高いビルの隙間から、曇天の空が見える。
主の腰から見上げていると、俺が入っているボールの表面に、ぽつり、と水滴が当たった。
「…雨?」
とたんに主が駆け出し…
『がんっ』
俺はボールの壁にぶつかった…。
『ごんっ』
(へぶっ)
どうやら隣のシュバルゴ、ナイトもぶつかったらしい。
『びたんっ』
(きゃっ!?)
あ、今のはゾロアークのティラだな。
主の腰が振動するたび、ボールも激しく揺れる。上下左右に揺れ動くボールの中で、俺たち手持ち六匹は自分の体を守るのに必死だった。
(十字ボタン操作荒いんじゃああぁ!!)
ボールの中だから主に聞こえるはずも無いが、一声吠えてみる。
土砂降りになる寸是で間一髪、主はポケモンセンターに駆け込んだ。そのままソファーに疲れて座り込む。
一方、振動地獄から開放されたボールの中では、それこそ六匹の苦情が雨のように降り注いでいた…。
(頭打ったんだけど…)
そう言うのはレッセ。コジョンドで、身のこなしも軽い彼女が頭を打つ位だから、相当な揺れだったのだろう。
(マスター、人にぶつかってましたよね…)
(ここヒウンシティだからかなり迷惑だったと思うんだけど。)
ドレディアのサワンとウルガモスのナスカ。この二人、怒らせると辛口である。
(リーダー、大丈夫だったの?)
(…少し背中を打った。)
(めずらしいわね。リーダーってああいう揺れには一番慣れてるんじゃない?ミジュマルの頃からの付き合いだし。)
流石ナスカ、鋭い。俺があの揺れに対応できなかったのは、考え事をしていたからだ。
俺はダイケンキのシェノン。
(…その顔は、思い出を懐かしんでたって顔ね。)
(どうやったらそこまで俺の気持ちが分かるんだよ。)
ウルガモスであるナスカは、無表情、というか表情が顔に出ない。
ハッキリ言って無表情で自分の感情を読まれると、とても恐ろしいのだが。
(ま、どんな事かまでは干渉しないけど。)
(…頼むからそこまでにしてくれ。)
(リーダーの思い出かぁ、きっと初めてここに来たときのことだよね。)
(ティラまで何なんだよ。)
(だって、リーダーその時フタチマルだったわけでしょ?今よりずっと可愛かったのかな〜って。)
(こら。)
女って本当怖い。こういう話になるとどうしてそこまで敏感になるのか…。分からない…。
ナイトも、少し理解の出来ない様子で何も言わずにこちらを見ている…。正直目線が痛い。
(ヒウンシティっていうと、やっぱアイスとかの??)
そしてなぜこうも推測が当たっているのか。アイスではないが。
ビルの間の空を見ていると、進化したてだった頃の自分も、こう空を見ていたな、と思い出す。
そして、自動販売機の前に立つ主。進化した祝いに買ってくれた『サイコソーダ』。
確かスカイアローブリッジで、遠い入道雲を見ながら飲んだはずだ。
このメンバーの中で知っているものはいない。恥ずかしいが、一つ大切に取っておいた思い出だ。
当たってもう一本出てきて、喜んだりもしたっけか。
そろそろ夏だな、と思っていたら、モンスターボールの振動地獄が来たのだった。
今度、主に頼んで、またスカイアローブリッジの上で飲もうか。
主が外に出ると、さっきの土砂降り嘘のように午後の金色の陽が降り注いでいた。
ビルの表面の赤い文字の広告が目に映る。
『しゅわしゅわはじけるサイコソーダ!お手持ちのポケモンちゃんといかがですか?』
というわけで、俺の好物はサイコソーダなのだ。
お題:雨
書いてみましたあぁ初小説です。うん、いろんな意味でやばい。やばすぎる。素人ですのでお許し下さい。
オルカ は 深海の 奥底に ひきこもって しまった…。イケズキさんごめんなさいティラの出番がっ
【描いてもいいのよ】【書いてもいいのよ】
【批評は超緩めにお願いします】