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  [No.1170] 【再掲】俺の彼女はコスプレイヤー 投稿者:ピッチ   投稿日:2011/05/10(Tue) 20:43:32   93clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
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 俺の彼女は昔から、ポケモンになりきるのが好きだった。いわゆるコスプレという奴だ。俺が覚えている限りだと、確かもう幼稚園に通っていた頃からだったように思う。
 一番最初の記憶は、敬礼するみたいに片手を少し上げて、ソーナンスの鳴き真似をしていたことだったと思う。なんとなくそれが面白くて、周りの園児達も巻き込んでしばらくソーナンスの真似が挨拶代わりになっていた。
 それにみんな飽き始めた辺りで、あいつは今度は手も足も使わずに、床をくねくね這っていた。聞いてみればアーボの真似だそうで、それはまた俺達の間だけで大ヒットしたが確か床が汚いだとかで幼稚園の先生に止められた。

 始まりはそんな、鳴き真似とか動作の真似とか、そんなことだった。
 それが少しだけ変わったのは、あいつがうちにあった紫色のカーテンをぐるりと身体に巻き付けていた時だ。一体何をしているのかと聞いたら、にっこり笑ってこう言った。

「わたし、いまカゲボウズになってるの!」

 突然そんなことを言い出すものだから、悪ガキだった俺はそれにしてはツノが無いだのカゲボウズなら飛んでみろだの、あれこれと無理難題を押しつけた。そのたびあいつはパーティ用の三角帽子を被ってきたり、その場でぴょんぴょん跳ねてみせたりして必死の努力をしていた。今考えると、お互い子供だったんだなあということをひしひしと感じる。
 俺はそれがたまたまの思いつきで、その場限りのことだろうとばかり思っていたのだが、しかしあいつの努力はまったくそれに留まらなかった。なんというか、年々レベルが上がっていくのである。それこそ、ポケモンの成長のごとく。
 大きな葉っぱを頭と首に貼り付けて黄色い服を着てベイリーフになっていたかと思えば、次はどこで買ってきたのかディグダ型の帽子を被って、机の陰からそこだけを上に出してじっとしていたりした。
 幼稚園や小学校の低学年あたりまでなら、まだそれで済んでいた。おそらく小学校の中学年にさしかかる辺りで、あいつのコスプレ癖は一段階進化したと思う。


 その要因は――ひとつに、家庭科という授業である。


 最初はハンカチを縫ってみることから始まった授業は、ミシンを使ってエプロンを自作することで終わった。
 キットに布から糸から全部セットで入っていて、自分で布を切って縫い付ければ完成するようなものを使っていて、俺にとっては糸が通らないわミシンを壊すわで最悪の授業だったとしか言えなかったのだが、あいつは全くの正反対だったらしい。
 その証拠に、布を切る時、糸を通す時のあいつの真剣な表情は、完成品を目の前に持ち上げた時のあいつの満面の笑みは、十年近く経った今ですら、俺の頭の中に忘れようがないくらいに焼き付いている。
 ついでに、あいつがその完成品のエプロンのポケットに小さなぬいぐるみを入れて、ガルーラの真似をしながら学校内を歩き回り、ぬいぐるみを没収されて大泣きしていたことも。

 そしてその年代は、同時にポケモンにより接し始める期間でもあった。
 十歳頃といえば、新米トレーナーとして初めてのポケモンを持ち、希望すれば生まれ育った街を離れて修行の旅に出ることのできる年代である。
 俺とあいつはどちらも旅立ったりはしなかったけれど、ポケモンを持たないなんて選択はしなかった。
 それこそ幼稚園時代あたりの、初めてのポケモンを持ったらお互いに見せ合いしよう、という小さな約束を守り通した。

 そうして見せ合ったポケモンを見て、俺達はお互いに大笑いした。
 あいつは、俺がまったく予想通りのポケモンを連れてきたことに対して。俺が選んだのは、親戚がいつも連れていたサーナイトの子供の、ラルトスだった。

「だって、おじさんが来るたびにサーナイトの話をしてたじゃない。絶対ラルトスが最初に違いないって思ってたの!」

 そう言うあいつの連れてきたポケモンは、俺の予想をまったく外れていた。
 真新しいモンスターボールが開いて出てきたポケモンは、玉が連なったような身体に大きな白いツノ、そして赤い鼻。あいつみたいな女の子はあんまり好きじゃなさそうな、小さなビードルだった。
 あっけにとられている俺を見て、あいつがまた笑った。しかし俺はしばらく考えて、あいつがビードルを選んだ理由をばっちり思い付いたのである。

「おまえ、家庭科好きだもんなー! だからかぁ!」
「……えっ、どういうこと?」
「えっ違うのかよ? ほら、針と糸じゃんか! 毒だけど!」
「あー、そっかー! 違うんだけど、なんかそれいいかもね!」

 じゃあ今度この子に手伝ってもらおうかな、と言って笑う顔は、あのエプロンが完成した時の笑顔にそっくりだった。



 そしてお互い中学校に上がる頃になると、部活動やら何やらが重なって、だんだんあいつと会う時間も減っていった。
 俺はポケモンバトル部に入ったはいいものの、先輩の厳しさや勝てない悔しさでだんだん部活に出ることも少なくなり、それでも諦められずに野生のポケモンを相手に特訓していることが多くなった。
 あいつは相変わらずのコスプレ意欲を手芸部で消化し続け、裁縫技術はさらなるレベルアップを続けていた。たまに会えば、進化したキルリアをじっと眺めて、手元のスケッチブックみたいなものに延々と書き込んでいたりもした。
 何をしているのかと聞けば、今度の衣装のネタが欲しいなどと言われる。確かにキルリアは人に近い形だからやりやすそうだと思ったし、俺のキルリアを元にしてこいつがどんな衣装を作るのか気になったので、完成したら見せてくれよ、なんて軽い気持ちで頼んでおいた。
 そうしたら僅か一週間程度の後で、衣装に留まらず緑色に赤いツノの生えたカツラまでご丁寧に用意して見せてくれた。まさかここまでやってくるとは全くの予想外で、ぽかんとしている俺を見て、あいつはちょっと自慢げに笑った。

「何? あんまりにも完璧すぎて見とれちゃった?」
「いや、えーと、そうじゃないんだけど……」
「その答えもひどいんじゃない?」

 ……実を言うと、俺がろくに言葉も上げられなかったのはその衣装や小物類の凝りようのせいだけではなかった。なんというか、気になるのである。発育が。
 スカートで隠れているとはいえ、下半身は緑のタイツのようなものである。それにまあ、上半身も決して着込んでいるのではないわけで。
 そうなればこの年代の、いいや年代に限らず男の見るところなんて限定されるものである。もちろんその後、早々にバレてスピアーの針に追いかけ回される羽目になったわけだが。









 そんなことがあったにも関わらず、彼女のコスプレ癖とそれを見せられる俺の関係は何年も経った今でも続いている。しかもなんとなく、エスカレートした上で。
 そのエスカレートぶりは、説明するまでもなく今日の彼女の服装で思い知れると思う。


「…………なぁ」
「どうしたの?」
「いや、どうしたの、じゃなくてさ。……流石にその恰好だと、目の遣り場に困る」

 今日の彼女が着込むのは、深紅の生地に金色で胸の円形を縁取ったドレス。
 どう見ても作品を売って金が取れるレベルにまで進化した彼女の裁縫技術によって生み出された衣装の綺麗さは、もうそこらの衣装ショップのハンガーにかけてある服が吹き飛びそうなくらいにまで達している。
 染めた地毛にエクステを足したらしい背中を過ぎそうな長さの金髪に、唇を強調した化粧。それに彼女自身の、とても発育のいい身体が加わるわけだ。ついでにそんなに胸を寄せたポーズ取るな、ただでさえ大きいんだから。
 彼女が少しむくれたのは、そちらを見ていない俺には声の調子でしか分からない。

「せっかく作ったんだから見てよね」
「せめて着て見せられるもの作ってくれないか」
「えっ、何それ酷い! 私、ちゃんと人に見せられるもの作ってるよ!?」
「足りないなら『俺以外にも』ってのを付け足してくれ」
「ついてる! 最初からついてるから!」
「冗談だろ……」

 彼女から逸らしていた目が時計を捉える。一時五十分。
 座っていたソファから立ち上がって、テーブルに置いてあったモンスターボールを手に取り、腰のベルトにつけておく。

「……それじゃ、俺、もう時間だから」
「え、もう? 早くない?」
「早くないから。……それじゃ、また」

 足早にドアの方まで進む自分を、俺自身ですら彼女から逃げているみたいだと思った。ドアを開けて、その奥に滑り込んで、またドアを閉める。彼女の方を振り向く勇気は、最後までなかった。





「……って訳なんだけどさ、どうすりゃいいんだ俺」
「どうするもこうするもねーよ、このリア充め。さっさと爆発しろ」
「いや、俺は本気で悩んでんだけどさ」
「あんなに可愛くてスタイルまで良い彼女が居て何を悩むことがある。ちょっと趣味が変なことくらい懐深く受け入れてやれよ」
「変だとは思ってないけどな、行き過ぎだと思ってるだけで」
「だいたい同じじゃねーか」
「違うっつの」

 そんな俺のいつもの相談相手は、サークルでもダブルバトルのコンビを組んでいる親友だ。何かあるたびに何だかんだと文句を言いながらも付き合ってくれるこいつこそ懐が深いと思うが、何故かこいつには浮いた話をさっぱり聞いたことがない。
 本人にも自覚があるらしく、相談すると返ってくる第一声はだいたい「爆発しろリア充め」かそれに近い言葉である。
 そんないつものやりとりをひとしきり言い合った後、神妙な顔になって相手が言う。

「それ、なんか最近会うたびに言ってるけどさ。結構付き合い長いんだよな? その彼女さんとは」
「そうだな。幼なじみだし、幼稚園くらいからあの趣味あったぞ」
「幼稚園とかそんな早くからかよ。付き合い長ぇなオ・マ・セ・さ・ん」
「やめろキモい」

 大の男が甘ったるい声を作って上げるくらい気持ちの悪いことは他になかなかないと思う。
 視線を逸らしてみれば、こいつの手持ちのエルフーンですらちょっと引いている。おいやめろ手持ちに見放されるぞ。

「なあ、そいつまで引いてんぞ」
「うわああ悪かったフータ! もうやらないから、な!?」

 慌ててエルフーンの方を向いて謝るこいつの顔はかなり必死である。元から何か見放される要因でもあったのかお前は。そんなエルフーンとトレーナーの間に俺のドレディアが割り込んで、エルフーンを何やら宥めている。
 こうやってこいつのポケモンにはそこそこ浮いた話があるんだが、いかんぜんトレーナーのこいつ自身はそういうものにさっぱり無縁である。謎だ。
 ドレディアにはこちらから何も言うことはなく、俺が声をかけたのはトレーナーの方だった。

「……で、俺は確かに幼稚園の時からあいつと友達だったし、その頃からあいつのコスプレ癖はあったけどさ。後そいつはリリに任せとけ」
「ああ、悪い悪い。ホントリリちゃん頼りになるよなーこういう時。……でさ、お前がポケモン始めたのっていつ頃?」
「なんか関係あんのかそれ? ……普通に十歳だけど」

 質問の意図がいまいち読めない俺を置いて、こいつは一人でうんうん唸って考え込んでいる。しばらくして顔を上げると、さらに質問を重ねてきた。

「いや、トレーナーとしてじゃなくてさ。普通にポケモンが好きだったのとか」
「訊き方悪いだろそれ。……あー、それならその、幼稚園くらいの時からかな。ナナの親のサーナイトに会ったのとかその頃だし」
「それだ!」

 急に声を張り上げられて、思わず椅子ごと後ろに退くところだった。さっきのエルフーンどころか俺のドレディアまで、一体こいつは何なんだと言いたげな視線でこちらを見上げている。
 こういうこと続けてるからこいつに浮いた話がないのか。きっとそうに違いない。
 そんな俺の内心をまったく無視して、こいつは一人で話を続ける。


「お前の彼女さんがポケモンの恰好すんのもさ、お前にポケモンじゃなくて自分の方見て欲しいってことなんじゃないのか!? お前のポケモンにさ、嫉妬してるんだよ!」


 一瞬言われた意味がさっぱり分からなかった。俺は確かにこうやって未だにサークルでバトルを続けてて、ポケモンとよく関わってはいるんだけれど、それで彼女のことをおろそかにしたような自覚は、さっぱりなかった。
 それに彼女自身は、服装とか以外についてはそれほどポケモンに、特にバトルに興味があるようには見えなかった。強いて言うなら、スピアーから始まりアゲハントやメラルバを手持ちとして迎えた時に、虫ばかりの意外な趣味に驚いたくらいだ。

「……それはないだろ」
「いや、あるって。その証拠にお前の手持ち見てみろ」
「手持ち? …………ああ」
「サーナイトにドレディアにミミロップ、しかも全員♀じゃねーか。彼女さんが妙な勘違いしても全然おかしくねーって。というかもうその手持ちだけで変態とか罵られたりしても変じゃない。……もしかしてお前それを期待して」
「アホかッ!」
「冗談くらい分かれよ……でも本当に、色々思われても仕方無いと思うぞ? お前、サークルの練習とか大会とか全然休まないしな。彼女さんと過ごす時間もろくにないだろ、そんなんじゃ」

 発言がいちいち胸に刺さる。
 今日だって結局は彼女を置いてこっちに来たわけだし、そう言われれば確かに彼女よりもポケモンを構っている感じは、する。
 俺は確かにポケモンも大事にしてるけど、決してあいつをその次にしたいわけじゃないのに。
 そんな図星の表情が出ていたのか、友人はなんとなく勝ち誇った顔でこっちを見てきた。ああ無性にイライラする。

「どうだ? 当たってたろ」
「そうだな。ついでに今ここでお前を殴り飛ばしておきたい」
「それは勘弁しろ。……まあ、昔っからポケモンの真似してきたって彼女なんだろ? お前がそうやってポケモンばっか見てるから、色々意識するトコもあるんじゃねーのかな」
「……そう、かな。……ありがとな色々。参考になった」
「礼言うくらいなら、俺に彼女さんの友達の一人でも紹介してくれや」

 そんな普段と変わらない軽口を返してくれた友人に、今は心の底から、感謝する。
 未だにエルフーンとじゃれていたドレディアを呼び戻して部屋から出ながら、俺は考えていた。彼女にこの気持ちを伝えるには、何と言えばいいかを。










「あ、おかえり。今日はちょっと早いんだね」

 帰り着いて見た彼女は、もうあの紅いドレスは着ていなかった。染めた金髪は肩を過ぎる辺りまで短くなっていたし、化粧も薄めのものに戻っていた。
 肩口まで出したあの服装は少し寒そうだったし、普段着の彼女を見ているとなんとなく安心したのだけれど、俺の心中にはもう一つ心配があったのでそれもあまり救いにはならなかった。
 きっと今の俺は、傍目に見ても明らかにそわそわしているんだろうと思う。自分ですら挙動不審なのが分かるような状態で、何を隠せるわけもない。彼女もそれに気付いたらしくて、言った後にもう一度こっちを見て、ちょっと変な顔をした。

「どうしたの? なんか変だよ、いつもと違う感じ」
「い、いや。……えーと」
「絶対いいや、じゃないでしょ! なんか隠してる!」

 この通りである。言い逃れできるような状況でもない。突然切り出すのには合わない話だと自分でも思いながら、それでもそれ以外に話す内容なんてなかった。


「……お、俺さ、お前のことちゃんと好きだから」


 彼女が目を丸くしてこちらを見た。当然だ。何の前置きもなくされる話じゃない。何事かと言いたげに彼女が口を開く前に、こちらからさらに続ける。
 まるで告白してるみたいだ。いや、確かに告白なんだけど。前は彼女からだった、なんて思い出して、彼女もきっとこんな気恥ずかしさとか息苦しさとか不安を感じながら言ってくれたんだと思うと、緊張でがちがちに固まっている身体が少しだけほぐれた、気がした。
 今度は俺が、返す番なんだ。
 マジックコートでもカウンターでもミラーコートでも足りない。三倍にも四倍にもして伝えよう。


「いっつもポケモンばっかり見てるように見えるかもしれないけどさ、お前のことも、ちゃんと見てるから。だから、……無理な恰好とか、しなくていいんだぞ」


 彼女にとっては本当に、あのドレスも「無理な恰好」ではないのかもしれないけれど。そこまで俺は推し量ってやれないダメな彼氏だけれど。
 それでも受け止めてやることくらいはできると信じたい。あの、懐の深くてシングルで行動の突然な友人に比べればまだまだかもしれないけれど。
 こうやって一歩を踏み出して、その身体を抱き締めてやることくらいはできるんだ。思った以上に小さくて細い身体は、俺の腕の中にすっかり収まってしまった。固まったままの彼女は、とても暖かい。


「俺はさ、……ポケモンになってるお前ももちろん好きだけど、素のままのお前も、大好きだ」


 頭の足りない俺が、あの友達と別れた後の数時間を使って必死に考えた台詞だった。
 本当はもっといろいろ、「ポケモンよりバトルよりずっとずっとお前が大事だ」とか、「俺の手持ちよりもずっとお前の方が可愛いんだから」とかがつくはずだったんだけれど、実際に彼女を前にしてみればそんなお飾りは全部吹っ飛んだ。
 そういうものをなくしたこれが、一番シンプルな俺の気持ちだった。
 しばらく固まっていた彼女が、ぶるぶると俺の腕の中で震え出す。ゆっくり上がったその顔を見れば、彼女の頬に――涙が、伝っていた。

「本当? 本当に本当?」
「こんなところで嘘つくはずないだろ、……本当に決まってる」

 返した言葉を聞けば、彼女はついに、泣き崩れた。
 俺の胸にすがるみたいにして、それでも泣きながら、細く声を上げていた。


「ずっと、……ずっと待ってたの、……ずっとそう、言われたかったの…………!」


 気付いてあげられないまま、俺は一体彼女を何年待たせていたんだろう?
 それを詫びる手段は、今はただ、その頭や背をゆっくりと撫でてやるくらいだった。


















 そうしてようやく収まったかと思えた彼女のコスプレ癖は、なんと未だに続いている。もちろん、それを見せられる俺も一緒だ。
 馴染みのあった俺の手持ちまで巻き込んで、彼女は今日も元気にやりたいことをやっている。

「はいナナちゃん、一緒にポーズ取ってー!」
「ナナもなかなか様になってきたなぁ。バトルが無い時はコンテストでも出てみるか?」

 見る先では、俺のサーナイトとサーナイトに扮した彼女が共にポーズを取っている。この状態でコンテストやミュージカルに出ようものならさぞかし圧巻だろうと口に出した呟きは、しかしあっさり彼女に遮られる。

「私のポケモンと出る予定のなら、コンテスト用の衣装はもう作ってあるの。アピスとお揃いのは難しかったけど、アゲトとお揃いのはすっごく綺麗にできたんだから!」
「そりゃあ、スピアーよりはアゲハントの方がコンテスト映えはするだろうな。……そういやお前、メラルバはどうしたんだ」
「ちょっと悩んでる。スルガ、全然さなぎになってくれないんだもの」
「あのな……メラルバはさなぎポケモンにならずに直接進化するんだよ。コンパンとモルフォンみたいなモンだ。しかも相当鍛えないと進化は厳しいぞ?」
「えっ、嘘!? 道理で進化しないわけだわ、メラルバのままどんどん大きくなるんだもの、あの子」
「メラルバの平均体長は1.1メートルだ。そこらのさなぎよりよっぽど大きくなるさ」

 変わらぬ日常を生きる彼女は、今日も眩しくて、とても愛しい。




――――
原題「俺の彼女がルージュラのコスプレし始めた」

4/3〜4/4にかけてのチャットでのこと。
小樽ミオさんの「三割五分が男性で十六割五分が女性」発言から私がざかざかと荒くルージュラコスのお姉さんを書いたことに始まり、巳佑さんが台詞を考案し、イケズキさんからほぼ全員が「エクステとハイヒールを平和に着けられる方にお願いします!」とノベライズ希望が回り、あれよあれよと言う間に完成してしまいました。
御三方、ありがとうございました。まあこんなものでよろしければお納め下さい。6時頃からのやっつけ仕事。(帰れ

しかし慣れないものを書くものではないですね。ラブシーンなんてとてもとてもぐふぉっ(吐血
何かひっかかってそうで気が気ではありません(放送コード的な意味で)

あと、毒男さんの容態が心配です。


Q:絵は?
A:力尽きました。

お題【自由題】
【とりあえず好きにして下さい】【輸血希望(A)】



(再掲時追記)
再掲希望ありがとうございます。たぶん来るならこれだろうと予測はしておりましたが(
最後付近の告白シーンを書き直してもいいなと思ったのですが、そのまま再掲にしました。
今でも3時間でこれが書けてしまった事が信じられません。げに恐ろしきはチャットの魔力。

【リクエストありがとうございました】
【虫マニアは三割五分の分】