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  [No.990] 夜に溶けて 投稿者:海星   投稿日:2010/11/23(Tue) 17:53:32   45clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
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   ※ちょっとした、本当にちょっとしたホラーです。いや、ホラーもどきです。何しろ私の腕なのであまり怖くないと思いますが、極端に無理という方はご遠慮ください。でも本当に怖くないです。この注意書きは一応つけています。












 ―――… 喉が痛い。夜の冷たく吹き付けてくる空っ風が、喉の中に直接入り込んでくるからだろう。ぐったりとしたリナを腕に抱き締め、必死になって走る。ポケモンセンターの屋根に付いているモンスターボールのマークを探すが、見つからない。見つからない見つからない。段々速くなる鼓動と共に、焦りが大きくなっていく。腕の中のリナが冷たくなっていく気がする。どうしようどうしよう。いつの間にか、路地裏に入っていた。背の高い塀で、視界が狭まれる。振り返る。壁。前を見る。壁。何処も彼処も壁。壁。壁。リナの首がかくん、と傾いた。慌てて額に手を当てる。体温が急速に下がっているのが素人の私にもはっきりと伝わった。どうしようどうしよう。どうしよう! リナが死んじゃった。死んじゃった。死んじゃった。此処は何処? 私は何をしているの? 何で? 如何して? 何故私のリナは死んじゃったの? 如何して、如何して、如何して!! …―――



 ―――… ぺたり、と、何かが張り付いたような音が自動ドアの方で、した。哺乳瓶を持ったまま振り返る。が、何も見えない。外が暗いからだろう。手元でまだ赤子のルリリがミルクを催促して泣き出した。ミルクをあげなきゃ。しかし、外も気になる。彼女は一瞬迷ったが、隣で包帯を片付けていたラッキーにルリリの世話を頼んでドアに向かうことにした。パートナーのラッキーは優しく彼女の頼みを受けてくれた。哺乳瓶をそっと渡す。すぐに慣れた手つきでゆっくりと、ラッキーはルリリの口元に哺乳瓶のゴムの部分を当てた。するとルリリはすぐに泣き止んで、嬉しそうに表情を和ませミルクを飲み始める。ほっとして、彼女はドアに近付いて行った。すぐ近くにまで着くと、滑らかな機械音と共に自動ドアが開く。しかしそこには誰もいなかった。顔だけ外に出して辺りを確認したが、気配すらない。空耳かしら…戻ろうと視線を戻した時、自動ドアにはっきりと手形が付いているのに気が付いた。小さな手形が。 …―――



 ―――… 今日は今年一番の冷え込みだ、と今朝のニュースで聞いたが、本当らしいな。コートの襟元をきゅっと狭めて速足で歩く。如何してこんな日に限って、いつもは無い残業があるのだろう。田舎では無いが都会でも無いこの町の電車の本数は少ない。夕方の終電はとっくに通り過ぎていた。つるつるに凍った水溜りに足を滑らせそうになり、慌ててバランスをとる。転ばなくて済んだが、もうこんな歳だ…腰が痛んだ。手を背中に当てて歯を食いしばる。ぎっくり腰を経験したこともあるし、最近は少しでも衝撃があると腰が悲鳴を上げる。そして、そんな時は、こうやって手を当ててじっとしていると大抵の場合は痛みが引いていく。ふと、腰の痛みの原因である氷に映る、苦悶の表情の自分の顔が目に入った。皺だらけだ。いつの間にこんなに歳をとったのだろう。若い時だったら、滑って転んだってどこも痛くなかったのに。むしろはしゃぎ回って転んでばかりいた。そういえば、今の家内にプロポーズした時も転んだな。結局承諾してくれて今の夫婦になっている訳だけれど、確かその時の台詞は「貴方ひとりだと心配だから」だったな。恥ずかしい、苦い思い出である。氷に向かって笑ってみた。痛みに引きつった笑いであったが。その時、ふと、影が入ってきて氷に何も映らなくなった。おや、と顔を上げると、何も無いのにすっと影だけが落ちている。きょろきょろと影の落とし主を探したが、気付いたら影も消えていた。気味が悪いな…と、もう一度氷に向かって顔をしかめて見せた時、腰の痛みが無くなっているのにはっとした。 …―――



 ―――… 夜風が髪の毛を乱す。ケタケタケタ。冷たく体温を奪ってゆく。ケタケタケタ。さあ怖いなら泣けば良い。ケタケタケタ。さあ泣きながら叫ぶが良い。ケタケタケタ。何処からか笑い声が聞こえてくる。それと共に、何かを誘うような甘い声も。でも、私はちっとも怖くなんかなかった。何故なら、私にはリナがいたから。ぴくりとも動かないけれど、でも、肉体は私の腕の中にあるんだもの。ケタケタケタ。ケタケタケタケタ…。ああ、煩いな。今私はリナと二人きりなのに。邪魔されてる気分。私も気持ちも知らないで、こんなに悲しいのに…。リナが死んじゃった。私の唯一のトモダチが、死んじゃった。悲しい。苦しい。私も一緒に死んでしまいたい。ケタケタケタ。お前からは悲しみの感情が出ていない。ケタケタケタ。偽って言葉を操るのは止めときな。ケタケタケタ。お前から溢れ出ているその感情は、言葉にするなら、喜びだな。ケタケタケタ。ふざけないでよ、私から喜びの感情が出ている? そんな訳無いじゃない。今も胸がいっぱいなのよ。涙を堪えるので精一杯。リナが死んじゃった。リナが死んじゃった。悲しい以外の感情が出ているはず無いわ。ケタケタケタ。人間ってのは良く分からん奴だばかりだな。ケタケタケタ。お前みたいなのは初めてだ。ケタケタケタ。俺を怖がらないのは勿論のこと、死んだ相棒を見下ろしながら喜んでる。ケタケタケタ。お前はきっと俺の仲間だ。ケタケタケタ。仲間? 私は誰にも所有されて無いの。私は誰にも分かってもらえる訳がないの。ていうか、貴方誰? 知らない変なひとに仲間呼ばわりされる程嫌なことも無いわねえ。ケタケタケタ。良い根性してる。ケタケタケタ。そんなに言うなら、見せてやろう俺の姿を。ケタケタケタ…ケタケタケタ…。 …―――



 ―――… 気が付くともう外は真っ暗だった。夢中でパソコンを操作していると時が経つのを忘れる。画面の左上の一時保存のアイコンをダブルクリックし、身体を伸ばす。目が随分疲れている…冷蔵庫に閉まってある目薬を取りに行こうと椅子から立ち上がり、部屋の中も真っ暗だということに気が付いた。照明をつけようと手を伸ばすが、カーテンの方が近いと思い、先にカーテンを閉める事にする。留めてあるボタンを外し、ギンガムチェックの斜光カーテンを手繰り寄せる。シャっと気持ち良い音と共にきっちりと閉めてから、改めて照明のスイッチに目を向けた。不意に光が横切る…いや、横切った気がして、目で追うと、そこにはツインテールの小さな女の子みたいな形が光っていた。何だこれは。確かにさっきまではネットサーフィンしていて、こんな感じの幻想的かつ可愛らしい幼女の絵を見た気もするが。驚いて瞬きをする。目を開けると、もうそこには何も無かった。きっと本当に目が疲れているんだろう、ということにして、今度こそ部屋を明るくする。パチン、と照明が輝きだし、眩しい。オレ、霊感なんて無いんだけどなあ。 …―――



 ―――… もういいから! 叫んで、一方的に電話を切る。ツー、ツー。携帯から鳴り響いてくるそのお決まりの音に無性に腹が立つ。結局、もう会うことは無いだろうなと思うと一瞬寂しく思ったが、すぐにそんなことない、と考える。付き合い始めた切っ掛けは、同じ電車に乗ったことだった。たまたま隣り合わせて座っていて、ふと彼の鞄に付いているキーホルダーが目に付いて。それは、私の大好きなバンドのファン会員限定のキーホルダー。勿論私も携帯に付けている。それで声をかけて、意気投合して。はにかんだような彼の笑顔に胸がどきどき波打った。しかもその時丁度電車は混んでいて、距離が近くて、これが運命なのだろうかと本気で思った。共通の趣味を持つ人同士が仲良くなるのは早い、と言うけれど、私達はその典型的な例で、恋人同士になるにはさほどの時間はかからず、ライブを一緒に見に行ったり、普通にデートしたり。…仲良くやってたんだけどな。最近、突然彼からの連絡が途絶えた。それでやっと電話が繋がったのかついさっき。彼は、別れたいと言ってきた。理由を聞いても謝るばかりで何も言わない。ごめん、ごめんね、怒んないで…。ついにぶちギレて電話を切ったけれど…。いつの間にか、手汗で手の平がべたべたしている。無意識に握り締めていた携帯電話のキーホルダー――出会いの切っ掛けの今や憎らしいキーホルダー――が揺れた。その時、すぐ近くで泣き声のような、か細い声が聞こえた。驚いて短く悲鳴を上げる。振り向いても何もない。あるのは、ざっくりと深い心の傷跡だけ。 …―――



 ―――… もういいだろ。ケタケタケタ。笑い声が徐々に近付いて来る。でも、私は動かない。耳を澄ませて、声の聞こえる方をじっと見据える。ちらりと薄紫色が闇から垣間見えた。ケタケタケタ。そんなに注目するなよォ。ケタケタケタ。そして、ふわりと、闇が溶けるように消え、私の目の前には怪しい緑色の玉を幾つか浮かべた、にやにや笑う生き物が現れた。玉と同じ色の瞳で私を見てくる。ケタケタケタ。俺は魂が集まってできている。ケタケタケタ。だけどねェ、自由に動けないんだな。ケタケタケタ。見えるかい、俺の足元が。ケタケタケタ。昔、このちっぽけな石に繋がれちまってね。ケタケタケタ。きっと睨み返し、私はリナを更に強く抱き締める。だから、何。私に何をしろって言いたいの? あんたから滲み出てくるその感情を言葉にするなら、お腹が空いた、かしら。ケタケタケタ。そんなんじゃぁない。ケタケタケタ。俺はもう封印された身、腹なんて空かない…いや、元々腹という部分が無い。ケタケタケタ。何よそれ。ジョークのつもり? 変ね、あんた。おかしい。狂ってる。ケタケタケタ。お前の方が狂ってるよ? ケタケタケタ。きっと、仲間の魂がやってくる。ケタケタケタ。何の話をしてるのあんたは。魂がやってくる? リナの魂が? ケタケタケタ。魂はすぐそこに来てる。ケタケタケタ。魂は悲しみの感情で溢れてるなァ。ケタケタケタ。俺は魂で出来ているって言っただろ。ケタケタケタ。さあもう来た。ケタケタケタケタ。そんなに怯えた目をするな。ケタケタケタ。さっきまでの勢いはどうしたんだ? ケタケタケタ。じゃあ始めようか、俺の言いたいこと、それは、タマシイガホシイホシイホシイホシイホシイホシイホシイ! …―――


 
 ―――… テレビのニュースキャスターって最近可愛い子ばっかりだよな。そう思いながら画面を見つめる。報道していたのは、失踪事件の話だった。ここのところ、この話題ばかりだ。何でも、新米トレーナーの女の子が消えたらしい。いや、正確に言えば、町の一番目立たない路地裏まで掠れた足跡が続いていて、しかしそれが行き止まりのところでぱったりと消え、そこに、その女の子の手持ちだと思われるキルリアのすっかり冷たくなった身体が横たわり、その横には女の子の血痕が数滴落ちていた、とか。全く、物騒な世の中だ。女の子には親も親戚もいなくて、キルリアの弔いは警察が行ったらしい。 …―――



 ―――… キィキィ叫ぶ小さな光を、薄紫色の封印ポケモン――俺は微かに笑んで見つめる。何でも、トレーナーである女の子が数日前に突然いなくなったらしい。その時、光である彼女は肉体から離れている状態…死んでしまった状態で、自分の肉体とトレーナーを探して彷徨ったようだが、肉体を見つけたときには既にトレーナーの姿は無く、代わりに残っていたのは血痕だった、とか。そうかそうか、と適当に相槌を打ちながら、舌なめずりをする。こいつはあまり力になりそうにない。今度はもっと大きな力の魂を取り入れなければ。あの女の子も弱かった。死に憑りつかれている人間の魂が欲しい。欲しい。欲しい。もっと力を蓄えれば、この要石も壊れるはず。自由になりたい。俺を動けなくした人間達の魂を吸い取ってやりたい。ああ、力が欲しい、欲しい。ちらり、と光を見、光が自分を見て喋るのを止めたのを確認すると、にやりと笑って見せた。こんなに小さく弱いお前の魂でも、俺に吸い込まれればいずれ大きくなれる。感謝しろ。瞬間的に、光を身体に取り込む。甘い、蜜のような濃厚な味。もっと欲しい、欲しい。欲しい。欲しい。ホシイ …―――





―――――

 如何してこうなってるんだ!
 もっとふぁんたじー書くつもりだったんですけど、如何して私の指は「死」とかタイピングしてるの!

 あんまり怖くないと思いますが、これが海星の限界だと思って下さいorz

 うぅ…ボキャブラリーが欲しい…です…


【書いてもいいのよ】
【描いてもいいのよ】
【批評…は…えっと…その…お手柔らかに…】


  [No.992] Re: 夜に溶けて 投稿者:スズメ   投稿日:2010/11/24(Wed) 20:43:51   42clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
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  魂守り 販売中!

  歩き回る怨霊からあなたを守ります。(きっと)
  守られている その安心感があなたを守る(はず)

 雰囲気壊してごめんなさい。
 ミカルゲ! 強そうなミカルゲだ・・・
 家のミカルゲは庭に埋まっていたんですよ。
 ええ、もうそれは、見事に。
 同じ種族でも、こんなに変わるものなんですね。
 

 小さな手形・・・怪しい影、ケタケタケタ・・・こ、怖い。
 特に、ケタケタケタという部分が。
 
 
 


  [No.1010] ひとつ買います 投稿者:海星   投稿日:2010/12/04(Sat) 12:37:12   67clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
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> 魂守り 販売中!

 www
 とりあえずひとつ買います
 
> 家のミカルゲは庭に埋まっていたんですよ。

 埋まw
 想像してみると何とも可愛らしいwww
 掘り起こしたいですよっこらせ

 コメントありがとうございました!
 怖い…だなんて恐縮ですorz
 ケタケタケタ(゜∀゜)