静まり返った家の中、ひっそり動く影一つ。
家人を起こさぬように抜き足差し足、そっと戸を引き月夜の下へ滑り出る。
外で待つのは白き者。絹の毛並みを輝かせ、緋色の瞳を瞬かせ。
近付く彼女に頭を摺り寄せ、低く優しく声を発する。
なめらかな体毛に指を潜らせ、鋭い黒鎌にそっと手を添え。
彼女はただただうっとりと、彼の頭をかき撫でる。
白き獣と人の子は、互いの熱に酔いしれる。
この甘やかな時間が、永久に続くことを願いつつ。
( しずまりかえった いえのなか、ひっそりうごく かげひとつ。
かじんをおこさぬように ぬきあしさしあし、そっと とをひき つきよのもとへ すべりでる。
そとでまつのは しろきもの。きぬのけなみをかがやかせ、ひいろのひとみをまたたかせ。
ちかづくかのじょに あたまをすりよせ、ひくくやさしく こえをはっする。
なめらかなたいもうに ゆびをくぐらせ、するどいくろがまに そっとてをそえ。
かのじょは ただただうっとりと、かれのあたまを かきなでる。
しろきけものと ひとのこは、たがいのねつに よいしれる。
このあまやかなときが、とわにつづくことを ねがいつつ。 )
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・最近長文が思うように書けないので、久しぶりに百字に挑戦してみた……が、失敗。一人と一匹だから各百で、と開き直って二百字に。
(11/22 読み方を追記しました。これは字数に入れておりません、あしからず。)
・私にとっての彼は、ブラッキーと並んで月夜or闇夜のイメージ。
・彼らの迫害されていた時代を脳内設定。彼も彼女も、見つかったらきっと唯じゃ済まない。だから深夜の密会。
・読了いただきありがとうございました。
【なにをしてもいいのよ】