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  [No.1738] そして帰って来たのは 投稿者:キトラ   《URL》   投稿日:2011/08/11(Thu) 21:11:56   65clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
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 シキジカを呼ぶ。夏の体毛は、森と解け合ってやや見にくい。ご飯の用意ができたと。そしてキャンピングカーのドアを開ける。いつもは森の景色が見えるのに、今日は違った。たまに遊びに来てくれる子でもない。見た事もない人間。
「麗しいお方……」
「えーと?」
「俺は池月と申します!こんな鬱蒼とした森とキャンピングカーは貴方に似合わない!俺と一緒に世界へ飛び出しましょう!」
「えーと?」
 手を取ろうとする。さわられたらまずい。イリュージョンで人間になっていることがバレてしまう。思わず一歩しりぞく。
「そんな警戒しなくても!俺は誠実な男です!貴方ほど麗しいお方のもふもふ……じゃなかった、御手に触れたとしても、けがすことはありません!」
「私はここで待つ人がいます。人間とは暮らせません」
「そんな!貴方の好物だと聞いたヒメリパイも持って来たのです!ぜひ食べてください!」
 誰が好物だと言ったのかは知らないけれど、その男が持って来た包みにはヒメリのパイ。作ってみたりしているけれど、他の人が作ったのを見るのはさらに食欲が増す。
「……仕方ない、狭いけど入って。シキジカ!ご飯!!!」
 シキジカが入ってくる。そして男を見上げると、誰、と聞いた来た。男に聞こえない小さな声で「知らないけど、池月っていうここから出て行こうっていう変な男」とシキジカに言う。
「でも珍しいね、人間をキャンピングカーに入れるなんて」
「仕方ない。今日のご飯はオレン漬けだけど、シキジカもヒメリパイ食べる?」
「食べる!」
 食卓は一人分。仕方ないので、その辺にあった段ボールを椅子に、パイを切り分け、オレンのワイン漬けを出す。そして男の方を見ると、うっとりとした顔でこちらを見ている。本当に目的がこちらなのだろう。
「こんな狭いキャンピングカーでいいのですか?貴方にはもっと広い世界が……」
「ですから私には待つ人がいます。その人が帰ってくるまでここは離れることが出来ません」
「心に決めた人がいると……では、今からその人を俺に変えませんか!?後悔はさせません!」
「ですから……」
「いいのです!すぐに決めなくても!俺に人生あずける覚悟というのは、相当なものでしょう!」
「いやだから……」
「貴方のもふもふ……じゃなかった、素敵な胸に埋もれたい!!!」
「聞いてんのかこの色男!!!」
 思わず食卓を越えて悪の波動を撃ち放つ。その波動が、男を直撃する。人間にはかなり効くはずだ。黙らせるくらいはできるはず。
 そして目を疑う。
「ぞろ、あーく?」
 そこにいたのは、イリュージョンがとけたゾロアーク。自分と違うのは、頭から背中にかけて生える警戒色が、赤ではなく、青いこと。そして少し黒い毛皮も茶色いこと。
「同じくイリュージョンでくどいてみましたが、俺は諦めませんからね!!!」
 素早い。キャンピングカーの入り口からさーっと出ていった。何がしたかったのか解らず、とりあえず去ってく後ろ姿を見送る。
「……仲間だったんじゃないの?」
 シキジカは聞く。
「確かにそうなんだけど、あれはなんか違うような……」
「いいの?せっかく仲間がいたのに」
「よくない、かな?」
「よくないよ。留守番してるからいってきなよ!」
 とりあえず匂いを追って青ゾロアークの後を追う。まだこの辺りにいるはずだ。特徴的な青い毛はすぐに解るはず。そして。
「麗しいお方!追いかけて来てくれたのですね!!」
 もうすでにイリュージョンがとけてる。それに、最初からゾロアークだと解ってきていた節もある。
「追いかけてないけど、貴方誰?」
「俺は池月です!」
「そこじゃなくて、何の用?」
「貴方と一緒にもふもふな世界を作りたいのです!!貴方のそのもふもふな毛皮ならば、見事なもふもふパラダイスが作れます!」
「もふもふパラダイス?」
 そういえば聞いたことあるような。この世にはもふもふパラダイスという美しい毛並みをもったポケモンたちが集う場所があると。ゾロアだった時に、そこにいくの?と冗談まじりに聞かれた。
「遠いんでしょう?私はここから離れない」
「そんなことありません!常にこの池月が迎えに来て送りにきましょう!いざ、貴方の漆黒なもふもふを!!」
「……私にはシキジカもいるし、勝手にはなれるわけにはいかない」
「そんな!俺には貴方しか見えない!貴方こそそのような楽園に行くべきゾロアークだ!すぐにでなくてもいい、明日も来ます!ぜひいいお返事を!!」
 そういって池月は消えて行く。気配は完全に消えた。仕方ないとキャンピングカーまで帰る。
「おかえり!あれ?どうしたの?楽しそうだね」
「え?そう?」
「うん、とっても楽しそう。何か良い事あった?」
「内緒」
 そういってヒメリパイをたいらげた。自分で作るのとは違って、ふんわりとした甘みが口に広がった。

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【もふパラ】
イッシュに来た池月くん、迷いの森のお姉さんを口説いてます。
私の世界は、細々つながっているので、解りにくいところありますが、そこはご容赦ください。

【好きにしていいのよ】【初恋は青ゾロアーク】