うちのペンドラ―はでかい。
どのくらいでかいかというと、かなりでかい。
数字で言っちゃうと、10メートル強。普通の奴の約三倍。
行きずりのトレーナーと戦えば「ドーピングか廃人!」と罵られ
友人に相棒として見せてみれば「何を食わせたらこうなるんだ」と怪しまれ
家族に写メを送って見せたら「おおきくなったねー」と感心され
つまり うちのペンドラ―はでかい
けど昔からこんなに大きかったわけでもない
俺の家はヤグルマの森のすぐそばで、よく庭に野生ポケモンが入り込むことがよくあった。
ある日の夏休みのラジオ体操から帰ってみれば、観察日記用のアサガオを食いつぶしているボロボッロのフシデを発見した。
ご丁寧に鉢植えのそこの方から根こそぎ食ってくれていて、一から育てなおそうかという俺の気力さえも根こそぎ潰してくれた。
てめーこのヤローとばかりに蹴っ飛ばした拍子に毒の棘が刺さったのはなかなか嫌な思い出だ。
瀕死に近い野生のポケモンに八つ当たりなんかしようものなら世間の非難の目は俺に向かうこと間違いないし、しょうがないからアサガオのかわりにこいつを観察してやることにした。
なんか『ポケモンの回復日記』なんて格好つけた名前にして、観察開始。
とりあえずポケモンフーズと傷薬与えようと近づいたら足に噛みついて全力で俺を拒否。
なんだよ、あれか、そんなに上から目線が嫌なのか。だったら匍匐前進してやったら問題ないんだろうなえぇ?
はいつくばってじりじり近づいてやった逃げるのはやめた。相変わらず触角震わせて威嚇しまくってるけど。
ポケモンフーズを口元に投げてやっても一向に食う気配がない。あれか、俺が食べて見せないと食わないってか。
だが俺は食って見せた。さもうまそうに食って見せた。くそ不味かったけど笑顔で食って見せたさ!
そしたらあいつは・・よっしゃくったぁぁあ! なにこれものすごい嬉しい。あのときの快感に近い喜びは今でも覚えている。
・・つまり、その時は普通のフシデよりも小さかったってことが言いたいんだ。
夏が終わることにはすっかりフシデは俺に懐いてしまい、家族公認でゲットが許された。
何か名前をつけないのか、と言われてその場で食っていた『あんみつ』と命名。
『ペンドラ―にあんみつ!?』とかなりの確率で驚かれる。
いや、別にあんみつって名前可愛くねぇ?あんみつ本人は多分気に入ってる、と思う。
名前呼ぶたびに尻尾振って喜んでるからそう思ってるだけかもしれないけど。
別にホイーガ時代もでかいという事はなかった。きっと普通だった。
・・・。
わからん、何故こいつがあんみつがここまででかくなったのかがさっぱり分からん。
うちのペンドラ―はでかい。
だが何故か恐ろしく素早い。
あの図体で先制ハードローラーは反則だ、なんて何回言われたことか。
うちのペンドラ―はでかい。
細長くてスタイルが良い。そこ、太いなんて言ったら殺す。
あんみつは女の子なのでそこは言葉に気をつける。
うちのペンドラ―はでかい。
しかし気は優しくて力持ちだったりする。
俺なんかひょいと持ち上げて背中に乗せてくれたりする。
うちのペンドラ―はでかい。
ずしんずしんとあるかない。
かろやかにのしん、のしんと揺れる。
・・そう言えば、昔、小猿どもがフシデだったころのあんみつにのって楽しそうに走り回ってたなぁ。
お前、大きくなって俺も乗せてくれよ、そんなことを言ったような気もする。
・・・。
まさか、なぁ。
あんみつの背中は ひろくて 温かい。
うちのペンドラ―はでかい。とにかくでかい。何もかも包みこんでくれそうなくらい、でかい。
おまけ テレビで30メートルという驚異のでかさを誇るマダツボミが映っていた。
あんみつはわりと可愛らしい部類なのかもしれない
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余談 脳内バックアップとは。ログが飛んでしまっておまけに自分の頭の中にしかバックアップがないものを書き起こすことを指す。
書く側は大変な労力とうろ覚えの記憶でそれっぽいものを空気を変えずに書かねばならず、結構きつい作業である
【こんな感じだったよね】
【なにしてくれてもいいのよ】