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  [No.1128] 【書いてみました】 溶けたものは――。 投稿者:巳佑   投稿日:2011/05/03(Tue) 22:15:06   94clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
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【書いてみました】 溶けたものは――。 (画像サイズ: 800×600 218kB)

 
 前置き:この素敵イラストはスズメさん作です。


 それは静かな森。
 人が立ち入ることもなく、ポケモン達が暮らしているその森は土地柄か、草ポケモンや虫ポケモンばかりが住んでいました。
 その草ポケモンや虫ポケモンだけの森に一際目立つ青色が一つ。
 その青色は歩く度に色々なポケモンから視線をもらっていた。

 また、あいつだ。
 なんで、この森にいるんだろう。
 氷タイプはどこかに行って欲しいよな。

 そんな呟きの中、その青色は歩き続けていく。
 もう言われ慣れているし、そもそも相手にするだけ無駄なことだ。
 周りの呟きは聞かなかったことにして、その青色は目的の場所に向かうことにした。

「あ、グレイシア! こっちこっち〜!」
 木々を抜けて、開けた場所にたどりついたその青色――グレイシアの目に止まったのは頭に葉っぱをつけたポケモン。
「……リーフィア」
「ん? な〜に? グレイシア」
「勝手にくっつかないで、って何度言えば分かりますの?」
「だって〜、グレイシアって冷たくて気持ちいいんだもん、特にこの暑い時期はね〜」
 頭に葉っぱをつけたポケモン――リーフィアは迷惑そうな顔をしているグレイシアにお構いなく抱いてくる。
 最初に出逢ったときはすぐに離れるということもあったのだが、最近はもう諦めて、されるがままにされていた。
 まぁ、悪い奴ではないし、どっちかというといい奴だ。
 この森で初めて自分に人懐っこく接してきてくれ、そして唯一の相手と言ってもおかしくなかった。
 
 グレイシアがこの森に来たのはかれこれ数ヶ月も前のことだった。
 グレイシアは生まれつき体が悪く、体調を崩すことが多かった。
 これ以上は一緒に連れて行けないと悟った、グレイシアの主人はこの森にグレイシアを逃がした。
 そう、グレイシアは主人――人間と共に旅をしてきたのだ。
 主人はいつもグレイシアの体調を気遣っていたから、森の入り口に自分を捨てたのではなくて、解放してくれたのだとグレイシアは想っている。
 あのとき主人が見せてくれた眼は寂しそうで、苦しそうで。
 最後は「ごめんな」と泣きながら言ってくれた。
 グレイシアは人間の言葉が使えるのなら「ありがとう」と言いたかった。
 自分のことをよく考えてくれた末の答えなのだから、大好きな主人が悩む顔を見ないで、済む。主人もきっと明るくなれるはずだと想った。

 それから、グレイシアの森での生活が始まったのだが……住みやすそうな森とはいえ、見知らぬ土地。
 おまけに周りのポケモン達は新しく入ってきた、そのグレイシアに警戒していた。
 特に氷タイプに弱い草ポケモンや虫ポケモンはその警戒心が強かった。
 …………しかし、森に住む全ポケモンがグレイシアに警戒心を向けてくる中、一匹だけ、森のポケモン達に言わされば物好きなポケモンがいた。
 それが、リーフィア、だった。
 このリーフィアはもう何と言っていいのやら……初めて会った瞬間、いきなりグレイシア抱きついてきたのだ。
 いきなりの抱きつきにも驚いたが、もう一つ、この森で初めて自分に触れてくるポケモンの存在にも驚いていた。
 グレイシアは氷、リーフィアは草。
 どう考えても自分には嫌悪感を抱いてもおかしくないのに、どうして、あのリーフィアは自分のことをそんなに触れてくるのか?
 不思議に思いながらも、グレイシアはリーフィアのことをちょっとずつ信じるようになっていた。
 今はリーフィアのおかげで森での食べ物も困らないし、なにより、リーフィアに会ってからは自分では分からないのだが何故か体の調子が良いのだ。風邪になることも全然なくなっていた。
 

 
 しかし、ある日のこと。 
「ねぇ、グレイシア! こっちに行こうよ! こっちにいっぱいリンゴの木があるからさ!」
「…………」
「グレイシア?」
「あ、な……なんでもないわ。それで何の話ですの?」
「えっとね、こっちにいっぱいリンゴの木があるから行こうっていう話!」

 どきん。
 
 まただ。
 また、この音が自分の胸から聴こえてくる。
 グレイシアは最近、この胸のことで悩んでいた。
 なんだか最近、リーフィアに触れる度に胸が内側から自分をグーで叩いているかのような感覚を覚えるのだ。
 くすぐったいような、熱くなるような、そんなうずきみたいなものが胸を叩かれる度にグレイシアの体中に広がっていた。
 一体、これは何なのか?
 もしかして、何かの病気にまた自分はかかってしまったのだろうか?
 掴みどころがないところがまたグレイシアを余計に苦しめた。

「……大丈夫? グレイシア? なんか、ちょっと顔が赤いよ?」
 グレイシアの異変に気がついたリーフィアが駆け寄って来て、顔を覗きこんできて――。

 どきん!

 グレイシアはとっさに後ろに飛んでリーフィアから距離を取った。
 その顔は若干、赤く染まっていたような気がした。
「グレイシア? どうしたの?」
「な、なんでもありませんわ! きょ、今日は私は帰りますわ」
「え、でもグレイシ……」
「いいですから!! あ……ごめんなさい。帰りますわ」
 思わず、怒鳴ってしまったこと――イライラをぶつけてしまったことに舌打ちしながらグレイシアはその場を去っていった。
 なるべくリーフィアから距離を離したいと主張するかのようにグレイシアの足が素早く動いていく。
 とにかく、リーフィアから離れないと。
 体がなんだか熱くてたまらない。
 この先、木々を抜けたところに川があったはずだと駆けて行く。
 木々を抜けると、そこには小川が流れていた。
 せせらぎの音が耳に入ってきて、少しずつ落ち着いてくるがそれだけでは熱は下がりきらない。
「はぁ……はぁ、はぁ……はぁ、はぁ……だめですわ……このままでは」
 急いで、小川の水面に顔を近づけ、水を飲む。
 ちょっとずつ熱は冷めていき、グレイシアは顔を水面から話した。
「……本当に、だめですわよね、このままだと……」
 最近リーフィアに触れる度に、体が熱くなっていく謎の現象。
 何がなんだか分からない、けど……一つだけ分かっていたことがあった。
 このままでは体が溶けてなくなってしまうのではないだろうかと。
 自分はグレイシア、氷、氷は熱くなればやがて溶ける。
 きっと、自分もこのままだと溶けてしまう。
 …………もう、リーフィアから離れよう。そんなことをグレイシアは思った。
 リーフィアのことが嫌いなわけではない。本来なら敵対心を向けてもおかしくない自分にあそこまで接してくれるのだから。
 だが、このまま溶けて水だけになってしまったら、それをさせてしまったリーフィアに罪悪感なんて残したくなかった。
 思いっきり嫌われるような別れ方をしてリーフィアの心から自分を消してしまおうとグレイシアは考えた。
 未練を残さないように自分にも厳しくなって、明日は別れてやるとグレイシアは心にそう決心した。


 翌日、いつもの集合場所にグレイシアが赴くと、そこにはリーフィが日光浴して待っていた。
 グレイシアが歩み寄っていくと、リーフィアが気がついて抱きついてこようとする前にグレイシアの口が開いた。
「リーフィア! 私は今日、お別れのあいさつに来ただけでございますの」
「え?」
 思わず、リーフィアの足が止まる。
 グレイシアはそのまま言葉を続けていく。昨日した自らの決心に従って。
「私はもうこの森を出て行きますわ!」
「え? ど、どうしてなの?」
「リーフィアのことが、大嫌いですからっ!」
 ここまで言ってグレイシアの口が一旦、止まった。
 リーフィアの目が悲しそうな光を放っていたからだ。
 グレイシアの胸の辺りがチクリと針が刺さったかのような感覚が芽生えた。
 お願いだから、そんな顔を向けないで欲しい。そんなリーフィアを振り落とすかのようにグレイシアは言葉を乱暴に吐き出す。
「アナタのことなんて、見たくもありませんし! 一緒にいたくもありませんわ! もうアナタといるだけで疲れていますの! もうアナタとは会いたくもありませんわ!!」
「…………」
「なっ!? ちょ、ちょっとリーフィア、私の話を――」
「嘘、でしょ? グレイシア」
「な……!?」
「だって、そんなこと言うなら、どうして最初に逢ったときに同じようなことを言わなかったの? なんで――」
 リーフィアからグレイシアの近くまで歩み寄ってきた。

「泣いてるの?」

 グレイシアは驚いた。全く、涙なんて流していなかったはずだと思っていたからだ。
 けれど、グレイシアは下を向いた。
 
 そこには、我慢できなかった感情が一つ、二つ、三つ、地面を濡らしていた。

「何があったの? 昨日からなんか変だよ? ねぇ、グレイシア。話してほしいよ」
 グレイシアの我慢の枷が音を立てて壊れていった。
「私、最近変ですの! アナタに触れる度に、胸が、ドキドキ、して! 体が、熱く、なって! このまま、じゃ、私! 溶けていなくなって、しまいますわ! アナタに! そんなこと! させたく――」

 そのとき、グレイシアの体に温かいものが当たった。 

「……ほら、大丈夫。溶けないよ」

 ぎゅっと、リーフィアがグレイシアを抱き締めた。

「リーフィア……! 何をやって……! このままでは、溶けて……!」
「グレイシアは確かにここにいるよ。溶けてなんかないよ、生きてるんだよ」 
「!! …………なんで……どう、して……こんな、風に……抱いて、くるですの……!?」

 リーフィアが微笑みながら言った。

「グレイシアのことが大好きだから」
 
 温かな風が一つ吹き抜けていった。
 抱き締めてくれているリーフィアの体から漂う優しい草の香り。
 そして、リーフィアの言葉から、グレイシアは全てを理解した。

「あう、ううあん、あう、う、う、う、リーフィアぁああ!!!」
  
 抱き締めてくれるリーフィアに身を委ね、グレイシアは大きく泣いた。
 これでもかというぐらい泣いた。

 溶けたのは体ではなく心だった。
 
 


 その後、グレイシアとリーフィアは夫婦になり、森の中では有名な仲の良い夫婦となった。
 リーフィアと愛し合ってからは、グレイシアは自分から森のポケモン達と接し始めた。
 自分から勝手に壁を作ってばかりではいけないのかな、とグレイシアなりに考えたのである。
 その結果、森のポケモン達とも仲良く付き合えるようになった。
 
 そして、グレイシアは体調を崩すことがなくなった。
 グレイシア曰く、リーフィアが抱き締めてくれたから、らしい。
 
「グレイシア!」
「もう、リーフィアったら」
「だって、グレイシアのことが大好きだから」
「ふふふ、私も大好きよ」

 お互い、自分の前足をお互いの腰に回して抱き締めあう。
 リーフィアから優しい草木の香りが漂い、そして温かい体温がグレイシアを包み込む。
 
 心が溶けたグレイシアの顔はとても幸せそうな笑顔だった。

 
  

【書いてみました】

 4月某日のチャットにて、スズメさんが見せてくださった、
 甘えん坊なリーフィアとツンデレそうなグレイシアのイラストを見たとき、
 この甘々(ですかね?)な物語を思いつきました。

 とにかくですね、スズメさんのリーフィアとグレイシアがとても可愛いかったのですよ。
 そして、和ませただけではなくて、見事に私の脳の引き金まで引いてくれました。(キラーン)

 快く快諾してくださったスズメさん、ありがとうございます!
 お気に召したら嬉しい限りです。

 

 それでは、失礼しました。


 ありがとうございました。


  [No.1129] ・・・ぽかーん。 投稿者:スズメ   投稿日:2011/05/03(Tue) 23:14:47   28clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
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たまたまチャットのときに書いた即席物体が、こんな立派なものになるとは・・・
ありがとうございます!!
未だに、開いた口がふさがらずぽかーん・・・
え、グレイシアかわいい。こんなにかわいい子だったとは・・・。
リーフィアもかわいい、二匹ともいつの間にこんなに・・・。
ほんとうにありがとうございました!
感謝してもしきれないです、ありがとうございました!!