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  [No.384] 洗濯日和 投稿者:CoCo   投稿日:2010/08/13(Fri) 00:40:51   287clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
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 棚の上でカゲボウズが埃を被っていた。
 本来黒いはずのカゲボウズが、半分ほど白くなっていた。

 さすがに心配になってつつくと、くるっと寝返りをうって目をあけた。

「…………」

 恨めしげな瞳がただひたすらこっちを見つめている……。
 時刻午前七時、久々の早起きの時間を三十分近くふいにして、俺は埃だらけのカゲボウズと見詰め合っていた。

 どうすればいいんだろう。

 そして俺は今が朝であることに気がついた。
 そうだ。窓を開けよう。朝日を浴びよう。そしてリフレッシュした頭でこのカゲボウズをどうするか考えよう。

 カーテンを勢いよく開け、窓を開く。
 しかし瞬間的にテンションが急降下した。
 なぜなら、軒下にずらりとカゲボウズがぶら下がっていたからだ。

「…………」

 昨日友人から電話があった。
 俺より酒癖の悪いような奴で、一緒に毒男を貫き通すだろうと思っていたそいつがわざわざ、「彼女できたよ^^」と報告してきやがった。ひとしきり惚気てから、「はやくお前にも春がくるといいね」とほざきながら電話を切っていった。

 そして午前三時まで眠れなかったのだ。
 そうですよね、そりゃあカゲボウズだって並びたくなるよね。わかるよ。うん。わかる。

 しかもこいつら、昨日の雨風の中ずっとぶらさがっていたのか、茶色い。雨で濡れた体に風で舞い上がった砂がくっついたらしい。
 すごい。カゲボウズって天然で色違いになれちゃうんだね。ほんとすげぇ。
 一匹のすそから水が滴っていた。

 ふと振り向くと、棚の上から埃まみれのカゲボウズが落下するところだった。
 ぽとり。
 一瞬きゅっと目をつぶったカゲボウズが、今度は半身の埃をリビングに撒き散らしながら、俺の方へむかって転がってくる。
 ころころ。
 数分かけて転がってくると、足元へ転がったまま目をあけて、じーっ、とこっちをみつめている。

 窓を見上げれば。
 雲の流れる速度も異様に速い快晴の空。揺れる茶色のカゲボウズ。

 俺は気がつくとタライとホースを持って家の外へ出ていた。


 まずは窓のさんにぶらさがっているカゲボウズを収穫します。
 引っ張れば取れる。ぷち。
 こいつらと、あと埃被ってたのを水張ったタライへ入れる。
 そしてホースで一匹づつ洗う。

 カラスの濡れ羽色になったカゲボウズを、さすがに洗濯バサミで止めるのは気がひけたので、自力でロープにぶらさがってもらった。
 本日晴天、洗濯日和、風は強め。
 洗濯ひもの下になびくカゲボウズたち。目をぱちくりしている。
 たまに風でひっくりかえってしまう奴がいるので、今日はそいつらを監視しながら昼飯は冷やし中華にしようと考えた。


おわれ


***

全国のカゲボウズスキーのみなさんすみませんごめんなさい。管理人さんごめんなさい。
もはや風になびくカゲボウズしか思いつかなかった私を笑ってやってください。

【批評していいのよ】
【書いてもいいのよ】
【描いてもいいのよ】

ちなみにカゲボウズは陰干しだと思うのですがいかがでしょうか。


  [No.385] 洗濯日和.2 投稿者:てこ   投稿日:2010/08/13(Fri) 02:12:57   102clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
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 押入れを掃除した。
 小さい頃、大事にしていたぬいぐるみがあった。埃で汚れて、白かったはずのぬいぐるみが黒くなっていた。
 久しぶりにあのときと同じように抱きしめてみた。


 ジュペッタになってた。


 ぺたぺた。ジュペッタが畳の上を歩く。あの頃、大事にしていたぬいぐるみがまさかジュペッタになるなんて予想もしてなかったけど、けど。
「これ、うん……」
 長い間しまわれていた体は埃塗れ。ジュペッタの歩いた後に埃の道ができる。よろしくない。ジュペッタにとっちゃ、埃なんかどうでもいいものなのかもしれないが、一応は部屋の主である俺にとっちゃ、非常によろしくない。部屋が埃塗れになってしまう。それも、結構年代物、まさにヴィンテージ埃。一つ一つの塊として存在するような埃である。やっぱり、よろしくない。
「ちょい、こっち来てみ」
 ジュペッタを手招きすると、何の警戒もせずとことこと歩いて俺の前に来た。小さい頃、大事にしていたとき、いつもこのぬいぐるみと一緒だった。その時の記憶ってまだ、あるのかな。
 ジュペッタの体を抱えて、埃をはらってみる。大きな埃はいくつもいくつも落ちたが、いかんせん、まだ手にざらざらとした感覚が残る。布自体にこびりついた小さな埃だろう。これは、はらっただけじゃとれないだろうな……。
 かと言って、この埃のついたまま放置すれば、部屋は汚れる。きっと、裸足で歩いた時に足の裏がざらつくようなことになるだろう。避けたい。しかし、ジュペッタだと気づいてしまった今、元通りに押入れに戻ってくれというのも出来ないだろうし。やることは一つしかない。
 洗濯しよう。

 風呂場。ジュペッタは俺を不思議そうに見上げていた。
 ……いや、ちょっと待てよ。大きなぬいぐるみって洗うとかびるって聞いたことがある。ジュペッタが本当にあのぬいぐるみのままなら、濡らしたらかびる。絶対、かびる。でも、かびたジュペッタなんて話聞いたことはないし、それだったらジュペッタは水タイプのポケモンとは戦えないよなぁ。とか、言ったら炎タイプのポケモンと戦ったら、全焼してるよな。大丈夫か。ポケモンだし。
 シャワーの蛇口をひねった。
「よーし、かけぶっ」
 何が起こったのかわからなかった。気づいたら、足を滑らして腰と後頭部を打ってびしょぬれになってた。
 深呼吸をして、十秒。
 ……あぁ、なるほど。びっくりしたジュペッタにシャドーパンチをみぞおちに叩き込まれたってわけね、俺は。
「大丈夫だよ。じっとしてろ」
 ジュペッタの指先に軽く水をかける。ジュペッタはそれが何かを理解したらしく、指先に纏った影を消した。小さな体をしているが、意外と、いや、かなり力は強い。昔、喧嘩のときにくらった一発とタメを張る威力だった。痛ぇ。
 ジュペッタの体に水をかけつつ、手で汚れを落としていく。排水溝に流れていく水は結構な黒色をしていた。どれくらい、押入れから出てなかったか。一体、いつから、ジュペッタになったんだか。
 まぁ、悪い気はしない。

 綿が水を吸ってしぼんだりしないかと思ったが、洗い終わった今、体型に対して変化はなさそうだ。体の色は黒から、灰色に変わった。やっぱり、相当汚れてたんだろう。
 プラスチックの洗濯籠にジュペッタを入れて、ベランダへ向かう。水を吸った体は重い。かなり、重い。米の袋を運んでいるみたいだ。
 
 二本の物干し竿に板を渡してその上に置いて干す。要するに、枕の乾かし方と同じである。
 ゴーストタイプだから、陽の光に当たっちゃまずいだろうかとも思ったが、ジュペッタにとっちゃそんなのは埃と同じく気にするものでもないらしい。陽に当たりながら気持ちよさそうに眠り始めてしまった。人にシャドーパンチくらわしといて、まぁ、何と言うか……気ままだな。

「これから、どうするかなぁ」
 天気のいい昼。よく晴れた昼。強すぎず弱すぎず、吹いていると感じる程度の風。ベランダの手すりに体重を預け、ひと息ついた。今日は絶好の洗濯日和だ。
「ん?」
 向かい側の建物の一部屋。よく見ると、黒い布のようなものがずらりとぶら下がっている。風は吹いているが、それほど揺れてはいない。きっと、洗ったばっかりなんだろう。なんの布だろう、あれは。
 布がくるりとひっくり返った。そして――ぱちくりと布は瞬きをした。
「なるほど、ね……」
 ひっくり返った布を元の状態に戻そうと出てきた人。俺はみぞおちにシャドーパンチをくらった。あの人はきっと、一日中ああいう風にひっくり返った布を見ては、元の状態に戻すんだろう。お互い、おつかれさんだ。
「全く、困った奴らだなぁ……」
 気持ちよさそうに寝ているぬいぐるみ。そよそよと微かに揺れる黒い布。今日は、絶好の洗濯日和。二つを見比べて、俺は苦笑してしまった。





おわり

【批評していいのよ】
【書いてもいいのよ】
【描いてもいいのよ】


書いてみました。すみません、ジュペッタ洗濯機で脱水しそうになってすみません!
CoCoさんのカゲボウズ、かわいいです。欲しいです。私の家の窓のさんにもぶら下がって欲しいっ。
かわいらしいカゲボウズ、ありがとうございます。カゲボウズ成分補給されました!

カゲボウズは陰干しだと思います!


  [No.386] 今、私は猛烈に興奮している! 投稿者:No.017   投稿日:2010/08/13(Fri) 08:30:06   83clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
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今、実家にいるからちょっとポケストの様子を覗くだけにしようと思ったのに。
思ったのに……!



な に こ れ か わ い い

素晴らしい!
なんという素晴らしい小説だ!
読んでいる間中終始ニヤニヤしっぱなしだった。
カゲボウズ・ジュペッタでこの発想はなかった。
興奮した! おっきした!(しない)
勢い余ってツイッターで布教してしまった。(ごめんなさい)
これは日本全国のカゲボウズ・ジュペッタ好きに読まれるべき小説である。

おい、そこの毒男!
私にもカゲボウズを収穫させろ!!!
ついでだから冷やし中華もよこせ!

とりあえず、あなたたちお二人、pixivに小説投稿……いやpixivにそのカゲボウズとジュペッタ干してきなさい(笑)。
ポケストだけでなく、これはもっと広まるべきだ……!
布教すべきだ!
全国のカゲボウズ・ジュペッタスキーに洗濯のすばらしさを伝えるのだ!


うちの金髪のお兄さんも、カゲボウズ洗濯するのかなー。
いっぱいいるから大変だろうなー。

ツッ○ー「カゲボウズは陰干しでしょう。やっぱり」


  [No.388] ありがとうございます。+おまけ 投稿者:CoCo   投稿日:2010/08/14(Sat) 00:29:01   96clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
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 みなさんありがとうございます。
 てこさんジュペッタありがとうございます。ついシャドーパンチ喰らいたくなりました。
 No.017さんありがとうございます。ツイッターなんて恐れ多いです感謝です。カゲボウズ暦の長いツッ●ー氏が言うならばやっぱり陰干しですかね?
 拍手くださったみなさんも通りすがりのみなさんもまとめてありがとうございました。私のカゲボウズがよろこびのあまり風もないのになびいています。

 そしてぴくしべで小説が投稿できることに今気づきました。
 イラストコミニュケーションサービスって書いてあったから油断していた……。


以下おまけという名の妄想と蛇足



 悩める貧乏青年達が集まる郊外の古い安アパートには、まれに数匹、特定のカゲボウズが暮らしていることがあるらしい。
 彼らは宿付きカゲボウズと呼ばれ、都市型に発展したポケモンの生態系の一種であると見られる。
 とくに悩みつらみ凹んでいる住民の窓のさんに取り付き、負の感情にあやかるカゲボウズ達だが、あるアパートではカゲボウズの付き具合を見ておのおの鍋の具材を持ち寄り当該住人の部屋を訪れ、【メシウマ鍋】【ざまあ鍋】や【傷舐め鍋】などを執り行う等、古来より不吉の象徴として見られがちな彼らが、緩やかながら人間の生活に溶け込んでいるという現象も報告されている。

 また最近、なぜか当研究所に「カゲボウズは陰干しなのか?」という類の投書が多く寄せられるので回答させていただくと、陰干しとは本来、木綿素材など水分が蒸発する際に収縮する性質をもつ衣類の変形や、ジーンズなどの変色などを防ぐために風通しのよい日陰で洗濯物を乾燥させることを言うが、洗濯して干したカゲボウズがガビガビになった、カゲボウズが色落ちしたなどの事例は報告されていない。
 しかしカゲボウズはゴーストタイプであり、紫外線に弱いとのレポートも存在するため、カゲボウズを干す場合は結果的に陰干しが適当だとも考えられる。

     ――国立ゴーストタイプ研究所

 追記
 色落ちはしないが、日焼けしてひりひりすることはあるらしい。【要出典】
 暑い夏のことでもあるので、日向でカゲボウズとふれあう場合には十分注意が必要だと思われる。





 以上は、あれ以来うちのアパートに住んでいるカゲボウズの洗濯係みたいになってしまった俺に対して、上の階に住んでいる御影先輩が何も言わずに寄越してきたものだ。怪しい紙である。
 まあ俺の部屋と俺自身は日陰なので干し方には心配なかろう。

 ちなみに御影先輩は相変わらず寝起きの顔がミカルゲにそっくり似ている。あの不運げな顔では今年も落第は免れまい。

 負の優越にひたっていると、水をはったタライの中からカゲボウズがこっちをみつめていた。

 いかんいかん。こいつらを洗うときは無心でなくてはいけない。心に負の念が存在するとこいつらは目を閉じない。じっ、とこっちをみつめて瞬きもしない。
 きゅっと目を閉じているときでさえ洗うのに気をつかうというに、掴んだ手の中からじいっと見上げられているのにごしごし汚れを落としたりなんかできるか?

 なんだか日を増すごとに水浴びにくるカゲボウズは増えているような気がするし。この間なんてジュペッタが紛れ込んでいたし。すぐ飼い主が向かえに来たけどシャドーパンチを喰らっていたし。なにか似たようなものを感じたし。

 俺はタライの中を涼しげに泳ぎまわる黒いひらひら達を見つめながら、昼飯までに終わるかなー、と一人でつぶやいた。



 おわってくれ

***

【批評していいのよ】
【書いてもいいのよ】
【描いてもいいのよ】


毒男「洗濯は手伝って欲しいが、冷やし中華はやらん」


  [No.396] タライの中を涼しげに泳ぎまわる黒いひらひら 投稿者:No.017   投稿日:2010/08/14(Sat) 22:52:44   67clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
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> そしてぴくしべで小説が投稿できることに今気づきました。
> イラストコミニュケーションサービスって書いてあったから油断していた……。

当初は私もまさかpixivがこんな機能つけてくるとは思わず驚きました。
登録してみたら(マサポケにある本棚に比べても)操作は簡単だし、絵はつけられるしなので、
掲示板はいずれ流れてしまいますから、ポケストの流れてしまった作品を補完する意味でも利用者のみなさんに登録を(個人的に)おすすめしています。
pixivのほうでも感想がつくかもしれませんしねー。


おまけのほうも存分に堪能させていただきましたwww

> 負の優越にひたっていると、水をはったタライの中からカゲボウズがこっちをみつめていた。

カゲボウズ様が、見てる……!

>  いかんいかん。こいつらを洗うときは無心でなくてはいけない。心に負の念が存在するとこいつらは目を閉じない。じっ、とこっちをみつめて瞬きもしない。

もっと見つめて欲しい。

>  なんだか日を増すごとに水浴びにくるカゲボウズは増えているような気がするし。この間なんてジュペッタが紛れ込んでいたし。

喜ばれているのか……!
ジ ュ ペ ッ タ w

>  俺はタライの中を涼しげに泳ぎまわる黒いひらひら達を見つめながら、

もうプールですね……!w



> 「洗濯は手伝って欲しいが、冷やし中華はやらん」

えー、けちんぼー




冷やし中華を惜しみながらこれにて退散しますー
素敵な作品ごちそう様でしたー


  [No.406] カゲボウズー! 投稿者:てこ   投稿日:2010/08/15(Sun) 12:13:17   71clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
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CoCoさん、No.017さん、気に入ってくださったようで何よりです。シャドーパンチは駄目です。

おまけ

 ベランダに干していたカゲボウズのとなりに黒い布が一枚、二枚、三枚……。
 俺がベランダに出るとカゲボウズが瞬きもせず、俺を見つめている。
 ……。
「だめ。返してきなさい」
 ジュペッタが恨めしげに俺を見た。


  [No.414] さらにありがとうございます。 投稿者:CoCo   投稿日:2010/08/15(Sun) 23:30:39   66clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
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 No.017さんまたもありがとうございます。
 pixivはとても良いサービスですね。折角ですのでばりばり活用したいです。
 それからマイピクもありがとうございますw あまりの喜びに口からベトベターが出るかと(ry

> もっと見つめて欲しい。
 10%以上の負の念が必要です。

> 喜ばれているのか……!
 遊ばれているようです。

> ジ ュ ペ ッ タ w
 仲が良いようです。

> もうプールですね……!w
 涼しいようです。

> えー、けちんぼー
 仕様です。
 すみません。


 てこさんまたもありがとうございます。
 気が済んだら自分で戻ってゆくような気もしますが、てこさんの家のジュペッタとうちのアパート(?)のカゲボウズたちは仲が良いようですね。

 実はこの話を無駄にかつ蛇足的に派生させようかと思っているのですがその、宜しければジュペッタさんをぼちぼちお借りしても良いでしょうか?
 あつかましいことこのうえないお願いで申し訳ありません。

 そして「掲示板の趣旨間違ってるよ」等ありましたらすぐ消去しますので教えていただけると助かります。
 すみません。


  [No.417] えっ 投稿者:てこ   投稿日:2010/08/16(Mon) 11:39:58   60clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
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驚きのあまり、声が漏れてしまいました。
どうぞどうぞどうぞ!こんな奴(ry でよかったらどうぞ使ってやってください。特技はシャドーパンチです。

よかったなぁ、おまえ!がふっ!((


  [No.419] えええっ+おまけ 投稿者:CoCo   投稿日:2010/08/16(Mon) 19:42:57   72clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
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 ありがとうございます。
 大切に洗濯します。がふっ((

 という御礼だけでは少し寂しいのでおまけという名の蛇足。

***



 カゲボウズがなびいている。
 しかも長い。
 縦に。

 衝撃の瞬間を目撃した。
 カゲボウズの下にぶらさがるカゲボウズ、その下にぶらさがるカゲボウズ、その下にぶらさがるカゲボウズ、その下にぶらさがるカゲボウズの下にぶらさがるカゲボウズの下にぶらさがるカゲボウズ。

 数匹のカゲボウズが縦に長く連なり、あたかも見舞いの千羽鶴のような格好で風になびいている。

 しかし、彼らは何も楽しくてあんな格好をしているわけじゃないことを、一部始終を見守っていた俺は知っている。

 ――最近、幸薄荘に住み着いてるカゲボウズに、一匹新顔が加わったのだ。
 まだ子供なのか何なのか、ほかのカゲボウズより一回り小さいカゲボウズ。
 大家さんによってつけられたニックネームはぷちボウズ。

 うまく軒下にくっつくことができないのか、なぜか一匹だけぽとりと、地面に落ちてしまったりしているぷちボウズ(救出済)。
 アパートの二階へあがる手すりのところに何故だかたまに挟まっているぷちボウズ(救出済)。
 消火器の箱の上で昼寝していてヤミカラスに食われそうになっていたぷちボウズ(救出済)。

 ドジなのか迷子になりやすいのか、一匹でふらふらしていることが多い(そして気がつくと地面に落ちていることの多い)新顔のそいつ。
 他のカゲボウズと仲が良くないのかナァ、と思ってちょっと心配したりしていたのだが。

 八月某日、その日カゲボウズが並んだのは、二階の205号室。
 あそこに誰が住んでいるのか俺は知らないが、相当のことがあったらしい、普段住んでいるカゲボウズの他にも、なんとどこから現れたのか、ゴースがうろついたりもしていた。大きいカゲボウズたちとしばらく睨みあって退散したようだったが。ゴーストタイプのポケモンにも縄張りがあるらしい。

 そしてそこにあのぷちボウズも居た。
 右端のほうでそよ風に吹かれてふらっふらしていたので、落ちるんじゃないかと思って下で待機していたら、案の定、そいつの頭は軒下から離れ、ふわふわと落ちてきた。

 しょうがねえから受け止めてやろうかと思った矢先。

 まず一番右のカゲボウズが軒下を離れ、ふわふわと新入りを追いかけてきた。
 そしてぷちボウズを受け止める。

 次に右から二番目だったカゲボウズが離れ、さらに後を追いかける。
 そして受け止めたカゲボウズの頭の先を受け止める。

 三番目も四番目も……と続いて、一番左はしに居たカゲボウズはちょっとふわふわした後、205号室の物干し竿の右はじにくっついた。

 気がつくとあらふしぎ。
 カゲボウズのぼりが出来上がっていた。

 良かったなぷち子。
 お前、意外と愛されているみたいで。
 羨ましいぜこの野郎。

 俺がそんな光景を見上げていると、後ろから肩を叩かれた。
 誰だと思って振り向くと、左頬に大家さんのひとさし指が突き刺さった。

「またカゲボウズの観察ですか?」

 長い髪と可愛いモンスターボール型のエプロンを真夏のあっつい風に揺らす、可愛い大家さん。
 フラグが立ったと思う前に、"また"のニュアンスになんともいえないものを感じて、とりあえずハローワークに通っています。


 おわりなさい

***

【書いてもいいのよ】
【描いてもいいのよ】
【批評していいのよ】

 毒男lv.31 ジョブ:夢追い人


  [No.438] 毒男に春はくるのか 投稿者:No.017   投稿日:2010/08/17(Tue) 21:10:25   66clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
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ぷちボウズ。
ぷちボウズだと。
カゲボウズのぼりだと。


あれだろうこれはたぶんハローワークにいったら、
就職先がポケモントリマーの店かなんかで
ポケモンの洗濯やらされるパターンだろ


夢追い人に幸あれ。


  [No.423] 【書いてみた】Landry 投稿者:レイニー   投稿日:2010/08/16(Mon) 23:23:45   90clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
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狭い一人暮らしの部屋で、夜中にも関わらず、洗濯機が静かに動いている。
最近ではテクノロジーが進化して、夜中に洗濯しても近所迷惑にならないよう、あまり音の出ない洗濯機が出回っている。
私の部屋のもそのタイプだ。
実家の古い洗濯機はあんなに大きい音立ててたのに。
日進月歩あっという間に進化していく。テクノロジーとはそんなものなのだろう。

「かがくのちからって すげー」 ……か。

「かがくのちから」はさておき、私の洗濯機は深夜の静寂とともに、静かに動き続けている。


気がついたら回していたのだ。
あの時着ていた服から、ついでに天気が悪くてたまっていた洗濯物まで。



あの人に彼女がいたなんて……。そんなの聞いてないよ!!

あれだけ周りから、よりにもよって何であの人なのかとか、趣味おかしいんじゃないかとか、オッズ高そうだよねとか、いろいろ言われたあの人が!!
……そりゃあの人が酒癖悪いとこあるのは私も認めるけど、いいとこいっぱいある人で、私はすごく素敵な人だと思ってる。
だけどだけど周りからあれだけ「恋愛とは一生縁がなさそう」って言われてたあの人に、私以外の恋人ができるなんて!!

雨降ってて憂鬱だし、こんな夜は気晴らしに、話題の「借りぐらしのアリアドス」、レイトショーで見に行こうかと思って。
まさかその映画館で、超絶美人と親しげ……というかどうみても二人の世界に入り込んでるあの人見かけるなんて!!

……あんな顔するあの人、初めて見た。私には一度も見せたことのない顔。

その後のことはよく覚えていない。
とにかく、私は映画を見るどころではなくなっていた。
「マクドオーバ」で、普段は頼まないポテトのLサイズをただただひたすら食べていた記憶はうっすらある。
怒りとか妬みとか悲しみとか苛立ちとか恨みとか悔しさとか絶望とか。
そういう感情が混じりあった言葉にできない感覚。
やけになっていたのは確かだ。


そして、気がついたら、家で洗濯機を回していた。



洗濯物を乾かすのにふさわしくない今の時間と今の天気を思い出したのは、洗い終わった洗濯物が入った洗濯籠を持ってベランダに出てからだった。

そういえば昨日から降ってたっけ。今日だって傘持って出かけたじゃん。
雨、ましてや夜中。洗濯物を干すには余りにふさわしくない状況だ。
臭いそうだけど部屋干しするしかないなこりゃ、と思った瞬間。

目があった。

真っ黒の丸い顔、その頭部はとがっている。
同じく真っ黒のひらひらの胴体。
そして、その丸い顔には瞳が二つ。
じっとこちらを見つめていた。

そして闇の中のその瞳は二つだけではなかった。
軒下にぶら下がっているそいつは、一匹ではなかったのだ。
十匹ほどはいるだろうか。

カゲボウズ。
その生物の名、そして特徴を、ぼんやりと思い出す。
確か、恨みや妬みの心を持つ人のところに寄ってくるんだっけ。
そりゃ今のあたしのところによってくるわ。無理もない。

何故か軒下にぶら下がっていた生物たちに、今の自分の状況を再確認させられ、思わずため息が出る。
私だって好きで妬んでるわけじゃないわよ……



とりあえず勝手にベランダに進入したこの不法滞在者……いや不法滞在ポケか、たちを近くでよく見てみると、そいつらは真っ黒ではなかった。
黒いその体には、泥が跳ねていて、茶色の水玉模様ができている。
どこから来たんだか知らないけど、きっと雨の中さまよってきたのね。そして泥が付いたと。なるほど。

とにかくこのままじゃ、ただでさえ陰気臭い状況なのに、よけいに陰気臭くて仕方がない。
不法滞在ポケたちには出てってもらおうと、軒下から外してみる。
見た目以上に重たい。
水を吸って重くなったのだろうと即座に感じた。

そして、軒下から外したそいつは、やはりじっとこちらを見つめていた。
何となく心の中を見透かされているような気がする。
……悲しいの?って。
そりゃあの人の彼女になれないのは悲しいよ。
心の中でそうつぶやく。

もう一匹外してみる。
やっぱりそいつも私の方をじっと見ている。
……悔しいの?って感じだ。
そりゃあの人取られて悔しい。
しかもあんな壮絶別嬪さん。勝てる気がしない。

さらにもう一匹。
……辛いの?
そりゃ辛いよ。あの人のことずっと好きだったんだから。


そんな感じで心の中で彼らと勝手に会話をしながら、カゲボウズたちを外していく。

そして最後の一匹、……一回り小さい奴だった、を外そうとした時。

落ちた。
そいつがひとりでに落っこちたのだ。
危ないと思った次の瞬間。

今まで外してきたカゲボウズたちが、縦に直列になって、小さいカゲボウズを助けたのである。
まるでトーテムポールみたい。

「ふふっ。」
カゲボウズたちのそんな救出劇を見て、何故だか私はちょっと笑っていた。
さっきまで笑顔とは対極の状況にいたというのに。

そして私は、いつのまにか不法滞在ポケのはずの彼らに、愛着を感じていたことに気がついた。
救出劇が余りに微笑ましく、またその姿が面白かったこともあるのだろう。
また、泥まみれになりながらも、私の負の感情を辿ってここまで来たことにも、ある種の健気さを感じたのかもしれない。

……びしょ濡れの客人を世話するのも悪くない。
それに何かしていないと、落ち着かない。
また一人でいたら、再度やけ食いとかしかねないし。
この子たちと何かしていた方が、気晴らしになるだろう。


「そこにいても濡れるだけだよ。おいで。」

客人の泥も、私の心の泥も、一緒に洗い流してしまおう。
どうやって洗うかなー。
シャワーかな。……いやこれだけいるんだからまとめてお風呂に入れた方が早いかな。
中に石鹸入れて、ぐるぐる回して洗濯機みたいにしてみようか。
……そんなことしたら、この子たち目ぇ回しちゃうかな。

そんなことをぼんやり考えながら、私はカゲボウズたちを連れ、風呂場に向かった。



おわり

---

【書いてもいいのよ】
【描いてもいいのよ】
【批評していいのよ】

---

あ…ありのまま今起こった事を話すぜ!
『おれは通りすがりのROM専で居座ろうと思っていたら、いつのまにか書いてポチっていた』
な…何を言ってるのかわからn(ry

お二方の愛らしい作品群を見てほのぼのしていたと思ったら、
「洗濯」というキーワードからRie fuさんの「Landry」という、
失恋した女の子が夜中に洗濯して、自分の痛む心も綺麗にしていくというモチーフの楽曲を思い出し、
気がついたらこんなものができてました。
小説なんて久々すぎて緊張しています。どうしたらいいものやら。
ましてや、ほのぼの空間に切なめ作品投下というKYさ。
それでも読んでくださった方に感謝感謝です。

CoCoさん、てこさん、素敵な作品群ありがとうございました!
カゲボウズ干したいよ!ジュペッタ洗いたいよ!……でもシャドーパンチは勘弁(え)

そしてCoCoさん、カゲボウズたちお借りしました。ありがとうございます。そして雨で冷やしてごめんなさい。
カゲボウズたちは、一晩部屋干しして幸薄荘にお返しいたしますー。


  [No.427] Re: 【書いてみた】続Landry 投稿者:レイニー   投稿日:2010/08/17(Tue) 14:20:07   88clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

いつものように、狭いワンルームで目を覚ますと、そこには大量に干された洋服と、大量に干された黒いてるてる坊主がいた。
あれ……どうしてこんなことになってるんだろう。
寝ぼけた頭でぼんやり考える。
時計をみると既に12時を回っていた。
ヤバいと思ったが、つぎの瞬間、今日が土曜日だったことを思い出し、安堵した。

働きだした脳みそで、そういえばと昨夜のことを徐々に思い出した。
私昨日、何故だか家にやってきたカゲボウズたちを洗濯したんだっけ。
それで、その前に洗ってた洗濯物と一緒に、部屋干ししたんだっけ。外雨だったから。

そしてどんどん記憶は鮮明になり、思い出した。
ああ、そうだ。私、失恋したんだった。

冷静にその事実をとらえ直す。
そういえば、昨日は冷静になる機会なんてなかった。
ただただ勢いに任せてやけ食いししたり洗濯したり。
その後は客人の洗濯で、慌ただしかったし。

一晩たって初めて、私はこの事実を捉えなおしていた。
ああ、私、失恋したんだ。

冷静に事実を受け止めると、また感情的になってきた。
でも昨日とは違う。
自分の目の前の事実を受け入れられず、ただただやけになっていた昨日。
そして、その事実を変えられないものとして受け入れた今日。

もうあの人は、私の知っているあの人とは違うんだ。
あの人は名前も知らない超絶別嬪さんと幸せになるんだ。
……そばにいられるのは、私じゃないんだ。

その事実を驚くほど冷静に理性は受け入れていた。
でも、感情がそれに反発して。

気がついたら涙があふれた。


しばらく静かに泣いていると、私は異変に気がついた。
綺麗に干されていたはずのカゲボウズたちが、気がつくと私の周りを取り囲んで、じっとこちらを見つめている。
カゲボウズは負の感情に引かれてくるんだっけ。

カゲボウズたちはじっとこちらを見つめている。
それは、私が負の感情に満たされているという事実を一層強く認識させられる気がして。
「……別にあんたたち呼ぶために泣いてるんじゃないんだから。」
かすれ声になってしまうのがより一層悔しくて、私は気がつくと声を上げて泣いていた。

ひとしきり泣いて、泣いて。
その間カゲボウズたちは、じっとこちらを見つめていた。

悔しい?
悲しい?
辛い?

彼らの目がそう語る気がして。

それで私は、自分の気持ちを思い知らされて。
さらに泣いた。


泣くだけ泣いて、ちょっと治まった頃。
カゲボウズたちはやはりこちらを見つめていた。
相変わらずその瞳は、私の心を見透かしているようだった。

悲しいし悔しいし辛いけど。


一人でいるよりよかったかもしれない。
ぐるぐるしてごちゃ混ぜになった自分の心を直に見るより、彼らの瞳を見る方が、自分の心、よくわかった気がするし。
何より、そばに誰かいてくれるのは、心強かった。
……それは、ただただ負の感情に誘われた、彼らの思惑とは違ってたんだろうけど。

「……ありがと。」

カゲボウズたちは、言葉の意味を分かっていたのかいないのか、やはりじっとこちらを見つめていた。



泣くだけ泣いたら、おなかが減った。
そういえばカゲボウズたちも、昨夜から何も食べていないのは同じだろう。
……でも、カゲボウズって、何食べるんだろ。
一般的にはポケモンフーズだろうけど、私は一人暮らし。
ポケモンと一緒に生活していないから、当然そんなものが家にあるはずもない。
……というか、今食料、何があったっけ。

カップラーメンが数個と、残り物の野菜。そして米。
寂しい食料庫にため息をつきつつ。
「……お米食べるかな?」
そう思いながら、私は一人暮らしでは炊いたことのない量のお米を研いでいた。


しばらくして、炊飯器の音がした。
ちょっと冷ましてから塩をふって、手早く握る。
しばらくすると数皿にも及ぶおにぎりができていた。

「……食べる?」

食べなかったら冷凍してしばらくおにぎり生活だなとぼんやり考えていたけど。
カゲボウズたちはふわりとやってきて、おにぎりをぱくつき始めた。
喧嘩とかおきなきゃいいなと思っていたが、カゲボウズたちは案外きちんとお互いのこと配慮しつつ食べているようだった。安心。

おにぎりを食べるカゲボウズたちを見ていると、不思議と笑みがこぼれていた。
そして、この一晩、やっぱり一人じゃなくてよかったと、この客人たちを愛おしく思った。
そしてこの客人たちを横目に、私はすっかり忘れていた部屋干し洗濯物を取り込む作業にかかった。



日が暮れたころ、カゲボウズたちを帰すことにした。
どこから来たんだか知らないけど、きっとどこかに寝床があるんだろう。
それに万が一飼いポケだったら大変だ。
今頃騒ぎになっているに違いない。

実際はどうだか知らないけど、何となく日光に弱そうな気がするし、このくらいの時間がちょうどいいだろう。
窓を開け、ベランダに出て、カゲボウズたちを呼ぶ。

「そろそろ帰りな。」

カゲボウズたちは、その言葉に促されたのか、ふわふわ出て行った。

私のことはもはやどうでもいいというような後姿を見て、ふと心に物淋しい風が吹いた。気がした。


もう彼らに会うこともないだろう。
いや、彼らに会うような人生はまっぴらごめんだ。
もう恋なんてしないんだから!

……でも、いつかまた失恋した時にふと来てくれたら、ちょっと嬉しいかも。
そんなことを考え、私は今までの、でも新たな日常に戻っていった。



おわり

---

【書いてもいいのよ】
【描いてもいいのよ】
【批評していいのよ】

---

個人的に思い残す…というか納得いかないとこがあったようで、
1作品書き逃げして終えるはずが、気がついたら翌日談書いてました。
きっとポケモンだっておにぎり食べるよね!

二度にわたりありがとうございましたー!


  [No.434] ちょっと主人公そこ替われ! 投稿者:No.017   投稿日:2010/08/17(Tue) 20:44:11   75clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
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あ…ありのまま今起こった事を話すぜ!
『ポケストでカゲボウズが洗濯されて、さらにジュペッタまで洗濯されたのを喜んでいたら、さらにカゲボウズが洗濯されていた……』
な…何を言ってるのかわからねーと思うがとにかく萌えたことだけは確かだ!
カゲボウズにハートキャッチされすぎて、ドキがムネム(落ち着きなさい

こんにちは、No.017です。
ポケスト板を覗いていて今非常にwktkが止まらないです。



>「借りぐらしのアリアドス」、レイトショーで見に行こうかと思って。

借りぐらしのアリアドス w w w w


> そして、軒下から外したそいつは、やはりじっとこちらを見つめていた。
> 何となく心の中を見透かされているような気がする。
> ……悲しいの?って。
> そりゃあの人の彼女になれないのは悲しいよ。
> 心の中でそうつぶやく。
>
> もう一匹外してみる。
> やっぱりそいつも私の方をじっと見ている。
> ……悔しいの?って感じだ。
> そりゃあの人取られて悔しい。
> しかもあんな壮絶別嬪さん。勝てる気がしない。
>
> さらにもう一匹。
> ……辛いの?
> そりゃ辛いよ。あの人のことずっと好きだったんだから。

何このうらやましい展開。
カゲボウズって癒し系だったのか。
私のハートも癒して欲しい。


> 「そこにいても濡れるだけだよ。おいで。」

言ってみたい!
カゲボウズにそんな台詞言ってみたい!!!


> シャワーかな。……いやこれだけいるんだからまとめてお風呂に入れた方が早いかな。

風 呂 だ と

カゲボウズと、風呂だと!?

あlskjhだlwjd/lwふじこ!


> そんなことをぼんやり考えながら、私はカゲボウズたちを連れ、風呂場に向かった。

今夜はお楽しみでしたね。






主人公に嫉妬しつつこれにて。
カゲボウズこないかなw


  [No.439] かいてみたをかいてみた 投稿者:てこ   投稿日:2010/08/17(Tue) 23:08:02   107clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
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 しばらくしとしとと雨が降っていた。しかも、どこか暗くて湿っぽくてそう、それは――まるで誰かが失恋したような雨。


 ジュペッタがつまらなそうに窓の外を眺めている。まいった。こいつは退屈になるとか自分の思うようにいかないとめんどくさいのである。俺にシャドーパンチをかましてきたり、枕にシャドーパンチをかましたり、とにかく不機嫌な困ったちゃんなのである。
「晴れたら、思いっきりすればいいだろ?な?」
 特に雨が続くとなおさら不機嫌なのである。綿だからか布だからか、湿気があまり好きじゃないようだ。だからか、知らないが雨があがった次の日は大抵一日中ひなたぼっこをし続けている。自分の干し方も勝手に覚えた。二本の物干し竿の間に橋を架けるようにして、横たわる。そこまで持ち上げるのは俺の役目だけど。まあ、いいんだけど……いいんだけどなんか納得いかない。
 ジュペッタの恨めしげな目。知らん。俺は悪くない。不満そうにジュペッタが唸る。唸んな。俺も負けじと睨み返す。ジュペッタの短い足が力を溜め込んだようにわずかに曲がる。そして――
「何度もその手をくうかっ!」
 迫り来るシャドーパンチを、目の前に手を構えてガード。いい加減、慣れてきた。慣れないと身が持たない。そう。それは、小さい頃大切に育てたひよこが凶暴化した鶏になっても飼い主は攻撃を喰らわないのは、愛する愛されてないの問題ではなく――単に慣れの問題だよ、と。まぁ、そういうものだ。
「お前のはあっち!」
 俺はたんすに寄りかかった小さいサンドバッグを指差す。あれは本来、バルキーやアサナンなどの小さな格闘ポケモン用に作られたものだ。空手道場くらいにしか置いてないだろうそれがなぜ俺の家にあるかというと、それはジュペッタのために買ってやったものである。以前、大きな抱き枕をサンドバッグ代わりにさせていたら感極まってシャドークローでずたぼろにしてしまった。外に零れ落ちた綿を見て、本気で怖がっているジュペッタを見てお前はバカかと呟いたものだった。布につまった綿という点では自分と同じ身体のつくりをしているとは言え、自分でずたぼろにして、自分で怖がるって結構抜けて……いるな。
 だが、きっと、こいつには格闘家の素質がある。俺はそういう。きっと、空手家の人が見てもそういうと思う。
 持ち物は何の変哲もないただの赤いタオル。かの有名なプロレスラーが身に着けていたもの。ではない。知っているのか知らないのか分からないが、ジュペッタが自分で俺の部屋から発掘してきて、自分で気に入って身に着けているものだ。肩に赤いタオルをかけ、片手を大きくあげ、いーち、にー、おっとこれ以上は言えねぇ。
 ジュペッタって単ゴーストタイプだった気がするんだが、格闘タイプってついてたっけ。まぁ、まず得意技は百発必中シャドーパンチだが、最近はバリエーションが増えた。まず、基本形。シャドーボールをみぞおちに叩き込むシャドーブロー。下から一気に上へと突き上げるシャドーアッパー。そして、発展型。思い切り手を広げた状態で体当たりし、首にダメージを与えるシャドーラリアット。もちろん命名は全て俺。シャドーをつける必要があるのかないのか知らないが、まぁ、俺の趣味だ。ついてるほうがかっこいいだろ?
 苦手なのは蹴り技。足が短いからしょうがない気もするが、よく練習しているが、よく膝から地面にぶつかって自分でダメージをくらっている。やめりゃいいのに。
 なぜ、こんなふうに格闘技が好きなのか思い当たる節が、ないわけでも……ない。そう、それは俺の小さい頃の――。

『行けーやれー!上だー!下だー!それ、よけろ!そこでボディーブロー!』
 我ながら恥ずかしい。男の子なら誰でもするであろう人形遊びを、俺はなぜかあのぬいぐるみで、しかもかなり長い間、やっていたのである。小学生になるくらいまで。
 ……そのときの記憶をジュペッタが覚えてるか覚えてないかは分からないが、きっと記憶の底にはあるのだろう。ジュペッタが使う技は、俺が小さい頃よくぬいぐるみとやっていた、技だ。

 ジュペッタと過ごす時間が増えれば増えるほど、ジュペッタは小さいとき一緒にいたときの記憶を思い出しているような気がした。ジュペッタは絵を書くときに必ず水色のクレヨンをつかって絵を描いた。俺の好きな色は青だ。でも、小さい頃、好きな色は水色で、持ち物のほとんどが水色だった。ジュペッタはあのときのことを覚えているのだろうか。オムライスを作ったとき、ジュペッタは俺の顔を見てけらけらと笑った。俺が小さい頃、オムライスが好きだったこと、覚えてるのか?
 まだ、ジュペッタと会って、一ヶ月も経っていないけど、ずっと一緒にいたような気がした。何だか不思議な感じがした。ジュペッタの記憶の俺と俺は変わっている。けれど、ジュペッタは小さいときの俺と今の俺、変わってないと思っているのだろう。見た目は変わった。けれど、中身は変わってない。そう、思ってるんだ。きっと。
 「俺、お前が思ってる以上に変わってるよ」
 ジュペッタが、顔をしかめたまま首を捻った。いいよ。いい。そんなに早く理解しろなんて言わないし、期待もしてないし。ゆっくり時間かけながらでいいから、な。
 俺はジュペッタの頭をわしわしと撫でた。ジュペッタが気持ちよさそうに目を、細めた。

 重たい腰を上げ、窓の外を眺める。まだ、雨がしとしと降っている。あぁ、そういえば。小さいときの俺は雨が降ってる日は一日中、家の中で暴れてたっけ。
 うん?
 カゲボウズが一匹、二匹、三匹……十匹。電車のようにつながって、軒下にぶら下がっている。一番下にようやくくっついてるカゲボウズは、少し小さい。子供かな、それとももともと小さいのかな。
 いや、それよりもあの家はいつもの家じゃないな。いつもの家というとなんだかアレな言いかただが、よくカゲボウズを洗濯している家がある。一回、ジュペッタがなんか勝手にお邪魔しちゃったことがあって、迎えに行った。迎えにいったらシャドーパンチされた。向かい側のアパートの二階。でも、その家じゃない。
 あの家の住人に何があったんだか。

 あ。

 窓が開いた。出てきたのは女の人。ひどい顔をしてた。目の下に隈。ぐしゃしゃの髪。きっと、泣いてたとか、そんなんだ。その人はカゲボウズをしばらくじっと見つめ、少しだけ俯いていた。カゲボウズたちがぞろぞろと部屋の中へと入っていった。また、洗濯されるか?全く、困った奴らだなぁ、本当に。俺はまた、苦笑した。
「お……?」
 俯いていた人の顔が窓を閉める寸前に少しだけ、見えた。目の下には隈、ぐしゃぐしゃの髪。女の人からしたら、その顔は見られたくないような顔だろう。だけど――そんな状態だったけど、でもそのとき、その女の人の笑顔は




 ――とても、きれいに見えたんだ。



【書いてもいいのよ】
【描いてもいいのよ】
【批評していいのよ】




一人異色ですみません。ジュペッタかいててすみません!
カゲボウズは不幸や妬みに群がる奴だけれど、幸せも運ぶ奴なんです!きっと!
CoCoさんとレイニーさんの書いてみたに書いてみた……。
気に入ってもらえれば幸いです。

もう、このシリーズ作っちゃえばいいと思うよ!
 


  [No.440] かいてみたをかいてみた だと…… 投稿者:No.017   投稿日:2010/08/17(Tue) 23:51:21   75clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
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> 「何度もその手をくうかっ!」
>  迫り来るシャドーパンチを、目の前に手を構えてガード。いい加減、慣れてきた。慣れないと身が持たない。そう。それは、小さい頃大切に育てたひよこが凶暴化した鶏になっても飼い主は攻撃を喰らわないのは、愛する愛されてないの問題ではなく――単に慣れの問題だよ、と。まぁ、そういうものだ。

これ、アチャモの時はあんなにかわいかったのに…
みたいなネタで使えそうだ。

>  なぜ、こんなふうに格闘技が好きなのか思い当たる節が、ないわけでも……ない。そう、それは俺の小さい頃の――。
>
> 『行けーやれー!上だー!下だー!それ、よけろ!そこでボディーブロー!』
>  我ながら恥ずかしい。男の子なら誰でもするであろう人形遊びを、俺はなぜかあのぬいぐるみで、しかもかなり長い間、やっていたのである。小学生になるくらいまで。

なるほど!
これはすごい納得というか、うあーありそうだなぁ。
いいなぁ! この設定いいなぁ!


>  ――とても、きれいに見えたんだ。

惚れたらいいと思うよ。



もうこのシリーズどっかにまとめて掲載しちゃいたいなぁ。
(あ


  [No.445] かいてみたをかいてみたをかい(ry【グロ注意?】 投稿者:レイニー   投稿日:2010/08/18(Wed) 03:45:40   92clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
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気がつくと、あの大事件の日からしばらく経っていた。
あの後、上手い具合にしばらく仕事が忙しい時期が続き、仕事仕事で休日返上したくらいだった。
でも、その忙しさは、上手い具合に悲しい出来事を思い出す暇を与えてくれなかったのだ。
人生って上手く出来ている。
久々の休みで、やっと感傷という気持ちが蘇ってきて(本当は蘇ってほしくはなかったけど)、そう感じた。

だけど今日は、感傷に浸るにはあまりにも不向きな天気。雲ひとつない晴天。
絶好の洗濯日和。
しばらく洗濯する余裕もなかったし、一気に干してしまおう!

たまった洗濯物と洗剤を洗濯機に入れ、スイッチを押す。
泡にまみれていく洗濯物を見ていると、私の中で、どんどん掃除欲がわいていた。
よし。洗濯機が働き終えるまでまだしばらく時間あるし、部屋を片付けよう!

掃除機をかける前に、散らかしっぱなしの書類をどうにかしよう。
そう思って、机の周りに散乱する書類を、必要なものとそうでないものにわけた。
必要ないものは、シュレッダーにかけてゴミ箱に。
必要なものは、種類ごとにまとめて、ファイルに入れて、本棚へ。

「……あ。」

ファイルを戻そうとした私の目にとまったのは、一匹の小さなぬいぐるみだった。
その瞬間、私の記憶がフラッシュバックする。
美しかった記憶。

あれはいつのことだったか。
いつものように仲間内で遊んでいた時。
何故だったかは思いだせないけど、その日は気がついたらゲーセンでみんなでクレーンゲーム対決してて。
全然取れなかった私をよそに、あの人は次から次へと賞品ゲットしてて。
悔しがる私に、「荷物になるからやるよ」って。

……あの瞬間。

何でだかわかんないけど、いつも冴えなかったあの人が、急に格好よく、特別に見えたんだ。


そう思い返すとまた涙が出てきて、気がつくとヒメグマをゴミ箱に放り投げていた。
綺麗な半円形を描いて、ゴミ箱に収まる。


……さて。書類整理も終わったし。
シュレッダーにたまった紙片を捨てようと、ゴミ箱へ向かう。
紙片を捨てようとしたその瞬間。

ヒメグマが哀しそうな目でこちらを見ていた。

「…………。」

「…………。」

……負けた。
あんな瞳で見つめられてしまっては、いくら忘れたい思い出の品とはいえ、やむを得ない。
ゴミ箱から引っ張り出す。

心なしか汚れてしまった彼が、やはりこちらを見つめている。
確かに彼自身に罪はない……。
幾分か冷静さを取り戻し、とりあえず洗ってから処遇を考えようかという気になった。


すっかり綺麗になった洗濯物と一緒に、すっかり綺麗になったヒメグマを干す。
よし、これで一仕事終わりだ。
いつの間にか、昼食にちょうどいい時間になっていた。
確かにお腹も減っている。
よしご飯だ!

冷蔵庫の片隅に残っていた肉と野菜を適当に炒める。
お湯を沸かし、インスタントのスープを作る。
朝炊いたご飯の残りをよそう。
手早く3品作り、簡単な昼ご飯を食べる。適当にしては我ながら美味しい。
器が空になり、満腹になると、とたんに眠くなってきた。
確かに昼寝するには極上のコンディション。うとうとうと……


ばこーん!

突如、ベランダからした妙な音に、私の眠りは妨げられた。
寝ぼけていた私はしばらく、何が起きたのかわからなかった。

見慣れぬ真っ黒いポケモンが、ベランダで何かオレンジ色の物体をボコボコにしていたのだ。
ああ、どこかのポケモンがふらっと迷い込んで、ヒメグマにバトルをしかけてるのねー。
ヒメちゃんに。

……ん?


「あああああああああああああっ!!」

寝ぼけていた頭が急激に現実に戻る。
窓を開け、外に出てみると。

ちょうど手遅れだった。
ジュペッタがヒメちゃんにとどめのシャドークローを喰らわせていた。

シャドークローの直撃を受けたヒメちゃんは、頭と胴体が分離し、その切れ目からは白い綿が飛び出した。
何ともグロテスクな光景である。
しかも、目と手は片方外れ、耳と足はもげかけ、お腹には穴まで開いている。
きっと、私が寝ている間に嫌というほどパンチを喰らったのだろう。
いくら一度は捨てかけた奴だったとはいえ、この姿は流石に酷い。
とてつもない後悔と懺悔の念がいっぺんに降ってきた。
ヒメちゃん、いくらなんでも私が悪かった。許してくれ……。

ふと犯ポケの方を見ると、こちらはこちらで、自分のしたことの重大さに気がついたようだ。
完全にもげてしまったヒメちゃんの足を手に、怯えている。
自分でこんな五体不満足にしたくせに。
あたふたするジュペッタを見て、案外可愛いなぁと思っていたその時。


「ジュペッター!? どこいったー!?」
外の道路から、見知らぬ男性の声がした。

その声を聞いて、ジュペッタは彼のもとへ一目散に飛んで行った。


そして、ジュペッタが持っていったヒメちゃんの足を見て、彼はうちのベランダで何が起きたのか理解したのだろう。
すぐに私の元へやってきた。そしてものすごい勢いで謝られた。
どうせ捨てるつもりだったし気にしないでください、と私はひたすら謝る彼を止めようとした。
でも洗濯するなんて大切なぬいぐるみだったんですよね?と彼は謝るのをやめない。
ううう。困ったなぁ。
痛いところを突かれたうえに謝られ続けて。どうしよう……。


こうして、絶好の洗濯日和は、私の日常に小さな事件をもたらしたのだった。


おわり


---

【書いてもいいのよ】
【描いてもいいのよ】
【批評していいのよ】

【ボコっていいのよ】タグは……一応自重(え)

---

あ…ありのまま 今起こった事を話すぜ!
「自分が書いた小説にレスがついていただけでなく、続編まで書かれたうえ、さらに新たにカゲボウズが洗濯さ

れていた。」
な… 何を言ってるのかわからn(ry

まさかこんな展開になるとは思ってもみませんでした。ありがとうございます。
毒男さん就職おめでとう!
エロボウズには爆笑するしかないがwww(←犯人)

そして自分で壊した抱き枕に怖がるジュペッタがあまりに可愛かったので、カッとなって書いた。
全国のヒメグマファンの皆さんごめんなさい。
ヒメちゃんには申し訳ないと思っているが、後悔はしていない。
ジュペッタも犯ポケにしてしまってごめんなさい。悪気はなかった。

うちの娘は独り身なうえ、放っておくとひたすら仕事で寂しさ紛らわしそうなので、たまにはポケモンと接する機会を与えてあげてください。

ちなみにカゲボウズは浴槽をタライ代わりにしただけで、一緒に入ったけではないようです。ザ・KENZEN!(何)


  [No.430] カゲボウズは洗濯するもの 投稿者:No.017   投稿日:2010/08/17(Tue) 19:05:23   70clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
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何この素敵な流れ。
カゲボウズいっぱい見れて幸せだわー。

ああ、でも幸せだとカゲボウズよってこないなー
ううむこのジレンマ


  [No.433] 住み着いてみる。 投稿者:こはる   投稿日:2010/08/17(Tue) 20:41:44   80clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
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 ちょうど良い下宿をみつけた。大学からも近いし、家賃も格安だ。四畳半と貧乏学生にぴったりの間取りもうれし……くはない。
 ともかく、不動産屋の張り紙をみつけた瞬間、それをひっぺがして即刻契約し、翌日引っ越しを決行したのだった。
 家具(と呼べるかは疑問)を運び込み、両隣に引越蕎麦を配った俺は、ようやく人心地つけた。前の住民が残していったカーテンをひいて、部屋の空気を入れ替えようとしたのだが。
 窓のさんにぶら下がって、俺を見つめる黒いてるてる坊主。ではなくカゲボウズ。
「どうりで安いわけか……」
 貧乏学生たちの間で噂のカゲボウズ憑きアパートだったらしい。
 不動産屋に殴り込んでやろうかとも思ったが、よく考えてやめた。カゲボウズが憑いているだけでこの家賃だ。教科書代に回せる。人間、我慢が大事だ。よし、我慢するべし。


 快晴。気温35度超えの猛暑日のなか、俺は万年床予定の煎餅布団を干すことにした。ついでに溜め込ん洗濯もする。たらい派の俺は夏の暑さ予定も負けず冬の寒さにも負けずに洗濯をしなければいけない。洗濯機を買う余裕がないだけ、という見解もある。
 溜まった洗濯物を洗い終わっても、窓のさんにぶら下がったままのカゲボウズたちは身動きひとつしない。こいつら、生きているんだろうか。たらいの水を替えようとした矢先、カゲボウズが動いた。
「うぉっ、動いた」
 ふわりと浮かんで、俺に向かってくるカゲボウズ。俺にぶつかるかと思ったが、たらいの中に落下する。じぃっと俺を見つめたまま、動かない。ぽっちゃんと二匹目のカゲボウズがたらいにおちた。
「洗えってのか……?」
 こくこくと首を振るカゲボウズたち。洗剤は使っても大丈夫なんだろうか。
「染みてもしらないからな」
 とはいえ、心配なので今回は洗剤を使わないでおこう。色落ちしたらかわいそうだ。
 それにしても、こいつらは負の感情を食うんじゃなかったのか。たらいの中で幸せそうに笑うのはやめてくれ。俺にどんな負の感情があるってんだ。
「あ、先輩への恨み? 教授の講義のいらだちか。ひょっとして、不動産屋にたいする怒りか?」
 思いだすだけで黒い感情が湧き上がってくる。カゲボウズたちはうっとりとした表情で洗われている。洗濯と一緒にお食事が楽しめるなんて、うらやましい……。待て俺、なぜにカゲボウズに嫉妬する。ますます湧きあがる黒感情を食べて、カゲボウズたちはさらに幸せそうな表情になっていく。
 一匹のカゲボウズが満足したらしい。浮き上がって物干し竿にぶらさがる。自発的風乾燥をするらしい。次々に浮かび上がっては風乾燥にはいるカゲボウズたち。
「……ほっといていいのか」
 スバメとかにおそわれないだろうか。見張っといてやろう。破れた団扇(駅前で配ってた)を持ち出して窓辺に座り込んだ。クーラーなんて高価なものはない。
 あぁ、またもや黒感情が……。
 洗濯したばかりのカゲボウズたちがまったりとした表情で熱風にはためいている。


*****
にやけて読んでたはずなのに、なぜか書いていたとは…恐るべしカゲボウズ魔力。
ごめんなさい、ほんとうにごめんなさい。カゲボウズ憑き下宿にしてしまいました。住んでみたかったのです。こんなアパートがあるなら、速攻で引っ越したい。


  [No.435] 住み着きたい 投稿者:No.017   投稿日:2010/08/17(Tue) 20:49:40   63clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
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>  貧乏学生たちの間で噂のカゲボウズ憑きアパートだったらしい。

不動産屋さん!
私にその物件紹介して!

>  たらいの水を替えようとした矢先、カゲボウズが動いた。
> 「うぉっ、動いた」
>  ふわりと浮かんで、俺に向かってくるカゲボウズ。俺にぶつかるかと思ったが、たらいの中に落下する。じぃっと俺を見つめたまま、動かない。ぽっちゃんと二匹目のカゲボウズがたらいにおちた。
> 「洗えってのか……?」

ちょwwww
誰かさんのせいで習慣化してるじゃんかよwww

住み着きたい
いや
住み憑きたい





あ…ありのまま今起こった事を話すぜ!
『【書いてみた】Landry に興奮気味に感想をつけていたら、いつのまにか新しいカゲボウズがぶら下がっていた』
な…何を言ってるのかわからねーと思うが(ry


とりあえずCoCoさん偉大すぎるだろ


  [No.436] 恐るべし! 投稿者:サトチ   投稿日:2010/08/17(Tue) 21:05:19   84clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
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なんですかこのカゲボウズ連鎖?!(^^;)
御影先輩やら幸薄荘やらかわいい管理人さんやら借りぐらしのアリアドスやらぷちボウズやら米食うゴーストタイプやら;
どんどん連鎖してすでに作者4人が巻き込まれているとは・・・
すでにもうシェアードワールドと言っていいのではないかしら。
ものすごくこのあたりに住んでみたくなったサトチでした。


  [No.441] あ…ありのまま 今起こった事を話すぜ!+おまけ 投稿者:CoCo   投稿日:2010/08/18(Wed) 00:02:28   76clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
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「朝方読ませていただいたLandryに感想をつけようと思って出てきたら、続編があっただけでなくレスがすごいことになっていた」
 な…何を言ってるのか わからねーと思(ry


> ちょwwww
> 誰かさんのせいで習慣化してるじゃんかよwww
 洗濯はしているが、反省はしていない。

> とりあえずCoCoさん偉大すぎるだろ
 しかし偉大なのは間違いなくカゲボウズです。


 みなさん本当にありがとうございます。


> なんですかこのカゲボウズ連鎖?!(^^;)
 おいしいです。

> ものすごくこのあたりに住んでみたくなったサトチでした。
御影「204号室空いてるよ。俺ん家の隣だけど」


 以下沢山のありがとうございますと返信代わりにするにはあまりに蛇足すぎたおまけ



***


 誰かが引っ越してきたらしい。
 さっき俺の部屋に引越し蕎麦を持ってきた。冴えない感じの大学生だった。あの顔は、幸薄荘にある108のジンクスの一つ【ざまあ鍋】を知る日も遠くなさそうだ。

 とか思いながら、久しぶりにハローワークで良さそうな仕事を紹介してもらえてほくほくしていたのでカゲボウズが現れなかったのに、なぜかいつもタライを設置しているアパート裏の草むらへ出てきてしまった。

 大家さんがしばらく草刈をサボっているのか雑草ぼうぼうの裏庭を見つめて、驚いたことに御影先輩が座り込んでいるのを見つけた。

 アパートの裏の壁に寄りかかって、煙草を吹かしながら右手で一匹のカゲボウズの頭をつまんでいた。

 カゲボウズはイヤイヤとでもいうように首を振っているが、御影先輩はそんな様子をもろともせず、目の高さまでそいつを持ち上げてじっと見つめている。
 首を振っているカゲボウズがとても健気で、つい俺は先輩に声をかけてしまった。

「御影先輩」
「あ」

 先輩は咥え煙草のまま口の隙間から煙とともに間の抜けた声を出すと、拍子にカゲボウズをつまんでいた指を離したようだ。

 カゲボウズはふわ、と先輩を避けると、ぴゅーっとこっちへ飛んできて、俺のYシャツの胸ポケットに飛び込んできた。
 見上げる目が二、三瞬き、若干うるんでいるようにも見える。

「先輩、あんましカゲボウズを邪険に扱わないでやって下さいよ」
「だってそいつ俺のトゲピーいじめたんだもん」

 先輩はずるずると背中で壁を滑り、気だるい動作で地面に腰を下ろして煙を噴出す。

 いじめたって、子供かアンタ。

「なんでYシャツなの」
 先輩が言った。確かに俺がスウェットじゃないのは珍しい。
「仕事探しに行ったんです」
「へー。見つかったの」
「見てください」

 俺は折り皺のついた求人リストのコピーを出した。

   登録No.017 『ポケモントリミングセンター』
   ピカチュウからマンムーまで、どんなポケモンもピカピカに!
   愛する手持ち達に、あの頃の輝きを……

「ここなら自転車で通える距離だし、割と給料もよさげで」
「……洗濯が趣味なのか?」
 先輩は真面目な顔で言った。

「んなわけないじゃないスか」
「でも何か最近よく洗ってない? 黒いの」
「あいつらここんとこ自分からタライに飛び込んでくるんですよ。すっかり味しめちゃったみたいで」
「へー」

 あ、そういえば。

「こないだまた何匹か土団子になってたんで、洗濯しようとしたんですけど、何か何匹からかすごくフローラルな香りがしたような」
「ふーん」

 まさか、他の家でも。
 それも何か良い香りのする家で。
 たとえば女の子の家で。
 まさかそんなことはないだろうな。
 そんなことはないはずだ。
 そんなの羨まし過ぎる。

「…………」

 先輩は微妙な視線を俺に向けると、突然ゆらりと立ち上がった。
 胸ポケットでカゲボウズがびくっとした。

「寝るわ。」

 先輩は言い残すと、二階の自分の部屋へ戻っていった。
 去っていく背中は、大家さんが「御影さん似合うと思いますよ?」とどこからともなく持ってきた、かなめいしの柄がプリントされたTシャツ。

 どこかでテッカニンが鳴いている。

「……今日、昼飯コンビニの幕の内弁当なんだけど、食う?」
 俺が胸ポケットにたずねると、中の黒いのはとくに返事をしなかった代わりに部屋まで間違いなくついてきやがった。



 終わっていいのよ


***

【書いてもいいのよ】
【描いてもいいのよ】
【批評していいのよ】
【洗濯していいのよ】

 ひたすら能天気ですみません。


  [No.442] 祝・毒男就職 投稿者:No.017   投稿日:2010/08/18(Wed) 00:18:58   53clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
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>  カゲボウズはふわ、と先輩を避けると、ぴゅーっとこっちへ飛んできて、俺のYシャツの胸ポケットに飛び込んできた。

ばっちり懐かれてますね。
いや、 な憑かれていますね。


> 「仕事探しに行ったんです」
> 「へー。見つかったの」
> 「見てください」
>
>  俺は折り皺のついた求人リストのコピーを出した。
>
>    登録No.017 『ポケモントリミングセンター』
>    ピカチュウからマンムーまで、どんなポケモンもピカピカに!
>    愛する手持ち達に、あの頃の輝きを……

爆笑した!
深夜に声あげてワロタw

登録ナンバーwwwww
登 録 ナ ン バー wwwww

祝・ 毒男lv.31 ジョブ:夢追い人 就職!




> 「ここなら自転車で通える距離だし、割と給料もよさげで」
> 「……洗濯が趣味なのか?」

こいつは将来シャンプーで指名がくる……!
毒男「カゲボウズを洗って鍛えました」


>  まさか、他の家でも。
>  それも何か良い香りのする家で。
>  たとえば女の子の家で。
>  まさかそんなことはないだろうな。
>  そんなことはないはずだ。
>  そんなの羨まし過ぎる。

カゲボウズはエロボウズ。



>  先輩は言い残すと、二階の自分の部屋へ戻っていった。
>  去っていく背中は、大家さんが「御影さん似合うと思いますよ?」とどこからともなく持ってきた、かなめいしの柄がプリントされたTシャツ。
>
>  どこかでテッカニンが鳴いている。

えっなに、御影さんと大家さんてそういう。
毒男……お気の毒に。

>
> 「……今日、昼飯コンビニの幕の内弁当なんだけど、食う?」
>  俺が胸ポケットにたずねると、中の黒いのはとくに返事をしなかった代わりに部屋まで間違いなくついてきやがった。

この後カゲボウズがおいしくいただきました。
(負の感情を







> 【洗濯していいのよ】


  [No.444] 頑張れ毒男!お前にはカゲボウズがいる! 投稿者:てこ   投稿日:2010/08/18(Wed) 00:25:49   50clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
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ポケスト 夏のカゲボウズ祭り ですか!
シール集めたら何がもらえるんですかあぁぁ!!(落ち着け

カゲボウズがアレすぎて死にそうです。萌え死にする!カゲボウズに殺される!カゲボ(がふっ

えぇ、ジュペッタがいるんすよ……僕には……
でも、カゲボウズかわいいー!!


>> >    登録No.017 『ポケモントリミングセンター』
> >    ピカチュウからマンムーまで、どんなポケモンもピカピカに!
> >    愛する手持ち達に、あの頃の輝きを……

 ジュペッタ洗濯してください!
 あの子、ドライクリーニング不可ってタグがつ(ry


> > 【洗濯していいのよ】

洗濯させていた……してねぇ!


  [No.456] 近所を開拓してみる 投稿者:きとかげ   投稿日:2010/08/18(Wed) 22:32:46   93clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
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近所を開拓してみる (画像サイズ: 330×220 43kB)



 大学にも慣れてきたある日のこと。
 俺は家に帰る気になれず、開拓と称して大学の近辺を散歩していた。


 今朝のことだ。
 母親に何気なく下宿したいと言ったら、
「アンタに下宿なんてムリ。絶対ムリ。三日で泣いて帰ってくる」
と断言され、
「なんで下宿する前から分かってんだよ。四日じゃなくて三日で帰ってくるっていう根拠を言えよ。非論理的。ガキ臭い。原始人」
と言い返した。
 母親は言われたら言い返さずにいられないタチだから、言い返した。
 俺も残念ながら母親に似て言い返さずにいられないタチだから、やっぱり言い返した。
 そこからどういう喧嘩になったんだか、今朝は「いってらっしゃい」ではなく。

「二、三日野宿でもしてきたらええわ!」

 ……罵声と共に送り出されたのだった。


 いつもの駅に向かう道とは逆を行き、少し歩くと年季の入ったアパートが見えた。
 年季の入った……というか、年代物だ。もしかしたらあれが、下宿組の間で噂になっていた幸薄荘かもしれない。実家通いの俺はあまり話を真面目に聞

いてなかったが。
 建物の日陰になった場所で、タライとホースを持ち出して洗濯している人がいた。
 大変だなー。下宿したら自分で洗濯もしなきゃいけないもんな。せめて洗濯機くらい欲しい。
 そんなことを考えながら道を歩いていく。
 下宿で住めそうな家ないかな。さっきの幸薄荘以外で。
 いざとなったら今日はポケモンセンターに泊まろうか。
 腹へったなあ飯くいたい。下宿したら自分で飯も作んないと。

 ……あ。

「これ、……店? かな」

 外見は一般人が住む一戸建てのようだが、ドアの所に白地に黒で定食屋と書かれたのれんが掛けてある。
 隣家との壁の間の、ドアの開閉の邪魔にならない所に、「OPEN」と書かれた黒板が狭そうに立っている。
 店、らしい。
 そういえば丁度昼メシ時だ。俺は衝動的にドアを開けていた。


「いらっしゃいませー」

 人の良さそうな小顔のおばちゃんが笑顔をこちらに向けた。

 定食屋の店内は、民家を改造したみたいだった。
 狭い屋内は厨房とカウンター席でいっぱいになってしまっている。数えてみると、カウンター席は九席あった。
 店の奥には幅が狭くて急な階段があるが、そこには「御手洗」とのれんが掛かっている。二階席なんてものはなさそうだ。
 そののれんの向こうから、痩せ形でキツイ眼光のおじさんが現れた。
 まっさらな白色のエプロンをして、手に同じく白い布を被せた大きなカゴを抱えている。
 階段を通れるギリギリの幅のカゴだ。

 と思って見ていると、布が唐突に揺れた。

「お客さん?」

 見かけに反して、おじさんは朗らかな声を上げた。今まで鋭かった目付きが、一瞬で笑いに変わった。

「何にします?」

 そう聞きながら、おじさんはカゴに被せた布をそっと押さえている。なんだか布が動いている気もするが……。
 俺はおじさんの笑顔に押されて、カゴから目をそらし、壁に貼られたメニューを見た。

 カツ丼 ¥490
 親子丼 ¥470

 そんな調子で学生向けのそこそこ安いメニューが並んでいる。
 定食は味噌汁と小鉢付き、白米おかわり自由でそれも安い。
 揚げ豆腐や旬の魚の煮付け、デザートに木の実のシャーベットもある。
 俺はざっとメニューを端まで見渡すと、

「あれ、ください」

 一番右端、チラシ裏に書かれたような冷やし中華の絵を指さした。

「はい、冷やし中華ね。五十円で大盛りにできるけど」とおばさん。
「いえ、いいです」
 俺は見かけの割に少食だ。友人にもよく言われる。
「じゃあ代わりに、何かトッピング付ける?」
 別に
いいです、と言おうと思ったが、おばさんが笑顔でカウンターに置いてあったメニューを差し出してくるので断れなかった。
 まあ、欲しいものがなければ断ればいいや、と思ってメニューに目を通す。


『とっぴんぐめにゅう

 紅しょうが 五円
 わかめ 五円
 錦糸玉子 五円
 枝豆 五円
 鳥ささみ
 十円

 カゲボウズ 食ベラレマセン 五十円』


「…………」
「決まりました?」
「カゲボウズ……?」
「冷やし中華中盛り、カゲボウズ憑きー!」
「えっ!?」

 俺の戸惑いをよそに、おじさんとおばさんは笑顔で冷やし中華を作り始めた。

 麺の上に、カニカマ、ハム、キュウリ、トマト、そして何故か目玉焼きが乗せられ、最後にタレがかけられる。

 それで完成と思いきや、おじさんがさっきのカゴの白い布を取り払った。
 白い布の下から、黄青青の三色に分かれた目をパチクリさせる、黒い布たち。

 おじさんはそいつらから一匹を選ぶと、ひょいと角をつまみ上げて冷やし中華の上に置いた。

「はい、冷やし中華カゲボウズ憑きね」
 そう言いながら俺の前に皿を置くおばさん、超笑顔。厨房の奥のおじさん、満面の笑み。俺、引きつった笑み。
「あら、カゲボウズのトッピングははじめて?」
 俺の表情で分かったのか、返答を待つ気がないのか、おばさんは勝手に喋り始める。

「いや〜なことがあってもね、食事は取らなきゃいけないでしょ?
 そんな時ね、カゲボウズが人気なんですよ、気分が悪くても気持ち良く食事できるってね」

 そうですか、と俺は小さな声で返事をする。割り箸を割ったはいいが、箸を付けられない。
 おばさんは厨房の真ん中あたりまで行って、くるりとUターンして戻ってきた。
「あ、ちゃんと洗ってますから、大丈夫ですよ」
 そして厨房に戻るかと思いきや、また振り返ってこっちへ来た。
「分かってると思いますけど、その子は食べないでくださいね」
 はあ、と曖昧な返事をすると、おばさんは厨房の真ん中へ行って、洗い物を始めた。


 カゲボウズが冷やし中華の中央に鎮座している。
 箸で軽く奴を突付くと、三色の目でこっちを見た。
 じーっとこっちを見る。
 食べにくい。
 こいつの下に敷かれている冷やし中華を食べにくい。
 カゲボウズはなおも俺を見つめている。

「嫌なことねえ」

 今朝の喧嘩のこと、とか。

 思い出すと腹が立ってきた。
 カゲボウズが目をぱちくりさせて俺を見、嬉しそうに体を震わせた。
 これがカゲボウズの「負の感情を食べる」というやつかもしれない。

 大体あれだ、俺の母親は何でも「ムリ、ムリ」っていうんだよな。
 好きになった女の子が受験が難しい有名校に行くと聞いて、半ば冗談でその学校に行きたいと言った時もそうだ。
「アンタじゃムリ!」とにべもなく撥ね付けた。
 その前にも、ちゃんと練習するから自分のトランペットが欲しいと言った時も、ポケモントレーナーになりたいと言った時も……

 何の前触れもなく、目の前の皿からカゲボウズがひゅんと飛び出し、俺の周りをぐるぐる回りだした。
 あっけに取られてカゲボウズを見ていると、またカゲボウズは皿に戻った。
 そして、俺をじっと見つめた。

 少し、心が軽くなったような気がした。
「もっと感情が欲しいのか?」
 箸先で突付くと、いやいやするみたいに体をねじった。それから、期待を込めた目で俺を見た。
「もうやらん」
 そう言って軽く笑う。
 口に出して言うと、心の荷が少し降りたようだ。
 ぐちゃぐちゃした嫌なことを、食事時に考えることはない。
 箸でカゲボウズをつまんで皿の横に置く。
 俺はやっとのことで、食事に取り掛かった。

 カゲボウズを見ると、いつも目が合う。
 どうも俺を見続けているらしい。
 こうしてじっくり見てみると、三色に分かれた瞳は愛嬌に溢れている。シンプルな造形に頭の角が良いアクセントを添えて、見ていて飽きない。
 気持ち良く食事できる、ってこういうことかもしれないな。

「ごちそうさまでした」
 俺は、食事前よりずっと晴れやかな気分で外に出た。


 店を出て、駅に向かう。
 ふと気になって、幸薄荘の日陰の、タライとホースの人がいたあたりを見てみた。

 そこには、洗濯ひもと、青空の下風に揺れるカゲボウズたち。
 時折風でひっくり返っては、冷やし中華を片手に抱えた人が出てきて元に戻している。

 下宿は大変そうだ。しばらく遠慮しとこう。母親に謝って、今度の日曜は冷やし中華にしよう。
 俺はカゲボウズに見送られながら、駅に向かった。




【描いてもいいのよ】
【書いてもいいのよ】
【食べに来ていいのよ】
【一匹欲しいよ】


カゲボウズ祭りに参加したくなってしまったきとかげです。
書くきっかけをくださった長ーいレスと作品群に感謝。そしてもっと長ーいレスになればいい。
以上でした!


  [No.457] ■そろそろ交通整理を。 投稿者:No.017@管理人   投稿日:2010/08/18(Wed) 22:43:14   63clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
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いつまで伸びるんだこのスレ!?(笑

レス途中に差し挟むのがややこしくなってきたので、
とりあえず【書いてみた】含め、
「小説」は親記事(http://masapoke.sakura.ne.jp/lesson2/wforum.cgi?no=384&reno=n ..... de=msgview)返信で
スレの一番下にくっつくようにしてくといいんじゃないかな。
個々の感想は各小説に返信でおkかと思いますがいかが。



【もっと伸びていいのよ】
【もっと親記事に拍手するといいのよ】


  [No.458] 書いてみたを書いてみたをかいてもいいのよもあわせてかいてみた 投稿者:てこ   投稿日:2010/08/18(Wed) 23:02:41   66clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
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「見にいこ、……いやどうかなぁ」
 テレビCMから流れる民族的な雰囲気を持った静かな歌。歌ってる女性の声が本当にきれいだ。きれいだなぁ。
「いつまでやってんだろう……」
 あの有名なアニメ監督の映画『借りぐらしのアリアドス』。少し前の作品まではちゃんと映画館で見ていたが、最近はすっかりDVD派である。『崖の上のピィ』は見に行こうかと思ったけど、結局見逃しちゃったし。
 『借りぐらしのアリアドス』は都会の真ん中、ビルとビルの間に住む14才の女の子のアリアドスの話である。ニンゲンのものを少しずつ借りて、暮らしているのだ。ただ、アリアドスがそうやって暮らすには決して破ってはいけない約束があって――。
 見てみたい気はするけど、見てみたくない気もする。うーん。どうしてアリアドスなんだ。蜘蛛が苦手なんだよな、俺。いや、蜘蛛に限らず虫全般苦手だけど。てんとうむしでもパニックになるからね。うん。黒い彗星とか出た日には夜眠らんないしね。
「……なっさけねぇ」
 自分で自分を罵倒して、寝転がった体を起こした。丁度、時刻は昼。昼。天気のいい昼……。
 外をじっと眺めて、俺は違和感に気づく。何かが違う。あるはずの、何かがない。外か?中か?――ベランダか!
「……」
 いない。ジュペッタが、さっきまでベランダでひなたぼっこしてたはずのジュペッタが、いない。

 ――おい!




 数分後。


「すわあぁぁぁぁあ!!!すみませんごめんなさい申し訳ないっす本当に面目ないごめんなさいごめんなさい!本気ですみません!ほら、お前も、お前も謝れよ!こいつもこう言ってるんで!本当、本気ですみません!」
 あ、ありのままに今起こったことを話すぜ!ジュペッタを探しに外に出て行ったら、数分後、二人で地面に額をつけて謝っていたんだ……。
「ぬ、ぬいぐるみ!俺がちゃんと弁償しますんで!本当、すみません!」
 俺の目の前にはただコンクリートの地面。額に冷たいコンクリートの感触。うぅ、顔上げることなんかできないよ。あれほど、ぬいぐるみには当たるなと言っていたのにこの困ったやつが、ぬいぐるみをサンドバッグ代わりに……なぁあーっ!
「捨てるつもりだったから、別にいいんですよ。本当に!」
 うぅ……そんなこと、そんな優しいこと言わないでください。もっと顔が上げられなくなります。
「でも、このぬいぐるみの足、濡れてるし、フローラルないい香りするし、洗濯してたんですよね!そんな、ぬいぐるみを洗濯なんてめったにやることじゃないじゃないすか!やっぱ、大事なぬいぐるみなんですよね……」
 断言する。きっと下が土だったら俺の顔ほぼ埋まってた。地面に額つけすぎて若干、ひりひりしてきた。
「……」
「……あの……。わっ!」
 俺は勢いよく体を起こして、一歩前へ出た。
「ぬいぐるみ、絶対俺弁償しますんで!いや、弁償します!本当に!」
 そこで、ふと気づいた。目の前の、困ったように笑う女の人。この人、この前カゲボウズと一緒にいた――あの雨の日の人だ。


「そんなに凹むなよお前……」
 帰り道。あの女の人から借りたぬいぐるみの残片を持ってゆっくり歩いていた。事件の犯人というか、トラブルメーカーはなぜかがっつり凹んでいた。うつむいて、肩を落として、ぺた……ぺた……。反省なのか後悔なのか。あまりに凹みすぎてて怒る気も失せてしまった。
「ジュペッタ」
「……」
「お前、おでこに砂が……、ん?」
 先ほどの土下座のせいで、おでこに砂がついているかと思ったら、どうやら違うらしい。よく、触ってみる。ざらざらとした感触に、ちょこっと擦り切れたジーパンのような感触。
「お前もでこ押しつけてたのな……」
 俺は大きくため息をついて、でも、少し笑ってしまった。やっぱり、似たもの同士かねぇ、俺らは。
「元気出せよ、な?ぬいぐるみは俺が何とかするからさ」
 ジュペッタは相変わらずうつむいたままだ。気づけばどこからかやってきた数匹のカゲボウズがふよふよと飛んでいた。
 ……よし。
「いいとこ、連れてってやるよ」
 ジュペッタが顔を上げた。

 自動ドアが開くと同時に、一気に冷気が身体の熱を奪う。やっぱり、クーラーはいいよなぁ。
 目の前のカウンターにはシンプルな装飾のされた店の看板(ミニ)が置かれている。『ポケモントリミングセンター』と書かれていた。
 カウンターにスタッフはいなかった。用意されていた、小さなベルを鳴らす。ちりんちりん。
 店の奥から聞こえてくる唸り声と悲鳴。怯えたのか、ジュペッタは強く俺の脚にしがみついていた。大丈夫、大丈夫だって。と声を出さずに言うと、やっぱり恨めしげに俺を眺めた。痛っ。パンチされた。
「すみませんー!今、ちょっとケンタロスのシャンプーをしてまして……あれ?」
「あ」
 エプロンをつけた泡塗れの従業員さん。この人、向かい側のアパートでよくカゲボウズを洗濯している人だ。
「ここで働いてたんですか」
「いや、最近からですよー」
 よく見ると、窓ガラスの外側にカゲボウズが何匹かぶら下がっていた。あれはジュペッタの感情に集まった奴らじゃない。いつも、この人と一緒にいるカゲボウズ……だと思う。いや、見分けの区別なんてできないけど、一匹だけ小さいのがいたからそう思っただけである。
 カゲボウズたちはこっそりと店内を覗いていた。それは、働き始めた息子をこっそり見守る母親のような――。 
「……愛されてますねぇ」
「愛されてるんですよ……いやいや、洗濯順番待ってるだけだと思いますよ。お前たちはまだ!」
 カゲボウズはふっと消えた。
「で、今日のご用件は?当店ではカットにシャンプー、リンスにコンディショナー、マニキュアから毛染めまで様々やっておりますが……」
「あの、一番スタンダードなのって何ですか」
「カット、シャンプー、リンスに爪や葉切りのコースですかね。お値段もお安くなっておりますし……」
 ……。
 カットはいらないな。毛、生えてないしぬいぐるみだし。シャンプーリンスって感じでもないな。毛は生えてないし。爪切りって言ってもシャドークローは厳密には爪じゃないし。
 あれ、俺何しにきたんだ?何を期待してここにきたんだっけ?
 ジュペッタを洗ってもらおうと思ってきたけれど、それってトリミングセンターじゃなくて、クリーニング屋か。だけど、大きなドラムでぐるんぐるんまわされるのもなんだか可哀そうだし、俺も嫌だ。きれいにしてもらおうと思ってきたけど、やっぱり俺に洗われるしかないのかね、ジュペッタは。
 すみません、何もできませんでした、そういえば……と笑って言ってここは帰ろうと言い出そうとしたとき、少しうつむいて考え込んでいた従業員さんがくっと顔を上げた。
「……よくよく考えればジュペッタにカットもリンスもいらないですよね」
「そうですよね……すみません。俺、帰りま」
「よし!」
 従業員さんは俺の言葉を遮り、自信たっぷりな表情で俺を見た。
「それなら俺に任せてください!こう見えても、カゲボウズを洗濯し慣れてますから!」
 そりゃ、頼もしいな。そうか、カゲボウズ、か。カゲボウズを洗濯し慣れてる人ならば、ジュペッタのこともよく分かってくれているだろう。布のポケモン。お洗濯。うん。
「よろしくお願いします」
 よかったなぁ、ジュペッタ。
 窓の外ではいつのまにか戻ってきていたカゲボウズたちが、嬉しそうな表情で風に揺れていた。

 夏の夕暮れ。ひぐらしがときどき、鳴く。
「よかったなぁ、お前。以前と比べ物にならないくらいきれいになったぞ」
 俺は手芸道具を片手に、ジュペッタと手をつないで歩いていた。ジュペッタもすっかり元気をとりもどしたらしく、楽しそうだ。
 あれから、俺はパソコンでぬいぐるみの情報を探したが、どうやら普通の市販品ではないらしく、もう新しいものは手に入りそうになかった。それなら、なんとかきれいに縫い直そうと思った。俺は裁縫とか正直やったことないし、うまく出来るかもわからない。ちゃんと直して行ったって「いらない」と言われてしまうかもしれない。でも、やる他ないのだ。新しい針、新しい糸、オレンジ色のふわふわした布――。いつか、ジュペッタも縫わなきゃいけなくなるのかもしれないし。こいつだって、一応布だし、綿だし。まぁ、その練習も兼ねてやってみる価値はある。
 ジュペッタの手はいつもにまして、するするしている。ふわふわしている。いいにおいもする。口元のジッパーもぴかぴか。体の色も若干落ちた気がする。あれ、それはいいことなの……か?いや、やっぱり、プロがやると違うんだなぁ。
『また来る機会があったら、また俺洗います。いや、洗わせてください!17番って言ってくださったら、俺休みの日でも出ますんで!』
 あの人の姿を思い出して、自然と笑いがこぼれた。泡まみれで、頭までびしょぬれ。でも――
「楽しそうだった、な」
 ジュペッタも笑って、大きく頷いた。
 
 ヤミカラスが鳴いている。
 帰ったら俺もお風呂に入ろう。自分の身体をきれいにきれいに洗濯しよう。洗濯して、ご飯を食べて、徹夜してでもぬいぐるみを直そう。一分でも一秒でも早くぬいぐるみを直して、あの人の所に持っていこう。
 最初は、あんなに重くてげっそりとした気持ちだったのに、今は何だか、清々しいような、まぁ、決して悪くはない気分。むしろ、いい気分かもしれない。


 橙に染まる夕暮れの空。がっかりしたように俺らから離れていく、カゲボウズの影が見えた。





【書いてもいいのよ】
【描いてもいいのよ】
【批評していいのよ】

タイトルがややこしい

レイニーさん、ぬいぐるみぼっこぼこにしてすみませんでしたっ!!本当にこいつめ!困ったやつめ!(返り討ち



CoCoさんの毒男さん、レイニーさんの失恋した彼女さん、書かせていただきました。もしアレでしたら思いっきりシャドーパンチをば(がふっ

カゲボウズだけじゃもったいないな、ということで 今回は人にテーマを当ててみました。きっと、人だってカゲボウズに負けず劣らず個性的かつ魅力あるキャラクターだと思います。こんなキャラじゃないよ!とかとらえ間違ってたらすみません。


なんか書いてて楽しい。なにこの魔力。


位置修正……交通整理をしました
拍手してくださったかた、ありがとうございます!すみません!


  [No.459] 食べに行った+さらに書いてみた 投稿者:レイニー   投稿日:2010/08/19(Thu) 01:39:29   96clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
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食糧が底を尽きた。

冷蔵庫を開け、その事実に気がついた私は愕然とした。
そういえばここ数日はコンビニ弁当ばかり。しばらく自炊してなかった。

でも今から食材買い出しに行って、それから作るのも面倒くさい。
何より、調理が終わるまで私自身がもつかどうか……。せっかくの休みなのに……。

そこから外食しに出かけるという決断に達するのは、早かった。


とはいえ、いったいどこへ行こうか。
また「マクドオーバ」行くのも味気ないしなぁ……。
そういえば外食は会社の近くばかりで、あんまりこの辺で食べたことなかったかも。

あてもなくふらふら歩く私の目にとまったのは「定食屋」と書かれたのれんだった。
外観は普通の戸建て。いかにも個人がこじんまりとやっている感じだ。


気がつくと私は、そののれんの文字に引き寄せられるように、店の中に入っていた。
よほど空腹だったに違いない。というか空腹だ。

「いらっしゃいませー」
すぐに人の良さそうなおばさんに迎え入れられた。


内装も、いかにも個人の家といった感じだ。
カウンター席しかなくて、すごく狭い店内だけど、なんだか懐かしい空気が流れていて安心する。
我ながらいい店見つけたなぁ、とちょっと嬉しくなった。


メニューを見る。

「…………安っ!」

思わずその値段に声が出てしままった。
そのあとで、この近辺が学生街だったことをぼんやりと思いだす。
会社まで通いやすくて安いとこ……って理由であの部屋借りたけど、そっかそりゃ家賃も安いよなぁ。
そういえば確かに家のすぐそばに、いかにも貧乏学生が住みそうな古いアパートもあるし。


ワンコインでもお釣りがくる値段がずらりと並ぶメニューを一通り見る。

その端に書いてある「夏季限定 冷やし中華」という文字が飛び込んでくる。
普通の女性の例にもれず、私も「限定」という言葉に弱い。

「すみませーん。冷やし中華一つ!」
「プラス50円で大盛りにできるけどどうします?」
にこやかに訊いてきたおばさんに、大丈夫ですとにこやかに応じ返す。
お腹は減ってるけど、流石に大盛りにするほどではない。基本大食らいじゃないし。

「トッピングはどうしますか?」
渡されたメニューに目を通す。

『とっぴんぐめにゅう

 紅しょうが 五円
 わかめ 五円
 ……

や、安い。
こちらも破格の安さだ。
その安さに、気がついたら叫んでいた。

「すみません!全部盛で!」
「冷やし中華中盛、全部盛ー!」

……まあ、全部盛にしても、この値段なら財布も痛くないだろう。
おばさんの声を合図に、厨房では、いかにもこだわりの料理人といった感じの瞳をしたおじさんが、冷やし中華を作り始めた。
特にすることもないので、私は厨房で冷やし中華が作られていく様をぼんやり眺めていた。

鍋から引き揚げられたつやつやの麺が、次の瞬間には流水と氷で冷やされていく。
そして、水が切られた麺はガラスの器に盛りつけられる。
さらに、その上にカニカマ、ハム、キュウリ、トマト。見事な手際で盛られていく。
紅しょうが、わかめ、錦糸玉子、枝豆、鳥ささみ。超豪華。
さらには目玉焼き。ん?
不思議に思った瞬間、タレがかけられ、冷やし中華は完成した、……わけではなかった。


次の瞬間、おじさんはそばに置いてあったカゴから、黒い布を一匹取りだし、完成した冷やし中華の上に載せた。

「はい、お待ち遠。」
その冷やし中華をおばさんが満面の笑みで運んでくる。

冷やし中華の上には、カゲボウズが一匹、ちょこんと鎮座していた。

「…………?」

怪訝そうにカゲボウズを見る私に、おばさんが
「あら?全部盛っていうからてっきりカゲボウズもかと思ったけどいらなかった?ごめんなさいねー。」
と慌ててやってくる。

「……カゲボウズですか?」
「そう。うちの看板息子。嫌なことがあった時でもこの子がいると箸が進むって評判なんですよー。」

そうなんですかー。あ、せっかくなんで憑けといたままにしといてください、とおばさんに言った後、いよいよ待望の冷やし中華に取り掛かる。

…………。
カゲボウズがじっとこちらを見つめている。
ちょっと食べづらいなぁ。
そう思いながらも、カゲボウズの下から麺を引っ張り出し、食べる。ううむ絶品。


カゲボウズかー。
麺の上に座って相変わらずじっとこちらを見る瞳を見ながら、ぼんやり思い返す。
そういえば、思い出したくないあの夜も、何故だかうちにカゲボウズが来てたっけ。
この辺、カゲボウズが多いのかしら。

ぼんやりあの人のことを思い出す。
あの日からしばらく経って、やはりあの人のデート現場を目撃したのだろう。
友達からメールが来て、半ば強引に飲みにつれだされた。

「アタシもあれだけアイツは辞めとけって言ったけど、まさかアンタの恋があんな形で終わるとわねー。」
あの娘の言葉が思いだされる。
「ま、結果的にアンタがアイツに引っ掛かんなくてよかったんじゃないの。」
その言葉に私、悔しくってムキになって反論したっけ。余計切なくなったけど。

「とっとと忘れな。新しい良い恋するんだよ。」
最後の言葉がこだまする。
私こんなにつらいのに、何もわかってくれないって、どんどん腹が立ってきたっけ。
あの時の感情がよみがえってくる。


カゲボウズが、目の前をひょいと横切った。
どことなく嬉しそうな表情だ。それになんだか気持よさそう。

その瞬間ふと、気持ちが軽く、そして落ち着いてきた気がした。

確かに。
あの時は苛立って一方的に出て行っちゃったけど、今冷静になって思う。
あの子の言うことも一理ある。新しい恋した方がいいんだろうな。

後でメールしよ。「ごめん」ってことと「ちゃんと忘れる」ってこと。


気持ちがどんどん軽くなって、確かに冷やし中華の箸も進んだ。
カゲボウズは相変わらず、こちらをじいっと見つめていた。

いつの間にやら、豪華な冷やし中華は皿から姿を消していた。


「ごちそうさまでしたー。」

お腹は満たされ、そして心はすっきりして、私は店を出た。
これが看板息子の力かー。確かに食事前より気持ちいい。
また来よっかな、とどこまでもまっすぐな三色の大きな瞳を思いだしながら家路に就く。

さっき思い出したアパートの前を通り過ぎる。
ふと見てみると、私の記憶の中の物より、さらに年季が入っているように見える。
洗濯ひもには、黒い布……カゲボウズが気持ち良さそうに風に揺られていた。
やっぱりこの辺カゲボウズ多いのかしら。


そして住みなれた我が家の前に来た時。


「……あ。」

そこにいたのはこの間のジュペッタと、つぎはぎだらけのヒメちゃんを手に持った、その相棒さんだった。


おわり

---

【書いてもいいのよ】
【描いてもいいのよ】
【批評していいのよ】
【フラグ立てていいのよ】
【一匹ほしいよ】
【食べに行きたい】

---

きとかげさんの定食屋が素敵すぎたのでカッとなって書いた。
カゲボウズに見つめられながら冷やし中華食べたい。主人公そこ変われ(え)

さらにてこさんの素敵なレスがついていたので、さらにフラグを立ててみた。
むしろぬいぐるみボコらせたうえに全力土下座すみません。

もうこのままみんなでカゲボウズに萌えてさらに伸びればいいと思うよ!


  [No.463] 届けにいってみた 投稿者:CoCo   投稿日:2010/08/19(Thu) 02:29:38   81clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
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 ギャロップは難関だった。
 炎ポケモンは本能的に水を嫌がる。つまり、すすぎができないということだ。
 しかしブラッシングだけならわざわざトリミングに来なくても出来る。ちょっと専門書を読めば余裕だ。

 しかし職場の先輩に聞くわけにはいかない。
 これは通過儀礼なのだ。どんなポケモンでも見事に洗い上げる。機嫌を損ねることもなく、ポケモンにも飼い主にも笑顔でお帰りいただく。それがポケモントリマーの使命なのだと。
 ここで甘んじてしまえば、俺は一生下っ端トリマーのままだ……。

 ギャロップを預けられた日、俺は昼休みに飯の時間を削って本屋へ飛び込み、炎ポケモンの洗いについて調べた。
 時間が無かったのでじっくりとは読めなかったが、どうやらブラッシング以外のシャンプーなどを使う洗いは炎ポケモンにとっては危険らしく、専門のトリマーに任せるのを薦める、としか書かれていなかった。
 場合によっては瀕死になってしまうこともあるとか。

 責任重大。

 むむ、と唸りながら戻ると、センターの洗い場の窓にいつものカゲボウズ達がぶら下がっていた。マスコットでもしているつもりか。
 あ、ぷち子が落ち……なかった。最近あのぷちボウズも慣れてきたのか何なのか、落ちかけても途中でふわふわ戻ってこれるようになってきた。かなり頑張って浮遊しているようではあるが。しかし大きさだけはまるで成長しない。カゲボウズにも成長期があるんだろうか?

 前はあいつを落とさないために、他のカゲボウズ総がかりだったのになァ……と感慨深く思っていると。
 落とさない?
 落とさない。

 思いついた。
 落とさなければいいのか。

 すすげないならばすすがなければいい。

 シャンプーを固めに泡立てて、マッサージの要領でギャロップを洗ってやる。
 そして丁寧に、タオルで拭いてやるのだ。
 使う水分は最小限。しかし石鹸カスは残さない。ここの配分は、ほら、あの普段右から三番目あたりが定位置のカゲボウズ。なぜか水嫌いのあいつの時の配分の、ギャロップはだいたい何倍ぐらいかな、なんてやっていく。
 しかし布と獣皮では結構な差があるので、最後は少し立腹したギャロップに蹴られかけたが。

 なんとか持ち主にかの火の馬を返すと、持ち主は嬉しそうに「ありがとうございます、見違えるようにキレイになりました」といってくれた。

「お前新人だっけ? ギャロップが骨折なしで洗えりゃ相当なモンだ。経験者?」
 そして受付のそばにいた一人の先輩にそう言われた。

 何だろう、この感覚……。やりがいってやつだろうか?

 自然と笑顔がこみ上げてくる気分なのに、カゲボウズ達はまだ窓のところでふよふよしている。
「お前らサンキューな。こいよ、特別にタダで洗ってやる」
 先輩には内緒だぞ。

 指でごしごしと頬をこすってやると、カゲボウズはきゅっと目を閉じてくすぐったがる。
 頭頂のツノ部分はよく汚れるので念入りに。なぜかここを触ると、カゲボウズはぴくぴくぴくと反応する。

「お前何洗ってんだ?」
 とかやっていたら早速先輩に見つかった。やべえ。こっそり洗剤とタライ持ち出してたのがバレる。
「いえ、あの、そのですねー、」
 頼む。言い訳を考える時間をあと十五秒。

「ああ、例の定食屋から頼まれてるヤツね」
 しかしそんな間もなく先輩はそう言った。

「え?」
「あ、知らない? ほらマップの、ここ、ここ。ここにある定食屋。カゲボウズ1ダースといえばここからぐらいしか来ないだろ。あ、ついでにこいつら、終わったら届けに行ってこいよ。そのままそこで飯食って帰っていいから。」

 洗剤は無臭の使えよー、と言い残して、先輩は呆然としている俺を置いて仕事に戻っていった。

 定食屋で、カゲボウズ。
 カゲボウズ定食?
 いやいや。それはいかん。人としていかん。そもそも多分こいつら食っても美味しくないぞ。

 尽きない疑問を抱えつつ、俺はカゲボウズをかごに入れて、"例の定食屋"へ向かった。



「待ってましたよ。さっきの全部盛りのお客さんでちょうどカゲボウズが切れちゃいましてね」

 店主とおぼしきおじさんが、裏口を叩いた俺を迎えてくれた。

 全部盛り?

「カゲボウズを盛るんですか?」

 ついつい聞いた俺に、おじさんはにいっ、と笑って答えた。

「食べて行きますかい? 冷やし中華」



「冷やし中華大盛り、カゲボウズ憑きー!」

 威勢のいい声とともに俺の目の前に出されたのは、キレイに盛り付けられた上手そうな冷やし中華、の上に盛り付けられたカゲボウズ。

「ええええー……」

 食うのか? 食わないよな?
 あそこにもたべられませんって書いてあるしな?

 しかしそのカゲボウズはどうやら、俺がなかなか満ち足りた気分だったせいもあってかなかなか空腹だったようで、麺の中にもぐりこむとツノまで麺を巻きつけて、全身を使って俺の冷やし中華を食べ始めた。

 そして俺の箸とカゲボウズとで、冷やし中華をかけた綱引きが始まる。

 俺は箸でカゲボウズを捕まえて「食うぞ、コラ」と脅しながら、そういえばさっきのカゴに入れたままだったぷち子、あいつがここに盛り付けられたら、キノコか何かと間違って食われたりしないだろうか、と真面目に心配になった。



 おわりりーら


***

【書いてもいいのよ】
【描いてもいいのよ】
【批評していいのよ】
【俺にもフラグを立ててくれよ】

 明日早いってのに、長蛇のレスが素敵すぎてついやっちまった。
 寝坊したら昼飯は冷やし中華にしようと思います。


  [No.475] 2828してみた 投稿者:きとかげ   投稿日:2010/08/20(Fri) 02:12:20   45clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
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食べに来てくれた!それもふたり!
2828がとまらないきとかげです!
カゲボウズ3匹憑き冷やし中華大盛りは七百五十円になります。

全部盛り頼んでくれたレイニーさん、カゲボウズ届けに来てくれたCoCoさん、ありがとうございます!
タイトルかあ……思いつきません。
「となりのカゲボウズ」「風の谷のカゲボウズ」「平成洗濯合戦カゲボウズ」……
すいません、だめでした。


  [No.464] ■【まとめてみたいのよ】 投稿者:No.017@管理人   投稿日:2010/08/19(Thu) 12:19:32   49clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
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こんにちは、カゲボウズ憑き冷やし中華が食べたいNo.017です。
最近嫉妬してばりなので、3匹憑きでお願いします。
毒男さんもお仕事が順調のようで何よりですね!

タイトル通りなんですが、震源の「洗濯日和」から続く書いてみたをHTMLにまとめて展示してみたいです。
最初は個々がpixivで、タグ繋ぎみたいに思っていたのですが
ここまできたらまとめページ的なものがあったほうがみなさん見やすいかな……なぁんて思いまして。
(本当はみんなで編集できるといいんですが、技術がないのでとりあえずHTMLで)

発信源のCocoさんおよび、
てこさん、こはるさん、レイニーさん、きとかげさん、いかがでしょうか。
特に反対意見がなければ、事後承諾的な感じで外観をつくってみようと思うのですが。

まとめタイトルはどうしましょう
「カゲボウズ憑き物件、薄幸荘へようこそ!」とか?
まとめの賛否も含めて、何かアイディアや意見等あればぜひお願いします!


【まとめてみたいのよ】
【よいタイトル募集なのよ】


  [No.474] 【賛成なのよ】 投稿者:てこ   投稿日:2010/08/19(Thu) 22:26:17   42clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
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おっけーですよー。
むしろ、まとめて、見たい!
カゲボウズじゃなくて主にジュペッタですみません!

タイトル……タイトル……



考えてきます!!


  [No.477] 【まとめていいのよ】【と思うのよ】 投稿者:CoCo   投稿日:2010/08/20(Fri) 22:59:56   47clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
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 陽の光は平等だ。降り注ぐ日差しは日陰の人にも日向の人にも同じく暖かい。
 しかし同じ街で、その白い光に照らし出されても、どことなくほかより影の差す外観をした、築何年ともつかない古いアパートが建っている。
 そしてその階段下に、潜む三角の瞳、いくつか。

 外壁にへばりついた錆び垂れるプレートの言うことには、【幸薄荘、新規入居者募集中】。

「住む場所を探してるって? そこ。204号室空いてるよ、俺ん家の隣だけど。何、陰気な雰囲気。君、住めば都って言葉知ってる? え、さっきそこでカゲボウズがたくさん軒下に並んでいるのを見かけたって。そうか、確かにカゲボウズは負の感情を喰らう者だ。しかしその陰湿なイメージとは裏腹に、彼らはそれを喰らうことによって悪夢を喰らう獏さながら、それを昇華しているんだと俺は信じている。一晩寝れば〜って言うだろ? あいつら、夜中にこっそり並んでいやがるからな。――ここいらじゃ、カゲボウズ憑きって有名らしいな? ここ。いや、さっき言ったとおりさ。住めば都。ここだけじゃない、住むところには人の居るかぎりどんな感情も渦巻くさ。喜怒哀楽も、憎いのも辛いのも。そういうのは誰にもある、どんな人格者だって神様だって圧迫して沈めることはできても、消し去ったりはできやしない。いつでも吐き出されるのを待ってる。そんなものが集まってるんだからそりゃあ、住人のいるかぎり、アパートは呼吸をするだろう……なんてね。なあ、ここで暮らしてるとさ、寝覚めだけは抜群だぜ。まあ206号室だけは別だがな。あそこはやめておけ。格安だが眠りづらい。だって毎晩夢の中でゲンガーがリンボーダンスするんだ」

       ――ミカルゲに似た立ち姿の男、アパートの門付近にて


【カゲボウズ憑き格安物件、幸薄荘へようこそ】


 今日もどこかで、水もしたたるカゲボウズたちが風に揺られている。


***
【書いてもいいのよ】
【描いてもいいのよ】
【住んでもいいのよ】
【批評していいのよ】

【まとめていいのよ】たぶん


  [No.479] ■【そろそろ動くのよ】 投稿者:No.017@管理人   投稿日:2010/08/21(Sat) 07:11:57   53clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
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No.017です

文面から解読するに、お伺いを立てた5人中4人と途中でくわわった1人からGOが出たと解釈しております。
とりあえず、外観から作ってみるか……


  [No.485] 【賛成なのよ】 投稿者:レイニー   投稿日:2010/08/21(Sat) 10:25:37   50clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
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返信遅くなりましたが私もまとめ賛成です!

タイトルは「借りぐらしのカゲボウズ(幸薄荘憑き的な意味で)」……、ごめんなさい。
CoCoさんの作品もありますし、「カゲボウズ憑き物件(ry」になるのかなと思いつつ、
個人的には「平成洗濯合戦カゲボウズ」がツボだったと書き記しておきます(爆)


  [No.487] Re: 【賛成なのよ】 投稿者:No.017@管理人   投稿日:2010/08/21(Sat) 10:30:01   48clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
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うわあい!
返信ありがとうございます。

5人、揃った! BY父上様


  [No.467] たまには天日干しでも。【描かせていただいた】 投稿者:兎翔   投稿日:2010/08/19(Thu) 19:35:18   69clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
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たまには天日干しでも。【描かせていただいた】 (画像サイズ: 640×480 399kB)

みなさんの書かれたカゲボウズ達がものすごくかわいかったので、勢いにのって描かせていただきましたw
描きいれられなくてごめんねジュペッタ!
じめじめした暗いところを好みそうな彼らですが、たまには天日干しでもどうでしょうか。
(昨夜投稿したのですがなぜか記事が消えてしまったので、加筆したものを再登稿させていただきました)

管理人様のご意見に賛成です!
まとめて読める形式だとより楽しいと思います。
タイトルはありきたりですが「カゲボウズ日和。」とかどうでしょうか?
……捻りがなくてすみません…orz


  [No.469] 収穫したい 投稿者:No.017   投稿日:2010/08/19(Thu) 20:28:41   47clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
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兎翔さん、描いてみたありがとうございます。
お手数をおかけしてすみませんでした。

とりあえず左端の眠そうな子は貰った!
ぷちっ!


> 管理人様のご意見に賛成です!
> まとめて読める形式だとより楽しいと思います。
> タイトルはありきたりですが「カゲボウズ日和。」とかどうでしょうか?

さあ、みんなどんどんタイトルを投稿するんだ!
あっ、ここは震源地のCoCoさんに決めていただくという手も……w
どうでしょう?

案その2:カゲボウズストーリーズ! (待て




【もっと描いていいのよ】


  [No.508] Re: 収穫したい 投稿者:兎翔   投稿日:2010/08/23(Mon) 22:10:20   38clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
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> 兎翔さん、描いてみたありがとうございます。
> お手数をおかけしてすみませんでした。
>
> とりあえず左端の眠そうな子は貰った!
> ぷちっ!
>
>
コメントありがとうございます!
カゲボウズ狩り、一匹二十円!
幸薄荘にて、随時開催中!

…なんて言ったら、住民のみなさんに怒られそうですね(汗


  [No.473] わたわた。 投稿者:てこ   投稿日:2010/08/19(Thu) 22:21:09   60clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
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 針を通し、ちょっと戻ってまたは、進み。それから、また戻って、進む――。
 ちく、ちく。


 小学校のとき作った、あのナップザックですらひどい出来だった俺。(調子に乗って返し縫しすぎた)
 中学のときの家庭科の時間での呼び名は『ミシンクラッシャー』だった俺。(下糸が繭みたいになってた)
 高校のときは家庭科の授業中に指に針をぶっさして病院行きになったこともある俺。(ぶっすり刺さった)

 家庭科の授業を卒業したらもう針なんて持つことないんだろうと思ってから数年。俺は今、針を手にしているのである。この縫い方は丈夫に縫える縫い方。なみ縫いすらしきらない俺にとっては至難の技だったが、二日くらい経ったら慣れてきた。やるじゃん俺。やればできるじゃん。
 布と布を縫い合わせていく。ミシンを使おうかとも思ったけど、やっぱりミシンは怖いんだ。あんな猛スピードで針が上下するなんて恐ろしいにもほどがある。それに、ぬいぐるみをミシンで縫えるほど俺は器用じゃない気がする。
 そんなことを考えながら俺は針を動かしていく。伸ばした膝の上で寝ているジュペッタ。時計は三時を――深夜三時を指している。


「ふぅ」
 よし。とりあえずこれで作業は95パーセント完了だ。
 最初見た時は、グロテスクとも思えるほど悲惨な状態だったぬいぐるみだったが、今はもう――いや、悲惨な状態のままだ。
「ヒメグマ……か?」
 うーん。言われてみればヒメグマに見えないこともないような。よく見てみればヒメグマに見えるような見えないような。もしかしたビッパにみえるかもしれない。
 まぁ、簡単に言ってしまえばつぎはぎだらけ。つぎはぎを目立たなくすることなんて、とてもじゃないけどできるものじゃない。でも、俺にこれ以上はできないだろう。これで怒られたら……って怒られるだろうけど、まぁ、なんとかしよう。うん。
 さ、残りの作業は背中を閉じるだけだ。ぱっくりと開いた背中を閉じるだけ。閉じる、だけ。


 なんだけど。


「こんなにスリムだったかなぁ」
 いや、絶対に違う。こんなスマートなヒメグマは嫌だ。お腹はそれなりに出ているのだが、頬っぺたの辺りがげっそりしている。
 綿が足りないんだ。きっと、綿の一部はどこかに行ってしまったんだろう。そういえば、買ってきた綿はもう全てつめてしまったんだった。
「押入れとかに残ってないかな……」
 眠い。重い体を起こして、押入れの中を探す。以前、ジュペッタが切り開いたクッションの残り。捨てちゃったか、捨ててないか忘れたけど、ここらへんにあったような気もする……。ダンボールの箱を開けては閉めて、開けては閉めて――。
 窓の外がうっすらと明るくなりつつある。眠すぎて、意識が朦朧として、もう――わた――た――。


 
「こんちはーっ」
 ぬいぐるみを渡そうとあの人の家の前に行くと、ちょうどあの人が帰ってきたところだった。ん。なんだか幸せそう。あの人は俺を見ると、少し驚いたような顔をした。そりゃ、つぎはぎだらけのぬいぐるみを見たらびっくりするよな……。
 大きく深呼吸して、俺はあの人に駆け寄った。
「これ、……この前のぬいぐるみです!俺、不器用だから、全然うまく出来なくて、あの」
 自分で見てもひどいできばえだって分かるし、なんか恥ずかしい。俺はうつむいたままぬいぐるみをさしだした。手の先からぬいぐるみの重さが消えた。今、どんな顔をしてるんだろう。怖くて顔を上げられなかった。俺の足元にいるジュペッタも全く同じポーズで固まっていた。
 何の反応もない。ただ、聞こえるのはセミの鳴く声だけ。なぜだか、なんかしゃべらないといけない気がして。
「いや、でも受け取ってもらえなかった俺がそれもらいます!俺が言うのもなんだけど……きっと、ぬいぐるみって何か持ってるんです!何か、時間とか思い出とかが、染み込んでるような気がするんです。でも、それはあなたの……だからきっと、あなたがもってるのが一番いいと思うんです!」
 俺何言ってるんだろう。何、言ってるんだろう……。うつむいたまま、また、顔を上げられない。
「……ありがとう」
 顔を上げた。女の人はつぎはぎだらけのぬいぐるみを、ぎゅーっと抱きしめて、目を閉じていた。
「君の言うとおりだと思う……捨てるつもりだったけど、君のおかげでこのぬいぐるみも命を救われました」
 ありがとう。そう言って、あの人は笑った。
 俺は、言葉が出なかった。


 ……。
「あの、それと……」
「なんでしょうか?」
「ジュペッタが中に綿入れちゃって……いや、大丈夫だとは思うんですけど……」



 朝だ。俺が押し入れの中で目を覚ます。ん。ヌケニンの背中のようにぱっくりとあいていたぬいぐるみの背中がきれいに閉じられている。表にひっくり返す。頬はこけてない。ふっくらとしたヒメグマの顔。
 ……誰が?
「おーい……ジュペッタぁー」
 ぺたぺたと俺の前に現れたジュペッタ。


 ……口のジッパーに、綿を挟んだまま。


「お前なぁ……」
 輸血じゃねぇぞ。輸綿か。
「そんな、自分の身を削るようなことまでしなくても……いや」
 これがジュペッタなりに考えたジュペッタにできることなんだろう。絆創膏塗れの俺の手も、ジュペッタにしてみたら同じことなのかもしれない。自分の身を傷つけてまで、か。
 ……。
 ジュペッタが不安げに俺を見つめる。俺はいつものようにジュペッタの頭を撫でてやった。
「……ありがとな」
 負の感情が染み込んだ綿だとか言うけど、多分大丈夫だ。いや、大丈夫。たしかに負の感情があるかもしれない。けれど、きっとそれ以上にジュペッタの気持ちがあるはず、だから。
 綿は減っても大丈夫なのかな。また、口開いて押し込めばいいのか?いや、それよりも、ジュペッタが綿を食べれば……
「俺、あんまりよくわかんねぇからさ……今度、あの美容師さんに頼んでみよう。きっと、なんかしてくれるはずだから、な……」
 頭がまわらない。やっぱり、まだ眠い。目の前のジュペッタの頭に手を置いたまま、俺の意識は、そこで、また、切れた――。




【書いてもいいのよ】
【描いてもいいのよ】
【批評していいのよ】


カゲボウズ冷やし中華が食べたいです。いつか、食べに行こう。

カゲボウズスレのはずなのに、どちらかといったらいっつもジュペッタ書いている!すみません!
ぬいぐるみはずたぼろになりつつお返しいたしました!ちょっとジュペッタの綿入ってるんですけど、許してください!
美容師さんなんとかしてく(ry


  [No.478] うらみ鍋つくってみた 投稿者:こはる   投稿日:2010/08/20(Fri) 23:17:17   70clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
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 ある日、ミカルゲ顔の先輩が現れた。
 俺の通う大学でも噂になっている先輩だ。……と思う。これだけインパクトの強い先輩はいない。
 onmyonnと書かれたTシャツを着て、ミカルゲ顔で俺の部屋のドアを叩き続けた。朝早くから。
「鍋を貸してほしい」
 10分ほどもドアを叩き続けたとは思えないほどさわやかに、ミカルゲ顔に似合わないほどさわやかに言う。鍋を貸して欲しいと、意味不明なお願いをしてきた。
「いま何時だと」
「君のとこの鍋は、昔ながらの金色アルミ製シリーズを使っているだろう」
「まぁ、使ってますけど。いま何時だと」
「やはり煮物料理は昔ながらの金色アルミ製シリーズに限るんだ。貸してくれ」
「この暑いのに、煮物」
「もちろん、完成のあかつきには君にも見せてやろう。だから、昔ながらの金色ア」
「わかりました。わかりましたから持ってってください」
 音を上げたのは、俺だった。サマヨール寝癖髪をつけたまま、俺は先輩を部屋に招き入れた。愛用のホーホー時計は、午前5時を示している。
 鍋一式は、ワンリキー引越センターの段ボール箱の中にしまったはず。探してみると、段ボールは押し入れの奥に押し込まれていた。よいせと埃をかぶった段ボール箱を引き出した俺は、無難に20cm鍋を取り出す。仁王立ちの先輩に渡そうとすると、「45cm鍋がいい」などという注文が飛んできた。45cm鍋なんて、なにに使うんだ。
「うん、この色、艶、形。まさにイメージ通りだ。」
「16とかじゃなくて良いんですか?」
「45がいい。42でも39でもだめだ」
 よいせと一抱えもある両手鍋を持ってきた俺に、先輩がにこにこと笑った。きっとミカルゲが笑うと、こんな感じだろう。
「なににつかうんです」
「君はなぜ昔ながらの金色アル」
「親父が無言で押しつけてきました」
「いい親父殿だな」
 45cm鍋なんて、地元の料理会でしかお目にかかったことがない。なにに使うんだ、この先輩は。
「闇鍋サークルが【地獄鍋】を作った。とても美味かったので、【うらみ鍋】を作ってみようと思う」
「【地獄鍋】行ったんですか!」
 真夏に密室で火鍋を食うと地獄に行けるという訳の分からん理論を展開し、実行したあげく熱中症でばたばた倒れたため、学生会が中止を宣告したという鍋大会。
 なにげに恐ろしい先輩なのだと感じる俺のよこで、先輩はアルミ鍋をばこばこ叩いている。
「うん。これなら良いだろう。【うらみ鍋】ができたら、君にも食わせてやろう」
 にこやかな笑顔を残して、午前5時の訪問客は去っていったのだ。45cmのアルミ製両手鍋を抱えて。


 俺が45cm両手鍋を貸してから早7日。先輩が【うらみ鍋】を作っていた。
 45cm両手鍋をたき火にかけ、ぐつぐつと青黒い液体を煮ている。オソロシイ液体の中に浮かぶ、6匹のカゲボウズたち。
「構内をうろちょろして、うらみつらみを吸わせてきた。七日かけたから、いいダシがでるはずだ」
「カゲボウズになにしてるんスッ!」
「君の隣に住んでる男が洗った。あいつはプロだ」
「あ、キレイなんスね。……じゃなくて、カゲボウズって煮て良いんですか」
「煮洗いというのもある」
「色落ちするでしょ」
「色落ちしたという報告はない」
「なんでそんなに青黒いんです」
「オレン汁とウイ汁とシーヤ汁をつかった」
「全部しぶいのじゃないですか」
「辛味にはフィラ汁とマトマ汁をいれてある。きっと美味い」
 きっぱり言い切られては、もはやなにも言えない。煮られるカゲボウズたちを見ると、なぜかうっとりしている。やつらにとっては、温泉気分なのかもしれない。
 そのまま煮ることしばし。先輩が両手鍋をたき火からおろした。カゲボウズのつのを掴むと、鍋の外に取り出していく。ふやけたカゲボウズが、ふらふらとある部屋に向かうのを、俺は見た。俺の隣の部屋だ。
 鍋から浅黒い物体を引き出した先輩が、はふはふ良いながら食う。呆然と立ちつくす俺に、先輩が赤黒い物体を差し出した。
「食うか?」
「……いえ、遠慮してきます」
 カゲボウズのうらみ入り鍋。あまり食いたいものではない。


++++++
料理番組をみてたら、いつの間にか書いていた。
よし、削除キーはいれた。いつだって消せる。
かわいいカゲボウズたちに、コレをぶら下げて良いのだろうか。

【書いてもいいのよ・描いてもいいのよ】
【批評してもいいのよ】
【ぶらさげていいのかしらん】

【まとめ賛成なのよ】←私が言っても良いのでしょうか?


  [No.527] アルミ鍋は45センチ 投稿者:No.017   《URL》   投稿日:2010/08/26(Thu) 21:34:10   65clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
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ミカルゲ先輩の鍋への異常なこだわり。
アルミ製鍋といえば個人的にはキャンプのカレーかとんじるです。
キャンプ場でカレーつくってたらカゲボウズが寄ってきた……らいいなぁ。
こわくないからこっちおいでー


  [No.490] 書いてしまった 投稿者:海星   投稿日:2010/08/21(Sat) 21:25:48   53clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
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「うん…ここだ」
 ひとり呟くと、僕はインターネットから印刷してきたここら辺の地図を丁寧にたたんで、腰に巻くタイプの鞄の外側ポケットに差し込んだ。
 それからチャックを開けて、中から、財布やら手帳やら種無し干し梅やらの上に乗っかっているモンスターボールを取り出す。
 ちょっとどきどきしたのは、ある不安があったからだ。
 しばらくの間モンスターボールを手の平で転がせてもてあそんでいたが、心を決め、ドアにそろそろと近づいた。
 開けて、隙間から顔の半分だけを覗かせ、中を観察する。
 そんなに混んでない。うう、入るべきか入らざるべきか…。
 そのとき、若い店員が元気に声をかけてきた。
 つい、僕はどきっと驚いて3センチくらい跳びあがってしまった。
 店員も驚いた僕に驚いて目を丸くしている。
 気まずくなり、僕は口を開いた。
「あ、あの、えっと、ポケモンをきき綺麗にしてくれるって聞いて、来てしまったんですけれど、はい…」
 焦り、テンパり、物凄く噛んでしまったのだが、彼は爽やかに笑い、店の説明をしてくれた。
 ここは「ポケモントリミングセンター」という、客の連れてきたポケモンを何が何としても綺麗にするのがモットーな店らしい。
 もしかしたら、店のモットーでは無く彼のモットーなのではないかと感じたが。
 説明しているときの彼の瞳はきらきらと輝いていた。
 一通り話し終わると、彼は僕に、コースの説明を始め、またそれも終わり、期待を込めた目で僕を見た。
 僕は恐る恐るモンスターボールを彼に見せた。
 勿論彼はきょとんとする。
 それから、真ん中の小さなボタンを押し、僕は宙にパートナーを登場させた。
 現れたのは…。
「僕のポケモン、ゴースなんですけど大丈夫ですかね…」
 流石に、彼はゴースと店の奥と僕を順番に見てから、ううん、と考え込んでしまった。そりゃあそうだよなあ、ガスだから。



――――――


うわああああ書いてしまったああああ
すみません書いてしまいましたああ
ポケモントリミングセンターとか毒男さん借りてしまいましたああ
すみませんゴース連れてきちゃって!!!
シャンプー…つけられんのかなって思っちゃったりして!

ちなみにまとめるのは素晴らしいアイディアだと思いますですはい!!(

海星でした!


  [No.491] ある麗らかな週末の話【書いてみた】 投稿者:CoCo   投稿日:2010/08/21(Sat) 21:39:39   67clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
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 俺はある日、ふと思った。
 ――先輩は人間なのだろうか?

 週末の昼、特にやることもなく寝っ転がってまどろんでいると、こういう突飛な疑問が沸いてくる。

 しかし何の裏付けもなくそんなことを言っているわけじゃない。

 かつてここいらで変質者が出るっていう事件があった。
 ここらへんじゃ変質者は珍しい。何故だろう、もしかすると頭が沸く前にカゲボウズに食われてしまうからかもしれない。

 それが珍しく、買出し中だった大家さんが襲われた。
 翌日に町内会主催の秋の鍋大会を控えていたのだという。

 コート一枚、下は一糸纏わぬ姿の野郎に抱きつかれそうになったところ、黒い塊が飛んできてそいつにぶち当り、間一髪助かったのだそうだ。

 あれはシャドーボールだった間違いないと、かつてポケモントレーナーをしていてリーグにも挑戦したことがあるという(噂の)大家さんは言った。

 そして街灯の暗闇の向こうから、ぬうっと背の高いミカルゲが現れたのだという。

「不思議よねえ、御影さん」
 そういう大家さんの横顔の端整なのに、俺はなんだか溜め息をつきそうだったのを覚えている。
「さあ、トゲピーが指でも振ったんじゃないですか」
 その柔らかい唇から語られる名詞が俺の名前でないことに……そういう期待は持たないようにしているんだもう今更。

 しかし先輩は確かに不確かな人間だ。
 丸一週間外に出てこないので、中で倒れているんじゃないだろうかと思って必死でドアを叩いたら、「瞑想していたんだ」とかしれっとした顔で言いながら現れたり。わけのわからんサークルのわけのわからん企画に気が付くと紛れ込んでいたり。実はフルートが吹けたり。

 まあ、別にどうでもいいけどな。
 しかしどうして俺にはフラグが立たないんだろう……。

 どくおとこは レベル 32に あがった!

 時刻を腕時計で確認すると午後二時。だるい。ねむい。
 すると俺の感情に寄せられたのだろうか、数匹のカゲボウズが窓から飛び込んできた。

 しかし飛び込み方になんとなく勢がない。
 ふわふわ、というより、ふらふらしている。

 しかもなんだかよくわからない液体をしたたらせている。

「……おまえら」
 大丈夫か、と一匹を手にとると、なんか熱い。湯気が出ている。

 どうしたんだろう。鍋にでも飛び込んだんだろうか。
 とりあえずぬるま湯で洗い、冷たいタオルで拭いてやった。

 結果。
 彼らは俺がタオルから話した瞬間ころころころころころがって動かなくなった。
 どうしたのかと心配して突っつくと、なんのことはない。
 寝ていた。

 そして俺はカゲボウズ六匹と昼寝をすることになってしまった。

 仰向けになって染みだらけの木目を見上げる。電灯のかさが埃まみれだ。掃除しねえとな。

 寝返りを打つと、ちょうど腕でカゲボウズを一匹つぶしてしまった。
 ふぎゅ、と何とも言えない音がした気がして、やべぇ、これはうかつに寝返りできない。

 見ていると、カゲボウズ達はわりと寝相が悪いようで、ころころ転がっていってはタンスにぶつかっていた。
 窓の影で眠たそうにうとうと目を瞬かせているのもいる。

 俺も眠くなってきた。
 どうやって起き上がるかは、目が覚めてから考えよう。


 終わる


***

【書いてもいいのよ】
【描いてもいいのよ】
【批評していいのよ】

 先輩が書かれていたのでつい書いてみてしまった


  [No.526] カゲボウズと昼寝だと! 投稿者:No.017   《URL》   投稿日:2010/08/26(Thu) 21:28:31   46clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
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>  寝返りを打つと、ちょうど腕でカゲボウズを一匹つぶしてしまった。
>  ふぎゅ、と何とも言えない音がした気がして、やべぇ、これはうかつに寝返りできない。

私もカゲボウズと寝たい。
ふぎゅって言われたい。

ずるい。


  [No.512] 気がついたら書いていた 投稿者:久方小風夜   《URL》   投稿日:2010/08/24(Tue) 00:36:52   67clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
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 アパートを改装するそうだ。
 学生ばかりのアパートだから、大半の学生が実家に帰る夏休み期間を狙ったんだろう。
 でも僕は夏休み早々に用事で実家に帰った。僕は大学から実家が遠いから、一度帰るともう一度というのはかなり面倒臭い。お金もかかるし。

 ということを不動産屋に言うと、改装が終わるまでの一月の間、別の物件を借りられることになった。
 もらった資料をパラパラとめくる。大学から多少遠くても、狭くても、古くても、安いところがいいだろう。どうせ夏休みだし。
 と考える僕の目に留まったのは、とあるアパートの空室情報。
 昔ながらの四畳半。見るからに年期の入った外観。それを差っ引いても異常なほど安い家賃は、その部屋で何か良からぬことでも起こったのであろうことが予想できる。
 でも、まあ、いいか。安いし。


 外装と屋根の修理だけなので、大きな家具は置きっぱなしでいいらしい。それよりそれだけで一月もかかるのが不思議だ。
 服と食器と布団とパソコンだけを持って、僕は夏の間の仮住まいへ向かった。
 『幸薄荘』という、どことなく陰気なムード漂う名前。
 ここの206号室にしばらく住むことになる。

 大家さんへ挨拶に行ったら、大きな荷物ですね、と目を丸くしていた。まあ、持ってる中で一番大きなバックパックに荷物を詰めて、その上に丸めた布団をくくりつけて、さらにその上にヤミラミが乗ってるんだから大荷物だろう。
 でもこれだけなのだから、全体的には少ない。専攻柄このくらいの荷物なら背負い慣れてるし。むしろ電車や車が使えるだけ、いつもの荷物を背負って山の中を歩き回る研究よりましだ。

 2階の一番右端の部屋。
 扉を開けると、かびとほこりの臭いが襲ってきた。どれだけ人が住んでいなかったのだろうか。ヤミラミが大きなくしゃみをした。
 こりゃ何より先に換気だな、と思って、閉じっぱなしになっていたカーテンを開けた。

 軒下にずらりと並ぶ、黒いてるてる坊主。
 3色の瞳とバッチリ目があって、僕はカーテンを閉めた。

 何だあれ。前の住人が忘れていったのか? にしても、あんなにたくさんのてるてる坊主を作るなんて、そんなに晴れてほしかったのか前の住人は? フィールドワーク主体の僕としては気持ちはわからないでもないけど、いくらなんでも多すぎるだろう。しかも大きい。
 ヤミラミが興奮したようにギャーギャーと騒ぎ立てる。ああやめて肩によじのぼらないで。Tシャツが灰色になる。
 こいつがこれだけ騒ぐってことは、あのてるてる坊主、もしかしてポケモンなんだろうか。僕はポケット図鑑を取り出した。
 お目当てのポケモンはすぐ見つかった。
 カゲボウズ。
 負の感情を食べる、とか、魂の宿った人形、とか。何かよくわかんないけど、こいつもヤミラミと同じゴーストポケモンらしい。
 何で僕の部屋の窓にぶら下がってるんだろう。新入りの偵察とかそんなものだろうか。

 まあとりあえず、今は換気だ。僕はカーテンを開けた。カゲボウズたちは相変わらず軒下に並んでこっちを見ている。
 窓を開けると、真昼の蒸し暑い外気が部屋に入ってきた。それと一緒に、カゲボウズたちまでほこりだらけの部屋に入ってきた。7匹くらいいるだろうか。
 ヤミラミが興奮していきり立っている。一時期とはいえ自分の城となる場所に、よそのポケモンが入って来るのが気に食わないのだろうか。いや、部屋の主は一応僕だけど。
 僕は気にせず掃除をすることにした。こいつのことだから、しばらくしたらおとなしくなるだろう。案の定、数分もしたらヤミラミはカゲボウズたちとじゃれあってケタケタ笑っていた。
 天井のクモの巣を掃い、上から順にほこりを落としていく。前の住人が残していったのであろう電気カバー、小さな本棚、ちゃぶ台。家具は少ないのですぐに終わる。
 あとは畳をほうきがけするだけ、と思って床を見ると、そこには白い塊がいくつも転がっていた。
 よく見ると、それは全身ほこりまみれになったカゲボウズたちとヤミラミだった。ほこりのつもったの畳の上で転がっているうちに、元々黒かった体が脱色したようにすっかり白くなってしまったらしい。
 僕は水場に放置してあった、大きな金だらいを持ってきた。これも前の住人が置いていったものだろう。昔ながらの助け合い精神というものだろうか。それとも持っていくのが面倒だったのか。
 白っぽい粉をふくほどほこりまみれになっているカゲボウズたちとヤミラミを拾いあげ、金だらいに入れた。そして畳のほこりをすっかり掃いた。
 外へ飛び出していこうとするカゲボウズとヤミラミを押さえ付けて、金だらいを抱え上げた。重い。でも持てないレベルじゃない。
 ホースとタオルも持って、僕はアパートの外に出た。


 金だらいを運びだした。さすがに重かった。
 アパート外の水道の蛇口にホースを取り付け、金だらいに水を入れる。
 途端に、ヤミラミが短い叫び声をあげて飛び出した。そういえばこいつは水が苦手だったな。シャンプーさせる時はいつも、僕とこいつの攻防で風呂場が戦場になる。
 一方、カゲボウズたちは目を閉じて、気持ち良さそうに水を浴びている。金だらいの中の水はあっという間に汚くなる。
 さて、こいつらをどうしようか。さすがに水だけじゃ汚れがきれいに落ちない。金だらいの中のカゲボウズは、ひらひらがまだ少しまだら模様だ。
 せっけんかボディーソープを使うべきか。でもさっきの図鑑に書いてあったな。『カゲボウズは人形に魂が宿ったもの』って。そういえばこのひらひらはまんま布だ。ということは、洗濯用の洗剤か。でも一応生き物だしなあ。
 まぁ、一応持ってきてた手洗い用のせっけんでいいか。僕の使ってる洗濯用洗剤、漂白剤入りだし。カゲボウズが脱色されてしまったら困るもんな。

 タオルに石けんをこすりつけて、カゲボウズたちの汚れているひらひらを軽くたたく。くすぐったいのか、笑いながら僕の手にすり寄ってくるカゲボウズたち。すべすべなようなぷにぷになような、冷たいような温かいような不思議な感触。
 しばらくカゲボウズたちと楽しく戯れていると、突然腰を衝撃と鈍痛が襲った。
 ほこりまみれのヤミラミが、ギャーギャー騒ぎながら僕の頭にしがみついてきた。さてはこいつとび蹴りしてきたな。僕がカゲボウズたちを楽しく洗濯しているのが羨ましかったのか何なのか。
 僕は右手で蹴られた腰をさすりながら、左手でヤミラミの首の後ろをつかんで金だらいの中に放り込んだ。これもほこりを落とすためだ。我慢してくれ。
 水の中にダイブしたヤミラミは、奇声をあげて金だらいから飛び出し、逃げ出した。
 カゲボウズの洗濯で何だか気分がハイになっていた僕は、ホースの先をつぶして水流の勢いをあげ、浴びせかけながらヤミラミを追いかけた。カゲボウズたちは水を滴らせながらふよふよと僕を追いかけ、けらけらと笑っていた。

 残暑厳しい昼下がり、ホースを持ってカゲボウズと共にヤミラミを追いかける大学生。
 傍から見たらきっと怪しい光景だっただろうなと思ったのは、僕もヤミラミもカゲボウズたちも、頭のてっぺんから足の先までずぶぬれになってからだった。


 びしょぬれになったTシャツとカゲボウズたちを干す。カゲボウズたちは自力でロープにぶら下がれるらしい。便利なものだ。まあ確かに、初めて顔を合わせた時も自力で軒下にぶら下がってたし。洗濯バサミで止めようとしたら全力で拒否された。まあ確かに僕も、洗濯バサミで頭から吊るされるのは痛いから嫌だ。
 ヤミラミはさすがに干せないからとりあえずタオルで全身を拭いてやったら、日のあたる場所にタオル敷いて昼寝してた。もう夕方近いから昼寝って言うのもおかしいか。

 引っ越し、掃除、洗濯。更にヤミラミとの追いかけっこ。
 僕も何だか眠くなってきた。
 今日は早く夕飯食べて、さっさと寝よう。
 食材買ってないし、どこかに食べに行くか。冷やし中華とかいいなあ。

 というわけで、夏休みが終わるまではこのアパートにお世話になります。
 とりあえず、今日は初日だし、いい夢見られるといいな。



おわれ。





【書いてもいいのよ】
【描いてもいいのよ】
【好きにしていいのよ】
【紛れてすみません】
【こっちにも1匹ください】

1週間ほど泊りがけのバイトに行っている間に何やらカゲボウズがお祭り状態……。
ちくしょう! ちくしょう! と思っていると気がついたら何か出来てました。
うちの地学マニアとヤミラミがお邪魔してすみません。すっかり書き忘れましたがポリゴン2はパソコンの中です。
それにしてもカゲボウズかわいいなぁ……。洗濯したいです。



おまけ。

地学マニア「昨日、知らない紫色のポケモンがリンボーダンスしてて、僕がそれを傍らで見て大爆笑してる夢を見た。
       何だったんだろうアレ。夢で笑いすぎて目覚めが悪い」


  [No.523] 幸薄荘トーホク支店 投稿者:ピッチ   《URL》   投稿日:2010/08/26(Thu) 20:40:07   80clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
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トーホク地方は寒いものである。
そんなことをナギサシティ出身のわたしが言おうものなら何を言っているのかと思われるのだろうが、シンオウの寒さとトーホクの寒さは質が違う。
外に出れば寒く中にこもっていればなんとかなるのがシンオウの寒さだが、トーホクの寒さはむしろ家にいると凍みるものだ。外に出て陽光を浴びている方が暖かいなんてインドア派の代表例のようなわたしへの挑戦にも等しい。
春に越してきた時はこの寒さに甚だ驚いたものだ。念願の南下だと思っていたらむしろ北にいるより酷かったのだから。
……そんなことを、周りにいるトーホクの友人に言っていたら絶縁されかけた。
何故だろうか。わたしが「シンオウは寒すぎて人の住むようなところではない」などと言われてもそこまではしないと思うのだが。
まあいい。今現在のわたしに必要なのは友人ではなくコートである。家の中でコートを着込むなんてシンオウではあり得ない話なのだが、トーホクでは必要になるのだ。何しろ壁がやたらに薄い。
しかしこれで断熱材でも仕込まれていようものならわたしは7月で既に溶けて消えている。初めて経験した猛暑日というものは、できればもう二度と経験したくなかった。夏休みいっぱいを帰省に当てていたのは、単に運転免許のためだけではない。
そんなことを思い出してもまったく室温は上がらない。ひとまず今はコートが先決である。
八畳間備え付けの箪笥を開けば、クリーニングから受け取ってそのままのコートが――

……おや。
わたしはこの箪笥に、こんなにたくさん服を詰め込んでいただろうか?
黒が多いのは分かる。入れていたはずの、今探しているコートも、入学式以来しまいこみっぱなしのスーツも、ついでにそれっきり使っていないベルトもすべて黒だったはずだからだ。
それにしても量がおかしい。わたしがこの箪笥に入れていたのはその三つだけのはずだ。しかし今開いてみれば、頭の方だけ白っぽいてるてる坊主が何十と……
いや、ちょっと待て。
そもそもてるてる坊主が何故箪笥の中に吊るしてある?
そんなことを考えていた間に「てるてる坊主」の一つが、黄と藍と水色、三色からなる目をじろりとわたしに向けた。
……思いは確信に変わった。カゲボウズだ。




それからわたしは、カゲボウズたちを箪笥の天井からむしっては投げむしっては投げ、やっとの思いでコートを引っ張り出すことになった。
コートを着込んで一心地、と思ったが別の意味で寒気がする。床に転がされたカゲボウズたちが「うらみ」のこもった目線をこちらに何十と投げつけてきているからである。これを受けてPPだけの減少で済んでいるポケモンたちは実に強靭な精神をしているのがよく分かる。小心者のわたしはこれだけでHPまで0になりそうだ。
こういう場合はどうしたらいいのだろう。わたしに除霊のできるような知り合いはいないし、この辺りの神社やお寺はそもそもどこにあるのかわからない。
この下宿の大家さんなら一喝でカゲボウズなんて追い出してくれそうなものだが、それはそれで更に恨まれそうである。
ここは除霊とかによる強制退去ではなく平和的撤退を願うのが筋であろう。しかしそのためには何をすればいいのかさっぱりわからない。カゲボウズの好きそうな呪いグッズなんて当てはないし、食べるのかわからないが木の実もうちにはない。下宿の先輩でも頼ればいいのかも知れないが、何せこの数である。足りるかどうか心配だ。
あれこれと思案しながらカゲボウズたちを眺めているうち、彼らがみんなホコリで汚れていることに気が付いた。
わたしはあの箪笥を数ヵ月は開いていなかったのである。いつ彼らがうちの箪笥に居座り始めたのかはわからないが、月単位であそこにいたなら汚れて当然だろう。
目についた一匹のカゲボウズに声をかけてみた。言葉が通じることを祈って。

「……君たち、えっと……すごく、汚れてるよね?」

そこまで言うと、カゲボウズは頷いてくれた。わかってくれたらしい。
その際に頭の上のホコリが舞ったのか、小さくくしゃみをする。……あ、ちょっと可愛いかもしれない。
いかんいかん、わたしは彼らに退去してほしいのだから。

「……じゃあちょっと、お風呂……入らない?きれいにしてあげるから、それからよそに移ってもらえたら……」

そこまで言ったところで、カゲボウズはわたしから離れていく。やっぱりダメか、なんて思ったのも束の間だった。カゲボウズは仲間たちと、まるで会議でもするように話し込み始めたのだ。
わたしに彼らの言葉は理解できないが、布が擦れるような微かな音は確かに彼らの言葉であるようだった。
急に声を荒げるようにしたものに、そっと寄り添って宥めるもの。それを尻目に、全体に向けて話をするもの。反論を始めた複数のものに順番をつけて、場を取り仕切るもの。
まるきり人間顔負けの議会である。カゲボウズがこんなに社会的なポケモンであるとは知らなかった。うちの大学に人獣比較学の教授がいないことが惜しくなってくる。研究してみたい気はするのだが。
そうこうしているうちに意見がまとまったようで、先程と同じカゲボウズがわたしに近寄ってきて頷いた。
時計を確認する。いつの間にか日付変更辺りになっていた。今の時間なら、誰かと行き合う可能性は少ないだろう。

「それじゃ行こう、ついてきて」





深夜族で有名な先輩の部屋はまだ明かりがついていたようだったが、それ以外は特に人の動いている気配はしなかった。カゲボウズたちが静かについてきてくれたのも好都合だった。ゴーストポケモンなのだし、あまり騒ぐ方ではないのかもしれない。
脱衣場にたどり着くと、まず備え付けの洗面台に栓をする。人肌程度、なるべく本物のお風呂に近い温度のお湯を張ってみた。冷水だと何より洗うわたしが寒い。
カゲボウズを数匹入れてみれば、狭い洗面台はすぐいっぱいになった。後から後から入りたがる他のカゲボウズを押し留めて、残りは風呂場の方に連れていく。
何故か二つある洗面器に同じように湯を張ってカゲボウズを放り込む。
……足りない。カゲボウズの方が悠々余ってしまった。
またあの恨みのこもった視線がわたしを刺す。やめてわたしのHPはもうマイナスだ。
どうしたものかと考えつつ一旦脱衣場の方に戻ると、先程洗面台に入れておいたカゲボウズが角や体のひらひらした部分を使って、器用にお互いを洗いあっている。人間のような手足はないのに、実に手慣れたものだ。
野生のポケモンであっても、川なんかに入って体を洗ったりするのだろうか?……やっぱり可愛いかもしれない。
それにしても、これではわたしの手はいらないだろう。きれいになったカゲボウズとまだ洗っていないカゲボウズを入れ替えるくらいしかわたしの仕事はない。
カゲボウズたちはお湯の中がよほど心地いいらしくなかなか出ようとしないのだ。温泉地のマンキーの如く温泉を占領するカゲボウズの姿が一瞬脳裏に浮かんだが、流石に怖いので想像するのはそこでやめた。
上がってきたカゲボウズたちをタオルで拭いてやる。元が布っぽい体をしているので絞った方がいいのではとも考えたが、最初の一匹に手をかけた辺りで恨まれそうになったのでやめた。

そんなこんなですべてのカゲボウズはきれいな真っ黒の体に戻った。こう言うと妙な気もするが、本当にそうなのだから仕方がない。
部屋の窓を開けると、カゲボウズたちは一匹ずつ外に飛んでいく。濡れたからか少し動きの鈍いものもいれば、軽快にそれを追い越していくものもいる。
ポケモンと言えどもやはり人間と同じく千差万別であることがよく分かる。
それにしても無事に出ていってもらって良かった。時計を見ればもう深夜一時を回っている。自覚したところで急に眠くなってきたので、さっさと布団を敷いて寝ることにした。明日は一コマ目から講義だ。憂鬱。




……妙に外がうるさい。
誰かが叩いている。うちを。恐らく窓。声も聞こえる。

「――ちゃん!起きて!起きて!」

しかもはっきり私の名前まで呼ばれている。こうなれば起きる他ない。
枕元の目覚まし時計は午前五時過ぎを指している。いつもなら思い切り寝入っている時間なのに。
寝ぼけ眼をこすってカーテンを開けると、窓の外で慌てた様子の隣人が必死に窓の上方を指している。寒いから窓は開けたくないなあ、などと思いながらその先に目を向けた。

窓は開けていないのに凍り付きそうになった。
窓の端から見える黒いひらひらは、まさしく昨日のカゲボウズたちではないか。
これでは気の弱い隣人がわたしを叩き起こしにかかるのも当然だろう。これは少々恨みを買ってでも、きちんとここから出ていってもらわなければ。
寝間着の上からコートを羽織って、一気に窓を開ける。今日の寒さは一段と身に凍みるような気がするが負けてはいられない、さっさとこのカゲボウズたちをうちの軒下からひっぺがさなければ――!


カゲボウズが異様に固い。しかも素手で触りたくないほど冷たい。
違和感に数瞬固まっていたわたしの耳に、隣人の声がようやく届く。

「起きて自転車取りに来たら、――ちゃんの部屋の外でカゲボウズがみんな凍ってて――」




その後わたしは、隣人と協力してカゲボウズを軒下から引き剥がしてストーブを最強モードで焚いた部屋の中に入れる作業を涙ながらに行うこととなった。一コマ目は返上で。
それからカゲボウズたちは暖かなわたしの部屋がずいぶん気にいってしまったらしく、いっこうに出ていく様子がない。
だから今でもタンスはおちおち開けられない。彼らの安眠を邪魔しようものなら、すぐさまあの「うらみ」のこもった視線が飛んでくるからである。
今のわたしの希望は、春になって外の方が暖かくなったら彼らは出ていってくれるだろうか、ということだ。


――――
Q:何故トーホクにしようと思ったんですか?
A:この小説の半分以上は私の実生活でできているからです(←シンオウからトーホクに転居しました)

カゲボウズが大好きなので便乗しようと思いましたら、何か形を間違えた気がしました。
削除キーは入れてありますので勘弁して下さい。

【描いてもいいのよ】
【批評していいのよ】
【好きにしていいのよ】
【増やしてもいいのよ】


  [No.524] 凍った(黒)てるてる坊主! 投稿者:こはる   投稿日:2010/08/26(Thu) 21:16:01   44clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
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> トーホク地方は寒いものである。
 トーホクにもありましたか、幸薄荘!どこにでもあるんだろーな、きっと。

> カゲボウズは仲間たちと、まるで会議でもするように話し込み始めたのだ。
> まるきり人間顔負けの議会である。カゲボウズがこんなに社会的なポケモンであるとは知らなかった。
 相談するカゲボウズ。きっとカワイイ。ぜったいに見たい。

> カゲボウズが異様に固い。しかも素手で触りたくないほど冷たい。
> 違和感に数瞬固まっていたわたしの耳に、隣人の声がようやく届く。
> 「起きて自転車取りに来たら、――ちゃんの部屋の外でカゲボウズがみんな凍ってて――」
 飲んでいた烏龍茶を吹きそうになりました。
 凍るカゲボウズって……。真冬にタオルを外に干してたら凍ってたという、あれですね。だから、こおりなおしは必要なのよん。

 こほん、失礼しました。あまりにかわいく、つい感想を。
 カゲボウズは洗濯するばかりじゃないんですね。凍るカゲボウズは新感覚です。


  [No.525] 北の国でもカゲボウズ 投稿者:No.017   《URL》   投稿日:2010/08/26(Thu) 21:23:46   41clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
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爆笑しながら読み進めましたw
ああこりゃあ暖かくなるまでは出て行かないなぁ……
カゲボウズにくるまって寝るといいよ!



カゲボウズ座談会。

カゲボウズ1「毒男さんてばまだ彼女ができないんですって」
カゲボウズ2「まー、気の毒ねぇ」
カゲボウズ3「洗濯はうまいんだけどねー」
カゲボウズ4「負の感情食いたい」
カゲボウズ5「冷やし中華食いたい」


【削除しないで!】


  [No.546] Re: カゲボウズー! 投稿者:No.017   《URL》   投稿日:2010/08/27(Fri) 22:42:34   46clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
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>  ベランダに干していたカゲボウズのとなりに黒い布が一枚、二枚、三枚……。
>  俺がベランダに出るとカゲボウズが瞬きもせず、俺を見つめている。
>  ……。
> 「だめ。返してきなさい」
>  ジュペッタが恨めしげに俺を見た。


あれ?

今気がついたんだけど

「ベランダに干していたカゲボウズのとなりに」

「ベランダに干していたジュペッタのとなりに」


  [No.549] Re: カゲボウズー! 投稿者:てこ   投稿日:2010/08/27(Fri) 23:50:38   44clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
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> 「ベランダに干していたカゲボウズのとなりに」
> ↓
> 「ベランダに干していたジュペッタのとなりに」
>
> ?


今気がつきました!なんというミスを……
ジュペッタ で、合ってます……


  [No.563] 祝・洗濯日和三桁拍手!!! 投稿者:No.017   《URL》   投稿日:2010/08/31(Tue) 21:17:38   44clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
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ポケスト史上初の三桁クラップおめでとうございます!
まとめはちょいちょいやっておりますです。

取り急ぎお祝いの言葉まで!


  [No.566] ありがとうございます。+おまけ 投稿者:CoCo   投稿日:2010/08/31(Tue) 22:08:10   62clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
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 風、というテーマを聞いて頭の中に浮かんできた、洗濯ロープに揺れるカゲボウズ。
 を、久々にやってきたマサポケがリニューアルしていることに感激してとりあえず投稿した結果がこれだよ!

 みなさんありがとうございます。
 感想も、書いてみたも、描いてみたも、その感想も全て読んでいます。
 読んでいると、みなさんのポケモンワールドへの愛のせいか、なんだか本当に幸薄荘へ住めるような気がしてくるから怖い。

 フラグを立ててもらった話は全て回収したいと思います。ありがとうございます。
 そしてNo.017さん、まとめていただいたり何だり、本当にありがとうございます。

【もっと書いてもいいのよ】
【もっと描いてもいいのよ】
【もっと批評していいのよ】

 揺らぐカゲボウズをみんなでひとりじめしようぜ。


***


 俺がすっかり綺麗になったゴースをつれてくると、客の少年はとても驚いた。

 ガス状ポケモンのゴースは、街中で暮らしていると排気ガスやスモッグなどを身体に溜め込んでしまうことが多いらしい。

「どうやって……?」

 目をぱちくりさせている主人に、ゴースは同じくおおきな目をパチクリさせながら寄り添っている。その嬉しそうな驚きが俺の"やりがい"なのかもしれない。

「悩んだんです。いちおう霧吹きとかでやってみたんですけどうまくいかなくて。それで、こいつらに頼んだんです」

 奥のトリミングルームから飛び出してきたのは、泡をまとったいつものカゲボウズ達。

「カゲボウズ!?」
「はい。こいつらに、ゴースの中に入ってもらったんです」

 飛び込んだカゲボウズ達は、けほんけほんと咳き込むような音を立て、ちょっと煤けた色になって出てくる。
 ゴースはちょっぴりくすぐったそうだったな。

「すごい方法ですね……!」
「いやあ、思いつきです」

 そんなに目をきらきらさせられたら、照れる。


 喜んで帰っていく客を見送ると、煤の黒に汚れたカゲボウズ達が俺の前にすーっと並んだ。

「あいあい、わかってるよ」

 俺は店の裏の日陰へ出て、タライとホースとやわらかいタオルを準備する。

 こいつらはダメもとで頼んだ俺に、何も言わずにしたがってくれた。
 ゴースを洗ってくれなんてとんでもない頼みを聞いてくれた。
 トレーナーでもない俺にそんなことをしてくれるのは、後でちゃんと綺麗に洗ってくれると信頼されているからだろうか。

 だから俺はたとえ無償でも、こいつらの"洗濯"に手は抜かない。

 最後の一匹を拭き終える時、そういえば、バイトも途切れて職なしの俺に、こんなやりがいのある毎日をくれたのも、こいつらカゲボウズを洗ったあの日のおかげのような気がした。

 負の象徴たるカゲボウズを洗うということは、自分自身の負を洗い落とす的な……なんて、そんな抽象的な話は柄じゃねーが。

「ありがとよ」

 ぼそりと呟くと、カゲボウズ達は調子に乗ったのかにっこにこして、俺を例の定食屋まで引っ張っていこうとしたもんだから、「奢りゃしねーぞ!?」と叫んだら自転車で通りかかったお姉さんとがっつり目が合ってものすごく恥ずかしかった。

 恨めしい目でカゲボウズをみつめると、向こうは待ってましたといわんばかりのきらきらの瞳。

 ……いいように使われている気がしないでもない。



 おわってくれよん


***

【書いてもいいのよ】
【描いてもいいのよ】
【批評していいのよ】

店長「炎タイプにも優しい素材のシャンプー、入荷しますた」


  [No.613] 台風上陸 投稿者:久方小風夜   《URL》   投稿日:2010/09/09(Thu) 03:10:11   54clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
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 テレビなんてないから、ラジオの気象通報のデータを用紙に落とす。うん、そんな予感はしてたんだ。
 このアパート、大丈夫かな。結構古いからなあ。屋根とか飛ばなきゃいいけど。

 台風、今季初上陸。


 カーテンを開けた。大粒の雨が降っている。まだ本格的ではないようだけど、風もなかなか強いみたいだ。
 この辺が暴風域に入るのはもうちょっと先かな、と思いながら窓の外を見ていると、ポリゴン2にまたがったヤミラミが服の袖を引っ張ってきた。
 何かと思うと、向かいのアパートの1室を指差している。
 目を凝らしてよく見てみると、ベランダの軒下で、黒いものが風にあおられてひらひらと揺れている。

 あ、カゲボウズだ。

 このアパートの周辺にはカゲボウズが多い。というか、このアパートに住み着いているらしい。宿つきカゲボウズと呼ばれているとか何とか。
 負の感情を抱えた住人の部屋の軒下にぶら下がっていることが多いみたいだ。この周辺のいろんな部屋の窓にくっついていつのを僕もよく見ている。


 それにしても、台風接近。こんなときにまでぶら下がらなくても、と僕は思う。
 ぶら下がっているカゲボウズも、何だか必死な表情だ。飛ばされないように頑張っているんだろう。それでも、強風にあおられて色々な方向に振り回されている。

 まずい、あれ、飛ばされるんじゃないだろうか。これから暴風域に入ったら、あのカゲボウズも耐えられないかもしれない。
 僕は窓を開けた。部屋に雨が降り込んできた。もう大分風が強い。


 その時、とうとう限界を超えたのか、カゲボウズが軒下からプチッと離れた。
 風に舞いあげられて飛んでいくカゲボウズ。
 あ、と思った次の瞬間、僕の横を何かが高速で横切った。

 ヤミラミを乗せたポリゴン2が、暴風雨の中、目にもとまらぬ速さで飛びだした。確か「こうそくいどう」とかいうんだっけあの技。
 背に乗ったヤミラミが、風に飛ばされたカゲボウズを捕まえた。
 泥水にまみれた今にも泣きそうな顔のカゲボウズを連れて、ヤミラミとポリゴン2が部屋に戻ってきた。
 雨風にさらされていたカゲボウズは、部屋に入るなり僕に飛びついてきた。Tシャツが泥だらけになったけど、台風接近中のなか、外で雨風にさらされていたんだから無理もない。
 僕はお疲れ様、とヤミラミとポリゴン2の頭をなでた。ヤミラミは誇らしげに胸を張った。ポリゴンは相変わらず無表情だった。

 ふと視線を感じた。部屋が暗い。
 窓の外を見ると、カゲボウズたちがわらわらと集まってこちらを見ていた。10匹、いや20匹はいるだろうか。
 みんな雨やら泥やらで濡れて汚れていた。そうか、こいつらみんな、外で雨風に打たれてたんだな。で、この台風接近中の中、窓を開ける奇特な家なんてここくらいだから、ここの宿つきのカゲボウズたちがみんな寄ってきた、と。
 僕は手まねきして、入りなよ、とカゲボウズたちに言った。カゲボウズたちはわらわらと部屋に入ってきた。
 決して広いとはいえない4畳半が、濡れた黒い布で埋め尽くされる。ヤミラミは僕の肩によじ登ってきて、ポリゴン2はパソコンに入っていった。
 とりあえず、みんな泥やらほこりやらで汚れているし、部屋の中だけどしょうがない、洗濯しよう。


 そう思って水場から金ダライを持っていこうとしたちょうどその時、どんどんとドアを叩く音がした。
 出てみると、全身濡れた男の人が立っていた。確か、ここのアパートの人で……確か、よくカゲボウズを洗濯して干している人だ。

「す、すみません! あの、この部屋にカゲボウズたちが集まってきませんでした?」
「あ、ええ、はい。台風にさらされててかわいそうだったんで」
「な、何かすみません。いつも俺の部屋にいる連中なのに……」
「いやいや、気にしないでください。遊び相手が増えてこいつも喜んでますから」

 そう言って、僕は肩の上のヤミラミを指差した。ヤミラミはそうだと言うようにけらけらと笑った。
 男の人は、僕が手に持っている金ダライに気がついた。

「もしかして……これから洗濯ですか?」
「あ、はい。みんな汚れちゃってるんで」
「じゃあ、俺も手伝います! これでも俺、一応ポケモントリミングセンターで働いてるんで!」

 トリマーって。プロじゃん。すごいなぁ。そんな人がこのアパートにいたんだ。
 僕はもちろん喜んでお願いした。さすがにカゲボウズの数が多すぎて、ひとりで洗濯するのは辛そうだったし。


 どうやらこの台風の接近でお店を今日は早めに閉めたそうで、自転車通勤だったトリマーさんはその帰りに暴風雨にさらされたらしい。
 それでアパートの前に来た時、僕の部屋にカゲボウズたちが飛び込んでいくのを見たとか。なるほど、それで僕の部屋にまっすぐやってきたのか。

 とりあえず、身体を拭いてくださいとトリマーさんにタオルを渡した。
 服も濡れてたから、同じアパートだし着替えに行ってもらえばよかったんだけど、ちょうど暴風域にでも入ったのか、狙ったかのように風と雨が強くなった。
 これだとどちらにせよずぶぬれになってしまう。他の部屋に行くには外階段を通らなきゃならないし。というわけで、僕のTシャツとズボンを着てもらうことにした。

 トリマーさんが着替えている間に、僕は畳の上にブルーシートを敷いた。カゲボウズたちにはちょっと浮かんでいてもらって、ちゃぶ台をどけて、4畳半にピッチリと敷き詰める。
 着替え終わったトリマーさんが、どうしてこんなもん持ってるのか、と驚いて聞いてきた。
 僕は、大学で地学を専攻してるんです、だから屋外で使えるものなら大体持ってますよ、と言った。トリマーさんはブルーシートをつまみながら、これがあったら雨でも選択できるなぁ、と小さくつぶやいていた。

 金ダライをブルーシートの上に置き、ポリタンクにためていた水をタライに入れた。万が一断水した時のためにと思っていたんだけど、まぁ多分大丈夫だろう。
 水を張ると、すぐにカゲボウズたちが何匹かタライの中に飛び込んできた。トリマーさんは、こら待て、順番、とかカゲボウズたちに言い聞かせていた。本当にいつも洗ってるんだなぁ、と思った。
 トリマーさんは慣れた手つきでカゲボウズを洗う。気持ち良さそうに目を細めるカゲボウズ。まだかまだかと順番を待つカゲボウズたち。
 僕はお湯を沸かしたり、洗われた子をタオルで拭いたりした。トリマーさんの手つきがよすぎて、手を出すと逆に邪魔な気がすると思ったから。
 肩の上のヤミラミがぴょいと床に下りた。見違えるほどきれいになったカゲボウズたちを見て、ヤミラミはとことことトリマーさんの方へ行った。

「お? よかったら、ヤミラミもシャンプーしようか?」
「でもそいつ、水苦手ですよ?」
「大丈夫大丈夫。そういうの慣れてるから」

 ううむ、さすがプロ。かっこいいなぁ。
 畜生ヤミラミの奴、大人しくシャンプーされやがって。プロすげぇ。
 そういえば君、とトリマーさんが言った。

「この前、カゲボウズと一緒にホース持ってヤミラミ追いかけまわしてたよね?」

 見られてた……!!


 4畳半の天井にロープを張って、カゲボウズをずらっと吊るす。
 おぉ、すごい数だ。天井が真っ黒だ。
 僕はトリマーさんとコーヒーをすすりながら天井を見上げた。

「何と言うか……威圧感がありますね」
「これだけ集まるとすごいなぁ」

 天井を埋め尽くす大きな黒いてるてる坊主。3色の目がじっとこっちを見降ろしている。
 ヤミラミがじゃれてきた。これまでにないほどふわふわな毛並み。ヤミラミもとても機嫌がいい。プロすげぇ。
 お店の場所も教えてもらったし、今度行ってみよう。



 暴風域を抜けるまで、もう少し。
 台風が過ぎ去るまで、あと1晩。





おわる。



【書いてもいいのよ】
【描いてもいいのよ】
【何してもいいのよ】

台風が来たので書いてしまった。
でも自分の住んでいるところは思ったほど風は強くなかったです。雨はそこそこでしたが。

CoCoさんの毒男さん勝手にお借りしました。ありがとうございました。


  [No.615] 新ジャンル:カゲボウズ部屋干し 投稿者:No.017   《URL》   投稿日:2010/09/09(Thu) 12:37:19   61clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
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>  4畳半の天井にロープを張って、カゲボウズをずらっと吊るす。
>  おぉ、すごい数だ。天井が真っ黒だ。

カゲボウズ部屋干しとな。
台風っておいしいシチュエーションだ。
部屋にカゲボウズ干したらきっとよく眠れるに違いない。


  [No.614] 【カゲボウズ憑き物件】まとめ 投稿者:No.017   《URL》   投稿日:2010/09/09(Thu) 08:30:33   39clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
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カゲボウズが洗濯された結果がこれだよ!
http://masapoke.sakura.ne.jp/pkst/index.html

「書いてみた」等で正式タイトル(?)がついていなかったものは、ひとまずこちらで適当につけてしまいました。
こういうタイトルにして欲しいみたいな場合は申請ください。


Cocoさんの書いてみたを広げた功績は大きい……

【みんなで書いてみたをまとめたのよ】



※独立スレだったけど、台風便乗


  [No.685] 黒色徒然草 投稿者:   投稿日:2010/10/01(Fri) 18:06:55   74clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
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俺は大学生だ。大学つっても、農大携帯獣獣医学科なんだが。まぁ、それもあって俺は今日からアパート暮らしを始めることになった。しかも運良く発見したアパートは超格安。俺の新しい船出を、神様も祝福してくれてるってことか、うん!

――――――と、数十分前までは俺もそう呑気に思っていた。

「ここが幸薄荘……?」
俺はその新しい住居を見た途端一瞬で絶句した。正直に感想を言おう。クソボロい。下手すれば、ここ本当に人が住んでいい場所なんだろうか、と疑ってしまうほどだ。念の為パソコンから印刷した地図を見たが、やっぱり間違いなさそうだ。てか、アパートの門の近くに『幸薄荘、新規入居者募集中』と書かれた古い板が打ちつけられているから当たり前か。傍らの相棒・くろろ(種族名で言うならグラエナ)が、不満げな鳴き声を上げる。お前も嫌か。嫌だよな、分かるよその気持ち。だって俺も嫌だし。……だがしょうがない。
「……行くぞ、くろろ」
そう言った刹那。
ビシャアア!!
激しい水音と共に、全身を冷たい水の感触が襲った。身体を見ると全身泥水まみれ。くろろも被害を受けたらしく、全身真っ茶色。なんてこった、くろろが色違いになってしまった。呆然とする俺を尻目に、大型トラックが呑気に走って行った。……入居初日からこの大惨事。さすが幸薄荘、その陰気な名前は伊達じゃない。一瞬走って行って文句を言ってやろうかと思ったが、やめた。もやし男の俺にそんな脚力はない。仕方なく、そのままとぼとぼ歩いて大家さんに挨拶しに行く。初っ端から大家さんに驚かれた。そりゃそうか。
とりあえず俺の部屋に直行。部屋入ったら着替えるか。くろろも洗ってやんないと。そう思いながら、俺は何気なく部屋のドアを開けた。
…………真っ黒いテルテル坊主が部屋を埋め尽くしていた。
ピシャッとドアを閉める。何あれ。前の住民のいやがらせか。いや、でもあのテルテル坊主見覚えが……あ、そうだ、思い出した。カゲボウズだ。なんだポケモンか、なら平気だよな、ということでドアを開ける。今度は青い無数の眼とばっちり視線が合ってしまった。本能的な恐怖で反射的に再び閉める。傍らのくろろが苛々したように吠えた。分かってるって。くそ、こうなりゃ男は度胸だ。思い切ってドアを開けた。
「……あれ?」
部屋は空っぽだった。少し古びた感じの埃まみれの部屋だけが視界に広がっている。ふと窓を見ると空いている。あそこから入ってきて、再び出てったんだろうか。でも何でカゲボウズが民家に? 腑に落ちないまま着替えて、くろろを連れて外に出る。
アパート外に水場があるのを発見。運のいいことにたらいも置いてある。俺はたらいに水を張ると、再び部屋に戻って家から持ってきた『携帯獣専用ボディシャンプー・長毛タイプ用』を持ってきた。この際洗ってやれ。戻ると、くろろは既にたらいの中で待機している。こいつはシャンプーが好きなんだ。シャンプーを適量掌に取った時だった。頭にこつんと何かがぶつかった。何気なく顔を上げた俺は、次の瞬間たらいの中に尻もちをついてしまった。くろろが痛そうに悲鳴を上げる。俺達の頭上にはかなりの数のカゲボウズ達が浮遊していた。おそらくさっきのやつらだろう。興味津々の目で見下ろしてくる。唖然としていた俺の尻に、突然痛みが走った。悲鳴を上げて立ち上がると、くろろが牙をむいて唸っている。噛みつかれたらしい。ごめん、お前のこと忘れてた。
とりあえずシャンプーを開始する。といっても、カゲボウズ達に凝視されながらのシャンプーなので、なんだか落ち着かない。くろろも同じなのか、時折周りを威嚇する。こら動くな、目に泡が入るぞ。カゲボウズ達は自分達も洗ってほしいのか、俺の頭にまとわりついてくるが、こいつらに毛は生えてないからこのシャンプーでは無理だ。だが向こうはそんなこと気にしないのか、平気で金だらいの中に飛び込んでいく。そこでくろろがとうとう堪忍袋の緒が切れたのか、突然1匹のカゲボウズに飛びかかった。寸前で抱きつき止める。唸り声を上げながら歯をむき出すくろろの首にしがみつきながら、俺は慌てて叫んだ。
「く、くろろ待て! ウェイト!」
俺の指示に渋々くろろは動きを止めた。やれやれ。ゴーストタイプに噛みつくは効果抜群だ。下手したら引っ越し初日から大ごとになるところだった。
噛みつかれそうになったのが怖かったのか、カゲボウズ達は潮が引くようにくろろの周りからいなくなった。代わりにいっそう俺にまとわりついてくる。真っ黒い体のせいで手元がよく見えない。「ごめん、ちょっとどいてくれ」と声をかけながら、俺はカゲボウズを掻き分けてシャンプーを強行する。
カゲボウズ達のせいで進行速度が格段に落ちたシャンプーは、午後5時半にようやく終了した。あぁ、しゃがみっ放しで首が痛い、腕が痛い、膝が痛い。ついでに噛みつかれた尻も痛い。ぐったりして部屋へと戻る俺達の後ろを、カゲボウズ達がついてくる。部屋の中にまで入ってきたが、追い返す気力もない。実家から持参した弁当を食べるが、その間もカゲボウズ達は俺達の周りを飛び回っている。くろろはカゲボウズが自分のポケモンフーズの皿に近づくたび、また唸り声を上げている。疲れるから騒ぐなよ。
あぁ眠い。食器を片づけた俺は、部屋の床に大の字に寝転がった。傍らにくろろがうずくまって眠り始めた。ぼんやりと開けっぱなしの窓を見ると、外は夕焼けだった。橙色の空を背景に、空を漂うカゲボウズの影が不思議なシルエットとなっている。何故かその風景に見とれながら、俺は意識が薄らいでいくのを感じた。顔を覗きこむカゲボウズ達の顔がぼやけてくる。
……明日になったら、カゲボウズ達にえさでも買ってきてやろうかな。
その思いを最後に、俺の意識はブラックアウトした。




おわるのか

【書いてもいいのよ】
【描いてもいいのよ】
【批評してもいいのよ】

――――――――――――――――
カゲボウズ人気の勢いに便乗してこんな新参者が書いてしまいました。
ちなみに携帯獣とはポケモンのことです。


  [No.753] まとめ更新しました。 投稿者:No.017   《URL》   投稿日:2010/10/20(Wed) 22:56:22   53clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
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どうもNo.017です。

まとめ更新しました & URL変わりました。
http://masapoke.sakura.ne.jp/pkst/index.html

久方さんのと柊さんのをあらたに加えさせてもらって、
ポケストアーカイヴという形で手動本棚のようなもの作りました。
今後、ポケストでまとめたいと思うようなものきましたら、ここに記録していきたいと思います。

柊さんへ、
掲載しちゃいましたがよろしかったでしょうか…?
問題があったら言ってくださいね。


  [No.755] Re: まとめ更新しました。 投稿者:兎翔   投稿日:2010/10/21(Thu) 08:21:49   56clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
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まとめ更新お疲れさまです。
お願いがあるのですが、「たまには天日干しでも。」のタイトルを「洗濯日和【描いてみた】」に変更していただけますか?

よくよく文章読んだら、みんな明らかに天日干しですよね。
「たまには」とか意味わかんないですよね…orz

お手数おかけして申し訳ありません。

追記:変更確認しました。ありがとうございますm(_ _)m


  [No.889] Re: まとめ更新しました。 投稿者:   投稿日:2010/10/31(Sun) 00:56:37   62clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
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パソコンの調子が悪かったせいで、返信遅れてしまいまして申し訳ございませんでした(汗

まとめ更新ありがとうございました。
全然問題ありませんよ! むしろ掲載していただいてもらって感激です!
それでは、本当にありがとうございました。