[掲示板へもどる]
一括表示

  [No.1183] 竜頭蛇尾な昼下がり 投稿者:西条流月   投稿日:2011/05/14(Sat) 02:15:11   134clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5


※注、四天王及びチャンピオン、その他ポケモンに関するイメージを崩したくない人はブラウザバックをすることを推奨します。この作品を読んで気分を害したなどの健康上の被害を受けても当方は責任を取れません
※タイトルが全てな話なので悪しからず














































 ポケモン協会には服装規定がある。
 しかし、この規定は協会に属するチャンピオンや四天王には適用されることがない。
 ポケモン協会のルールには、このように部外者から見れば、疑問符無しではいられないようなものがいくつかある。
 そして、平等が叫ばれるようになって久しいというのにこのあからさまな差別に、異議を唱える人間は何故だかいない。
 それには、四天王がその地方で五指に入るポケモントレーナーだからという事情が大いに関係しているのだろう。
 ポケモンという大量破壊兵器に成りうる隣人が闊歩する世の中で強いポケモントレーナーというのは、金で買えない資源である。
 だから、ナルシストであろうが、言動が気に障ろうが、人間に破壊光線を打とう
が、気にしてはいけない。
 相手は雲上人だ、こちらに理解できない理由の末にそうやってるのだと思わないといけない。
 そう、変な服を着ていようがそれは凡人に理解できない流行の最先端。あるいは新しい訓練方法だ。そうに違いない。

「すいませ〜ん。天ぷら蕎麦一つ」

 その日、食堂にきたシンオウのポケモンリーグチャンピオン、シロナを見た協会職員一同はそう思うことにした。
 そう思わないとやっていけない程にシロナの服装はなんというか……あれだった。
 上はヒメグマプリントのTシャツ。ヒメグマの顔が意外にある膨らみのせいで歪んでいる。
 下。下はなぜかハーフパンツだ。いつもの黒のロングスカートではない。
 ここがカントーで季節が夏ならば、普通だろう。
 ヒメグマプリントが子供っぽいなんてハーフパンツから見える健康的な太股の前では全く意味を成さない。
 むしろそのギャップがいいのである。美人が着るならOKだ。
 しかし、今は夏だがここはシンオウだ。
 シンオウはその最北端にある常冬のキッサキを始めとして基本的に寒い。
 当然のようにポケモン協会シンオウ支部も寒い。冬なんてニャルマーどころかガーディだって丸くなる。
 今日だって、風が吹けば涼しいを通り越して寒いし、冷房が使われることはありえない。
 薄手のカーディガンを羽織るぐらいが丁度いい寒さ。だというのにハーフパンツ。ハーフパンツだ。
 寒いだろう、間違いなく。
 雲上人と言えど、人間である。寒さを感じないはずはない。他の地方のチャンピオンならそういう人間がいるかもしれないがチャンピオン界の誇る常識人、シンオウのシロナは真っ当な人間だ。
 間違いなく常識の外、超常現象。
 平和な食堂が地雷源の真っ只中に変わった瞬間だった。


 しかし、直ちに逃げることは困難だ。協会の立地上、食堂で昼を取る人間が多いこと、さらに今は昼休みであるため、食堂には多くの人間がいたからだ。
 ここで逃げればどうなるか? 答えは簡単、狂騒だ。
 我を忘れた逃走は混乱を呼び、混乱は判断を狂わせ、地雷の爆発を誘発してしまう。
 かといって、冷静に対処できるなら可能かと言えばそうではない。
 食堂から退避するには食器を返却しなければならない。そして、その返却口があるのはシロナの近くだということを踏まえると彼女に気づかれないで行くことは不可能である。
 それらの事情によって逃げることは不可能だ。
 優秀な大人であるポケモン協会職員たちはそれを理解した。
 しかし、職員たちは、優秀であるがためにこれが時間稼ぎに過ぎないことも知っていた。シロナは気さくな人間だ。常日頃、食事時は適当な人間と相席をすると、話を花を咲かせている。
 あれがシロナ本人なら――ことここに至っても信じたくないが――今日も誰かに相席を求めるはずだ。そして、話をしたならば誰しもが服装について聞かずにはいられない。むしろ、聞かないとか拷問である。
 仮にそれが着るものがなかったなんて平凡な答えならばいい。可愛らしいとも言えよう。しかし、チャンピオンともあろうものが着るものがないなんてことがあるだろうか? シロナの私服にはチャンピオンとしての正装でもある黒いコートがあるのだ。着るものがなければ、羽織ればいいのに着ていない。
 必然的にそういった類の理由ではない。ならば、どんな理由があるというのか。想像するだに恐ろしい。
 しかし、幸いにしてシロナが頼んだのは天ぷら蕎麦。
 注文が入ってから揚げるという調理人の拘りが反映された珠玉の一品。
 食堂において、値段は3位の550円、調理時間は2位の15分、人気は1位の天ぷら蕎麦だ。
 時間は短いながらも対策を立てる時間はあった。
 しかし、どうすればいい? 逃げるのは不可能。今から距離を取ろうとするのは不自然。かといって自らが特攻した場合の危険性は未知数。
 それらの考えから導き出された結論は食堂の入り口に目線を向けることだった。
 次に来る人間に特攻させるのである。
 卑怯だろうが最善策を躊躇なく選択する。それが大人である。
 そして、優秀な大人である協会職員は躊躇わず選んだ。
 壁にかかった『イジメ! ダメゼッタイ!』のフレーズが目に痛いなんて錯覚である。
 救世主(という名のスケープゴート)の登場を今か今かと待ちわびている食堂は異様な雰囲気に包まれているが、それを気にする者はいない。
 その元凶は天ぷら蕎麦の完成を待ちながら、サイドメニューにあるポケモンフーズを選んでいるし、その被害者たちからすれば巻き込まれた時から異次元に足を踏み入れているようなものだから。
 そんな緊迫感を感じとったのかはたまた偶然か、なかなか人は来なかった。
 天ぷらが順調に揚がっていけば、反比例的に猶予は無くなっていく。
 それは同時に誰かが爆心地に手を突っ込まねばならないということだ。それだけは避けねばならない。
 来いという念は一層強くなるが誰かが来る気配はない。
 かくなる上は、と先程――シロナに気付かれないのが困難であるため――断念した食器の返却をするべきだろうか。悲壮感すら漂よわせ、立ち上がろうとするものさえいる中、とうとう救世主はやってきた。
 シンオウが誇る四天王、ゴヨウとキクノである。
 入口に立った彼らは部屋の異様な空気を感じ取ったのか、一瞬歩みを止めるとその元凶を探るように視線だけで食堂内を見渡すとシロナの姿を発見。ゴヨウは震える指でメガネを直し、キクノは調子を整えるように咳き込んだ。
 しかし、それだけ。逃げることもなく、食堂に踏み込んだ。

 助かった!

 全員がそう思った瞬間だった。冷静にバトルを運ぶ青年と多くを経験した老婆ならば、爆弾の解除できるに違いない。その確信が確かにあったからだ
 期待に満ちた視線を受け取った彼らは堂々とした足取りで食堂に入る。
 当然、次はチャンピオンのいる配膳場所だ。
 現在シロナしかいない場所に行けば、会話が生まれるのは当然。服装の話題になるのは必然。その結果として、爆弾は処理される。
 異様な緊張感を齎した珍事は終焉を迎える。
 ようやく見えた終わりへのビジョンに職員一同が安堵の意気を吐こうとして――
「ゴヨウ。私は席を取っておくから私の食事も買ってきてはくれないかね?」
「いえいえ、場所取りなんてマネ、年配の方に任せるなんて心苦しいです。是非、私にお任せを」
「何、年齢のことなど気にするな、私は疲れたのでな。少し料理を運んできてほしい。その代わりに席を取っておくということなのだからな」
「ふむ、しかし午前中のバトルで疲れているのはこちらも同じなのですが……私はインドア派ですので、指示を出すだけで体力を消耗してしまうのですよ」
「目上の人間を休ませるという考えはないのかい?」
「おや、先ほど年齢を気にするなと言ったのはそちらではないですか? もしや痴呆症になってしまわれたのですか?」
 吐けなかった。
 彼らも事態を呑みこんだうえで踏み込んできた。しかし、それは高みの見物のため。あの服装が何なのかについては知りたいが、自らが爆発はさせたくないということらしい。
 念の入りようは只事ではなく、席を選べるという後から来た者の特権を全力で行使してシロナから一番離れている席を取ろうとしている。
 どっちか行けよ、と念じている周りの質量すら感じる視線は、流石歴戦の強者と言ったところか、完全に受け流している。今、二人の間ではどうやって相手を行かせるかについて、高度な駆け引きが行われている。
 異様な集中のせいか、にこやかに舌戦を展開する二人の声が職員の耳に届く。これが元凶に聞こえてないことを切に願う。
 ていうか早く終わらせろ。
「そうかもねぇ。これじゃあ、注文を取りに行っても忘れちゃうねぇ」
 バトル中にどんな指示を出したかを思い出して、反省点を見出しているって雑誌で取り上げられてましたよね?
「いえいえ、痴呆症の改善には脳を積極的に使うことが重要って本で読んだことありますよ」
 それホントですか?
「いやいや、私に二人分の食事を持ってこさせるなんて何を言ってるんだい? 腕がぽきっと折れちまうよ」
 気絶したヌオーを(何故か)背負って回復マシンまで連れてきた老婆が何を言っているのか。
「すいません、今どうしても読みたい本がありまして」
 あとにしとけよ。
 てか、二人で行けばいいじゃん。それでチャンピオンに絡んで来いよとかは、表に出せない職員の本音である。
 内心のツッコミとシロナが動き出すリミットという二つの限界が迫りつつある今、全員が望んでいた。
 新たなスケープゴートの登場を。
 誰かいないのか、誰でもいいからこの袋小路を打開する人間は――

「何してるんですか、ゴヨウさんにキクノさん?」

 来た。
 虫フェチ、もとい四天王のリョウである。
 彼には虫の知らせが来なかったようで、この食堂にむざむざ足を踏み入れてきたようである。
「おや、これはリョウ。あなたも昼食ですか?」
「え……えぇ、まぁそうですけど」
「そうだ、一つ頼まれてはくれないかい?」
「あ、あのやけに怖いんですけど……」
 ゴヨウとキクノの二人に肩をがっしりと掴まれた彼の姿は、ウツボットに捕食される虫ポケモンそのものだ。
「おや、老人を捕まえてそんなことを言うのかい?」
「むしろ僕が捕まえられてるんですが?」
「リョウ、目上の方に対する礼儀というものがあるでしょう? それではいけませんねぇ?」
 さっきまでのあんたが何を言うとかは気にしてはいけない。仕方ない事情があった。そういうことなのである。
「はぁ、ものすごく怖いんですが……僕は何をすればいいんですか?」
「何、ただあそこにあってシロナさんの服装について聞いて来ればいいんですよ」
「なんで今日に限って聞く気になったんですか? いつも同じ服装じゃないですか?」
 いまいち要領を得ていないリョウの首を強引にシロナの方へ方向転換。首から変な音が出ると同時にリョウの顔も奇妙に歪んだ。シロナの服装の異様さに驚愕したのだろう。痛みとかそんなのはないのである。
「……………………………………なんであんな恰好してるんですか、イメチェン?」
「それを聞くのがあなたの仕事です」
「僕の仕事はポケモンバトルだったと思います」
「これもある種の戦いじゃ」
「いや、お二人も同じ四天王なんだから、ご一緒してくださいよ」
「「リョウは先鋒だから」」
 妙に納得のいく説明にリョウはうなだれるとシロナの方へと進む。この思い切りの良さは先鋒らしいというべきか。
「あの……シロナさん」
「あら、リョウもこれからご飯なの?」
 こちらを向いたシロナを見て、リョウは仰け反った。やはり間近で見るとインパクトも凄いのだろうか?
「えぇ、まぁそんなところです。少し、聞きたいことがあるんですが」
「別にいいけど?」
 ごくりと生唾を呑みこむ音が食堂内に反響する。
 質問する本人だけではない。食堂内の人間全員(シロナ除く)が引き攣る喉を懸命に動かし、嚥下していた。
 とうとうゴールが見えているのだから、しかたがない。
 リョウは震える声で問うた。
「あの、その服装どうしちゃったんですか?」
 それを聞かれたシロナを自分の服装を矯めつ眇めつ呟いた。
「あぁ、これ? この間、イッシュのカミツレさんから送られてきたんだよね」
「はぁ…………でもなんで着てるんですか?」
「まぁ、貰い物だし。一度は着ないと勿体無いかなぁって。今日はまだ暖かいし」
「別に、ここに来てまで着る必要性はないと思うんですが……」
「あれ、もしかして似合ってない?」

「「「「似合ってますけど!」」」」

 思わず食堂にいた全員で突っ込むことはできたとしても。
 そういうことじゃないんだよね。
 とは流石に誰も言えはしなかった。


―――

あれは大体四日前のチャットで閲覧で入ろう祭りが開催されてた時に正体を当てられたら、リクエスト聞きますとか言ったら、ラクダさんに見事言い当てられたのでラクダさんから貰ったリクエスト「四天王とハーフパンツ」で書いてみた話です

四天王分少ないとか禁句です(笑)
オーバいないは言っていいですが

ラクダさん、リクエストありがとうございました

【好きにしていいのよ】


  [No.1187] 【閲覧超注意】チャンピオンのシロナが勝負をしかけてきた!【超閲覧注意】 投稿者:   《URL》   投稿日:2011/05/14(Sat) 22:23:56   168clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5
【閲覧超注意】チャンピオンのシロナが勝負をしかけてきた!【超閲覧注意】 (画像サイズ: 322×470 74kB)


チャンピオンのシロナが 勝負をしかけてきた!▼

ガブ「あ゛? じろじろ見てんじゃないわよ」


言い訳をしよう。四方八方から「描け〜描け〜」と怪電波が飛んできて描かざるを得なかったんだ。

【だから閲覧注意って言ったでしょ!】
【色々ごめんなさい】


  [No.1193] シロナさん素敵!と叫ばずにいられない 投稿者:ラクダ   投稿日:2011/05/15(Sun) 22:06:36   61clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

まさか、チャット時の「リクエスト…じゃあ四天王で」「縛りはそれだけで?」「ならハーフパンツもw」「了解です」「マジですか!?」が、マジになるなんて……なんと素晴らしい!

しょっぱな、『ポケモン協会には服装規定がある。しかし、この規定は協会に属するチャンピオンや四天王には適用されることがない。』でまず笑ってしまいました。確かにぶっ飛んだ格好の人多いよなぁ、と。でもまあ、それ言ったらシロナさんまともな人だし、その人がハーフパンツ履いたところでそんなに変では無いはず……。

変ではなかった、変では無いが違和感ありまくりだった!
同じ場に居合わせた、ポケモンリーグ協会の皆様に激しく同情しました(笑)これはツッコミたい、でもそんなことできないよ…!

四天王の二人登場で解決されるかと思いきや。彼らの逃げっぷりと職員達の悶々ぶりに爆笑。その緊迫の最中、元凶のシロナさんがヒメグマTシャツ&ハーフパンツ姿で、暢気に天ぷら蕎麦待ちながらポケフーズを選んでいる姿を想像して……ww

先鋒のリョウさんに相当同情しつつ(仰け反った!)、シロナさんの「貰い物を一度は着てみようと思って」という返答に脱力しつつ。
似合ってなかった?に「「「「「「似合ってますけど!」」」」」と、とうとうツッコんでしまった皆さんに激しく同意しつつ。
……某アフロさんの出番がカットされた理由に思いを馳せてニヤリとしつつ。

存分に楽しませていただきました。リクエストを受けてくださり、本当にありがとうございました!



追伸;きとかげさんが描いてくださっている…!これは破壊力抜群だwwwシロナさん本当に素敵過ぎる……!!