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  [No.1953] 彼女は僕を殺してくれない。 投稿者:戯村影木   投稿日:2011/10/01(Sat) 22:27:24   158clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
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 真剣に恋をしてしまった。
 僕のパートナーに。
 雪女子という、白い、美しい生き物だった。幽霊、と呼ばれている存在だ。雪の世界に生まれ、雪の世界において、幽霊となった。霊体。あまり、他生物という感覚はない。足も、本来手もないはずなのだけれど、まるで白い着物を着た、美しい女性のような、あるいは名前の通り、幼い女子のような。
 そんな彼女に、僕は恋をしてしまった。
 もちろん、僕は人間であるから、彼女と結ばれることはない。そもそも、会話を交わすことさえ、叶わないのだ。にも関わらず、僕は彼女に恋をした。一緒にいただけだった。ただ、彼女と一緒に、暮らしていただけだ。だというのに、知らないうちに、あるいは意識をしないうちに、彼女を好きになっていた。
 この感情に気づいたのは、ほんの些細なことが切っ掛けだった。言葉も喋れず、意思疎通もろくに出来ない僕たちだった。だけど僕が熱を出して寝込んだ時に、彼女は僕の額に手を当てて、じっと熱を冷ましてくれた。
 その時に、ああ、とても嬉しい、と思った。そして、僕はきっと彼女が好きなんだろう、と考えた。


 古い、もはや御伽話というレベルの話になるが、昔は、ポケモンと人間は結婚が出来たそうだ。あるいはそれは、当時から禁忌として遠ざけられていたのかもしれないが、それでも事実として、ポケモンと結婚をした人間が、存在した。子を成した関係だって、いたのかもしれない。
 僕はその記述を、とある文献で見つけてから、そうか、結婚してしまえば良いのだ、と考えるようになった。
 しかしながら、現在の法律では、それは認められていないという。
 僕は愕然とした。
 それこそ、死んでしまいたいと、思うほどに。
 いや、死んでしまった。その時僕は、ある意味で、僕を失った。愛しい存在との関係を否定されたようなものだ。種族が違うから、結婚出来ない。なんて愚かしい。なんて惨い。そして、なんて理不尽な法律だ。
 僕は死にたかった。
 死んでしまえば、この苦しみからも解き放たれる。
 だが、そう易々と死んでしまっては、彼女を置き去りにすることになる。せめて、僕は法律が許さなくとも、彼女との絆が欲しかった。有り体に言えば、彼女との間に、子を成したかった。それが人間として生まれるのか、あるいはポケモンとして生まれるのかは定かではない。それでも、それに賭けてみたいと僕は思った。
 だが、問題は多い。障害も多い。もしポケモンと人間が結婚出来たとしても、彼女は、ポケモンであると同時に、霊体である。だから、僕は彼女に触れることが出来ない。
 もっともスマートな解決方法はなんだろう。
 命は一方通行だ。
 帰ってくることは出来ない。
 僕はまた死にたくなった。このところ、すぐに死にたくなる。死んでしまえば悲しみからは解き放たれる。
 そして、ああ、なんて単純な話なのだろう。
 僕は妙案を思いついた。
 彼女と僕が結ばれるにはどうすればいいか。
 簡単だ、僕が死ねば良いのだ。


 自殺というものは、簡単だ。
 何しろ、抵抗する者がいない。
 僕はすぐに、自殺方法について考察した。首を吊ろうか、飛び降りようか、感電しようか、血を流そうか、水没しようか、凍死しようか。凍死というのが、一番美しいように思えた。しかし、それらには環境が必要だ。僕が住んでいる地域に、雪山はない。大型の冷凍庫だってない。高いビルもない。ロープを垂らす引っかけもない。感電方法に至っては理解も出来ない。そして、血を流すのは、単純に怖い。
 だから僕はもっとも簡単な方法を選ぶことにした。
 睡眠薬自殺だ。
 眠るように死んで、目が覚めたら彼女と一緒になれる。これほど嬉しいことはない。僕はすぐに薬局に走り、睡眠薬を購入した。この時、一度にたくさん買い込むことはしなかった。いくつかの薬局を転々とし、少量ずつ購入した。それでも、店員から、いたずらには使わないでね、と念を押された。まったく、馬鹿げている。僕は本気で死ぬつもりだ。いたずらなんかじゃない。
 睡眠薬を大量に買い込んで、家に戻ってきた。彼女はここ数日の僕の様子を訝しんでいるようだったが、心配しないで欲しい。僕と君は、もうすぐ結ばれるのだから。
 死ぬ前に遺書を書くことにした。霊体になったらペンを持てないかもしれないし、声は出せなくなるだろう。その前に、色々と考えておきたかった。
 僕は前向きに死ぬのだということ。
 死ぬことを恐れてはいないということ。
 人生は素晴らしかったということ。
 唯一、雪女子と結ばれないことだけが嫌だった。
 だから僕は死ぬ。
 簡単な話だ。
 ポケモンと結ばれるために、死ぬ。
 それは名誉なことだろう?
 まったく、正しく、理性的。
 どこにも、狂気などない。
 理路整然とした思考。
 だから僕は、死ぬ。
 それは怖いことではない。
 恐ろしいことではない。
 とても単純明快な、スマートな解決方法。
 うってつけの理論。
 そこかしこに存在する、公式、のようなもの。定理、のようなそれ。僕が愛した、彼女のために、死ぬ。
 僕は遺書を書き終え、それを折りたたみ、机の上に置いた。そして、僕の隣で心配そうにしている雪女子の頭を撫でて、
「もうすぐ一緒になれるからね」
 と言った。
 僕は、睡眠薬を飲んだ。


 目が覚める。身体がとてもだるかった。死にそうだった。いや、死んだのだ。ポケモンを愛し、ポケモンと結ばれるために、僕は死んだ。そして今、霊体として、意識を持っている。
 隣には、やはり、彼女がいた。彼女は少し、怒っているように見えた。きっと、何度も僕を呼んだのだろう。それに答えなかったのがいけなかったのかもしれない。
「ごめんね」
 僕はそう声に出した。
 そして、気づいた。
 ああ、声が出る。
 なんて酷く、間の抜けた声だろう。
 僕は死んでいなかった。
 身体の隅々を確認した。凍傷を起こしていたり、傷があったり、ひどい有様だった。彼女が僕を傷つけたということは、すぐに分かった。
「どうしてこんなことをするんだい」
 僕が訊ねても、彼女は怒った目で僕を見るだけだった。
 ああ、彼女は怒っている。
 僕が死のうとしたことに。
 命を粗末にしたことに。
 そして気づくのだ。今僕は、彼女の気持ちが、手に取るように分かる。まるで、言葉を交わすよりも美しく、素早く、詩的に、気持ちの交換を得られた。
 僕はそっと彼女に手を伸ばす。
 けれど、僕の手は、彼女の身体をすり抜けた。
「どうして死なせてくれないんだい」
 僕が訊ねても、彼女は答えない。
 けれど、すり抜けた僕の手に、そっと手を、添えてくれた。
 彼女は僕を殺してくれない。
 それはとても残酷で、とても悲惨で。
 けれどとても優しい、彼女の選択肢。


  [No.1954] 酷評されるべくして書かれた小説……だったはずなのになぁ 投稿者:西条流月   投稿日:2011/10/01(Sat) 23:17:06   49clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
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さてはて、ポケスコが盛り上がっているようなのですが、ポケスコと言えば、批評を貰ってのたうちまわったり、あまりの嬉しさに踊りまわったりするのが結果発表チャットでおなじみの光景なのですが、意外とね、自分の小説の順位と批評を聞くよりも自分が人様の小説にした批評で後でのたうちまわる人と言う奇特な人もいるんですよね
いやぁ、まったくだれのことなんでしょうねHAHAHAHAHA

  お れ だ よ

鳩のおやびんが狙ってくるからびくんびくんしてましたよ、前回の結果発表チャットではね
で、ですね
この批評を変な口調で書けば、発表されないんじゃないかと思ったわけです
それで候補にはござるとか上がったのですが、俺の横でポケスコに出れないことを嘆くオタマロがマロでやるでマロというのでやってみたのをチャットで見たわけですね

オタマロ「マロは『〜でマロ』なんて言わないでゲソ」

はいはいでてこないの(ゲシゲシ


流月:ここの表現は沈んでいることを表現したかったと思うでマロが主人公は前向きな性格で描かれていて、唐突に自殺でも始めるんじゃないかと思うほど落ち込んだのにはびっくり下でマロ(21:57)


586:「主人公の心の動きがより伝わるよう、例えばトラウマになった出来事のシーンでよりショッキングな書き方をする等のさらなる練り込みを行えば、よりよい作品に仕上がるでおじゃる」(21:57)

流月:あと、自殺の手法についてなんだマロが、主人公が苦しまないで死ぬ方法として使ったのが睡眠薬自殺だというのが腑に落ちなかったでマロ 睡眠薬自殺って死ぬのに時間がかかるから主人公のように仲のいい友人が多いと途中で見つかって後遺症で苦しむことが多いでマロ これは綿密に自殺方法について調べていた主人公が知らないはずはないでマロ(22:06)



さて、上のやつですね、586さんの批評のセンスが光っていて完敗してます、ごはさんに頼めばこの口調で批評をしてもらえるかも?(※そんなことはございません)

そんな冗談は横に置いといて、これで戯村さんに書いてもらおうと無茶ぶりをした結果がこれだったりする

おい、すごいぞ、チャットで言われてからの短時間でこのクオリティとか予想外だよ
ちゃちな幻覚なんかじゃねぇぞのAAを使いたくなるレベルでしたよ


それでは、本文の感想を

ユキメノコさん、かわいいよね
サーナイトとかミミロップばっかりがクローズアップされますが、メノコさん可愛いよ

なので、メノコ愛が全身から溢れている主人公とはいい酒が飲めそうです

昔話のときとは違って、法律とかそれ以外の壁とかが高いけれど、死ねば問題よね
相手だってゴーストだものね
あの世で結ばれればいいのです

そんな感じでつっぱしる主人公はたしかに感想にある通り前向きで、感想にはないけどバカっぽい
けれど、メノコはきっと感想に書かれていないそんなバカっぽいところを好きだったんだろうなぁ
放っておけないし、怒ろうにも主人公は突っ走るし、相当やきもきしたと思う
近くに居ても、止めることができないし、かといって愛想を尽かすこともできなかった
だから、そのまま見捨てもしなかったし、怒った
だから、二人の気持ちは言葉がなくても通じ合えた


そんなお話であったような気がします

さてはて、しかしいろいろな後遺症が残りそうな主人公の身がすこしばかり案じずにはいられませんが、
世間様の慣習としましてはリア充は爆発することになっているのでこれくらいは問題ないでございましょう



それでは、無茶ぶりに答えてくださり、ありがとうございました