[掲示板へもどる]
一括表示

  [No.1718] とある夏のカレーより 投稿者:moss   投稿日:2011/08/09(Tue) 01:26:22   58clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5


道端でであった、白い子犬みたいなソイツ。
断然猫派である私は、それを見たとき「うわ、犬かよ。ってかなんで犬が道端に転がってるんだし」と、
顔をしかめて通り過ぎようとした。
 が、そのときであった。
 私は見てしまったのだ。
 その白い子犬の腕に、羽が生えているのを。
 気になった私は子犬の隣で足を止めた。しゃがみ込むと、ゆっくり観察する。
 ふさふさの白く艶やかな毛並み。メガホンのような形をした尻尾。両耳からつながる二つのたてがみ
は、地面にへばりついているためぺたりと垂れている。
よく見ると、やはり両手にはその体躯に似合わぬ翼がついており、そこから鋭い爪が覗いていた。
 じぃと見つめているとその視線に気付いたのか、ソイツはうっすらと目を開けた。
吸い込まれるような深い蒼色だった。
 見惚れる私にこう言った。

「腹減った」

 その後、私がソイツを抱えて家まで走ったのはいうまでもない。
 そのときの季節は丁度夏だったので、家に着いたころにはもう汗だくだった。髪の毛もプールに入っ
た後みたいになってた。おかげで次の日くらいに背中に汗疹ができてそれはもう、かゆかった。
 これ以上無いというくらいのスピードで靴を脱ぎ捨てキッチンに向かう。
そしてそこに置いてあった昼ごはんの夏カレー、冷たくて暖めないでも食べられる夏限定のインスタン
トのキーマカレーを少量やったところ、素晴らしい速度で平らげた。
口の周りを盛大に汚していて、まぁそれはそれで可愛かったのだけど。
 満足そうな表情を見せるソイツに、私はとりあえず一番気になっていたことを聞いてみた。

「君は誰?……」

 くわぁと欠伸をした。見た目に反して鋭い犬歯がちらりと覗く。
 子犬は気だるげに答えた。

「知らない。でもずっとこう呼ばれてた。“レシラム”って」

 そこで始めてソイツがドラゴンであることを知った。



 
 ただいまが言えるってことはいいことだ。あとおはよう、おやすみ、いってきますも言えたらいい。
一人が寂しいわけでもないけど、何か、こう、一人だと足りないものがある。
まだ世間を知らない子供の私が言うのもなんだが、それでも家に帰って誰もいないのは、夏でも体の何
処かが冷える気がするのだ。

「ただいま」

 玄関を開ける。

「おかえり」

 低いような、学校でよく聞く声とはまた違った響きをもつ独特な声が私を迎える。
そして、とことこと廊下を走ってこちらに走ってきた。傍らにはちょいふとめのブラッキー。
通称でぶらっきーのルゥくんである。

「飯、はやくな。腹減った」

 であったころと全く変わらない大きさで同じ言葉を言い、すたすたと奥に戻っていく。
ルゥが足元に擦り寄ってきた。丸い瞳が可愛らしい、というか猫すぎて困る。もう十分なおじさんな年
であるが、まだまだ可愛い。

「さてしょうがない。お昼食べようか。私もお腹が空いたんでね」

 ルゥが離れる。私はすぽすぽと靴を脱ぎ捨てる。この癖は急いでてもそうでなくても変わらない。
幼いころからの癖だ。スリッパを履いて歩き出す。途中で自分の部屋に寄り、学生鞄を放り投げる。
 蝉が騒ぎ始めたこの季節。とにかくじめじめしていてねっとりと暑さが体に纏わりつくような不快感
がひどい。去年とはまた違った暑さだなとしみじみ思う。暑い。
 リビングにつながる畳の部屋でむさ苦しい制服を脱ぐ。そのままの姿で扇風機の前に行く。

「すーずーしーぃ」

「変態。何やってんだ。早く服着ろ、そんで飯」

 あー、とかワレワレハウチュウジンダ、とか言っていたら睨まれた。 
うるさいなぁ。少しぐらい涼ませてくれたっていいじゃん。こっちは部活帰りで暑いんだよ。
そう目で訴えたが一瞥されただけだった。仕方ないので扇風機から離れてパジャマ代わりに今朝着てた
赤いワンピースをすっぽり被る。あちぃーと文句を垂れながら洗面所へ向かう。
そこで適当に髪を束ねて、よし昼ごはんの準備をしよう。
といってもたいしたことは何もしないのだが。
 キッチンへ移動し、流しにおいてあるラップされた皿を手に取り電子レンジの中に突っ込む。ぼん。
そんなに温めなくても平気かなと思い、直感で一分にセット。そのあいだに扇風機に当たりに行く。
あー、やっぱり冷房より扇風機のほうがすずしーとか、絶対冷房のある場所に行ったら撤回する発言を
し、そういえばあいつらはどこに行ったのかと部屋の中を軽く見回す。
 空腹で不機嫌そうに窓際で寝そべるソイツを見つけた。
そんなところにいたら暑くないか?と疑問に思う。
そしてでぶらっきーがいないと目を走らせる。さすがこの家の年長者ってほどでもないけど。
なんとまあ以外なところに潜んでいた。こないだ親が買ってきた水のダンボール箱の中だった。
果たして涼しいのだろうか? 彼らの考えることは私にはわからない。
 チーンと電子音が鳴った。彼らの耳がぴくりと動く。暑さでだれていても、飯のことだけは忘れない
ようだ。
 扇風機から名残惜しくも離れ、電子レンジから皿を出す。
 そして流しの上に再び置くと、カレーのルーを温めずにそのままかける。
これぞ夏のカレー。キーマカレーなのである。
 臭いにつられた者たちがやってくる。はいはい。そんな這い上がったゾンビみたいな顔をするなよ。
怖いよ。空ろな目で見るな、こっちを。
 彼ら専用の食器を並べ、みんなが平等になるように慎重に盛っていく。この集中力を受験勉強に使っ
て欲しいと誰かに言われる。誰だっけなー?

「はいできた!」

 とてつもなくきれいに盛れた三人分のカレー。我ながらすごいと思うよ、うん。写メでも撮りたかっ
たが、ゾンビみたいな顔をして見上げてくる彼らを見ればせざるおえなかった。
 せっせと食卓の上までそれらを運ぶ。すでに彼らは指定の位置にお行儀よくお座りしている。
 さて、おまたせいたしました。

「じゃ、いただきまーす」

 三者一気にがっつき始める。一番ぼたぼたとこぼすのがルゥで、口の周りを汚しながら食べるのが
ソイツ。私はスプーンでお上品に食べます。嘘です。

「ルゥ、ぼたぼた垂らしてるよ。あと――」

 そう言いかけて思い出した。コイツとであってから、もうだいたい一年たったのか。
あのとき名前を聞いて無いと言ったから、家に帰ってから一晩中名前に悩んでやっと、次の日の昼に
付けたんだっけか。

「――シャル! 口の周りが汚い。どうにかして」

 そして一年前もこんなことを口にした気がする。
 本名はシャルレット。長いから略してシャル。意味は無い。

「ほっとけっつーの、どうせきれいに食えないんだから。なー、ルゥ」

 ぶにゃーと肯定したように鳴く。
 蝉の騒ぐこの季節、暑さを凌げるのはこの何気ない日常であったりする、かも。
 少しピリ辛なカレーを頬張りながら、一昨年はルゥと二人っきりだから、こんなふうに喋って過ごす
とこなんてなかったなぁ。ルゥは喋れないし。

「おかわり」

 器を差し出す真白き片翼に、ねぇよと一言。

 さて、こんな受験真っ只中な作者でありますが、どうぞよろしくおねがいします。




【何してもよろしいですわよ】
―――――――――――――――
はい。ほんとはちゃんとした短編を書くつもりだったのですが、はい。
何をしたのか、何故かこんなのになってしまったです、ごめんなさい。
しかも深夜に書いたので意味が不明すぎる。
モデルはうちのでぶ猫と空想の産物です(爆)