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  [No.1266] 迷いの森の育て屋さん 投稿者:キトラ   投稿日:2011/06/02(Thu) 21:48:24   79clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
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いつまでメソメソ泣いてやがるこのガキ

吠えた。森にこだまし、涙を流していたシキジカはピタリと止めた。
「たかが親いねぇくらいで泣いて何になるんだよ!言ってみろ、説明してみろ!できねぇならメソメソしてんじゃねぇ!」
全く種族が違うゾロアーク。その牙と威圧感にシキジカは完全に黙った。


ゾロアークは知っている。このシキジカが生息地と全くかけ離れたところにいる理由、そして泣いてる理由。
大人しくて草食。強いメブキジカを必要とされる人間から逃がされた。いらないから。
だからこそ、ゾロアークは気に入らない。生まれた直後に親に会えないまま放り出され、途方にくれるのも仕方ない。
が、そんなものは生きる上で必要ない。

ゾロアークとその兄弟も、同じだった。捨てられ、人間を恨み、復讐を決意し、返り討ち。残ったのはそこまで人間に興味なかったゾロアークだけ。

捨てたことを後悔させてやる。そのこと自体、「人間が好きでたまらない」と証明してることだ。

捨てられた、ショックだ…騒ぐのは自由だが、これからどう生きていくかを考えないとならない。途中で死んでいった捨てられたポケモンたちは、いつまでも人間のことを考えていたから全滅した。



「でも、でもぉ」
まだ渋るシキジカにゾロアークは背を向ける
「死にたいならいつまでもメソメソしてな。」
「…待ってよぉ」
シキジカが勝手についていく。ゾロアークは振り切ろうともせず、森の奥に歩いていく。シキジカには大きな段差を、ゾロアークは手伝ってやった。
そうして、ゾロアークは自分の住まいについたのである。勝手に増えた住民と共に。



「迷いの森にキャンピングカーがあるでしょ?お姉さん喋れないみたいなのよ」
「それでもシキジカとはとても楽しそうだけど」



ーーーーーーーーーーー
以前、逃がされたポケモンの行方をテーマにしたSS投稿スレに投稿したものです。
見直すと、携帯から書いたからか、とても軽い感じがしまくります。
絶対にあのお姉さんは廃人を見てるはず!

そのスレにあった、ヒウンでゾロアークが会社員として生きていく話とかもあって、平成たぬき合戦ぽんぽこを思い出した次第です。
多摩の狐は全滅しました。だから化け学が使えるものだけこうして人間になって生きている
イッシュにたぬきっぽいやつはいないですが、そんな背景があるような気がしました。

【なにしてもいいのよ】


  [No.1291] 迷いの森の育て屋さん 投稿者:キトラ   投稿日:2011/06/06(Mon) 21:59:13   70clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
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迷いの森にいるお姉さんは、いらないポケモンを引き取ってくれるらしい。


 誰だそんな噂流したのは。おかげですみかにしているキャンピングカーには毎日のようにトレーナーといらないポケモン数十匹が来る。今日もえさの魚を取ろうと川に立ってたら、孵化させてはいらないポケモンを捨てているトレーナーが寄ってきた。
 ・・・今日のはバチュルか。電気蜘蛛の子供とはいえ、私は虫が嫌いだ。助手のメブキジカに任せるか。
 と思えば、昨日預けてきやがったメリープが森の草を食べにいって一匹もどらないと騒いでいる。別に森の中を散策するのは構わないが、かえって来れる範囲にしてほしい。さっきのバチュルが静電気を流しながらメブキジカを威嚇しているような音がしている。とりあえず無視してメリープを探す。


 そんなこんなで、今日も日が暮れた。ゆっくり寝たいが、そうもいかない。生まれたばかりの子供たちを引き取った本当の理由を実行しなければ。一人でいきていけるまで保護する。だからこれから増えたバチュルまで育てなければ。模擬戦闘を行い、強い技を確保すれば、当面は生きていけるはず。そこからどう生きていくかは私の知った範囲ではないが、できることならみんな幸せに生きてほしい。
 気付けば、近くの街の明かりも消される時間になっていた。さすがに今日も疲れた。育てなければいけないポケモンはまだまだいる。しかし、預けられるポケモンは増え続ける。このままでは私だけでは足りない。

 今日も魚を取ろうと近くの滝に行ってみた。魚はいくら取ってもいなくならない。魚はいったい、何匹いるのだろう。ちなみに、子供たちには結構不評だ。骨が多すぎるらしい。あまりに文句言うので、人間みたいに、魚を火炎放射で焼いてみたりした。熱があるとおいしいらしい。私にはどちらでもかまわない。

「やぁ」

人間の声だ。また噂を聞きつけてやってきたか、と振り返る。いたのは人間ではあるが、ポケモンを持ってない。何をしにきたのか、こんな森に。
「君だよね、捨てられたポケモンを預かってるのは。」
確認するまでもない。この森に人間に化けて住んでるのは私だけ。何日も探したが、私だけだった。
「人はポケモンを傷つける。これ以上きずついたポケモンが増えて、人間は気付かない。この連鎖を断ち切った方がいいと思わないかい?」
ずいぶん早口な男だ。他人と話す気がないのではないか。私の意思など確認するまでもなく、ただ話したいだけなのか。常軌を逸した目は孵化廃人と揶揄されたトレーナーよりも近づきたくない。
「僕はポケモンを解放する。君もいずれポケモンをあずからなくて済む。」
「なぜ?」
「捨てることがなくなるからだよ」
「・・・ポケモンを捨てる人間がいなくなっても、生きていくならば傷つくポケモンはいる。この子たちの中にも人間に捕獲されて、幸せそうなやつもいる。その子たちもひっくるめ、お前は不幸にしようとしている。お前は早口だ、私の言ってることなど分からないだろうが、お前はバカだ。」
それ以上はそいつの話を聞かなかった。こいつに関わってるとこちらまでバカになりそうだ。あいつには、一つの現象が全てなのだろう。森を通り過ぎた、幸せそうなトレーナーとそのポケモンは存在しないらしい。というか、そんなこと捨てられた私ですら分かるのに、本当にバカだあいつ。


 魚を抱えてキャンピングカーに戻る。春の花を角にくっつけたメブキジカがバチュルに囲まれていた。やはり虫は嫌いだ。
「おかえり。さっき誰と話してたの?ここまで聞こえたよ。」
「聞こえてたか。なんか知らない男だ。目がイッちゃってる怪しい男だよ。」
「そうなの?ポケモンかと思った。人間としゃべってるなんて。」
そういえば。言葉がすらすら入ってくるし、こちらも喋って向こうが分かっていた。なぜ分かったのか、だから人間の前では黙っていたのに、あんなに言葉がすんなりと。
「怪しい男だな。あまり関わらないようにしろ。それより魚焼くぞー。」
メリープたちがちゃんと薪を拾ってきていたようだ。それに火をつけ、食事にする。全員を呼ぶと、当初の想像よりもたくさんのポケモン。そいつらを早く一人前にすることが、私のやることだ。