「焼き鳥が一羽、焼き鳥が二羽・・・」
その日も焼き鳥屋さんは、電線にとまるポッポたちをそう数えていました。
焼き鳥屋さんから見れば、生のポッポ(野生のとも言い換えられる)も加工された鶏肉さんも同じだったのです。
「あいつらが捕まえられたら、どんなに生きの良い焼き鳥になるか」
窓の外を眺め、毎日同じ言葉を漏らします。
はてさて、言動はともかくこの焼き鳥屋さん、何気に地元じゃ人気のある焼き鳥屋さんです。
ちょっと年期の入った調理場はすすけて、なんだか居酒屋という雰囲気がしますが、ここは焼き鳥屋。
別名居酒屋といっても差し支えのない親父さんお勧めのお店ですから、問題ナッシング。
焼き鳥屋さん自身も鳥の鮮度や質にはめっぽううるさいものの、店の汚れに関しては興味を持たず汚れたまんま。
お客さんの座るカウンターまですすけてたりしますが、焦げてたりするだけで汚れがつくというものでもなく、これも問題ナッシング。
さてさて、こんなお店を電線の上からのぞく影がいくつか。 もちろん人間じゃありません。
そんな焼き鳥さん・・・いえ、ポッポさん達の会話を聞いてみましょう。
ポッポA「おい、始まったぞ」
ポッポB「焼け始めた、いいにおいだ」
ポッポA「あれがなんだか知ってるか?」
ポッポB「さあ、でも焼き鳥と呼ばれていたらしいぞ」
ポッポA「焼き鳥か、初めて聞くな。 よし、今日の夕飯はあれにしないか?」
そんな会話の中に入り込んできた影もまた焼き鳥でした。
ポッC「何の話をしてるんだ?」
ポッA「あ、ポッポC。体調は治ったのか?」
焼き鳥C「ああ、何とかな。それはそうと、さっき言っていた焼き鳥とは何のことだ?」
焼き鳥B「あそこで毎日発生及び消滅する謎のおいしそうなものだ」
ポッポBは、茶色のつばさをピンと伸ばして焼き鳥屋さんをつばさ指しました。
ポッポAは勿体つけたように大きく息を吸い、頭の羽を揺らしながらこういいました。
焼き鳥A「今日の夕飯はあれにしようと思うんだが、ポッポCも作戦に参加するか?」
こいつらは何を食おうとしているんだという突っ込みはおいておいて、焼き鳥屋のメニューでも紹介してみましょう。
まず始めに、今日の焼き鳥はニワトリのようですが、その日によって「豆鳩」や、「ぽっぽ」「スバメ」などの食材が店に並ぶ
ということも、このお店のポイントです。 珍味として人気らしいですよ。
さて、こちらは店を開けようとしている焼き鳥屋さん。腕まくりをしながら張り切っています。
暑いから腕まくりをしているだけだったりもしますが、まあいいでしょう。
いつもと違ったのはここから。
昨日までは見ているだけだった焼き鳥(生)が、自らこちらに向かってくるではありませんか。
「あいつらもとうとう焼かれに来たのか!」
何かを勘違いしています。 正確に言うと焼かれるためではなくむしろ食べに来たのですが、そんなことは焼き鳥屋さんには関係ありませんでした。
「いやっほー!」といいながら持ってきたのは、焼き鳥の串。 この人は何をする気なんでしょうか。
焼き鳥(生)の進入してきた窓は真っ先に閉められ、退路はふさがれました。
焼き鳥屋さんの暴挙に焼き鳥(生)達はパニックを起こして逃げ回ります。もうおいしそうなものなんて頭から抜け落ちていました。
なにしろ、焼き鳥なだけにとり頭。
盛大な見世物バトルの末(野次馬が集まっている)つかまったポッポ3匹は焼き鳥屋さんに品定めをされています。
「こいつ(焼き鳥A)は海沿いの出身か、羽がつやつやしているからな、健康状態もよさそうだ」
そういって、焼き鳥屋さんは焼き鳥(生)Aをいけすならぬ鳥かご(大きい)に突っ込みました。
次につかまったのは焼き鳥(生)C。
慌ててつばさをばたばたさせる焼き鳥さんのけづやはいまいち。
「こいつはあまり体調が良くなさそうだ、うちは鮮度と質を命にしているからな、いらん」
そういわれ、ぽいっと外に捨てられた焼き鳥(不良品)Cはふらふらと逃げ出しました。
やっぱりこいつの頭からも、他の焼き鳥(生)のことは忘れ去られています。
最後につかまった焼き鳥(生)BはAよりも一回り大きく、立派な体格をしていました。
風起こしをしようとするのもむなしく、つばさは風を切るばかりでつかめません。
まあ、強かったなら焼き鳥以外にも食べ物が手に入るはずですし、良かったのは体格だけだったりしました。
作戦の実行力は一番で、いつも危険な目にあうどじっこさんでもあったのです!
そんな焼き鳥(生)Bは焼き鳥屋さんのお眼鏡にもかなってしまいました。まあ、おいしそうですよね。
「こいつは山の出身か? いい物を食べて育っていそうだな、最近街に降りてきたばかりだろう、いいものが手に入った」
そういわれて連れて行かれた焼き鳥さんは、本物の焼き鳥さんになってしまいましたとさ。
・・・というのはうそで、ちゃっかり脱走しました。
焼き鳥屋さんの間違いは、AとBを同じ鳥かごに突っ込んでしまったことです。
鳥頭と入っても、鳥さんってじつは、脳みその大きさの割りに賢いのです。
つつくで鳥かごを壊して、焼き鳥屋さんの腕の中にダイブ!!
計画は念入りに立てないとこの焼き鳥さん(生)達のようになってしまいますよ?
おわり。
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チャットより転載しました。 以前の閲覧チャットのお題「焼き鳥」より。
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