心地よい日差しがさす、ある夏の日の午後のこと……
ひとりのトレーナーが、旅の途中でおとずれた湖のほとりで、休憩しようとしていた。
「みんな出てきて!」そのトレーナー、シュカは腰につけたモンスターボールを取ると、軽く投げた。
ポン、とはじけるような音がしたかと思うと、そこには5匹のポケモンがいた。
「少し休むから、自由行動しててね♪」
シュカはそう言うと側にあった木に背を預け、スヤスヤと寝息をたて始めた。
残されたポケモンたちは、主人のマイペースぶりに呆れ顔を見合わせた。
「まったく! いつもこうなんだから……」
そう呟いたのは、ロズレイドの、のばら。
「もう、何とかならないかしら!」
「たぶんムリだと思うな……」
そう続いたのは、エンペルトのうみな、ドンカラスのこくあ。
「ま、いいじゃん♪それじゃ遊びに行ってくるね♪」
そういって、駆け出していったのは、マイナンのらいむ。綺麗な青い耳と、素早いのが自慢だ。
「あ、ちょっとらいむ!」
案の定、うみながそう言ったときには、らいむの姿はすでに見えなくなっていた。
「どんだけ速いのよ……まあいいか」
うみなはそう言うと、地面に座って毛づくろいをはじめた。エンペルトたるもの、いつも綺麗でいなくてはいけない。
ちなみにのばらは少し離れた所で技の練習を、こくあは木の上でうとうとしていた。
そしてすっかり紹介を忘れていたキュウコン、ひばなはシュカに、膝枕ならぬ、尻尾枕をしていた。もふもふしていて気持ちよさそうだ。
そうして、しばしの時間がすぎた……
毛づくろいを終え、くつろいでいたうみなの所に、いつ戻ったのか、らいむがやってきた。
……ニヤニヤと笑いながら。
「ね〜ね〜うみな♪」
「あ、らいむ!どこ行ってたのよ!」
「えへへ〜♪ひ、み、つ♪えいっ!」
らいむはうみなに駆け寄ると、いきなり弱い電気をあびせた。
「きゃっ!!何すんのよ!」
「あはははは〜♪だーいせーいこー♪」
らいむはそう言うと、自慢の足で素早く駆け出した。
「こ、こら!待ちなさーい!」
うみなも、慌てておいかけた。
「えへへ〜♪ここまでおいで♪」
らいむはそう言うと、木にのぼった。
「よーし!れいとうビーム!」
うみなの口から冷気が発射される
「おっと♪」
らいむはそれを軽々とよけた。しかしそこには……!
「あ!」
うとうと眠っているこくあがいた。
「ん? え? うわあああ!」
哀れ…こくあは凍ってしまった。まるで彫刻のように、黒い翼を上げて。
「うわあああ!こくあが凍っちゃった!ど、どうしよう」
うみながオロオロしていると、「どうしたの?」と声が聞こえた。
「あれ! ひばな!? シュカは!?」
そこにはシュカに尻尾枕をしていたはずの、ひばながいた。
「寝てる。それよりどうしたのさ。」
「わたしのせいで、こくあが凍っちゃったの!」
ひばなは、凍ったこくあを見上げた。
「なるほど、わたしが溶かすからさ、うみなはらいむを追いかけなよ。」
「じゃあ、おねがい!」
そう伝えると、うみなはらいむを追いかけていった。
「よし、かえんほうしゃ!」
ひばなは凍ったこくあに、かえんほうしゃを当てた。
「あっちゃあああ!」
「あ、強すぎたか、ゴメン」
「ゴメンじゃ済まされないよ!」
「溶けたんだしいいじゃん。」
「こんどは火傷したんだよ!」
「自分でなんとかしたら?わたしは寝るから」
「ええ!?ちょっと、ひばな!」
「zzz……」
「はぁ、ひばなとシュカって、なんか似てる気がするな……」
その頃らいむたちは…
「あはははは〜♪」
「まてー!」
まだ追いかけっこをしていた。
そこに、
「…なにやってんの騒がしい…」
暇をもてあましたのばらがやってきた。
「あ、のばら!らいむを止めて!」
「また暴れてんの?まったくシュカといいらいむといい、何とかならないかしら」
のばらは素早く、らいむの前に回り込んだ。
「あ、のばら♪」
「いけ!ウェザー……」
「えいっ♪」
左腕のブーケから技を打とうとしたのばらの口に、なにかが投げこまれた。
「……!?キャーー!!」
ゴー! と、まるで漫画のような音を立て、のばらの口から火柱があがった。
「のばら!? らいむ、あんた何投げたのよ!」
「ノワキのみだよ♪」
「ノ、ノワキ!?」
「じゃあね〜♪」
「こらー!待てー!」
…この追いかけっこは、シュカが起きるまで続いた。
[何してもいいのよ]