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  [No.1363] しんかのきせき前編 投稿者:あつあつおでん   投稿日:2011/06/25(Sat) 09:23:06   32clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
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 昔々、世界のどこかにあるというカントー地方に、鳥ポケモンがたくさん暮らす森がありました。いつでもひざしがさしこみ、おいしい水がながれているこの森は、それはそれはにぎやかだったそうです。これは、その森にすむ、1匹のポケモンのお話。




「お、そこにいるのは……アッカ先輩じゃないっすかww」

「う、なんだよドードリオ」

 ある日のおひるさがり、ドードリオ(31)とカモネギのアッカ(24)がばったり出会いました。アッカはドードリオの先輩でしたが、後輩より弱かったのです。

「この前はこだわりスカーフ持ってても僕より遅かったっすけど、少しは速くなったっすかw?」

「それが……僕は弱いから、勝てずに経験値がたまらず、レベルアップできないんだ」

「そうっすかそうっすか、まあそんなことだろうと思ったっすけどねww」

 いつもはけんかばかりしているドードリオの3つの頭は、この時ばかりと揃って笑いころげます。このように、ドードリオはいつもアッカのことを笑っていたのです。

 そんな時、どこからともなく立派な鳥ポケモンがやってきました。この森をしきっている1匹のムクホーク(55)です。彼はアッカと同い年でした。

「あ!先輩、どーも僕です」

「アッカにドードリオか。またアッカをおちょくっていたのか?」

「まさか!親愛なるアッカ先輩にそんな失礼なこと……」

 ドードリオは思わずツボをつつきました。知らず知らずに動きが速くなりました。

「まあいい。アッカ、お前に話があるんだが」

「話?いったいなんだい改まって」

「それがな、湖にいるスワンナに聞いたのだが……イッシュ地方というところに、『しんかのきせき』と呼ばれる石があるらしい」

「しんかのきせき?初めて聞く名前だね」

 アッカは首をかしげながら、目をキラキラさせました。カモネギというポケモンはかれこれ15年ほど前に見つかったのですが、いまだにしんかの兆しすらなかったのです。そんな彼にとって、「しんか」の響きはとても素敵なものでした。

「どうやらそいつは、『しんかしていないポケモンの力を引き出す』ものみたいだ。お前はまだしんかしていないし、おあつらえ向きだろ?」

「確かに……そんなものが手にはいれば、まちがいなく強くなれるね」

「だろ?ものは試しというわけで、イッシュ地方まで行ってみたらどうだ?」

 ムクホークのことばに、アッカはなみだをながして答えました。

「ありがとうムクホーク!僕のためにそんなすごい話を教えてくれるなんて。じゃあ僕、さっそく行ってみるよ!」

「ああ、きをつけて行けよ」

 ムクホークがおわかれを言うと、アッカはすぐさま森をでていきました。

「先輩、いいんですか?アッカ先輩なんかにそんなこと教えて」

「だいじょうぶだ、もんだいない。しんかのきせきは『しんかしないポケモン』には意味がない。それに、もうすぐ『鳥ポケモン・タイプ対抗大会』がある。我々ノーマル・ひこう組にあのようなやつがいては困るからな」

「なるほど、そりゃ名案っすね!」


ポケモンの後ろにある数字はレベルです。ドードリオは31で進化するから(31)としているのです。指摘があったので追記しときます。


  [No.1364] しんかのきせき中編 投稿者:あつあつおでん   投稿日:2011/06/25(Sat) 09:25:26   31clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
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 さて、そうとは知らずにアッカはイッシュ地方へと旅立ったのです。彼は1人で海を越えて飛んでいけるほど体力がなかったので、森にいたスワンナ(97)の背中を船がわりにして乗せていってもらいました。道中、スワンナはしみじみとアッカに話し掛けます。

「中々久しぶりだよ、あの石を目指すポケモンがいるなんて」

「そんなにすごいものをですか?もしかして、知ってるポケモンが少ないのですか?」

「んー、少ないのもあるのだが、別の問題もある」

「別の問題?」

「そうさ。しんかのきせきは非常に効果が高いだけあり、奪い取ろうと思ったらかなりの力がいるわけだ。まあ、特殊な技でもあれば別だがな。すると、どんどん強いやつが奪い合うこととなり、今では強いポケモンの勲章みたいになっちまった。もう、俺が手に入れた頃とは比較にならないくらい強いやつが持っているだろうよ」

「なるほど……あれ?スワンナさんは昔持っていたんですか?」

「おう。これでもかつては、イッシュの伝説のポケモン達をまとめて足蹴にしていたこともあったさ。確か24代目の所持者だったよ。」

「24代目……」

「アッカ、これだけは言っておくぜ。弱いやつには弱いやつなりの戦い方がある。それを見つけるんだ。それと、決して泣くな。男が泣くのは、全てが終わった時だけだからな」

「スワンナさん……いえ先生!」

「ははは!先生はよかったな。さて、そろそろイッシュの玄関ホドモエシティだ。ここからは自分で飛んでいきな」

「はい!先生……自分、なんとしてもしんかのきせきを持ち帰ります!」

「おう、楽しみにしてるぜ!」

 こうしてアッカは、イッシュ地方の大地へと足を踏み入れるのでした。

「……やはり言っておくべきだったか、『しんかのきせきは進化しないポケモンには効果がない』ことを。いや、あいつが本当に手に入れる頃には必要ないものだろうな」








 さて、イッシュ地方のホドモエシティに降り立ったアッカは、町中のポケモンから話を聞きました。慣れない土地で、しかもイッシュ地方では珍しいポケモンという立場からの聞き込みは大変でしたが、なんとか関係のありそうな話を聞きました。「フキヨセのほらあなにいる伝説のポケモンが持っている」、この話を聞いたアッカは、すぐに飛んでいきました。


 フキヨセのほらあなは真っ暗でした。アッカは壁伝いで進んでいきました。しばらくすると明るい場所に出て、大きなポケモンを見つけました。

「むむ、何者だ貴様は」

「僕はアッカ。あなたは?」

「我輩はコバルオン、イッシュ地方の伝説のポケモンの1匹だ」

「伝説のポケモン……!では、あなたがしんかのきせきの所持者ですか?」

「しんかのきせき?我輩はもう持ってないぞ」

「え」

「少し前にな、同僚のビリジオンという野郎に持ってかれちまった。『リーフブレードが駄目でもインファイトなら!』なんて、かっこつけやがって。そりゃ俺がテラキやあいつと勝負したらどちらにも負けるのはわかるが、あの態度だけは……」

「あ、あのー」

「おっと失礼、つい愚痴をこぼしてしまった。とにかく、しんかのきせきならヤグルマの森にいるビリジオンが持っている。欲しけりゃいってみることだ」

「あ、ありがとうございます。それではこれで……」

「待ちな。その程度の力で挑むつもりか?やめておけ、やるだけ無駄だ」

「な!やってみなければ……」

「それがわかるのが賢くて強い我輩というやつの凄いところよ。とりあえず我輩くらいは倒してまろ、そうでなければやつとの挑戦など認めん」

「はあ、強いポケモンにしては優しいですね」

「まあ、女の子にもてるための言い回しがうっかり出ただけだ。別に心配などしとらんからな」

「そうですか、それでは勝負!」

 こうして、アッカはコバルオン(42)に挑むのでありました。はじめ、アッカはコバルオンに近づくこともできないまま攻撃を受けていました。アッカのレベルが低く、素早さで明らかに劣っていたからです。これに気付くと、コバルオンはだんだんゆっくり動くようになり、アッカが攻撃しやすくなりました。アッカはお得意のネギ攻撃をくりだしますが、中々効きません。一方コバルオンは聖なる剣を取り出し、ネギに対抗します。初めこそコバルオンがアッカを追い詰めていましたが、徐々にアッカも押し返し、最後の頃には互角の戦いをしていました。




 こうした戦いが何日も続きました。コバルオンは日を追うごとに手加減をしなくなり、一月もする頃には全力でアッカの相手をするようになっていました。アッカもコバルオンに食い下がり、長い長い戦いをこなしました。そして……




「我輩との勝負を最後まで戦い抜くとは……。しかも力のない種族でだ。アッカ、貴様の根性は本物のようだな」

「コバルオン……けど僕はあなたに勝ってない。ビリジオンに挑戦するわけには……」

「本当にそう思うのか?ならば自分のレベルを見てみることだ」

「レベル?相変わらず24のままじゃ……こ、これは!」

 なんということでしょう。アッカ(24)はこの戦いを通して、アッカ(60)へと強烈な変貌をとげていたのです!すでにコバルオンのレベルを上回っているではありませんか。

「どうだ、これでも自分が弱いと思うか?」

「いや、確かにこれなら……」

「これは我輩の考えだが、今のお前ならビリジオンの野郎に一撃を与えるくらいはできるだろうよ。いや、やってもらわねば困る。我輩が鍛えてやったのだからな」

「は、はい!ありがとうコバルオン。それじゃ、そろそろいってくるよ」

「おう、達者でな!」

 コバルオンに別れを告げると、アッカは次なる目的地、ヤグルマの森へと飛び立っていきました。


  [No.1365] しんかのきせき後編 投稿者:あつあつおでん   投稿日:2011/06/25(Sat) 09:28:21   33clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
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 アッカはしばらくの間飛び続け、ヤグルマの森へやってきました。聞くところによれば、ビリジオンは思索の原という場所にいるそうです。早速いってみると、それらしいポケモンがいました。

「……あら、なにかしらあなた」

「あのー、あなたがしんかのきせきを持っていると聞いたのですが」

「しんかのきせき?ああ、あの石のことね。ここにはないわよ」

「ま、またですか」

「またってことは、あなたコバルオンのとこにいったの?我輩なんて、変な言葉遣いでしょ?」

「ええ、確かに。……あなたがビリジオンさんですか?」

「正確にはビリジオン(78)ね。念のため繰り返すけど、これは年齢ではなくてレベルよ」

「……あの、誰に向かって言ってるんですか?」

「わからない?読者によ。『連載や普段の短編じゃメタ会話を書かないようにしているから、たまには良いよね?』って作者が言うものだから」

「な、なるほど」

「それで、さっきも言ったけど、しんかのきせきはもうここには無いの。せっかくあの弱いコバルオンが隠れてたところを探しだして手に入れたのに、ガチムチテラキオンに取られたわけ」

「そうですか。そのテラキオンというのがどこにいるかわかりますか?」

「あのガチムチなら、チャンピオンロードにいるわ。普段は自分のいる部屋の入り口をふさいでる引きこもりだから、すぐわかるわよ」

「情報提供ありがとうございます。それではこれで……」

「待ちなさい。手土産の1つもなしに引き上げるつもりかい?アタシはそんなに優しくないよ!」

「ひ、ひいいいい!ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんn(ry」

「謝るのはいいからさ、アタシと勝負してよ。しんかのきせきを狙うからには、かなりのやり手なんでしょ?」

「はあ、それなら大丈夫ですよ。ただ、お手柔らかに……」

 そんなこんなで、アッカとビリジオンの勝負が始まりました。ビリジオンはその速さとレベル差でアッカを圧倒します。アッカも負けじとネギを振り回しますが、いかんせん上手く当たりません。それもそのはず、ビリジオンの聖なる剣は遠くからでも遠隔操作できますが、アッカはネギを握っています。リーチが違いすぎるのです。

 ここでアッカは考えました。そして、とんでもない行動を取りました。なんと命の次に大事なネギを、ブーメランのように投げつけたのです。ネギブーメランはビリジオンの額に当たり、ビリジオンをひるませました。するとすかさずアッカは飛び上がりました。聖なる剣の攻撃をものともせずに空中のネギを掴み、そのまま一撃をたたき込んだのです。

「ど、どうだ、アクロバットの威力は!」

「あら、これは凄いわね……!」

 ビリジオンはこう叫ぶと、攻撃を止めました。

「……どうして攻撃を止めるんですか?」

「それはね、アタシが満足したから。いってらっしゃい、アタシとこれくらいやりあえれば引きこもりのガチムチなんて相手じゃないわ」

「あ、ありがとうございます!それではいってきます!」

 こうしてアッカは、一路チャンピオンロードへと向かうのでした。





「遂に俺様に挑む奴がやってきたか」

 イッシュ地方のチャンピオンロード、試練の室という部屋に、最後の相手はいました。アッカは武者震いをしながらも尋ねました。

「あ、あなたがしんかのきせきの所持者、テラキオンさんですか?」

「いかにも、俺様がテラキオン(97)だ。世界中を旅し、あらゆる経験を積んだ俺様には、お前のことが手に取るようにわかる。お前はカントー地方のカモネギ(79)だな?」

「その通りです。僕はあなたのしんかのきせきを狙ってやってきました。」

「ほう、ではビリジオンに会ったか。『ボクッ娘がいるならアタシって言う男がいても良いはずだ!』なんて騒いでたが、影響されてないよな?」

「それは大丈夫です。それで、まずきせきを見せてもらえますか?」

「大丈夫だ、問題ない。ほらよ」

 テラキオンは懐からしんかのきせきを取り出すと、アッカに見せ付けました。その淡い紫の石は、ともすれば宝石のようです。

「こ、これが……!」

「……やはり欲しいか。ならば俺様が最後の試練だ。見事勝ち取ってみせろ!」

 テラキオンはこう言うと、守りを捨てて近づいてきました。

「くらいな、インファイト!」

「ぐ、ぐわぁっ!」

 アッカは避けようとしますが、さすがにテラキオンも予測済みでした。テラキオンの立派な角がアッカの懐を襲います。

「ふん、まずはこれくらい耐えてもらわねばな……ん?」

 テラキオンは、手応えが無いことを不思議に思いました。そこで自分の真上を見てみました。

「なに、角の間にいるだと!」

「ふう、危ない危ない。僕は体が小さいから、これだけ角と角の間が広ければ、そこにおさまることもできるんだよ」

「なるほど、中々知恵のある奴だ」

「今度はこっちからだ!」

 アッカは自慢の茎を振り下ろしながらテラキオンと距離を取りました。茎はテラキオンの左前足を斬り付けました。

「少しはやるようだな。だが!」

 テラキオンは周りに響くくらいの声で吠えました。すると、アッカの足元から岩が突き出してきたではありませんか。しかしアッカは空を飛び、何とか避けます。

「そこだ!」

 これを待っていたと言わんばかりに、テラキオンはアッカに岩を飛ばしました。アッカはこれに直撃し、地面に打ち落とされてしまいました。そこを先程の岩の刃が襲い掛かります。

「うわあああ!」

「ふふふ、どうだ俺の力は。ゲーム的には『うちおとすとかww』だが、小説的には非常に優秀な技だからな。そう簡単には負けないぜ」

「く、くそ……」

「というわけで、さっさとかたをつけるぜ。悪く思うなよ!」

 テラキオンが再びアッカに向かって走りだしました。ところが、アッカは動きません。ただただ、テラキオンが来るのを待っているかのようです。

「勝負を捨てたか!これで俺の勝ちだ!」

 テラキオンは力いっぱい角をアッカに差し込みました。しかし、なんということでしょうか。攻撃したテラキオンがその場に沈んでしまったのです。

「ぐ、一体何が起こったというのだ!?この俺が一撃でやられるとは……」

「それはもちろん、弱者の切り札、カウンターのおかげだよ」

「か、カウンターだと……」

「僕はあまり能力に恵まれていないから、なるべく大きなダメージが入る技が必要なんだ。その結果がこれというわけ」

 アッカは胸を張って言いました。するとテラキオンは立ち上がり、大声で笑いだしました。

「ぐはははは!こいつは一本取られたぜ!さて、俺に勝った証だ、こいつを持っていけ」

 テラキオンは、何やら小さい塊をアッカに渡しました。それは薄い紫色をしていて、光を反射してほんのり輝いてます。

「こ、これがしんかのきせき!これで僕も強くなれるはず……」

「……ところで、少し聞いても良いか?」

「何ですか?」

「お前は進化できるポケモンなのか?」

「私ですか?いえ、カモネギという種族は進化しませんよ」

「やはりか。……せっかくだから言っておくが、しんかのきせきで強くなるのは『進化できる系統でまだ進化しきっていないポケモン』だけだぞ。進化しないポケモンが持っても強くはならん」

 テラキオンの言葉を聞いたアッカは、思わずしんかのきせきを落としました。

「そ、それ……本当ですか?」

「そうだ。俺もこのことを知った時には愕然としたもんだ。まあ、せっかくだから大事に持っておけ」

「……はい」














「……結局、僕は強くなれなかったなあ」

 数日後、アッカはカントーの森に帰ってきました。行きはスワンナに乗りましたが、帰りは自分で飛んで帰ったのです。

「あ、アッカ先輩じゃないっす……か……?」

「ただいまドードリオ。そっちは何かあった?」

「俺には何もないっすけど……それより先輩、どうしたんすか、こんなに強くなって!」

「え?」

 アッカはドードリオの言ってることがよくわかりませんでした。するとドードリオは、血相を変えてこう言いました。

「先輩、気付いてないんすか?先輩のレベル、100になってるっすよ!」

「まさか、そんなはずが……ああ!」

 アッカは悲鳴を上げました。アッカ(24)はアッカ(100)になっていたのです。
「こうしてはいるないっす。すぐにムクホーク先輩に知らせるっす!これならノーマル・飛行組が『鳥ポケモン・タイプ対抗大会』に優勝できるっす!」










 アッカはしんかのきせきの旅で、森の誰よりも強くなってたのです。今では、アッカを弱いというポケモンは誰もいません。しかし、アッカの腰の低さは昔と変わることはありませんでした。それゆえ、アッカは森で最も信頼されるポケモンになっていくのでした。


おしまい



・あつあ通信特別号

チャットで「カモネギにスポットライトを当ててほしい」という発言を受けて、書きかけを投稿しました。すると思ったよりは好評だったので、調子に乗って完全版を作ってみました。いかがでしたでしょうか。

カモネギはポケモンスタジアム金銀でガラガラに並ぶお気に入りでして、いつかは活躍させたいと思っていました。こんな形で実現する日が来ようとは……夢にも思ってなかったです。

とりあえず一言。カモネギさん早く進化してください。

あつあ通信特別号、編者あつあつおでん