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  [No.2093] VS受験勉強 投稿者:moss   投稿日:2011/12/02(Fri) 19:45:06   32clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
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 ――検討会の結果なんだけどね

 検討会。生徒たちの志望校を先生たちが集まり判断する会議。校長、教頭、学年主任、その他各クラスの担任や教科担任を含む。

 ――……は生活面では、あぁ身だしなみとか態度とかね。その辺はいいんだ

 身だしなみ。女子はスカート丈は膝下。男子は冬服の第一ボタン開けを禁止。靴下はくるぶしソックス以外の白いものを着用。脱色、ピアス、染色、アクセサリー等は禁止。スカート丈は足が太いので上げられないし、髪を染めたいとも思わない。眼鏡ちゃんなので見た目はけっこう真面目ちゃんである。よってこれは大丈夫。

 態度。日ごろの授業態度や授業外での先生方に対する態度。共に私は特に普通にしているため問題はない。先生と喋るのは別に嫌いじゃない。喋っておくとこういうときに便利だし。

 ――私立についても大丈夫だったよ。このまま併願で受けなさいって

 私立。私にはただの滑り止め、最悪の場合に通うことになる高校。説明会に行ったらもう国立大学にはいけない未来が待っていた。あと体育祭が激しかった。ここを落としたら後は無い。落ちないだろうけど。

 ――問題は公立高校なんだ。やっぱり他の先生にも突っ込まれたんだけど、実力がね、足りないって

 実力。確かにこないだのテストの点数は低かった。いや、まぁその分平均も低いんだけど過去最低合計点だった。内申も現状維持が限界だろう。上がることは無い。わかってる。内申も全く足りない。ありえない。一年生の頃と二年生の前期が低かった所為である。後悔はないけど不満はある。でも模擬ではけっこういい点なんだけどなぁと思ったけど内申の欄が下がるじゃんとなって落胆。あさってやだなぁ。

 ――だからやっぱり一生懸命勉強をね、やんないといけないねぇ。まあがんばって……




 小学生の頃の私は文章もまともに書けない、字は下手、テストは七十点(周りのみんなは八十点とか百点だった)というどちらかというと馬鹿な子だった。
 中学生になり、一年生の最初のテストではよくなかったが、その後だんだんと上がっていき、最後のテストでは夢の四百点に到達した。うわあ、やればできんじゃん、この野郎と舞い上がる。二年生では眼鏡をかけて真面目ちゃんになった。黒板が見える分、授業をよく聞いた。ノートも丁寧にとるようになった。字も
丁寧に書けるようになった。テストでは点数を落とさないように一生懸命勉強した。成績が後期で最高潮を迎える。そして三年。勉強が難しくなった。めんどくさがりになった。でも授業は真面目に受けていたので授業態度だけはよいまんまだった。テスト前の勉強をちょっとずつやらなくなった。でもやらないことはなかった。矛盾はしてない。点数はあまり変わらなかった。通知表の数が少し下がった。まあしょうがない。勉強は難しくなってきてるし、周りがちょっとずつ受験に向けてがんばり始めたんだから。私もがんばんなきゃ行けないんだけどなぁとパソコンをしながら思う。塾の回数が一回増えた。




 「もうすぐ受験だねぇ、勉強してるー?」

 「してなーい。うち塾あるし。つか塾だらけなんですけどー。寝れねー」

 「わかるー。うちもー」

 「模擬どうだった?」

 「やばい。数学八点だったー。超うけた見たとき」

 「うそ、それやばっ。でもうちも四十五点だったしなぁ」


 私は五十五点だったよ数学。判定はAだよ。まだ内申が公立用のじゃなくて過去最高のもので書いてたときの話だけど。結局やらない子はやっぱり馬鹿だし、やる子はどんどん成績を上げていく。私の友達はやる子だったので、私よりはるかに点数を稼ぎ、もっと偏差値の高い高校を志望していた。頑張り屋さん。きついところはちょっとあるけど、授業態度は私よりも悪いけど家じゃ比べ物にならないくらい勉強してるんだよね。だから今回のテストで五十点も差がついた。塾行って頭よくなりやがって。




 「うわもう十二月だね。受験まであと一ヶ月くらいしかないじゃん」

 やばいねーと友人がホワイトボードを見ながら呟いた。ほんとだね。勉強してる? と聞いたら全然と返事が返ってきた。

 「何言ってんの? もうとっくにそうだから。勉強しろよ」

 次、数学だから早く移動しようよ。やる子な友人の確かすぎる答え。微妙にやる子な友人とホワイトボード前で目配せをする。やっぱりやんなきゃいけないよね。でもその日は家に帰って塾に行って寝た。




 「うーん。……は、現状維持です」

 後期の理科の成績。やはり現状維持が限界だった。近頃自分の限界を感じる。いや、ほんとは限界なんて無いんだろうけど自分でそれを決め付けている。ただ勉強がしたくないがために。ただ今更そんな子と言ってぐだぐだしていてもどうしようもないのでそうですかとだけ言って次の人を呼びに行った。悪い成績じゃない。志望校の内申の基準が高すぎるだけ。そう文句を言っては勉強をしない。馬鹿で最低なのは自分じゃないか。そんなことを言ってる暇があるなら勉強をしろよ。頭はいつでもそんなことでいっぱいである。でも九教科の三年間の合計が“110(だったはず)”というのは他の高校に比べて高いほうなのだ。じゃあ技能教科が神ってればいいじゃん。そんな話。だけど私は体育、技術が苦手である、特に体育。人類は何故高跳びなんていう棒を飛び越す危険極まりない競技を生み出したのか。何故人間は走るのか。何故体力が必要なのか。必要だとしても何故マラソンなんてしなければならないのか。翌日に筋肉痛になって歩くたびに痛い思いをするのは辛い。しかもそれを何故冬にやる。
 その日に国語の成績も聞いてはみたけど教えてくれなかった。というかまだ成績を出してないそうだった。授業の小テストで二十点満点中七点しか取れなかったことがあり、それが大いに成績に響くらしいのだが、今回の中間テストの点数は平均十点以上はあったので(それでも過去最低だった)下げないでくださいと言いに行ったら、……は今ぎりぎりのところにいるんだよねと言われた。でも今までの成績と態度でも評価するんですよねと食いついたらそんな簡単には下げないと思うよとさらりと言われた。はたしてどうなのかは先生しか知らないが。




 震える手で玄関を開けてただいまと言う。親は仕事でいないので当然返事はない。最近寒くなってきたので家の中が妙にあったかく感じる。幸せ。そのまま部屋に鞄を置くと、リビングに着替えに行く。実はこの制服寒いのよね。セーターは着てるけどこんなのじゃ真の暖はとれないのである。
 小腹が空いているので自然と手が冷蔵庫へ向かう。これぞ太る原因。みんなは真似しちゃ駄目だよ。適当にプリンかヨーグルトを取ってパソコンをつける。ここでいつも見ているサイトやらツイッターに呟きに行ったりニコ動で歌を聴きながら小説読んだり漫画読んだりかれこれ一時間。眠くなってパソコンをやめる。部屋へ行ってベッドに横たわる。目を閉じる。寒いのでひざ掛けと毛布と布団を軽くかけてみる。そのまま二十分後、起床。そんなに長い時間は眠らない。そしてまだ親が帰らないのでどうしようか。ここで(というか帰ったらすぐにやれよって話だが)勉強をしようという意見が頭のどこか片隅によぎる。しかしよぎっただけで実行には移らない。結局机の上で絵を書く作業に入ることにした。最近は漫画チックな人物の絵とか書けるようになりたいななどとほざいているため人を書いたり。あぁ本当はこんなことしてるんじゃなくて勉強しないといけないんだよと思いつつ手は一向に止まらない。あ、ここの線ぶれた。消しゴムを取ろうと手を伸ばした――

 ――そのときだった。

 「何やってんだよ。んなことやってねぇで勉強しやがれこの数学万年五十点台野郎がっ」

 後頭部に強い刺激を確認。視界がぶれる。あ、ここの線がぶれたどころじゃない。じんじんぐらぐらする頭を両手で押さえながら後ろを向いた。しかしそこには私のベッドがあるだけで他にはなにもない。……いや、いた。ベッドじゃないところに悠然と存在している。

 「そんなんだからまともな内申もとれないしテストでも点取れないし、模擬の結果も良くないんだよ馬鹿野郎」

 「……ぇ、うい……あ、ぁ誰?」

 首に黄色いスカーフを巻いて、黒いパーカーにちょっと違う黒の半ズボン。ベルトになにかチャラチャラしたアクセサリー的なものをつけ、黒髪に丸い耳を生やした小四くらいの少年がふわふわぷかぷかと浮いていた。真っ黒だなオイとも思ったが、実は黒いパーカーの裏は黄色い生地で、ちらちらとのぞいていた。つーか浮いてるし飛んでるし顔かわいいし。最後のは私の趣味です関係ないですごめんなさい。

 「んなことよりさっさと勉強しやがれ。あさってには模擬が待ってんだぞ。これで受けんの最後だろ? だったらちょっとくらい勉強しろやアホ」

 むかついた。めっちゃむかついた。私は立ち上がると近くにあったレシラム人形(レシラムかわいいよねレシラム)をむんずと掴み、奴に向かって投げた。

 「何すんぉぶっ」

 顔面ヒット。そのまま足を掴んでぐいっと下に引っ張り下ろし、床に墜落させた。ごつんと音がしてたぶん頭でも打ったんだろうがそんな些細なことは気にせずに私は息を吸い込んだ。

 「だぁれがアホだこのクソっカスっ餓鬼っ! こっちだってやろうとは思ってんだよ口出してんじゃねぇよっ!」

 「あんだようっせーな! てめぇが勉強しないからわざわざ言ってやったんだろーが!!」

 右腕で頭を押さえながら少年が反論した。その一言にいらいらのボルテージを上げた私は先ほどよりボリュームを上げてさらに反論する。

 「うるさいのはそっちだっつーの! 何処の誰とも知らないわかんないあんたに言われたかねぇわっ!!」

 そこまで言い切って椅子に座る。疲れた。不法侵入だ。どうしよう。警察に通報すべきか。そんなことを考える。とりあえず机の上にある書きかけの絵をしまった。丁度そのとき少年が立ち上がる気配がしてそっぽをむく。

 「……そうやって、今俺を見ないみたいに嫌なことは全部見なかったことにしてきたんだろ。見ないやらない関係ない。何で? だって自分にはもう無理だとか限界だとか今はやりたくないからこんどにしようとか、避けてきた。だけどそのままずっと逃げていったら……」

 「うるさいうるさいうるさいっ。そうだね確かにいろんなことを後回しにしたりやりたくないの一言でやらなかったこともあった。でもやるときはやったしテストも――

 「でもどんどん成績は下がってきてるじゃないか」

 ぐさっときた。心臓に何かが突き刺さって抜けない。まるで硝子の破片のような、抜こうとしたら逆に手を傷つけてしまう。そんなかんじ。でもこのまま認めてしまうのは私の変なプライドは許さないので無視することにした。お互いに何も言わない。無言の圧力。潰れてしまいそうだ。気を紛らわせるために本を一冊手に取った。妙に薄いなとおもったらそれは社会の一問一答式の問題集だった。ちょうど文庫本とかと同じ大きさの。それをつかんでいる手は私だけじゃなかった。

 「実力がないわけじゃない。でも努力をしないと自分の好きなことは好きなだけできなくなるよ。あんたにはそうなてほしくないから。ちゃんとやらなきゃいけないことくらいはやれよ。やるべきときに」

 見上げると少年がいて、角度と光の反射で表情は見えなかったけど。え、と聞き返そうと口を開けて

 「……え?」

 目が覚めた。私はベッドの上にいた。どうやら夢オチらしい。携帯で時間を確認すると四十分くらいたっていた。二十分で起床なんてしていなかったようだ。親はまだ帰ってきていない。ふと机の端にDSiが開いて、しかも電源のついたまま置いてあった。充電切れるわー、いつからついてたんだしといいながら画面を見ると

 「ぷはっ、そのまんまじゃん、格好」

 手持ちのなかのエース、エモンガのエモちゃん(ニックネームにはしてないけどそうやって言ってる)のステータス画面だった。
 私は電源を切ると、それをあるべき場所に戻し、ため息をつきつつも数学の教科書を開いてそれからノートも開いてちょっとだけ勉強をしてみることにした。






―――――――――――

体験談をまじえて。内申が足りないのは本当です。あと数学が五十点台なのも本当です。

このままじゃ落ちるのも成績が下がってるのもあさってが模擬なのも本当ですね、はい。

とりあえず現実逃避したい。