【前書き】
黒蜜(ゾロア)
金柑(ライチュウ)
池月(色違いゾロアーク)
長老(もふパラ創設者)
参考文献:もふもふパラダイス
以上
世間はお盆休み。黒蜜も同じく休み。部屋でゴロゴロしていると飼い主に思いっきり踏まれる。続いて金柑にも。文句を言おうにも、忙しそうに動いてる二人には何も通じない。悪いな、と悪くおもってないようなセリフ。この機会だからと部屋の片付けをしているのだ。
手伝う気のない黒蜜は部屋の隅によって、ふたたびゴロゴロタイムを開始。寝返りをうったところで、なにやら落ちているのを発見する。写真のようで、裏を返すとピカチュウとゾロアが写っていた。しかもゾロアの方は普通のゾロアではない。普通ならば、黒い毛皮に赤い冠毛が特徴なのだが、これは青いのだ。見た事の無いゾロアに、黒蜜は不思議に思った。
「お、こんなところにあったのか。なっつかしーな、あいつも俺もちっちぇー」
写真を取り上げて金柑が目を細める。黒蜜も金柑の脇から写真を覗き込む。
「これ金柑なのか?」
「そうだ。俺がまだ野生の時の。この青いのは池月っていう……まあなんていうのか、いいやつなんだが金には無頓着でな」
「どういうやつなんだよ」
「人間だぜ」
黒蜜のびっくりした声が近所に響いた。
いやいやそんなに驚くなよ黒蜜。
世の中には、不思議なことなんてたくさんあるんだよ。池月は長老っていうまあ偉いキュウコンに会って、人間からゾロアになったんだよ。なんでって、なんでも。仕組みは解らんからお前が長老に会って聞いてくれ。だから俺がなんでも知ってると思うなよ。
池月に会ったのはそうだなあ……
木のホラにピカチュウが隠れる。その前を野生のヘルガーが通り過ぎていった。その足音が遠ざかるまで呼吸を殺して見守る。かなり小さくなった足音に安心し、左右を確認して姿を現す。
「はら、へった」
生まれた時に人間に捨てられた。育てられないからと。まだピチューだった金柑は、まわりにそんな仲間がいっぱいいるのを確認した。そして、仲間たちが減っていくのも。けれど金柑は生き残った。その持ち前の頭の回転と、とても優秀な身体的な素質のために。ピカチュウとなった身になれば、ピチューの時より生き残りやすくなったけれど。
今、金柑は空腹で歩いてる。2日食べてない。木の実を食べようとしたらオニドリルに取られ、別のを探そうとも見つからず、逆に空腹のヘルガーに発見されてしまう始末。
金柑の目に入る茂みの向こうの青い木の実。あれはオレンの実だ。今度こそ取られる前に食べてやる。電光石火で金柑はオレンの実にかじりついた。
「いてててててててて!!!!!!!」
オレンの実が喋ったのである。かじったまま冷静に観察してみる。それにオレンの実はこんなにふさふさしていないし、もふもふしていない。体に触れるのは少し茶色い毛皮。なんかおかしくないのではないかと感じ、オレンの実から口を離す。
「た、食べようったってそうはいかないからな!!」
自分の下で暴れてるのは、どうみてもポケモンだった。自分と同じくらいの、黒い狐ゾロア。肉を食べる習慣があまりない金柑には餌にもならない。ただ、ゾロアに追いかけられたこともある金柑にとって、警戒すべきポケモンだったのには間違いない。逃げるか逃げないか、少し離れて観察する。
「な、なんだピカチュウか」
手強い肉食でなかったことに安心したのか、ゾロアはあくびをする。野生のゾロアにしては、やたら呑気なやつ。いや、油断させて食べる気なのかもしれない。いつでも逃げられるように準備して、ゾロアの動向を探る。
「なんだよぉ!ピカチュウはゾロア食わないって聞いたんだぞ!」
金柑の腹が盛大に鳴ったことを受けて、ゾロアはそういった。誰も食おうなんて思っていないのだけど。
「いや、腹減った。二日食べてなくて。そもそも俺は肉を食わない」
「そ、そうか!長老から貰ったマトマジュースならあるぞ!食べるか?」
マトマジュース?聞いたことない品物に、金柑は興味を持った。堅いシーヤの実をくりぬいた水筒に入った真っ赤な液体。空腹に耐えかねて金柑はそれを遠慮せずに飲み込んだ。
マトマの実とは、とても辛くて有名な木の実である。ただ野生下ではあまり遭遇しないため、金柑は何の疑いもせずに口をつけたのである。結果など説明するまでもない。完全にノックアウト。金柑は目をまわして仰向けに倒れる。
「え、えええ!?おいしいのになあ……」
そうしてしまった責任を感じたのか、ゾロアは仕方なくピカチュウの体を安全そうなところに運んでみる。
ようやく金柑の感覚が戻って来たのは、冠毛が青いゾロアの背中の上。下ろせと暴れ、とりあえず降りる。
「青ゾロアめ!そうやって食べようとしたな!」
「してないよ!ポケモンなのになんでマトマの実食べれないんだよ!人間のときよりこれおいしいんだぞ!」
「人間のときより!?意味がわからんぞゾロアめ!!成敗!」
ぱちぱちと電気がたまっていく。力が出なくても電気に耐性のないゾロアを攻撃するくらいなら出来る。
「うわー!!待って待って!お詫びにごちそうするから!」
「なにをだ。野生のゾロアにそんな余裕があ ん の か !」
「あるあるありますんだって!ゾロアになったってレシピ忘れるわけないってばよ!!!」
言葉が崩れてる。それほど電気が怖いのかこのゾロア。またマトマジュースを飲まされてはかなわない。聞いたことないレシピを並べられても、金柑にはそれがなんだかピンと来なかった。
「ほら、これがポフィン!それでいてこれがゴーヤチャンプルー」
そういって出した料理。木の実をそのまま食べるよりはおいしかった。こんなものは食べた事がない。夢中で金柑は食べた。
「こんなのどこで知ったんだ?」
「これか?テレビでやってたんだ」
「テレビ?」
「人間のときに見て知ったんだ」
「人間?なんでお前ゾロアなのに人間なんだ?」
「人間なんだよ。長老にかわいいポケモンにして欲しいっていったら、ゾロアにしてもらえたんだ」
「その証拠は?信じられると思うか?」
「うーん、人間だった時の電子機器いっぱい持って来たんだけど」
ゾロアが出すのは、デジカメ、携帯電話、ノートパソコン、電子辞書その他もろもろ。
「それできみ、電気タイプだろ?ちょっと充電してよ」
「じゅうでん?」
「このコンセントもって、電気出してくれれば多分充電されるから」
金柑に渡されたのは、随分と大きな金属。よくわからないが、金柑の体に電気が集まる。
「おお、やっぱり電気タイプすごい!」
「なんだかよくわからないが、いつまで?」
「え、4時間くらいかな。がんばってよ」
金柑の なげつける! コンセントを なげつけた!
「4時間も持続的に発電できるか!苦労くらい知れ!」
「だってだって、電気タイプなら出来るかと思ったのに」
「……何も知らないんだな、本当に人間なのか……?」
「もちろん!名前は池月っていうんだ」
「聞いてないが池月か。よく覚えておく。じゃ、俺は行くから」
「いやいや待ってよ。きみの名前教えてよ」
「野生のポケモンにそんなものはない」
「えー!?ポケモンって不便!じゃあさ、とりあえず記念に写真取ろうよ。充電してくれたから少しは持つはず」
デジカメを構え、池月と金柑が並ぶ。なんだか解らないが、カメラの方を向いて金柑がじっとしている間に、変な音がして終了する。人間の持ってるものはよくわからない。
「ほら、これ!あげるよ。写真っていうんだ。また会いたくなったら来てよ!それに人間のこととかも教えてあげられるし!」
「……生きてたらな」
金柑はその日は帰った。そういった割には次の日も金柑は池月に会いにいく。変わったゾロアだと思っていたから。
「ふんふん、それで?」
黒蜜は金柑を見つめてさらにしっぽを振る。
「それで、って……とりあえず遊びにはいったな。そこで人間の言葉教えてもらったんだ」
「へえ、すごいいいやつなんだな、そのゾロア!」
「だからいっただろ、いいやつなんだよ、基本は……」
「基本?」
「いやその、もふもふ好きでな……毎晩若い女の子がわんさかいる紳士の社交場に行ってるとか、奥さん泣かしてるとか子供がいるのに放置とか悪い噂のがよく聞くんだ」
「おいおい!そいつ悪いやつじゃないか!」
「うーん、悪いヤツではないんだよ、一応。俺に金かりてとんずらしたヤツだが」
「いやだから悪いヤツじゃないか!金かりてとんずらとか!」
「まあ、一応それにも理由があるんだよ。一応……」
「なんだよ、理由って!俺は納得いかないぞ!」
「お前がもう少し大きくなったら教えてやるよ。んじゃ、俺は飼い主の手伝いに戻る」
「えええ!!!教えてくれたっていいじゃねえか金柑のケチ!」
黒蜜が吠える。しましまを向けて長いしっぽをムチのように振って金柑は去る。ふと黒蜜は気付いた。金柑の去って行く後に落ちた、一枚の写真。そこに写っていたのが、生まれたばかりっぽいイーブイを抱いた金柑と、それを喜ぶような青いゾロアークだった。
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いけづきくんは本当はいいやつなんだよ!
そういった愛を全面に出そうとしたんだけど、なんかよくわからず失敗してるような気がする。
金柑がパソコン使えたり、人間と話せるのは池月君が教えてくれたからなのです。
ちなみに、他の電化製品も使えますし、料理できるのも池月君のおかげ……
そして金かりてとんずらを許してるのは、きっと色々あったからだとおもうですよ。
しかし、ことあるごとに金柑への借金が膨らんでいく池月君、そろそろ返さないとなあ。
最後になりましたが、もふパラ使用許可をくだs(
【好きにしてください】【もふパラありがとうございました】