暗くなるのが速くなってきた帰り道をとことこと歩いていく。
夕方から夜へと姿を変えた何時もの道には、雨上がりのせいか薄いもやのような霧が広く佇んでいる。
肌寒いとはいえないものの寒くなってきた帰り道対策に上着を一枚、そしてルットことチルットの自立式湯たんぽを一つ。
これが最近の私の帰り道スタイル。
左側の歩道に面した土地には住宅が立ち並び、車道を挟んで向かい側、右の歩道に面した土地には山の切れ端、茂る木々。
ところどころに点在する街灯が光量不足なせいで、道はまるでまだらのようにほのかに明るい場所と夜に包まれた場所とに
分かれてしまっている。
こんな道でも、ルットがいれば怖くない。
ちっちゃいト離散でも、温かいのがいるだけでなんか幸せだし、安心するからね。
個人的には、朝と帰りの時間が一番季節の移り変わりが分かると思う。
ちょっと足を止めて山の切れ端に生える木とか下草やらを見つめてみれば、夏の暑さの名残か、
枯れてしまった葉っぱやらの間に暑さに負けた色ではない、赤や黄色に染まりかけている葉っぱが見て取れた。
「ぴゅい?」
足を止めたのに気づいたのか、モコモコの塊が疑問の声をあげた。
モコモコと、私の腕におさまっていたルット(もといチルット)が、くいっと上を向き、真ん丸い目と視線が合う。
ぴょんと飛び出たあほ毛がアタックしてくるけど痛くは無い、でもくすぐったい。
なんでもないよ、とルットにほほを摺り寄せれば「ギョギョギョ?!」と抗議の声が漏れる。
きっと、苦しいやらうっとおしいやら言っているのだろう。 わかんないけど。
再び歩き出したものの、ぎょぎょぎょのルットにかまけて余所見をしていたら、街路樹の生えているコンクリートカバーの
切り取られた地面に足が不時着。
なんかわしゃっと草を踏んだと思ったら、でっかいバッタが慌てて飛び出してきた!
「ぴょい、きょきょきょきょ」
バッタを見たルットがわたわたとあほ毛を振って興奮しだした。
・・・・・・この興奮の仕方は、おいしいものを見たときの反応だ。
鳥さんだから虫を見ておいしそうと思うのも変じゃないけど・・・・・・却下。
バッタ食べたくちばしで擦り寄られるのは流石にいやだ。
捕まえるぐらいだったらいいんだけどね、バッタのおなかって意外とぷにぷにでやわらかいし。
学校でバッタ捕まえると友達の大半がすごい勢いで逃げていくんだけど、そんなに怖いかな?
そんなに怖いんだったら、バッタも食べたがるルットも怖がられなくちゃいけないけどルットはかわいいと人気者。
・・・・・・永遠の謎。
「ぴょる、ぴょ!」
バッタ捕まえて、食べさせてとルットがアピールしてるけど、無視しちゃう。虫なだけにね。
ほのかに冷たい風がゆらりと霧を掻き分けて通っていった。
相変わらず広くのびたまま佇む霧の香りを感じながら、とことこ歩く。
もうすぐ家だよ、ルット。
今年ももうそろそろ一気に寒くなるんだ、テレビで言っていたからね。
ふかふかのあったかそうなルットだけど、今年は私とおそろいのマフラーでも作ってみようか。
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ここまで読んでくださり、ありがとうございました!
【書いてもいいのよ】【描いてもいいのよ】【好きにしていいのよ】