あたしとあいつは仲良く洞窟で雨宿りをする羽目になった。
「ったく・・ついてねぇな」
「そうだねぇ」
せっかくの決闘日和だと思った空は、あれよあれよという間に真黒になり、降り頻る雨は雷鳴を呼んで、とてもじゃないけど続行は不可能だった。
たまには場所を変えて、なんて提案をしなきゃ、すぐにでもお互いの村に帰れるいつもの場所からこんな遠くまで来なかったのに。
「なんだよ、さっきまであんなに晴れたのにさ」
「お前の日頃の行いでも悪いんじゃないのか?」
からかうあいつがあたしを小突く。言ったなぁ、あんたこそどうなのよ。小突き返す。
広くない洞窟。正直に言えば、ここで決闘の続きをやろうかな、とか少し考えた。
でもここは明らかにあたしが不利だ。広けた場所であればあたしは速さを活かせてあいつを掻き回すことができるけど、こんな場所だと伸縮自在なあいつに敵わない。
何より、お互いをこんな簡単に小突きあえるほど狭い場所、二匹で暴れ回ってごらんよ。きっとあっという間にぶち壊れちまう。
雨が降るのがもう少し遅ければ、暴れ足りない体はまだ火照っている。
「っくしゅ」
となりで間の抜けたくしゃみ。
「なんだよ、冷えたのか?」
「うるせぇな」
お前と違って毛皮なんて着てないんだよ。蛇だもんなぁ、そのまま冬眠するんじゃないよ?
他愛もない会話。
そいつを邪魔するのがやってきた。
雨宿り代わりに飛び込んだ洞窟は、どうも先にお客がいたらしく、向けていた背に迫る殺気。
ゴルバットの歯が喰いこむ前に同時にあいつとあたしは振り返った。
普段ならもっと早くに気がつくはずなのに、どうしてあんな時に限ってあたしの勘は鈍ったのか。
わからない。
多分、あいつとの会話に気を取られ過ぎていたから、かもしれない。
雨が上がる頃には、洞窟には、ちょっとした蝙蝠の山ができてた。
「良い運動にはなったな」
「まぁね」
結局のところ、後から後からわらわらやってくるこいつらをあたしとあいつはぶちのめしてしまった。
暴れ足りなくて不満があったあたしたちに勝負を挑む方が悪い。
「ところで」
「なに」
「雨あがったぞ」
「そうだね」
顔を見合わせる。
「続きと行くか?」
「当たり前でしょ」
これからが絶好の、決闘日和だとばかりにお日さまがのぞいていた。
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余談 いつだったか洞窟で雨宿りする二匹が書きたいとか言ったような記憶があるので。
この二匹を覚えておられるお方がいるんだろうか。
【なにしても良いよ】
【何気ない感じで良いよね?】
【御題:雨】