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  [No.988] 白黒終末・裏話 投稿者:紀成   投稿日:2010/11/22(Mon) 20:47:34   64clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
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彼女の物語は面白い。僕と同い年なのに、既に出版までされるほどの実力を持っている。
うちのクラスにもファンは多い。すごいと思う。

思うんだけど・・


僕の名前はミコト。え?どっかで聞いたことがある?そりゃそうだよ。多分その子は、最期は氷づけにされたんじゃないかな。
合ってるなら、話は早い。その物語を書いたのは、僕の親友なんだ。で、その主人公のモデルを僕にした。
こちらはいい迷惑だよ。『氷づけ女』って呼ばれるようになったんだから。別にこの世界をモノクロにしたいなんて思ってないよ。退屈なのは分からないでもないけどさ。

「ミコトならそう思うかと」
「自分をモデルにすればいいのに」
「嫌よ。気が引けて書く気が失せちゃうから」
彼女・・ミスミは美人だ。キリリとした目と、寸分の狂いもない顔のパーツが見事だ。成績も申し分ないし、先生からの受けもいい。
ただ、性格はひどい。友達をモデルにしたキャラを氷づけにしたり、世界をモノクロにするようにしたり。書いている本人はあっけらかんとした表情だが、その小説のせいで僕のオーダイルはれいとうビームが出せなくなってしまった。
「自分が出したら僕が凍るんじゃないかって思うらしい。凍らないよ、僕は」
「っていうか、ミコトって何でワニを二匹も持ってるのよ。あんな厳ついの一匹でいいじゃない」
「かっこいいからだよ。ワルビアルにオーダイル、オマケとしてランクルス」
「あーあ、ランクルスが可哀相。あんな厳つい二匹に囲まれて」
僕のポケモンは今言った通り、この三匹。何故ランクルスがいるのかはよく聞かれるけど、ミスミだってバシャーモとダストダスという異様な組み合わせを持っている。
「君だってダストダスは入れる必要無かったんじゃないの」
「失礼ね。あの子良いところ沢山あるのよ。人混みを掻き分けてくれるし」
「それってただ単に臭くて人がどいていくだけじゃないの」
最初ミスミのポケモンを見た時、ポケモンにもこんなに差があるのかと悲しくなった。だって、そう思ってしまうくらうバシャーモの隣にいたダストダスは惨めに見えたんだから。
「確かに、毒タイプは苦手って人は多いわ。ファンレターを送ってくる人も時々言ってくるから」
ここで仕事の話に持ってくるのも、ミスミらしいといえばミスミらしい。
「でもね」と彼女は付け加えた。
「好きな人は好きなのよ。ミコトの手持ちが苦手な人や、ゴーストタイプが苦手な人も絶対いる」
そこまで言ったところで、僕とミコトの間にある机がガタッと揺れた。人は通っていない。ポルターガイスト?
・・そういえば、霊感が強い子が言ってたな。この曲教室の隅っこに、何かが沢山いるって。そしてそれを従えるような人がいるって。
「それでも、ゴーストタイプが好きな子はいる。私だって、ダストダスが大切だから」
ここまで愛される毒タイプも珍しい。まあ、僕も三匹が大切だし、悪いことを言うつもりはない。
いや、それとは別に。

「僕をモデルにするのはいいとして、挙げ句の果てに氷づけにするの、やめてよ」
「じゃあ何が良かった?白竜に燃やされるとか、黒竜に焦がされるとか」
「君ってホント黒いよね。色んな意味で」

無駄な言い争いをしていると、後ろの方で笑う声がした。ミスミが立ち上がる。
「何がおかしいの?」
後ろの子が読んでいた本を閉じる。
「凍らされるとか、燃やされるとか、焦がされるとか・・。面白いと思って」
「え?」
面白い?この表現が?
「褒め言葉として受け取っていいのかしら」
「うん。でも、ゴーストタイプの悪口はやめてほしいな」
「ゴーストタイプが好きなの?」
「無駄の無い動きって良いよね。だから好き」
彼女は立ち上がった。空気が動いた気がする。何かがうごめくような。
「ギラティナのことも書いてほしいな」
そう言い残し彼女は教室を出て行った。うごめく何かも一緒に。
「ギラティナ、か・・」
ミスミがニヤリと笑った。こういう時の表情は、だいたい新作のネタを思いついた時だ。


次の日から、ミスミは昨日の彼女の観察を始めた。
一度興味を持った以上、彼女が追求をやめることはない。