「…」
ユエは上を見ていた。腕を組んでいるポーズを取っている。相手から見れば豊かな胸が強調されていることがよく分かるだろう。まあ見慣れた光景だから別に困ることはないのだが。
相手はユエを見下していた。初めての光景に、どうやら戸惑っているらしい。落ち着きが無い。今まで見ていた物がいきなり小さく見える。冷蔵庫、テーブル、椅子、ご飯皿、テレビ、ベッド、などなど。
「どうしてこうなったのかしらね」
喜ぶべき、なのかもしれない。だが今の状況は簡単に喜べなかった。
昨夜、『電気消すわよ』と言って彼がベッドに潜り込んだのを確認して電気を消した。そのまま一度も起きずに規定時間になって目覚ましで目を覚ました。
そしてふと横を見て…
マグマラシが、バクフーンになっていた。
その時まだ本人は気付いてなかったようで、幸せそうにいびきをかいていた。マグマラシの時なら可愛い仕草の一つとして写真でも撮っていたところだが、今度はそうはいかない。
ユエのベッドはもちろんシングルサイズだ。マグマラシは丁度ユエの隣で丸くなる体勢になる。
だがバクフーンになるとそれはかなり難しくなる。ユエの身長は百六十ちょっと。バクフーンは平均で百七十。シングルベッドの高さはいいとして、幅は…
案の定、今朝もう少しで相手の長い鋭い爪がパジャマを引き裂くような場所まで来ていた。一瞬夢かと思ったが、ふと頬を抓ってみて夢じゃないことを確信した後は、相手が驚いて炎を吐かないようにそっと起こして状況を確認させて―
今に至る。
「参ったわねえ…看板息子がこんなにでかくなっちゃあ」
ガーン、という効果音が聞こえた気がした。バクフーンが半べそをかいている。ユエがため息をついた。
「冗談、冗談よ。メンタル面弱くなったんじゃないの」
ぽんぽんと頭を叩いてやれば、バクフーンがユエに寄りかかってきた。もふもふが顔に当たって苦しい。そして炎タイプだからか熱い。
「はいはい、さっさと食事してカフェに行くわよ。…カクライさんのメラルバ、大丈夫かしら」
数時間後。
変貌したバクフーンを見てメラルバが目を輝かせ、夏休み後半で宿題に追われていた学生達が一時中断の写メ大会になり、非番で来ていたサクライとヒメヤがそれぞれ、『寝てる間か…溜まってんじゃねえのか』『警部、それはセクハラと見られても仕方が無い発言です』という会話が交わされたという…
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そろそろ進化させた方がいいかなと思った結果がこれだよ!
サクライさんとヒメヤさん。名前を出すのは初めてかと思われます。奇妙な一日でゼクロムとレシラム注文してた二人です。職業は警部、刑事。サクライさんは四十半ば。ヒメヤさんは二十代後半。
前者は駄目男なイメージがありますが、やることはきちんとやります。ヒメヤさんは下睫が特徴のイケメン。
こんな感じでよろしくお願いします。…やっと出せた