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  [No.1757] トンカツ定食屋「切り切り亭」 投稿者:イケズキ   投稿日:2011/08/16(Tue) 22:11:35   132clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
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 ――タタタタタッ
 ――ジュージュー

 ここはキリキザンとコータスのトンカツ専門の定食屋「切り切り亭」。知る者ぞ知る、言い換えれば、常連ばかりの、もっと言い換えれば、あんまり賑わっていない、定食屋だ。
 ここのトンカツは一度食べたら忘れられないと評判なのだが、あまり流行っていない。それと言うのも、この店の店主――キリキザンのせいだ。

「お客さん……、キャベツ喰わねぇのかい?」
 ドスの効いた、まるでヤ〇ザのボスのようなキリキザンの声がする。
「ご、ごめんなさい。食べます、ちゃんと食べますからっ!」
 今にも泣きだしそうな声で、客席のタブンネが言う。
 カウンター越しにぬぅっと顔を近づけられ、キリキザンのあの斧のような額がタブンネの目の前に迫る。
「おう、ならいいんだよ。残さずちゃんと喰いなよ」
 キリキザンはそう言うと、キャベツの山の前に戻って行った。

 このキリキザンはキャベツの千切りに並々ならぬこだわりを持っている。
 昔はそのようなことは無く、この店を始めたころはごく普通に、トンカツを揚げキャベツの千切りをしていた。それが、どうにもキャベツだけを残す客が多い事に頭を悩ませ、キャベツもきちんと食べてもらえるようにと、千切りの方法にこだわり始めた。
 このキリキザン、こだわり始めると止まらない節があり、以来ずっとキャベツの千切りばかりに注力して、トンカツ作りに手を抜くようになってしまったのだ。
 ある時は肉が生焼けだったり、ある時はとてつもなく大きかったり、もしくは小さかったり、差し出された皿にキャベツしか乗っていなかった、なんてこともあった。
 そういう訳で次々と客が減り、一時はあわや店じまいという所までなっていたのだが、それはもったいないと常連の一匹であるコータスが立ち上がった。
 彼はこの店のトンカツの味を守るべくと、長年食べてきた味覚を頼りに、自分がトンカツを作るとキリキザンに申し出た。キリキザンはその申し出をあっさり受け入れ、今の店のがある。
 今の切り切り亭は、コータスが揚げることのできるよう、特別に改造したカマド(床より下に火を焚くところがあり、コータスが火を吹き入れることで火力を調節できる)で、彼がトンカツを作り、出来上がったらキリキザンがそれをキャベツの千切りと共に皿に盛りつける。
 キリキザンにしてみれば、自分がキャベツの千切りに集中できて、なおかつ店も続けられるのなら、それ以上のことは無かったから、コータスのことは大歓迎だった。
 強すぎるこだわりもそうだが、キリキザンには生来頑固なところがある。言葉づかいも荒いし、無愛想だから客が怖がってしまう。そのせいで、なかなか一見客が寄り付きづらいのだ。

「キリさん、あんまりお客さん怖がらせないでおくれって、いつも言っているじゃないか」
 タブンネが店を出て、厨房でトンカツを揚げていたコータスが、困ったようにこぼす。キリさんとは、店主のキリキザンの事だ。コータスは常連時代から彼をそう呼ぶ。
「キャベツを残すようなガキぁ、あれくらいビビらした方がいいんだ。いつもそう言ってるだろ、コーさん」
 コーさんとは、トンカツを揚げるコータスの事だ。
「まったくキリさん、ホント頑固だねぇ……」
「余計なお世話だってんだ。ほら、さっさと次揚げねぇか、客が待ってんぞ」
「はいはい承知いたしましたよ、店長様」
 キリキザン店長は一度ふんっと鼻息で答えると、次のキャベツに手を伸ばした。

 こんな感じでこの店の毎日は進んでいる。

 ある日の事、昼過ぎ。コータスはかまどの火の番をし、キリキザンは丸椅子に座って両腕のナイフをこすり合わせて研いでいた。この時間帯はヒマである。
 ――ガラガラガラ!
 突然、店の扉があく大きな音がした。
「い、いらっしゃい!」
 キリキザンが上ずった声で客を迎える。その理由は二つある。一つは、こんな時間に人が来るとは思っていなかったのだ。もう一つは――
「あ、あの〜……」
 小さな体から、今にも消え入りそうな声が聞こえた。
「驚いたな。オメェさん達みたいなガキが来るなんて、開店以来じゃないか?」
 そう、彼ら客はまだ幼いヒノアラシとチュリネだったのだ。一見はおろか、子供がやってくることはこれまで一度も無かったことだ。
「キリさん! また口が悪いよ、『ガキ』だなんて」
 コータスも内心驚きつつ、キリキザンをいなした。
「おっと悪い悪い。で、お客さんたち、注文は?」
 キリキザンが聞く。
「あの〜……。そうじゃないんです……」
「ん、そうじゃない?」
「ねぇ……やっぱりやめようよぉ……」 
 ヒノアラシの隣に立つチュリネが今にも泣きだしそうな声でささやいている。
「やめない! 一緒に決めたことだろっ」
 ヒノアラシがささやきつつも、必死の声でチュリネに言う。
「お客さん、早く要件言ってくれますかねぇ、営業中なんですよ」
 キリキザンが例のあの恐ろしい声で言う。
 とたんにチュリネはキッと口を結び黙った。見開かれた両目からは今にも涙がこぼれ落ちてきそうだ。
「あ、あの〜……、その〜……」
「さっさと言わねぇかっ!」
 しびれを切らしたキリキザンが怒った。待たされることが何より嫌いなのだ。
 その声に我慢できなくなったチュリネがとうとう泣きだした。ヒノアラシも恐怖で全身をこわばらせている。
「キリさんっ、いい加減にしてください! 何を子供相手にムキになっているんですか! ……ごめんねぇ、君たち。驚かせちゃって。さっきの話の続き、聞かせてもらえるかな?」
 コータスがキリキザンをたしなめて、ヒノアラシ達に優しく声をかけた。
「おっと……、すまん、悪かった。俺はどうにも短気でいけねぇ。坊主たち、怖がらなくていいから続き聞かせてくれや」
 キリキザンがおとなしくなって謝ると、ようやくヒノアラシが話始めた。

「そのですね……、僕とこのチュリネはこの間まで人間と一緒に旅をしていたのですが……、この間、リゾートデザートを抜ける最中に、その人間からこっそり別れたんです」
「ほぉ! そりゃまた大胆な坊主たちだ」
「本当かい!? そりゃまたどうして……?」
 キリキザンが驚きで合いの手を入れる。コータスも目を丸くしている。
 こんな子供がトレーナーから自ら抜け出すなんて、にわかに信じがたい事だ。
「本当です。それというのもこのチュリネなんですが――」
「ここで働かせてください!」
 ヒノアラシの説明が終わるか終らないうちに、チュリネが叫んだ。
「え……」
 キリキザンは言葉をなくしてしまったようだ。
「一体どういう……?」
 コータスも訳が分からず、困惑している。
「チュリネ! きちんと説明してからお願いするって言っただろ」
 ヒノアラシが焦っている。
「あ、ご、ごめんなさい……」
 周りの様子に、チュリネは一気に勢いを失ってしまった。
「僕たち、このチュリネの母親を探しているんです。この子の母親は、昔この店の常連で、ここの料理が大好きだったそうで……ここに来れば会えるんじゃないかと」
「母親を探してるって……、その子は人間に着いていたんだろ?」
 コータスが聞いた。
「そうです。ヤグルマの森で捕まえられて、家族から離れてしまったそうなんです」
「よく分からねぇんだが、普通人間につかまったポケモンってのは、そんな家族に未練をもたねぇんじゃねぇのか?」
 キリキザンが納得できないという風に聞く。
「そうじゃないポケモンだっています! この子は幼いうちから、母親と引き離されてしまって、ずっとさびしがっているんです」
 ヒノアラシはちょっとムキになって言った。
「ふぅん、で、ウチの常連だったからここに来てみたって訳か」
「そうです」
 コータスの言葉にヒノアラシがうなづく。
「ほぉ……。ウチの常連ねぇ……。けど、チュリネの常連なんていたかぁ……」
 キリキザンは誰の事か思い出せずに、顔をしかめている。
「このチュリネの母親……。まだ、私がいなかった時代の客じゃないかなぁ」
「あの〜……、お母さんはドレディアなんですけど……」
 チュリネが蚊の鳴くような小さい声で言う。
「ドレディア……? あ! あのドレディアか!」
「思い出してもらえましたか」
 ほっとしたようにヒノアラシが確かめる
「だいぶ昔の常連だ。野良のくせにやたら綺麗な花つけててなぁ、しかも、草ポケモンの割にトンカツばかりよく食うから物珍しいって、あの頃は彼女目当ての客も結構来てたなぁ。……だがよぉ、もうここには十年以上来てないはずだぞ?」
 キリキザンの言葉を聞いて、嬉しそうな二匹の顔が一瞬曇ったが、すぐに気を取り直してヒノアラシが続けた。
「その事は分かっています。ですから、僕たちをここでお母さんが見つかるまで、住み込みで働かせてはもらえませんか? どんな仕事でもしますから」
「そういうこと……。けどねぇ……、ここにいたってお母さん見つかるとは限らないんだよ」
 コータスはやんわり断ろうとした。正直子供がいても邪魔なだけだ。
「分かっています。それでも、僕たちはもう帰る場所がないんです」
「ん〜……そう言われてもなぁ……。ねぇ……キリさん?」
 なかなか断りづらくなり、キリキザンに話を振る。
 キリキザンはずっと渋い顔をして目をつむっていた。う〜ん、と唸っている。
「ダメだ。悪いが、おめぇさん達を預かる訳にはいかない」
 キリキザンはキッパリと言った。
「お願いです。僕たちここで雇ってもらえなかったら、行く場所がないんです!」
 ヒノアラシが懇願する。チュリネは再び、今にも泣き出しそうな顔でキリキザンを見ている。
「ダメなものはダメだ。帰る場所が無いってたって、オメェさん達はここに来るまでだって野宿を続けてきたんだろ。それにオメェさん達はトレーナーから外れた野良だ。それが一番ふさわしい生き方ってもんだろ」
「キリさん……そんな言い方しなくても……」
 コータスは気が悪そうにしている。キリキザンの言うことは、自分がまさしく言いたかったことであり、言い出せなかったことでもある。彼らは彼らで生きなければならない。母親さがしもまたそうだ。
 それだけ言うと、キリキザンは黙ってしまった。
「キリキザンさんのおっしゃることはもっともです。けど、僕たちはどうしても、彼女に会いたいんです!」
 ヒノアラシが必死に頼み込む。
「悪いが、そんなこと俺達には関係のないこった。オメェさん達のようなハンパもん預かっても、商売の邪魔になるだけだしな」
「僕達がハンパな気持ちでここまで来たって言うんですか!」
 ヒノアラシはキリキザンの言葉に憤慨して言う。
「ああ、ハンパだね。俺達と働こうって覚悟がちぃとも感じられねぇな」
「このぉ……!」
 背中の炎をバッと燃え上がらせ、今にも逆上しそうな勢いのヒノアラシだったが、突然火を収めて踵を返した。
「チュリネ、行くよ」
「えっ、でも……」
 チュリネは困惑している。
「キリキザンさん。僕達まだ諦めてないですから! また明日お願いに参ります」
 それだけ言うと、彼らは店の出口へと向かっていった。

「どうする? キリさん?」
 店の外まで彼らを見送ったコータスが、困った顔をして、丸椅子に座ったままのキリキザンに言った。
「どうもへちまもあるか! あんなガキども何度来られてもお断りだ」
「でもねぇ、あんな小さな子供なんだよ。もともとは人間に着いてたって言うし……。これからずっと野性で生きるのは厳しいと思うけどなぁ……」
「何甘いこと言ってんだ、コーさん。野良になったのはあいつらの自身の意思だろうが。いつ野垂れ死のうが、それは全部あいつらの責任だ。コーさんだって、分かってんだろ?」
「まぁ……」
 コータスは渋い顔して黙り込んだ。
 キリさんの言うことは最もだ。私だって本当は、あの子たちを預かる訳にいかないことくらい分かってる。でも、やっぱりかわいそうだと、思ってしまう。

 翌日、彼らは宣告通り、また同じくらいの時間にやって来た。
 キリキザンは相変わらず、コータスも気の悪そうな顔をするだけで、一切相手にしなかった。
 その翌日も、そのまた翌日も、ヒノアラシとチュリネはやって来た。しかし、その度にキリキザンもコータスも、相手にせずに帰していた。

 ある日の事。
「キリキザンさん、今日こそお願いします」
 ヒノアラシ達がやって来た。
「オメェさん達もしつこいねぇ。何度来られても、お断りだよ」
 キリキザンが呆れたように言う。
「そう言わずに、もう一度考え直してください。僕達一生懸命働きますから……」
 ここの所毎日こんな調子だ。しかし、その日は少し違った。

 ――ガタッ!

 突然、ヒノアラシが倒れたのだ。
「あっ!」
 慌てて、チュリネがそばへ寄る。
「おいっ! どうしたんだ?」
 キリキザンも顔色を変えてヒノアラシの様子をうかがう。厨房の奥で火の番をしていたコータスも、後からのっそり、彼なりの全速力でやって来た。
「……お、お……」
「あん、何だ? もっとはっきり言いな!」
 口をパクパクさせて話すヒノアラシに、キリキザンが聞き返した。

「……お腹すいた……」
 やっとヒノアラシからこぼれ出た言葉はそれだった。

「はぁ? 腹減って目ぇまわしてんのかコイツは……」
 キリキザンは呆れたように言い、コータスはクスっと笑った。

「まったく、しょうがねぇ坊主だなぁ」
 ぶつぶつ文句を言いつつ、キリキザンは厨房に立った。コータスも、新たな肉をかまどの鍋に入れた。

「キリさん、野垂れ死ぬなら勝手に、なんて言ってたくせに、やっぱ気になってたんじゃないっすか?」
 コータスがニヤニヤ顔でキリキザンに声をかける。
「目の前で倒れられてほっとく奴があるか! こんなことはこれっきりだ」
 そういって、キャベツの山にキリキザンが手を伸ばす。
「まったく……キリさんは素直じゃないなぁ」
「バカ野郎! 無駄口叩いてる間ぁあったら、手ぇ動かしやがれ!」
 いつも以上に声を張るキリキザン。黙々とキャベツを千切り続けるおかげで、兜のような頭の下で真っ赤になった顔は誰にも見られることは無かった。

 ――パクパクパク……ごっくん。

「おいおい、もうちょっとゆっくり喰いな。あんまり空きっ腹に突っ込みすぎると、腹壊すぞ」
「分か――り――ました」
 口いっぱいにトンカツをほおばりながら、ヒノアラシが言う。
 キリキザンはやれやれと言った様子でヒノアラシを見ていた。

「おい、そこのチュリネ」
 横から物欲しげにヒノアラシを見ているチュリネにキリキザンが声をかけた。
「は、はい……?」
 突然、ぶっきらぼうに呼びかけられて、またチュリネは恐々と小さな声で返事する。
「オメェさんの分だ。食べな」
 そういって、キリキザンはトンカツとキャベツの盛られた皿を差し出した。
「え、いいの? でも……」
 予想外のもてなしに驚くチュリネ。
「けっ、年端もいかねぇガキが、いっちょまえに遠慮なんかするんじゃねぇよ。どうせオメェさん達、ずっとろくなもん食ってなかったんだろ?」
 と、キリキザン。
「そうだよ。遠慮なんかしないで食べて。自分で言うのもなんだけど、おいしいよ」
 と、コータス。
「う、うん……」
 なお、申し訳なさそうにして、チュリネは皿に顔を近づけた。
「おっと、君にはちょっと食べづらいかな」
 コータスが言う。チュリネは小さな口でトンカツが噛みきれずに四苦八苦していた。
「トンカツをちょっと戻しな」
 キリキザンはそう言い、皿に戻ったトンカツを厨房まで持って行った。

 ――サク、サク、サク。
 軽快な音とともに、トンカツが切り分けられた。

「ほらよ」
 サイコロ状にまで切られたトンカツが差し出された。差し出したキリキザンの手刀はまだ、油と衣で汚れていた。
「ほぉー! キリさんがキャベツ以外の物を切るなんて、一体何年ぶりだろう? 今日は雪でも降るんじゃないかな?」
 コータスが驚く。
「よ、余計なこと言ってんじゃねぇ! 俺だってこれくらいのことすらぁな」
 ムキになって否定するキリキザンを見、コータスはクスクス笑った。
「分かってますって、キリさん」
 キリキザンはなおも恥ずかしげにぶつぶつ言っていたが、コータスは破顔を戻さずにただうなづくだけだった。

「ところで、どうだった? 味は?」
 コータスが、食べ終えたチュリネとヒノアラシに聞く。その様子を少し離れた厨房からキリキザンも見ていた。
「とても美味しかったです! こんな……こんなトンカツを……僕も作りたい!」
 トンカツの味に感激してヒノアラシが叫ぶ。
「お、嬉しいこと言ってくれるねぇ」
 ニヤニヤとしてコータスが言う。それと一緒に、ある心境の変化が彼の内にあった。
「すっごくおいしかった!」
 チュリネが初めて、元気のいい声を出した。
「うんうん、ありがとうねぇ。そう言ってもらえると、こっちも嬉しいよ」
 コータスが言う。

「こんなおいしい、千切りキャベツ初めて!」
 ニコニコとチュリネが続ける。

「…………え?」
 と、コータス。

「新鮮で、すっごくみずみずしい! 長さも均等でこの細さ……、とっても食べやすい。切り口はなめらかで、そのおかげで線維が壊れてないからほのかに甘みがある。どんな切りかたしたらこんなキレイにできるんだろう……。しかも、トンカツに押しつぶされてもまだ、こんなに千切りの一本一本が見事にシャキッと立ってるなんて、感動しました! お母さんは、こんなおいしい千切りキャベツ食べてたんだぁ……」
 一瞬誰かと思うような勢いであったが、間違いなく全てあのチュリネが言ったことだ。

「お、おう……。そんなに美味しかったか……」
 まさかのベタ褒めに、厨房からこれまた一瞬誰かと思うような、キリキザンの声がした。
「キリさん。そんな所からじゃなくて、もっとこっち来なよ」
 今だ困惑気味のコータスだったが、キリキザンを呼び出した。
 珍しくキリキザンが素直に厨房から出てきた。
 キリキザンがやってくるとまたチュリネは、少し顔を引きつらせた。どうにも彼が苦手らしい。
「あ……そのだな……、気に入ってもらえたみたいで、うん、よかった」
 歯切れの悪いキリキザン。
「う、うん……。おいしかったです……」
 先ほどまでの勢いはどこへやら、またチュリネはボソボソ声に戻ってしまっていた。
 
「まぁ、その……、なんだ……、オメェ達の頼みの件の事だが……、うん、そうだな、好きにしていいぞ」
「本当ですか! 僕達をこの店で働かせてくれるんですか!?」
 ヒノアラシが歓喜して言う。チュリネの顔も輝いた。
「キリさん、本当に良いの!?」
 コータスも突然のキリキザンの変化に驚いている。
「ただし! 当分は雑用だぞ! ガキに厨房うろつかれたら邪魔で仕方ねぇからな! それに、そのチュリネの母親が見つかったらまたすぐに出て行ってもらうぞ!」
 キリキザンが念を押す。
「やったー!」
 ヒノアラシとチュリネが大喜びではしゃいでいる。キリキザンの念押しも聞こえていないみたいだ。
「やれやれ……」
 キリキザンは呆れながらも、そんな彼らを見て、自分も心はずむのを感じていた。
 本当は彼も、野生を知らない幼い子供達を放って置きたくはなかったのだ。しかしこの「切り切り亭」は万年閑古鳥と付き合っているような小さな店。彼らを預かった所で、安定して食わせてやれる保証がない。彼らを思えば、野生に慣れたほうがよっぽどその後の将来が楽なはずだった。
 しかし、彼らはこの店に通いつめ、食に飢えてもなおそんな素振りを微塵も示さず、ただ「働かせてくれ」ということだけを頼みに来た。
 その心意気にキリキザン、そして実はコータスも、心動かされたのだ。
 しかしキリキザンが彼らを預かる気になった理由はまだある。

「キリさん、どうして急に気を変えたんだい? あれだけあの子たちを預かるの嫌がっていたのに」
 店の奥の生活スペースにヒノアラシとチュリネを案内した後、2人で厨房で仕込みをしている中、コータスが聞いた。
「あいつら、俺達に初めて、ウチの料理が作りたい、って言っただろ。今までずっと、『母親に会いたい』ばかりだったってのによ」
「キリさんもやっぱりそこかぁ」
「コーさんも分かってたか」
「まぁね。ウチで働こうってのに、『母親に会いたい』はちょっと動機がよくないよね」
「それは良かった。コーさんの言い分無しに、勝手に決めちまったからなぁ」
「何言ってんですか、店長様。私はあなた様のおっしゃるままに――」
「バカ野郎! ふざけてねぇで働かねぇか!」
「はいはーい、ただいまー」
 どんな時でもキリキザンをからかいたくなってしまう、コータスだった。


 ――それから二年。

「お客さん……、キャベツ喰わねぇのかい?」
 いつものように、ドスの効いたキリキザンの声がする。
 そしていつものように客のタブンネは顔を引きつらせ――とは、今ならない。
「タブンネさん。このキャベツの千切り、とっても美味しいですからぜひ食べてくださいね」
 タブンネの足元から声がする。チュリネだ。
 キリキザンの声で凍った場の空気が、一瞬で溶けた。
「ふぅん、そうなの? なら、ちゃんと食べようかなぁ」
 キリキザンの言葉に戦々恐々としていたタブンネが、チュリネのどこか気の抜けた柔らかな声を受けて、楽しげにキャベツを食べ始めた。
「レタス! そんな所で油売ってねぇで次のキャベツ用意しな」
「はぁーい! ……では、私行きますから、きちんとキャベツ食べてくださいね」
 最後に少し言うと、チュリネ――こと、レタスは厨房へ戻って行った。

 しかし、逆に変わった者もいる。
「こらっ、カマド! いったい何度言ったら分かる!? 油の温度が低すぎだ! こんなんじゃ衣がベタってなってしまうだろうが」
 これはコータスの声だ。
「す、すみません」
 ヒノアラシ――こと、カマドが必死にかまどに火を吹きむ。トンカツ作りを教えると決まった日から、コータスはまるで鬼のように厳しく毎日教えている。

 今「切り切り亭」は以前とは大違いで、大繁盛している。
 固く重苦しい雰囲気の店だったのが、まだまだ幼いカマドとレタスがいることによって、柔らかく賑やかで、誰でも入ってきやすい店になったのだ。
 今の所、レタスの母親がやってくる様子も、また、彼女を目撃したという情報も全くない。しかし、店が盛り上がっているということは、彼女の耳に「切り切り亭」の事が入ってくる可能性も高いということだ。
 キリキザンをからかうコータスの話を聞いたり、常連客から愛称を着けてもらったり、今の生活も楽しくはあるのだが、やはりレタスはその可能性に期待しないではいられなかった。


 トンカツ定食屋「切り切り亭」。ここには毎日大勢の客がやってくる。
 その客たちをもてなすのは、
 弟子に指導するときは厳しいけど普段は調子のいい、コータス。
 店の紅一点で、キャベツを運んでは間違えて切り刻まれかける、大人しいチュリネの、レタス。
 師匠の下、日々トンカツ作りを学んでいる、しっかりもののヒノアラシ、カマド。
 そして、この店の店長。口が悪くて気の短い、けど、とっても情に厚くて周りに優しい、キリキザン。……キャベツ残す奴は許さないけどね。


 イッシュ地方のとある場所、知っている者は知っている、知らない者は……、風の便りにいらっしゃい。
 ここは「切り切り亭」、おいしいトンカツと、
 千切りキャベツが売りの定食屋。
 一度食べたら忘れられないあの味と、わいわいがやがや楽しい雰囲気を、あなたも一度どうですか?


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まず初めに、音色さん申し訳ない。
さんざん待たせてしまったあげく、キャラの名前もいただいたのにまったく生かせていないこの状況。
我ながらヒドイ
(
ストーリーもなんかオチなくなって( 

うぅむ…… 反省です

ただ、これだけは!
キリキザンをばっちり書けたと思う! それだけは、嬉しい。 それと、自分の執筆一周年に一つ上げられたのもよかった。

……結局、俺しか得してないけど(爆


【書いてもいいのよ】【描いてもいいのよ】【批評も……ください!】【キャベツ残したら許しまへんでぇ!】


  [No.1758] また明日にしましょう 投稿者:音色   投稿日:2011/08/16(Tue) 23:53:12   38clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
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「たのもぉぉぉ―――!」

 本日の切り切り亭・・には一風変わった客が雪崩れ込んで、いや転がり込んできた。
 夜中に。

「もう今日は店じまいだよ」
「にべもなく追い出された!」

 時間外なので容赦のないキリキザンはごろごろと入ってきたビリリダマを戸口の方へ転がす。

「何でですか何でですか!?ここのトンカツ食べに来たのに!」
「営業時間内に来い」
「そりゃごもっとも!」

 眠りかけていたレタスもかまどの二匹も、ぎゃいぎゃいとうるさい侵入者(自称客)の声がうるさくて目が覚めてしまったらしい。

「でも今じゃないと駄目なんだぁぁ!」
「知るか」
「あーあーあー聞こえません聞こえません俺特性は『ぼうおん』なんで!」

 遂にはコ―タスまで置きだしてこの珍妙な客に冷たい視線を浴びせ始めた。彼等にしては夜中にいきなり店に転がりこまれてやたらと騒がれて安眠の邪魔をするだけの似非モンスターボールに用はないのである。

「いやだって今じゃないと俺のテレポートでまたここにこれるかどうかわからな」
「うるせぇ今寝ないと明日の朝の仕込みが間にあわねぇんだ一昨日喰いに来やがれぇぇぇ!」

 思いっきりビリリダマを山の上から蹴落として、切り切り停には静かな安眠タイムが戻ったとさ。

 教訓:人間でもポケモンでもお腹が減っている時と眠い時はすこぶる機嫌が悪い

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
余談  20分クオリティだと食べに行けませんでした。また時間のある時に殴りこみますそりゃもう千切りキャベツ大盛りで。

【がんばって食べるもん】
【次は営業時間内に行ってやるぜふふふ】


  [No.1765] いつでもいらっしゃい!(営業時間内ならネ) 投稿者:イケズキ   投稿日:2011/08/19(Fri) 17:20:28   29clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
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音色さん、ネタ提供していただいたうえに作品までつけていただきありがとうございます。

寝起きは皆機嫌が悪いもの……とは言っても、キリキザンはいつでも怒り出しますがw



> 余談  20分クオリティだと食べに行けませんでした。また時間のある時に殴りこみますそりゃもう千切りキャベツ大盛りで。

お待ちしております! 今度こそ、切り切り亭のトンカツ…… いや、キャベツの千切りをご賞味あれ!


> 【がんばって食べるもん】
> 【次は営業時間内に行ってやるぜふふふ】

いらっしゃーい!







以下はオマケです (すっとばしていただいてかまいませんw)



「キリさん、もう少し穏やかに言ってあげなよ」
 居間まで戻ってくると、コータスはまた困ったように顔をしかめて言った。
「うるせぇ、こんな時間に来るようなふてぇビリリダマにぁ、あれくらいいいんだよ!」
「けどねぇ、ウチのトンカツ食べに来てくれたって言うのに、かわいそうじゃないか」
 コータスは気まずそうだ。
「ふんっ、今日の分は全部売り切れたんだ。かわいそうだなんだ言ったって、ねぇもんは出せねぇだろう」
「まぁ、そうなんだけど……」
 コータスは勢いを失い、キリキザンは再び寝床へ戻ろうと歩き出した。

「あれ? キリさん」
 突然、コータスがキリキザンを呼びとめた。
「あぁ?」
 いい加減眠たいキリキザンが、めんどくさそうに応える。
「カマドとレタスはどこ?」
 そう言えば、さっきの客で目を覚ました二匹が戻っていない。
「しらねぇよ。別に俺としちゃ、そのまま戻ってこなくてもいいくらいだ」 
「またキリさん、そんなこと言って!」
 コータスが怒る声にも応じず、キリキザンは奥の寝床へ戻って行った。

 ――まぁ、そのうちに戻ってくるか。
 同じく眠たいコータスは、自らの希望も助けて、そんな考えを持ってキリキザンの後を追いかけた。


「あーあ、さっきのお客さん、もうどこか行っちゃったのかな……」
 店先まで出て行ったカマドがこぼす。
「うん、そうみたいだね……。残念」
 横でレタスが言う。頭の上に乗っかった皿が落ち込む頭に合わせて揺れた。

 翌朝、切り切り亭の皆が起き出した。
「おい、オメェら昨日どこ行ってたんだ?」
 キリキザンがカマドとレタスに聞いた。
「あ……。昨日のお客さんにトンカツを用意して追いかけていたんです……」
「ん? 昨日の分はもうなかったはずだが……」
 キリキザンが言う
「はい……。だから、僕の作った練習作でよければと思って……」
「あ! カマドが作ったのが残っていたか!」
 キリキザンがしまったという風に言う。
「待ってくださいよ、キリさん!」
 コータスが割り込む。
「カマドが作ったトンカツなんて、まだまだとても客に出せるようなもんじゃないです」
 コータスが厳しく言う。カマドが小さくなって、うつむいた。
「それでも、なんにも無しよかぁマシだろ。なんか、あの客、二度と来れねぇみたいなこと言ってたし」
「それでも、ダメです。あれは出せません」
 きっぱりとコータスが言った。

「ところで、そのトンカツ今どこにあるんだ? ちょいと食わせな」
 キリキザンがカマドに言った。
「あれは今、冷蔵庫の中に……」
 チュリネが横からまた消え入るような声で言った。働いていない時は特に、キリキザンの事が苦手なのだ。
「おお、それならさっさと食ってしまうか」
 キリキザンはそう言うと行ってしまった。

 ――二十分後

「コーさん……。これいけるんじゃないのか……?」
 コータスが温め直したトンカツを食べてまず最初に言ったことだ。
「いんや、ダメです。まだ火の入りが足りてないです」
 同じく食べていたコータスがキッパリいう。
「コーさんはカマドに厳しいねぇ。まぁ確かに、コーさんに比べたら味は落ちるが、あの客に出す分にはこれで足りたかもな」
「うっ……。まぁ……」
 コータスが言葉につまる。
「ま、言ってもしょうがねぇこった。冷めねぇ内に、俺達で食っちまうことにしようぜ」
「そうだね、キリさん。ほら、カマドとレタスもどう?」
 コータスとキリキザンの様子を横から見ていた二匹に声がかかる。
「僕達は……あ、仕込みの準備行ってきます!」
 そう言うと、二匹はそろって厨房へ行ってしまった。……寝起きからトンカツを食べられるような胃は、まだ彼らにできていない。

 二度とやってくるか分からないあのビリリダマのことも忘れて、キリキザンとコータスはトンカツをおいしくいただきましたとさ……。



オチないよー(爆


  [No.1782] 手芸屋『黒木綿』 投稿者:Teko   投稿日:2011/08/24(Wed) 17:34:19   81clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
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 ポケモン達の暮らす賑やかな村がありました。子供達が走りまわり追いかけっこをしていたり、井戸端会議が行われていたり……おやおや、お店から真っ青な顔をして飛び出してきたポケモンも。遅れて、お店の中から凄まじい声が聞こえてきました。あの彼に一体何があったというのでしょうか?

 さて、この村を離れ、木々に囲まれた北へ続く小さな道をだらだらと歩いていくと、あけた空間に出ます。小さな広場のようなものですが、柔らかな草が生え、小さな花が咲いています。お花畑とも草原とも言うことは出来ませんが、お昼寝をするのにはぴったりな場所でしょう。その空間を超えれば、道は森の中へと入っていきます。もっとも、入っていく人は多くありません。

 村の北側に広がる森――『黒い森』。不気味な鳥の声と、ざわめくモミの木々。昼間でも暗く、迷い込むと森の外へ出ることはとても大変です。村の子供達が外に遊びに行く際にかならず母親達はこう言います。「北の森には入ってはいけません」それがいってらっしゃいの挨拶のようなものでした。
 ですから、子供達はその森が恐ろしいと知っているのです。けれど、だからこそ入ってみたくなるのも確かなのです。毎年、興味本位で入っていって、戻ってこれなくなる子供が二、三匹はいるのです。大人たちでさえ森の中に入ったことのないポケモンのほうが多いのです。飛んで上空から探そうと思っても、あまりにも木々の葉が生い茂っていて、内部を見ることが出来ません。

 もし、あなたの友人が森から出てこられなくなってしまったら? そんなときは焦らないで『黒い森』出身の彼女の元へ行きましょう。きっと不満をぶつぶつといわれることでしょうが、大体は力を貸してくれるはずです。彼女はどこにいるかですか? お店にいますよ。もしかして、ご存知ありませんでしたか? あらあら、それはそれは――


 手芸屋『黒木綿』――それが彼女のお店です。

 
 『黒木綿』は村の端とも森の端とも言える場所にありました。要するに、本当にギリギリの境に建っていて、ある人は森に飲み込まれてしまうんじゃないかなんてことも言いました。
 そもそも、村と森の間にあるあけた空間は『黒木綿』を建てるためにひらかれた空間なのでした。しかし、店主である彼女はそんな陽の当たる場所は嫌だと言い張って、森に埋もれるような場所に店を構えたのでした。
 お店自体は小さいのですが、重厚なゴシック様式の建築であり、さらに壁いっぱいにツタの蔓がへばりつき青々と葉を広げていることもあってどうにも近寄りがたい雰囲気であることは間違いありません。人が住んでいる感じはするのですが、どこか幽霊屋敷のようなそんな気配があります。重そうな木で出来た扉には『黒木綿 布・糸材料 仕立て その他』と看板がかかっていました。その看板の下には『営業中』どうやら営業中ではあるようです。さっそく、中に入ってみ――おや、誰かやってきたようです。

 ぎいいぃぃぃときしむ音をたてて扉が開きました。中に入ってきたのは赤い身体に鋭い刃を持ったキリキザンです。
「おい」
 誰もいない室内にキリキザンのドスの効いた声が響きます。聞いただけで背中がまっすぐに伸びてしまいそうな声です。どこかで聞いたことのあるような――いや、あれは人違いでしょう。飲食店がお客さんを外にたたき出すわけがありませんから。
 それにしても、室内には何の反応もありません。声一つ、物一つ動いた気配もありません。誰かがいるとは思えないほど、室内は静まり返っていました。
 キリキザンは顔を思い切り、しかめました。
「営業中の看板出してるなら、仕事しやがれ!」
「うるさいなぁ……まったく……寝てるのに……」
 どこかから声がしました。薄暗い室内ですが、色とりどりの糸や布が意外にもきれいに整頓されて並べられています。キリキザンはまわりを見渡しますが、誰もいる気配はしません。
「出てきやがれ!」
「前にいるでしょもぅ……遠視なの…?」
 そう言って、むくりと動いたのは、椅子に座っていたぬいぐるみでした。ただのぬいぐるみではなかったのです。それはジュペッタ――彼女こそがこの手芸屋『黒木綿』の店長です。
「何の用だい……?」
 キリキザンは少し戸惑いました。いい仕立て屋はどこだと聞いてコータスに聞いて来たのに、ぜんぜん良くない。それもそうです。キリキザンはコータスの話を最後まで聞かずに飛び出してきたのですから。コータスはこういったのです。「仕立てなら『黒木綿』がいいですよ。―――……まぁ、いろいろアレなんですが……」
「……。まぁ、そのだな、作業ふ」
「ちょっと待ったああああぁぁぁぁ!!!」
 ドアを勢いよく開け入ってきたのは、キリキザンの相棒、コータスです。ぜいぜいと息を切らして、コータスは「ちょっと待って」と言いました。キリキザンは不機嫌そうに顔をしかめました。
「今から頼むところだ。注文が終了してからにしてく」
「だから、ちょっと、待って!ってば」
 いつもは穏やかなコータスの強い口調に驚いたキリキザンは少しの間声が出ませんでした。そんな中をジュペッタがただただ不機嫌そうに見ています。コータスはそんなジュペッタにぺこりとお辞儀をしました。
「ま、また後日お邪魔します!!」
 「事情は後で話す。とりあえず今日は帰ろう」コータスはキリキザンに小さく耳打ちして、のしのしと歩き出しました。いつもは威勢のいいキリキザンもそんなコータスの珍しい態度にすっかり調子が狂ってしまい、ただ黙ってコータスについていきました。

 
「全く、最後まで話を聞いてから動いてくれ」
「どういうことか全然分かんねぇ。分かりやすく説明してくれ」
 コータスは大きくため息をついた。
「……君に似てるなぁと思ってたけど本当だったんだね。……あのジュペッタさん腕はピカイチなんだけど、異常なまでにすごい頑固なんだ」
「誰が異常なまでにすごい頑固だって?」
「で、君なら、怒鳴り散らして「帰れ!」終わりなんだけど……あのジュペッタさんは違って……言わないんだ」
「……?見上げたプロ根性じゃねぇか……だめなのか?」
「それを発散するのに彼女は、商品作りで発散するんだ。糸で布を織り、糸と針で縫い合わせ……君のキャベツの千切りよりも、多くの作業がある。その作業一つ一つに君が吐き散らす怒りが詰まってる」
 キリキザンはようやくコータスの言おうとしていることがわかりました。気づいた瞬間に、背筋を舌でなめられたような強い悪寒が走りました。
「あのジュペッタを怒らせて、物を仕立ててもらったやつらは必ず悪いことが起こるって噂だよ……病気になったり、事故にあったり、消息が不明になった者もいるらしい。彼女の恨みがこもってるって話……」
「そ、そんな仕立て屋を教えるんじゃねぇっ!!」
「う、腕は本当にすごいって聞いたから! ちゃんと彼女に作ってもらったものはどんなものよりもなじむし、使いやすいし、いつまでも使い続けることが出来るって聞いたから!」
「でも……それって完璧にアウトかセーフしかねぇってことじゃねぇか……」
「とりあえず明日は私が行きます……!」
 

 翌日。
「駄目だった……」
 うなだれて帰ってきたコータス。

 翌々日。
「もういかねぇよあんなとこよぉ!!」
 キレて帰ってきたキリキザン。

 翌々々日
「うーん……」
 頭を抱えて帰ってきたコータス。


 キリキザンとコータスは悩みました。もちろん、「作ってくれ」では駄目なのです。けれども、下手にでても駄目なのです。いくらジュペッタをほめて、どれだけ欲しいかを言ったって、ジュペッタはますます不機嫌になっていくばかりなのです。
「もう、アレはあきらめたがいいんじゃねぇのか」
「う、うーん……」

 頭を抱えるキリキザンたちを物陰から見つめるポケモンが二匹。小さな彼らは、精一杯背伸びをして、キリキザン達の会話を盗み聞きしていました。下にいた黒い影がすすすすと店の外へ出て行きます。それに緑の小さな影が続きました。

「うーん……どうしようもないかなぁ……キリさんが駄目なのはそもそもだけど、コータスさんが出来ないなんて……」
 そう言ったのはカマドという名前で呼ばれているヒノアラシです。彼はキリキザンのお店でコータスの弟子のような存在です。いつもは元気一杯ですが、今日ばかりはその元気もどこか空の向こうに飛んでいってしまったようです。
「私、行って……こよう、かな」
「レタスが!?」
 レタスと呼ばれているのは小さなチュリネです。幼い頃に、母親と別れてしまいその母親を今でも探しています。ただ、非常に恥ずかしがり屋というか内気な性格なので、物事には引っ込み思案でした。
 だから、今回のような出来事に自分から行くとレタスが言ったことに、カマドは非常に驚いたのです。目を丸くしたカマドの前で、レタスは恥ずかしそうに顔を赤くしました。
「どうしてそんなに驚くの……?えっ、わ、わわわ、キゃーーー!」
「あっ、ちょ! レ、レタス!?」
 カマドが声を発するよりも早く照れてしょうがなかったレタスは遠くへと消えていきました。あいつも、昔に比べてかわったぁなんてことをカマドは考えつつ、レタスの行く方向へ走っていくのでした。


 とんとん、とんとん。
「しっ、失礼します!!」
 小さなレタスは力をこめて、扉を押しました。薄暗い室内に佇むジュペッタの赤い目の光だけが動き、ぎろりとレタスを睨みます。
「こ、こんにちは……」
 ふんと鼻を鳴らして、ジュペッタが椅子からひらりと飛び降ります。長い時をを経た床板が軋み、不気味な音をたてました。レタスは小さく悲鳴を上げました。足が動きません。怖いのに逃げれません。来なきゃよかった、そんな考えがレタスの脳内に過りました。
「わっ、私レタスって言います! キ、キリキザンさんの『切り切り亭』で働いてます! あのっ……」
「あぁ、アレの……こんな小さい子を働かせてるって言うのかい…あいつは……」
 レタスはぶんぶんと首を横に振りました。
「ちっ、違います! 私が働かせてくださいって頼んだんです! キリさんは悪くな――」
「どうして」
 レタスが言い終わらないうちにジュペッタは尋ねました。
「どうしてあの場所で働いてるんだい」
 その口調は今までのジュペッタになかったきっぱりとしたものでした。
 レタスはジュペッタのその口調の変化にさらに縮みあがってしまい、さらに動けなくなってしまいました。でも、逃げちゃ駄目だ。大きく息を吸い、少し真を置いて、レタスは話し出しました。
「――お母さんを探しているんです。私のお母さん、この村に昔いたドレディアの――」


「あれは何……だろう?」
 レタスを追いかけてやってきたカマドは、『黒木綿』の横で不思議なものを見つけました。店の隣に備え付けられている小さなテントのような建物の下には、色とりどりの布が干されています。そして、その下でちょこちょこと動くとんがり帽子のようなもの。とんがり帽子はミルクティーのような穏やかな茶色で、レースがたくさん縫い付けられていました。
「帽子……かなぁ?」
 でも、動く帽子なんて変。カマドはそっと帽子に近づました。すると、とんがり帽子はくるっと振り返り
「わ、わわわっわわぁああ!」
 カマドは驚いて腰を抜かしました。とんがり帽子だと思っていたそれは、素敵なカバーをかぶったパラセクトなのでした。
「……客?」
「う……うん」
 パラセクトはちょこちょこと動いて、水の入った鍋が乗っている釜戸のほうへ歩いていきました。
「あ、あの……」
「客……店中……入る」
 端に積んである牧の山から、細く短い木の束を持ちだし、空っぽの釜戸の中に全て投げ込みました。そして、その木々に火をつけようと火付け石をかっちんかっちんやるのですが、うまくいきません。何しろパラセクトは火が大の苦手なのです。おそるおそる火をつけるのが習慣になっていました。それを見かねたカマドは口からいくつかの火花を出して、その木々に日をつけてあげました。
「火……嫌い、助かる」
 パラセクトから感謝されたカマドは、照れくさそうに「えへへ」と笑いました。
「僕、カマド! 『切り切り亭』で働いてるんだ」
「あのポケモン……所。パラセクト……布糸……草木で染める……」
「あの、布は全部草と木から出た色なの!?」
 カマドは目を丸くして、聞きました。ピンク、赤、青……あの様々な色が全て、草木から出ている色だなんて信じられませんでした。
「左から、桜……紅花……――」
 パラセクトは少し戸惑いながら答えました。今まで、自分に自己紹介をしてきたポケモンなんていなかったのです。いや、二人だけいました。初めてあったときのジュペッタと昔の知り合い。それ以外のポケモンとまともに喋ったことも関わったこともなかったのです。『黒木綿』を訪れるポケモンの相手は全てジュペッタがやってしまっていましたし、パラセクト自体もあまりに無口なこともあり、ジュペッタ以外に関わったのは本当に本当に久しぶりのことでした。
 カマドに染色のことを話していくと、彼はちょっとしたことでも、すごく感心して大きく反応しました。それも、わざとらしいものではなく、本当に心から驚いているようでした。
 そうなると、パラセクトも嬉しくなって、普段は喋らないようなことをどんどん話しました。



「ほぅ。そのドレディアを探すために働いてるって言うのかい」
「は、はい……で、でも今はそれだけでもなくて」
「なくて?」
「あの……お店で働きたいって思ったから」
 レタスは言いました。今までのようにうつむいてではなく、ジュペッタの眼を真っ直ぐ見て言いました。
「……そうかい」
 ジュペッタは大きくため息をつくととてとてと歩いてチェストの引き出しを開けました。中には細々とした針やボタンが入っています。その中に一本入っていた様々な緑色の糸でできた束――。
 昔、よく来た彼女。美しい容姿に、艶やかな花を身につけていた彼女。彼女の草木に対する知識は大変すばらしいものでした。全ての草木を愛し、太陽のような明るいオーラを持っていました。


 ――もう、随分前のことになるのか。
 ――あれは。

「うわっ!……あ、あの、これは……?」
 数本の糸で複雑に編まれた一本の緑色の糸。レタスはその糸を手に、不思議そうな顔でジュペッタを見つめました。
「ドレディア一族のお守りなのだそうだよ。もっとも、わたしゃ知らんがね」
「ドレディア……!?」
「この編み方を私が教わったときに、見本としてそのドレディアが置いていったもの……指が編み方を覚えたときには、見本は不要なものとなる。……ドレディア一族のお前が持ってきな」
 ジュペッタはぶっきらぼうに、吐き捨てるようにいいました。けれど、その言い方はどこかひっかかりのある、わざとらしいものにも見えました。
「ちょっと待ってください! そのドレディアってわた――」
「さあ、さっさと帰っておくれ。それをやったんだ。帰ってくれ」
「私のお母さんのこと、知って――」
「はやく!」
 

「はやく、帰っとくれ」


「ジュペッタさん……」



「この赤色はキリさんみたい。情熱って感じで……あ!この黄色はコータスさんって感じ! 黄色だけど、どこか落ち着いてて――それから」
 勢いよくドアの開く音とともに、飛び出してきたのはレタスでした。いつもの
レタスにはありえないスピードで走っていきました。
「レタス……? ちょっと、僕もいきます! パラセクトさん、また!」
 小さなレタスを追いかけて走っていくカマドの後姿をパラセクトはただ黙って見送りました。
 穏やかな風が草原を撫でるように、吹いていました。


 夜になりました。『黒木綿』の光は夜遅くになってもまだついていました。それもそのはず、店主のジュペッタは夜行性なので、ほとんどの作業を夜にやってしまうのです。
 こんこん。
 ひかえめなノックの音にふりむくと、そこにいたのはジュペッタの予想通り、パラセクトでした。
「なんなんだい、パラゼン」
 ついでにいえばパラセクトも夜行性です。といっても、干したりはお昼にしか出来ないので、夜は基本的には何もしていないはずなのです。
 パラセクトはかんそうはだなのでいつもジュペッタの作ったカバーを被っていました。特に何もないときは、レースやボタンといった飾り物のついたカバーを被っています。しかし、今日のパラセクトは作業用の麻で出来た質素なカバーを被っていました。
「……珍しいねぇ」
「……」
 ジュペッタは目を細めました。パラセクトが他人に関わることですら珍しいというのに、他人のために何かしたいと思ったことなどなかったのです。そのパラセクトが今日会った、小さな子供にものを作ってやりたいというのです。
「……分かったよ、分かってるよ」
 もともと、パラセクトにいわれようがいわれまいが、ジュペッタは作るつもりでいたのです。

 ――返せなかった借りを、返す機会。


 数日後。

「今日こそは、ドカンと言ってやるぜ……」
「ダメだよキリさん……!」
 
『切り切り亭』では今日も、キリキザンとコータスが『黒木綿』に行こうとしています。 
 いい加減、我慢ができないキリキザンはいつも以上にキリキリしています。『切り切り亭』だけに、ですね。
「くそ!! あのジュペッタ野郎めっ!!」

 バタンッ!

「……ジュペッタ野郎で悪かったねぇ」
「……」

 ドアを開けた先にいたのは、ジュペッタとパラセクトでした。
「なっ、なんでここにいらしてるんですかっ……!?」
 半ば混乱状態のコータスが尋ねました。もちろん、顔を真っ青にして。
 立ち尽くすキリキザンの手にジュペッタは強引に籠を押し付けました。
「こっ、これは……!?」
「頼まれてたもの、お代はいらない、恨んでない」
 そう言うとジュペッタはくるりと背を向けて歩き出しました。後にパラセクトが続きます。
「あっ、あの、ありがとうございます!!」
「礼、あの子達、……言う、よし」
 あの子達? とコータスは不思議に思いました。あの子達といわれて思い浮かぶのは、カマドとレタスです。しかし、あの子達が何かしたなんて聞いていません。
 そのとき、店の奥からその二人が飛び出してきました。
「こら!仕込み中だろう!」
「パラセクトさん!」「ジュペッタさん!」

「「ありがとうございます!!」」

 ジュペッタは振り返って頭を下げる二匹を見て、言いました。
「いい弟子をもったねぇ」
「あ、あぁ」
「うらやましい限り……さ。パラゼン帰ろう」
 ジュペッタはそう言って笑いました。けれど、朝日に照らされたその笑顔は少しだけさびしげにも見えました。パラセクトは相変わらずいつもどおりでした。


「いらっしゃい!」
 今日も『切り切り亭』は大賑わいです。真っ赤な前掛けをかけたキリキザンが、自慢の刃を振るいます。小さなチュリネも同じように前掛けをかけています。その前掛けはよくチュリネに似合った桃色でした。その桃色の前掛けの紐の部分に編まれた緑の糸が揺れています。
 熱い厨房内で、火を操る二人、コータスとカマド。彼らの汗の光る額には、鉢巻が巻かれています。コータスは黄色、カマドは青色。
 どれも、しっくりと似合った色でした。この色以外にこれ以上似合う色がないといえるほど。

 ――パラセクトさん、僕が言ったこと覚えてくれてた。

 あれは僕が選んだ色。そう思う度、カマドは誇り高い気持ちになりました。


――――――――――――

 御昼時。
 黒い森の端。
 御客は誰も来ない。
 蝋燭の火の揺れる室内。
 ロッキングチェアの揺れる音。
 とんがり帽子の黒い影。
 ただ廻り廻る糸車。
 村の手芸屋。
 黒木綿。




黒木綿のBGMイメージ
http://www.youtube.com/watch?v=pnfX09LLszA






【あとがき】

 思ったより長くなりました。途中で筆が進まなくなってるのがバレバレですがゆるしてください。
 パラゼンさんがお気に入りです。

 あと、トンカツ食べてなくてすみません。
 あとはイケズキさんに投げますよろしこ!

 こんなんですむいません

【何してもいいんだぞ】


  [No.1802] 女子会定食屋! 投稿者:銀波オルカ   投稿日:2011/08/28(Sun) 15:24:08   45clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
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 とある午後の、切り切り亭。時間帯的にたまたまお客がいないので、店の主キリキザンをはじめとする四匹のメンバーは、しばし休憩をしていた。
 ふと、外から聞こえてくる、かすかなポケモンの声。話し合っているようなその声は、徐々に近づいてくる。
 戸口の前まで来たのを感じて、流石に客だと確信したキリキザンは立ち上がった。ガラガラと引き開けられる扉。

「「ごめんくださ〜い」」
「ヘイらっしゃ……」

 普段威勢のいいキリキザンの声はそこで止まった。
 カウンターにいたレタスも、はっとした表情で入ってきた客をみつめた。
 何故かといえば、入ってきた四匹のポケモンの中に“ドレディア”がいたからだ。

「レタス、カマド! ついにお前らがこの店を出て行くときが来ちまったぞ! 久しぶりにドレディアが来たんでな!!」

 キリキザンはそう言って、店の奥に入って行ってしまった。
 カウンターの上のレタスは、無言でドレディアを見つめている。



「サワン、この店に前も来たことあるの?」

 一緒に入ってきたコジョンドがたずねた。
 ドレディアは店で交わされている話の状況が分からず、困惑した表情になる。

「いや……無いと思うんですけど…」



「…本当!? レタスのお母さんなの!?」

 店の奥から、コータスとカマドを連れてキリキザンが出てきた。

「……お母さんじゃない」

 レタスは、まじまじとそのドレディアの顔をみて呟いた。

「…お母、さん? 私が?」

 困惑した表情のままのドレディアが言うと、周りにいるコジョンド、ゾロアーク、ウルガモスが彼女に一斉に視線を向けた。

「サワン、あんたいつの間に子供できてたの?」
「へ!? ち、違います!!」

 ゾロアークに言われ、サワンと呼ばれたドレディアはあわてて首を振る。



「そういや、前に来てたやつとは花の色が微妙に違うな。別ポケか?」

 キリキザンが呟く。

「な…何のことかさっぱり分かりませんけど…多分ポケ違いだと思いますよ」

 ドレディアは言った。
 レタスも、今度は確信した口調で言う。

「うん。私のお母さんじゃない」

 少しだけ残念そうな表情をみせるレタス。
 後ろでは、カマドとコータスが、何も言わずに立っていた。
 


「へえー、自分のお母さんを探すために、ここで働いてるのね」

 ドレディアはレタスとカマドの決心に、とても感心した様子だった。

「いやー、サワン危うくこの子の母親にさせられるとこだったわね」

 隣で千切りキャベツを食べるコジョンドが笑いながら言う。ちなみに、入ってきたポケモン達は全員メスなのだ。

「でもさあ、サワンには素敵な騎士さんがいるじゃない?」
「えぇぇちょっとナスカさんっ!?」

 ウルガモスの発言で顔を真っ赤にして取り乱すドレディアに、周りの三匹は爆笑した。

「お客さんがいない時間帯に来て良かったわー」

 そう言いつつも、まだ笑いが収まりきらないゾロアーク。トンカツを吹き出さないように必死にこらえているのだった。

「ティラさんまでー…。もぉー」

 まだ火照ったままの顔で、ドレディアはトンカツをほおばる。

「しっかし噂どおりうまいわトンカツとキャベツ両方g(モグモグ)」
「レッセ、行儀悪いわよ…」
「(ごくっ)あ、もしかしてティラ、池月君のこと気にしてたり?」
「はぁ!? いきなり何言ってんの!?」
 
 いきなり女子の恋バナで盛り上がってしまった店内を、キリキザンは黙って見ているしかなかった。
 今度はキャベツを食べたドレディアが、幸せそうな顔で言う。

「うーんキャベツまでこんなにこだわってるなんて…贅沢ー。みずみずしいから、トンカツと相性抜群」

 その一言を聞いて、キリキザンの表情が少し変わった。
 ドレディアは気付かずにそのまま続ける。

「キャベツまでこんなに気を配ってるトンカツなんて食べたこと無かったわ」
「なんていうか、『みんなで作ってる』って感じがして、すごい暖かいんだよね」

 続いたウルガモスの言葉に、他の三匹も頷いた。

「ごちそうさまでした!」
「はいよ!」

 代表してゾロアークがキリキザンにお代を払うと、また来ますねと言って四匹は出て行った。
 キリキザンは、笑顔だった。



「レタスちゃんもカマドくんも、キリキザンさんもコータスさんも、このお店で働けて幸せだよね。店の中じゃ言いにくかったから今言うけど。」
「今度リーダー達も誘って行きます?」
「いや、私達だけの秘密にしましょっ。オルカならいいけど」
「賛成です!! 外のお店でまで争奪戦したくありませんよね」
「あと、今日みたいな話もしたいものね」
「だーかーらーナスカさん!!」



 ――噂を聞いてやってきた、午後の女子会。




―――――
「うちのコ行かせます!」と言ってしまったはいいけど、これでいいのかしら(特にキリキザンさんとかレタスちゃんとか)
なにせ他の人のキャラを直接書くのは初めてなんで… とりあえずはイケズキさんに土下座するしかないorz

あーメスキャラのセリフ書き分けがむずい!


【書いてみた】 【好きにしてね】