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  [No.1329] 目が覚めると、そこは甲斐だった。 投稿者:チャット創作隊   投稿日:2011/06/16(Thu) 03:33:40   56clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
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作者一覧(入室順・敬称略) リナ・ラクダ・きとら・流月・きとかげ・オルカ・久方・イケズキ・朱雀・灯夢・クーウィ
 
 ※全員分写したと思うのですが、お名前が抜けている方がおられたらお知らせ下さい。(筆記者・ラクダ)
 
 15〜16日にかけて、チャットの誤字(ばんかい・判甲斐;リナさん作)を元にお話を作ろう! の会が発足されました。甲斐=東海道・現在の山梨県にあたる場所、判=判じ物(言葉遊び・なぞなぞ)、をキーワードに、チャット参加者が入れ替わり立ち替り、数行ずつの創作会。
 
 この物語が行き着く先はどこなのか……それは作者達にも分からないw
 それでは、スタート!
 


―――――――――――――――――――――――――――

 
 

 

 目が覚めると、そこは甲斐だった。
 
 目に入るは広々とした葡萄とその熟した香り。その馥郁たる香りを胸いっぱい吸い込んで…はたと気が付く。自分はどのようにしてここにきたのか。そのあたりの記憶がさっぱりと抜け落ちていることに。

 とりあえずポケモンセンターを探そう。そう思い辺りをうろついてみるが、行けども行けども葡萄畑……。葡萄畑を進むうちに、赤い屋根が見える。しかし近づいてみると、それは目当ての建物ではなかった。
 
 でもこんな家近所になかったよな。第一葡萄畑なんて昔果物狩りに山梨に行った時以来だ。けどなんだか、あの時見た畑とはちょっと雰囲気が違うような…。全体的に古めかしいというか、なんというか。前に見た葡萄畑はネットのようなもので囲われていたのに、目の前に広がるそれは石垣のようなもので囲われている。葡萄のつるは竹で出来ているらしい支柱に巻き付いている。それだけに、あの赤い屋根のおうちが葡萄畑から浮いて見えた。
 
 赤い屋根瓦が陽の光をはじいて光っている。その日差しを浴びるうちに気が付いた。『暑い』。
 額から汗が滴り落ちた。ひどくのどが渇いていた。目の前には葡萄畑。垂れ下がる薄紫色の房は一粒ひとつぶにはりがあり、とても瑞々しい。欲には勝てず、葡萄畑に近づくとますます甘い香りが刺激となる。
 この葡萄、この家の住人の所有物なのだろうか。漫画でよくあるシーンよろしく、この葡萄を口にした瞬間、雷親父がものすごい剣幕で竹刀を振りかざしてくるのだろうか。ああ、でも喉の渇きは耐え難いほどになっている。もういいや、竹刀だろうが真剣だろうがどんと来い! やぶれかぶれな気持ちで艶やかな葡萄に手を伸ばす。

 槍が突き付けられた。これ以上葡萄へと近づけると見事に突き刺さる位置にある槍。思わず間抜けな声が出た。

『何奴!』

 凛々しい声が頭の中に響く。そろそろと視線を葡萄から槍の手元へと動かす。槍を構えていたのは……ルージュラだった。
 わけがわからなかった。何でルージュラなんだ。何で槍を持ってるんだ。何で人間の言葉しゃべってるんだ。
 
 「ブドウ……ダメ! アンタ、トル。 ワタシ、サスネ!」 

 驚きと同時に、その片言が放つさらなる迫力で、動けなくなってしまった。
 突き刺すようなルージュラの視線。こちらに向けられた矛先といい明らかに敵意を示していた。とにかく今はこれ以上このルージュラを刺激するわけにはいかないと必死に次に出す言葉を模索したが、結局飛び出してきたのはありきたりな台詞だった。  

「ご……ごめんなさい。 私、喉が渇いて……つい」

「喉?」

 ルージュラが目をぐりぐりと動かす。しばらくの間私を疑うように睨めつけると、何が彼女のお眼鏡に適ったのか、付いてこいという仕草をしてルージュラが葡萄畑の中を歩き出した。
 恐る恐る私は彼女の後についていった。甘酸っぱい香りが鼻をくすぐる。葡萄畑の中は数え切れないほどの房が実り、つるが絡まり合って複雑な螺旋をいくつも描いていた。ルージュラはどんどん畑の奥へと進んでゆく。
 
 うだるような暑さで頭がぼうっとする。前を歩くルージュラの姿が霞む。これは現実なのか幻なのか、だんだん分からなくなってきた。このまま目が覚めて夢オチならどんなにいいか。しかし、そうはならず、やがてルージュラと私は赤い屋根の屋敷へと足を踏み入れた。

 屋敷の中は想像より広かった。正面しか見ていなかったからきっと本当の大きさに気付かなかったのだろう。部屋のすみには小さな家具や人形が、小ぢんまりと置かれてかわいげな雰囲気を出している。ふと、かすかに葡萄の匂いがした。奥の廊下から漂ってきているようだ。いや、葡萄の匂いと言うには少し違う。なんていうか、もっと深みがあって、嗅ぎ過ぎると酔っぱらってしまいそうな、すえた香りがした。この匂い、どっかで嗅いだ事があるような、ないような……首をひねる私にはおかまいなしに、ルージュラは廊下の奥へと進んでいく。

 ぺたぺた、ぱたぱた。廊下を叩く足音二つ。進むほどに、不思議な匂いは強くなる。なんだろう、正体が喉元まで出掛かっているのに……思い出せない。その事実にもやもやとしたものを感じる。頭を抱えて唸りたいほどだ。しかし、それをしたら、ルージュラがなにをするか分からないので、彼女に黙ってついていくしかない。
 マズイ。暑さに加えて、このおかしな香りのせいで、頭がボンヤリしてきているようだ。香りが強くなる。足がふらつく。しかし、その間もルージュラは行く。一体この廊下はどこまで続いているんだ。 ところが、もう気を失うかと思ったその時、ルージュラが突然立ち止まった。
 
 金の髪がふわりと舞い上がり、ルージュラの顔が私の瞳に映る。

「アナタ、ココデ、マッテル。カッテナコト、シタラ、サス」 

 その言葉に思わず私の喉が鳴る。それが飲み物に対しての欲求からか、それとも、ルージュラの言葉に反応したからかは、頭がボンヤリとして分からなかった。
 とは言ったものの、此処で倒れたら間違い無く日射病にかかるだろうことは必定である。 ……更に、ふら付くだけでも正直不味い。下手にしゃがんだり頭抱えたりした瞬間に、早まった人型ポケモンに串刺しにされてもかなわない。最悪、目覚めさせる為にでもアレを食らった日には……。
 
 完全に萎縮しきった私を置き去りに、ルージュラは槍を構えたまま奥へと消えていった。あんなに槍が様になるポケモンも珍しいものだ。一体誰があんなもの持たせたんだろう、こんな時代に――そんなことを考えていた私はやっと気付いた。今ならあの槍ポケモンから逃げることができる。葡萄はもう諦める。色々謎が残るが、とにかくこの恐怖から抜け出すことを第一に考えるべきだ。

 そろりと足を踏み換え、体勢を入れ替える。恐る恐る背後――槍ポケモンが消えた先を振り返るが、彼女の気配は無い。チャンスだ! 
 静まり返った屋敷の中を、抜き足差し足、できるだけ息を殺しながら歩く。潜めた呼吸さえ、脈打つ心臓の鼓動さえ、響きそうで怖い。それでもなんとか、廊下を半分ほど戻ったときだった。
 
 何かが、いる。
 
 肌が粟立つ。背筋が凍る。膝が震える。その威圧感たるや先ほどのルージュラの比ではない。その”何か”が放つ怒気は間違いなく彼の聖域に無断でいる無粋な侵入者――私のことだ――に向けられている。
 一瞬、冷気が自分の両足を通り抜けた気がして、下を見た。なんてことだ。逃げようとした右足が凍っている。このうだるような暑さの日に、なんて量の氷だ。動けない。

――ダメだ、やられる! 近づく激しい怒気に私はパニックに陥った。

「おきゃくはん、なにをしてはりますの?」 

混乱状態である私の頭に響き渡る凛とした声。その声も氷のように冷気を帯びているのか、一種の高熱のような混乱状態が徐々に冷めてきた……ガタガタブルブル……ガタガタブルブル……しかし、混乱状態は冷めてきたものの、体が震えてきた。これは寒さか? いや、混乱状態が解けてきている今なら分かる、これは――恐怖だ。肩で息をしている、これは――恐怖だ。背中から冷や汗が止まらない、これは――恐怖だ。私の元へと次に舞って来たのは混乱状態ではなく、恐怖による思考停止であった。



「お客はん? お・きゃ・く・はん! 一体どないしはりましたん?」 

 ああ、まただ。またあの声である。 今にも背後から一突きにされるかと覚悟している私の耳朶を、良く分からないイントネーションの言語が打ち付けて来る。『オキャクハンナニシテハルン』とは、果たして一体……  

……『お客さん』?






【第一部・完】

―――――――――――――――――――――――――――

タイムアウトにつき(時間の経過と共に、参加者の睡魔攻防戦が敗色濃厚となってきた為)、ここで一旦終了とさせていただきます。参加者の皆さん、閲覧者の皆さん、どうもお疲れ様でした!

楽しかったので、第二部以降も続くといいなー、と呟いてみる。続きが気になった方、ぜひ創作してみませんか?チャットの飛び入り参加大歓迎!もちろん、ポケストでの参加も大歓迎です!

【書いていいのよ】

【描いていいのよ】

【参加して欲しいのよ】


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