[掲示板へもどる]
一括表示

  [No.1318] 君の長さは地下百キロ 投稿者:   《URL》   投稿日:2011/06/13(Mon) 02:56:59   104clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5



 ダグトリオ。それはポケモン界の神秘。
 ボールに入れるとポケットに入っちゃう不思議な不思議ないきものの中でも群を抜いて不思議な不思議ないきもの。ポケモン界の不思議プリンス、キング・オブ・不思議。

「プリンスとキングどっちですか」
 植木鉢に入れたダグトリオをためつすがめつそんな話をしていたら、話し相手の後輩ちゃんにつっこまれた。後輩ちゃんは聞き上手のいい子だが、いささかツッコミの細かすぎるきらいがある。
「大体、この子たち♀じゃないすか」
「まあそれは言葉の綾として置いといてくれたまえ」
 私はコホン、と咳払いをする。後輩ちゃんのツッコミタイムを終わらせ、こっちの話を聞いてくれという合図。よくできた後輩ちゃんはコーヒーを持ってきてくれた。

「まず、ダグトリオの不思議その一。下半身だ」
「永遠の謎ですね」
 後輩ちゃんは合いの手を入れ、コーヒーをすする。私はコーヒーをすするのもそこそこに議論をおっ始める。

「ダグトリオの下半身がどうなっているか。今まで数多の科学者たちが挑み、敗れ去ってきた。ダグトリオの穴を掘る! その為の体の機構はどうなっているのか? シャベルのような腕が付いているのか、それとも鋭い爪で土をえぐるのか?」
「ディグダとダグトリオは“きりさく”覚えますね」
「そうだ。だが彼らの爪を見たものは誰もいない」
 私はここでひと息入れて、コーヒーにフレッシュを入れる。
「ハイスピードカメラで映しても、爪らしきもの影も形も見えない。テッカニンも真っ青のスピードだ」
「そりゃすごいですね」
「よっぽど見られたくないのか」
「風船でも持たせたらどうですか」
「やってみた。だが失敗した。あいつらめ、地面ごと貼っつけて飛んでいきやがった」
 後輩ちゃんが角砂糖をコーヒーに入れる。
「さらに不思議その二」
「その二」
「奴らは地下百キロまで掘り進む」

 ここで私はファイルケースからおもむろにポケモン図鑑の内容のコピーを取り出す。そのプリントを見た後輩ちゃんはふむふむと頷き、紙ペラを私の方に押し返した。
「でも、ポケモン図鑑の内容なんて信用できませんよ。伝説のポケモンのページなんて聞き伝えが書いてあるだけだと言いますし」
「しかしね君、ダグトリオは地下百キロを掘り進んでいるのではないかという観測結果がいくつか報告されているのだよ」
「計算ミスじゃないすか」
 取り付く島のない後輩ちゃんに、手の平を上げてこちらの意見の傾聴を求める。はいはい、と若干不満そうに言いながらも、後輩ちゃんは聞く姿勢に戻ってくれた。
「とにかくダグトリオは地下百キロを掘り進むと仮定しよう。その場合、温度が問題になるはずだ」
「温度と圧力ですね」
「頼むから温度だけにしてくれ。私には分からんから。
 さて、地下へ掘り進むと、大体百メートル深くなるにつれ三度上昇するのだそうだ。ということは地下百キロまで掘り進むと……」
「三千度」
「でもダグトリオの特性って“耐熱”じゃないんだよ」
「マグカルゴの体温が一万度って言いますからね。そのぐらい耐えられないとだめなんですよ」
「君はそういう時だけポケモン図鑑の記述を持ち出すのかね」
 後輩ちゃんは笑いつつコーヒーに角砂糖を追加する。私は話を続けた。
「とにかく、三千度に耐えながら穴を掘るダグトリオが、“火炎放射”なり“熱湯”なりでコロリとやられてしまうのが解せん」
「“熱湯”は水タイプの技ですけどね」
「地下百キロに適応できるこいつらが地上に出てくる理由も不明だし、地下百キロを好んで掘り進む理由も謎だ」
「それには同意しますが」
「そこでだ。私はある仮説を立てた」
 私はティースプーンでカップの淵をチャリンと叩く。

「ダグトリオは地下百キロを掘り進んでいるのではない。ダグトリオの体が地下百キロまで伸びているのだよ」

 は? という侮蔑の声が聞こえた。後輩ちゃんは机の上のダグトリオに憐憫の眼差しを向ける。
「どうしよう。あんたのご主人いよいよおかしくなってきたよ」
「君の顔にその台詞がキッチリ書いてあるから、いちいち言わんでよろしい。
 ダグトリオの体高七十センチは地上に出ている分だし、下半身が地下に百キロ伸びているとすれば、彼らが地下深くを掘り進みながら地上生活にも適応していることの理由付けになる。それに、風船を持った時地面ごと浮くことも、ハイスピードカメラに映らないようこっそり素早く相手を切り裂くことだってできるはずだ!」
「先輩」
 興に乗ってきて、拳を振り上げコーヒーカップを振り回す私に、後輩ちゃんが水を差した。
「なんだ」
 精一杯の仏頂面をしてみせる。
 後輩ちゃんはダグトリオを指差した。

「こいつら、植木鉢に入ってますが」



 ポケットモンスター、それは不思議な不思議ないきもの。ボールに入れるとポケットに入っちゃう……
「っていうか、地下百キロまで掘ったらマントルにつっこみますよね」
 その中でもダグトリオは群を抜いて不思議な不思議ないきものである。




【何してもいいのよ】

ダグトリオについて真剣に考えてみた。
文中の地学関係の台詞まちがってたらごめんなさい。


  [No.1331] Re: 君の長さは地下百キロ■感想です■ 投稿者:スウ   投稿日:2011/06/16(Thu) 23:32:42   50clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

はじめまして。想像力が刺激されてめちゃくちゃ面白いです。ダグトリオのことでこんなに考えたことは今までありませんでしたね。

>「ハイスピードカメラで映しても、爪らしきもの影も形も見えない。テッカニンも真っ青のスピードだ」

この箇所が一番傑作でした。
こいつらのきりさくには、なにか、スピード以外の要因でもあるのでしょうか……?


  [No.1332] 感想ありがとうございます 投稿者:   《URL》   投稿日:2011/06/17(Fri) 22:13:28   45clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

はじめまして、スウさん。

> 想像力が刺激されてめちゃくちゃ面白いです。ダグトリオのことでこんなに考えたことは今までありませんでしたね。

ダグトリオについて考えるきっかけになれば幸い……本当、あいつらの地面から下は永遠の謎です。

> >「ハイスピードカメラで映しても、爪らしきもの影も形も見えない。テッカニンも真っ青のスピードだ」
>
> この箇所が一番傑作でした。

おっ、そこですか! なにげなく書いてしまった箇所ですが……。
携帯機のエフェクトでももちろん爪は見えないし、wiiとかのやつでも見えないし、本当にどうなっているんでしょうね?

> こいつらのきりさくには、なにか、スピード以外の要因でもあるのでしょうか……?

実は爪が気体と同じ屈折率だから見えないんだとか、気合で切り裂いてるから爪なんてないんだとか、色々考えられます。正解は……いつまでたっても土の中。

感想ありがとうございました。


  [No.1333] 世界最長の生物 投稿者:久方小風夜   投稿日:2011/06/17(Fri) 22:34:53   45clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

何より植木鉢の中のダグトリオにときめきを隠せない。

全長100kmのダグトリオwww
トリオだから3本もあるのか全長100kmの物体がwww
ディグダの長さが気になる。


ちなみに、大陸地殻は最も暑いヒマラヤ山脈のあたりでも最大で80kmあるかないかくらいだぜ! ダグトリオすげぇ。


  [No.1334] ダグトリオのびよーん 投稿者:   《URL》   投稿日:2011/06/18(Sat) 22:07:10   35clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

> 何より植木鉢の中のダグトリオにときめきを隠せない。

だぐだぐ狭いぜだぐだぐ。

> トリオだから3本もあるのか全長100kmの物体がwww

ディグダの穴はさしずめ魔窟です。

> ディグダの長さが気になる。

ディグダは地下1mらへんで木の根をかじっているそうです。
ということは地面の下の長さは1m……いやいや、じつは50kmほどある体を1m程地下に潜らせて木の根を食べているのかも……


> ちなみに、大陸地殻は最も暑いヒマラヤ山脈のあたりでも最大で80kmあるかないかくらいだぜ! ダグトリオすげぇ。

まじっすかw 80km……あったというべきかやっぱりなかったというべきか、どちらにしろダグトリオには勝てませんね。ダグトリオの神秘! ダグトリオ最長!
ここで一句。

チョモランマ 上から下まで ダグトリオ

感想ありがとうございました。


  [No.1339] Re: 君の長さは地下百キロ 投稿者:夏菜   《URL》   投稿日:2011/06/19(Sun) 14:53:56   88clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5
Re: 君の長さは地下百キロ (画像サイズ: 320×180 18kB)

植木鉢に入ったダグドリオがとてもかわいかったです!
楽しい、かわいいお話ありがとうございました(*^^)

右端見えづらいですが地下に体が生えたダグドリオです。
汚いカメラ画像ですみません;;


  [No.1342] 素敵ダグトリオ 投稿者:   《URL》   投稿日:2011/06/20(Mon) 01:35:47   38clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5


こんなに可愛いイラストが……!!!
植木鉢に入ったダグトリオってこんなに可愛かったのか!と目から鱗です。インテリアにしたい。
特に真ん中ダグ。目がつぶらで愛くるしいです。

ダグトリオ鉢を挟んでの二人の会話が見えてくるようです。
そして右側が! 右側が地味に気持ち悪い!(※褒め言葉です)

素敵なイラスト、ありがとうございました!

【この植木鉢はどこで売っていますか?】