチン、と照明が輝きだし、眩しい。オレ、霊感なんて無いんだけどなあ。 …―――
―――… もういいから! 叫んで、一方的に電話を切る。ツー、ツー。携帯から鳴り響いてくるそのお決まりの音に無性に腹が立つ。結局、もう会うことは無いだろうなと思うと一瞬寂しく思ったが、すぐにそんなことない、と考える。付き合い始めた切っ掛けは、同じ電車に乗ったことだった。たまたま隣り合わせて座っていて、ふと彼の鞄に付いているキーホルダーが目に付いて。それは、私の大好きなバンドのファン会員限定のキーホルダー。勿論私も携帯に付けている。それで声をかけて、意気投合して。はにかんだような彼の笑顔に胸がどきどき波打った。しかもその時丁度電車は混んでいて、距離が近くて、これが運命なのだろうかと本気で思った。共通の趣味を持つ人同士が仲良くなるのは早い、と言うけれど、私達はその典型的な例で、恋人同士になるにはさほどの時間はかからず、ライブを一緒に見に行ったり、普通にデートしたり。…仲良くやってたんだけどな。最近、突然彼からの連絡が途絶えた。それでやっと電話が繋がったのかついさっき。彼は、別れたいと言ってきた。理由を聞いても謝るばかりで何も言わない。ごめん、ごめんね、怒んないで…。ついにぶちギレて電話を切ったけれど…。いつの間にか、手汗で手の平がべたべたしている。無意識に握り締めていた携帯電話のキーホルダー――出会いの切っ掛けの今や憎らしいキーホルダー――が揺れた。その時、すぐ近くで泣き声のような、か細い声が聞こえた。驚いて短く悲鳴を上げる。振り向いても何もない。あるのは、ざっくりと深い心の傷跡だけ。 …―――
―――… もういいだろ。ケタケタケタ。笑い声が徐々に近付いて来る。でも、私は動かない。耳を澄ませて、声の聞こえる方をじっと見据える。ちらりと薄紫色が闇から垣間見えた。ケタケタケタ。そんなに注目するなよォ。ケタケタケタ。そして、ふわりと、闇が溶けるように消え、私の目の前には怪しい緑色の玉を幾つか浮かべた、にやにや笑う生き物が現れた。玉と同じ色の瞳で私を見てくる。ケタケタケタ。俺は魂が集まってできている。ケタケタケタ。だけどねェ、自由に動けないんだな。ケタケタケタ。見えるかい、俺の足元が。ケタケタケタ。昔、このちっぽけな石に繋がれちまってね。ケタケタケタ。きっと睨み返し、私はリナを更に強く抱き締める。だから、何。私に何をしろって言いたいの? あんたから滲み出てくるその感情を言葉にするなら、お腹が空いた、かしら。ケタケタケタ。そんなんじゃぁない。ケタケタケタ。俺はもう封印された身、腹なんて空かない…いや、元々腹という部分が無い。ケタケタケタ。何よそれ。ジョークのつもり? 変ね、あんた。おかしい。狂ってる。ケタケタケタ。お前の方が狂ってるよ? ケタケタケタ。きっと、仲間の魂がやってくる。ケタケタケタ。何の話をしてるのあんたは。魂がやってくる? リナの魂が? ケタケタケタ。魂はすぐそこに来てる。ケタケタケタ。魂は悲しみの感情で溢れてるなァ。ケタケタケタ。俺は魂で出来ているって言っただろ。ケタケタケタ。さあもう来た。ケタケタケタケタ。そんなに怯えた目をするな。ケタケタケタ。さっきまでの勢いはどうしたんだ? ケタケタケタ。じゃあ始めようか、俺の言いたいこと、それは、タマシイガホシイホシイホシイホシイホシイホシイホシイ! …―――
―――… テレビのニュースキャスターって最近可愛い子ばっかりだよな。そう思いながら画面を見つめる。報道していたのは、失踪事件の話だった。ここのところ、この話題ばかりだ。何でも、新米トレーナーの女の子が消えたらしい。いや、正確に言えば、町の一番目立たない路地裏まで掠れた足跡が続いていて、しかしそれが行き止まりのところでぱったりと消え、そこに、その女の子の手持ちだと思われるキルリアのすっかり冷たくなった身体が横たわり、その横には女の子の血痕が数滴落ちていた、とか。全く、物騒な世の中だ。女の子には親も親戚もいなくて、キルリアの弔いは警察が行ったらしい。 …―――
―――… キィキィ叫ぶ小さな光を、薄紫色の封印ポケモン――俺は微かに笑んで見つめる。何でも、トレーナーである女の子が数日前に突然いなくなったらしい。その時、光である彼女は肉体から離れている状態…死んでしまった状態で、自分の肉体とトレーナーを探して彷徨ったようだが、肉体を見つけたときには既にトレーナーの姿は無く、代わりに残っていたのは血痕だった、とか。そうかそうか、と適当に相槌を打ちながら、舌なめずりをする。こいつはあまり力になりそうにない。今度はもっと大きな力の魂を取り入れなければ。あの女の子も弱かった。死に憑りつかれている人間の魂が欲しい。欲しい。欲しい。もっと力を蓄えれば、この要石も壊れるはず。自由になりたい。俺を動けなくした人間達の魂を吸い取ってやりたい。ああ、力が欲しい、欲しい。ちらり、と光を見、光が自分を見て喋るのを止めたのを確認すると、にやりと笑って見せた。こんなに小さく弱いお前の魂でも、俺に吸い込まれればいずれ大きくなれる。感謝しろ。瞬間的に、光を身体に取り込む。甘い、蜜のような濃厚な味。もっと欲しい、欲しい。欲しい。欲しい。ホシイ …―――
―――――
如何してこうなってるんだ!
もっとふぁんたじー書くつもりだったんですけど、如何して私の指は「死」とかタイピングしてるの!
あんまり怖くないと思いますが、これが海星の限界だと思って下さいorz
うぅ…ボキャブラリーが欲しい…です…
【書いてもいいのよ】
【描いてもいいのよ】
【批評…は…えっと…その…お手柔らかに…】
ラプラス好きだなぁ・・・
『シードラゴンと 呼ばれる 海の王者です』 ・・・思い返せば懐かしい。
どうも、初めましてです。 クーウィと申します・・・
読んでいて、とても懐かしい気分になれました。
言葉の選び方にリズムが心地良くて、それでいて少し寂しい、ノスタルジックな感じが何とも言えません。
時は過ぎても、変わらない物はある・・・ そう信じて、子ラプラスに小さくとも暖かい思い出が残るような未来が来ることを、願いたいものです――
ちょっと、続きを見てみたいような感じも致しました(笑)
では。 失礼致しますです・・・
救助に行きたいなあ・・・とか思ってるうちに、ぼんぼん救助が馳せ参じてるよ!(^^;)思わずバンバン拍手しちゃいました。
みんないい人ばっかりだなあ(笑)これなら遭難者は無事におうちに帰れそう。
[書いてみた]の思わぬ可能性をひしひしと感じました。そして皆様の神速恐るべし!
・・・それは置いといて、ワタシ遭難したのはなんとなく女の子だと理由もなく思い込んでいたので、
クーウィさんとこのシンオウトレーナー君は大胆にむいたなー(笑)と思っていたのですが、
CoCoさんとこのレンジャー氏が到着して少年と判明してあり?と思ったら、
確かに兎翔さんの作品にはどちらとも書いてなかった!(笑)
ええもん見せていただきました!
ほのぼのとした雰囲気が暖かい、なんともかわいらしい小品。
新美南吉の「手袋を買いに」を思わせる少女の愛らしさがよい。
それにしても、炎ポケモンが雨の中で長時間待ってるって結構デンジャラスなのでは(笑)
ギャロップは難関だった。
炎ポケモンは本能的に水を嫌がる。つまり、すすぎができないということだ。
しかしブラッシングだけならわざわざトリミングに来なくても出来る。ちょっと専門書を読めば余裕だ。
しかし職場の先輩に聞くわけにはいかない。
これは通過儀礼なのだ。どんなポケモンでも見事に洗い上げる。機嫌を損ねることもなく、ポケモンにも飼い主にも笑顔でお帰りいただく。それがポケモントリマーの使命なのだと。
ここで甘んじてしまえば、俺は一生下っ端トリマーのままだ……。
ギャロップを預けられた日、俺は昼休みに飯の時間を削って本屋へ飛び込み、炎ポケモンの洗いについて調べた。
時間が無かったのでじっくりとは読めなかったが、どうやらブラッシング以外のシャンプーなどを使う洗いは炎ポケモンにとっては危険らしく、専門のトリマーに任せるのを薦める、としか書かれていなかった。
場合によっては瀕死になってしまうこともあるとか。
責任重大。
むむ、と唸りながら戻ると、センターの洗い場の窓にいつものカゲボウズ達がぶら下がっていた。マスコットでもしているつもりか。
あ、ぷち子が落ち……なかった。最近あのぷちボウズも慣れてきたのか何なのか、落ちかけても途中でふわふわ戻ってこれるようになってきた。かなり頑張って浮遊しているようではあるが。しかし大きさだけはまるで成長しない。カゲボウズにも成長期があるんだろうか?
前はあいつを落とさないために、他のカゲボウズ総がかりだったのになァ……と感慨深く思っていると。
落とさない?
落とさない。
思いついた。
落とさなければいいのか。
すすげないならばすすがなければいい。
シャンプーを固めに泡立てて、マッサージの要領でギャロップを洗ってやる。
そして丁寧に、タオルで拭いてやるのだ。
使う水分は最小限。しかし石鹸カスは残さない。ここの配分は、ほら、あの普段右から三番目あたりが定位置のカゲボウズ。なぜか水嫌いのあいつの時の配分の、ギャロップはだいたい何倍ぐらいかな、なんてやっていく。
しかし布と獣皮では結構な差があるので、最後は少し立腹したギャロップに蹴られかけたが。
なんとか持ち主にかの火の馬を返すと、持ち主は嬉しそうに「ありがとうございます、見違えるようにキレイになりました」といってくれた。
「お前新人だっけ? ギャロップが骨折なしで洗えりゃ相当なモンだ。経験者?」
そして受付のそばにいた一人の先輩にそう言われた。
何だろう、この感覚……。やりがいってやつだろうか?
自然と笑顔がこみ上げてくる気分なのに、カゲボウズ達はまだ窓のところでふよふよしている。
「お前らサンキューな。こいよ、特別にタダで洗ってやる」
先輩には内緒だぞ。
指でごしごしと頬をこすってやると、カゲボウズはきゅっと目を閉じてくすぐったがる。
頭頂のツノ部分はよく汚れるので念入りに。なぜかここを触ると、カゲボウズはぴくぴくぴくと反応する。
「お前何洗ってんだ?」
とかやっていたら早速先輩に見つかった。やべえ。こっそり洗剤とタライ持ち出してたのがバレる。
「いえ、あの、そのですねー、」
頼む。言い訳を考える時間をあと十五秒。
「ああ、例の定食屋から頼まれてるヤツね」
しかしそんな間もなく先輩はそう言った。
「え?」
「あ、知らない? ほらマップの、ここ、ここ。ここにある定食屋。カゲボウズ1ダースといえばここからぐらいしか来ないだろ。あ、ついでにこいつら、終わったら届けに行ってこいよ。そのままそこで飯食って帰っていいから。」
洗剤は無臭の使えよー、と言い残して、先輩は呆然としている俺を置いて仕事に戻っていった。
定食屋で、カゲボウズ。
カゲボウズ定食?
いやいや。それはいかん。人としていかん。そもそも多分こいつら食っても美味しくないぞ。
尽きない疑問を抱えつつ、俺はカゲボウズをかごに入れて、"例の定食屋"へ向かった。
「待ってましたよ。さっきの全部盛りのお客さんでちょうどカゲボウズが切れちゃいましてね」
店主とおぼしきおじさんが、裏口を叩いた俺を迎えてくれた。
全部盛り?
「カゲボウズを盛るんですか?」
ついつい聞いた俺に、おじさんはにいっ、と笑って答えた。
「食べて行きますかい? 冷やし中華」
「冷やし中華大盛り、カゲボウズ憑きー!」
威勢のいい声とともに俺の目の前に出されたのは、キレイに盛り付けられた上手そうな冷やし中華、の上に盛り付けられたカゲボウズ。
「ええええー……」
食うのか? 食わないよな?
あそこにもたべられませんって書いてあるしな?
しかしそのカゲボウズはどうやら、俺がなかなか満ち足りた気分だったせいもあってかなかなか空腹だったようで、麺の中にもぐりこむとツノまで麺を巻きつけて、全身を使って俺の冷やし中華を食べ始めた。
そして俺の箸とカゲボウズとで、冷やし中華をかけた綱引きが始まる。
俺は箸でカゲボウズを捕まえて「食うぞ、コラ」と脅しながら、そういえばさっきのカゴに入れたままだったぷち子、あいつがここに盛り付けられたら、キノコか何かと間違って食われたりしないだろうか、と真面目に心配になった。
おわりりーら
***
【書いてもいいのよ】
【描いてもいいのよ】
【批評していいのよ】
【俺にもフラグを立ててくれよ】
明日早いってのに、長蛇のレスが素敵すぎてついやっちまった。
寝坊したら昼飯は冷やし中華にしようと思います。
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