ポケモンストーリーズ!投稿板
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  [No.1306] 踏み間違えて 投稿者:紀成   投稿日:2011/06/10(Fri) 21:07:43   60clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
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誰のためでもない、ただ自分が生きるために―

僕のご主人は、ポケモントレーナーです。僕達ポケモンを使って、バトルをします。ポケモンには色々な種類があり、水、草、炎、電気、エスパー、ゴーストなど数え切れないくらい沢山の種類に分かれています。
中には複数持つ物もいます。姿形は例外を除けば、全て違います。例外というのは、進化する物のことです。前の姿を少し写したような外見です。
まあ、力や使う技の威力は前とは比べ物になりませんが。
今では進化した僕ですが、最初は本当に弱くて、せっかくバトルに出してもらってもすぐに負けてしまい、ご主人に迷惑をかけていました。勝ち誇ったような顔の相手を見て、何も出来ない自分を情けなく思いました。
でもご主人はそんな僕に向かって、『また次頑張ればいい』と言って頭を撫でてくれたのです。失望するどことか、次に期待してくれているご主人の言葉がとても嬉しかったのを覚えています。
ご主人を喜ばせたい一心で、僕は修行に励みました。何回倒されても、再び立ち向かっていく。強くなるには粘り強さも必要でした。そしてそれ以上に必要なのが、力を貪欲に求めることでした。
欲しいと思って修行するほど、必ず力がつくのです。気がついた時には僕は進化していました。おかげでご主人の手持ちのトップを任されるくらいに強いポケモンとして認められました。
バトルでも負けることは無くなりました。

僕は変わりました。周りのポケモン達も、とても強くなっていました。進化すると性格も微妙に変わるような気がしました。臆病だった奴が少しだけ自分を見せようとするようになっています。
ですが、変わったのは僕達だけではありませんでした。

ご主人も変わりました。年を少し取り、少年から青年になりました。成長は喜ばしいことです。現に、僕らも強くなって嬉しいと感じています。
ですが変わるということは、嬉しいことだけではありません。
変わった…というより、変わり果ててしまったと言った方がいいでしょう。最初の優しいご主人は何処へやら、今ではすっかり勝つことだけを求めるようになってしまったのです。
一度、捕まえたばかりのハーデリアを試しにバトルさせ、瀕死状態にさせてしまったことがありました。バトルには勝ちましたが、その後ご主人はハーデリアを回復させた後、ボールから出して言いました。
『お前みたいな弱い奴はいらない』
そう言って、追い払ってしまったのです。その時のハーデリアの目は哀しみと憎しみに満ちていました。ポケモンは生き物です。使い捨てして良い物ではありません。周りの彼を知るトレーナーは口々にそう言いました。
ですがご主人は、全く彼らの言葉に耳を貸そうとしませんでした。それもそのはずです。その時、ご主人はイッシュの8つのリーグバッジを手に入れ、あと少しでポケモンリーグに挑戦できるという所でした。
自分より実力が低いトレーナーの言葉など、聞く気にもなりません。
ゲートでバッジを見せ、最後の修行の場、チャンピオンロードへ入ってからもトレーナーが沢山修行していました。これからの辛い戦いを乗り越えていけるかどうかを確かめるため、彼らはご主人に勝負をしかけてきました。ですが彼はやはり強く、トレーナー達をどんどん倒していきます。
その中で、僕はご主人と相手トレーナー達の違いを見つけました。単に弱い、強いの問題ではなく、もっと重要なことです。
彼らは、僕達と戦って傷ついたポケモンを優しく労わるのです。薬を与えて回復するだけではなく、
『戦ってくれてありがとう』
『また一緒に頑張ろうね』
そんな単純なようで、深い慈愛の気持ちが込められた言葉を紡ぎだすのです。
その光景を見ながら、僕達とご主人は最後のトレーナーと手合わせしました。そのトレーナーは女性で、ご主人よりどう見ても年下でした。小柄で細くて、僕が技を使わなくても簡単に骨を折ってしまいそうな―
そんな体つきをしていました。
彼女はポケモンに指示を出す時も、言葉をかける時も、必ずご主人の目を見ているように、僕は感じました。ただ見ているのではなく、何か深い意味があって見ているように思いました。
そして―

最後のポケモンが倒されました。そこに立っていたのは、相手の女性トレーナーでした。僕らは負けたのです。
何が何だか分からないような目の色をしたご主人に、彼女は言いました。
『貴方の戦い方は、どうも荒々しい。そして目の色がおかしい。勝利だけを求める、貪欲な目です。戦ってくれている彼らが気の毒なくらいに。
ポケモンは道具ではありません。仲間であり、友達です。助け合い、励まし合って生きていくのです。それが出来ない、考えを理解出来ない限りは貴方はチャンピオンには決してなることができないでしょう。
―たとえ、私を倒せても』

ポケモンセンターに戻った、というより戻されたご主人は、僕達を回復した後街から連れ出しました。
ただ付いて来いという素振りを見せる彼の目は、変にぎらぎら光っていました。口から零れる言葉は、小さくて何を言っているのかよく分かりません。
しばらく何か言った後、不意にご主人が立ち止まりました。もちろん、僕らも立ち止まります。
彼は息を荒くして言いました。

『俺は間違っていないんだ。育て方も、能力値も全て計算した上でお前達を育ててきた。完璧だったはずだ!
…せいだ。…全部お前らのせいだ!あんな小娘に見下されて、今までの努力を全て水の泡にされた!この役立たず共めが!』

こんな汚い言葉を投げつけられたにも関わらず、その時の僕らは不思議なことに…本当に不思議なことに、何も感じませんでした。
ご主人に対する怒り、哀しみ、憐れみ。それらが一つも浮かんでこないのです。
僕は一歩踏み出しました。黄昏の光が腕の刃を照らし、あやしく光ります。様子が変だということに気付いたご主人が、後ずさりをはじめました。
『な、何をするつもりだ!』
僕を止める物はいません。皆、後ろで何も言わずに立っています。何を考えていたのかは分かりませんが、おそらく僕と同じことでしょう。
さっきまで散々罵っていたくせに、自分の身が危険にさらされると途端に命乞いをする。人間とは、そういう生き物なのでしょう。
そんなご主人に対する僕らの感情は、ただ一つ。

嘲り、でした。


『やめろ!やめてくれ!』
ご主人、最後に言わせてください。
貴方は道を間違えてしまった。細い今にも崩れそうな石橋を綱渡りしていた状態だった。それが、今の言葉という嵐によって根元から崩れてしまった。
その嵐を引き起こしたのは、紛れも無い、貴方です。
もしその言葉を吐き出さなければ。
もし自分の考えを改めていれば。
こんなことには、ならなかったんですよ。

僕が死ぬわけじゃない。でも、確かにその時僕の頭に走馬灯にように浮かんでくる光景があった。
強さより、ただ楽しさを求めていた頃の幼きご主人。そして、まだ弱くて頼りなかった僕。
色々辛いこともあったけど…あの頃が一番楽しかったな。

ああ、楽しかったなあ!あの頃は!貴方もそうですよね、ご主人!

腕の刃が振り下ろされた。刃の外側には、何も映ってはいなかった。

刃についた血を、僕は振り払いました。周りのポケモン達は、一部始終を見た後、思い思いの方向へ去っていきました。
僕もただの肉の塊となった人間を少し見た後、その場を去りました。

その事件が報道されているのを、ある都会に行ってからテレビで見ました。相当の実力者として有名だったのでかなり騒がれていましたが、別に僕には関係の無いことです。
今日もこの世界は普通に回ります。誰が死のうが、誰が負けようが、誰の夢が壊されようが、社会全体に支障はありません。
それから僕は、大都会の路上に住み着きました。そこに住む同じ族のポケモン達を束ね、今ではそこの頭となっています。
そこの頭になると決まった日、僕はある掟を自分に定めました。誰かに命令するということは、必ず誰かは嫌がる気持ちを抱くものです。かつてのご主人がその対象だったように。
ですが、僕は彼のように愚かではありません。

『決して、誰も信じるな』

その掟を胸に、僕は今日も薄暗い路地裏から、全てを意味なく照らすネオンを見つめているのです。


―――――――――――
ダークな話しが書きたいと思ったらこうなった。チャットの産物。
[何をしてもいいのよ]


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