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  [No.2030] 相棒 投稿者:きとら   《URL》   投稿日:2011/11/03(Thu) 00:32:52   87clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
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 固いタマゴの殻をやぶって、初めて見た世界は赤い毛皮だった。
 それが母親だと知るのは、本能的な匂いだった。すぐさま近寄って甘えるが僕は突き放された。
「さようならぼうや」
「ままー!!」
 それが唯一、僕の母親とかわした言葉だった。

 
 期待されてとりあえず生まれてみた。父親はアーケン。飛べない鳥。母親はメタモン。なんでも6vというポケモンの頂点にいるメタモンだそうだ。
 それなら僕まじ強いかもしれない。だってお母さんの子供だよ?強くないわけないじゃん。
「HPと、あと防御もいいですね、特攻も、特防も、素早さも!」
 きのみジュースをもらってご機嫌な僕は、その意味は解らなかった。強いねってしきりにほめてくれた。当たり前じゃない、ポケモンの頂点の子供なんだから!
「では、高額取引できそうだな」
 僕の所属している人間は、満足そうに笑ってたよ。それからモンスターボールに入れてくれたんだけど、それがその人間を見た最後だった。



 ガタゴトガタゴト
 とにかく揺れる。大きな音もする。ボールに入ったままのポケモンたちは気分が悪くなりながらもこらえていた。
 ポケモンの密輸。特に珍しいポケモンは外国への取引にはかかせない。時には重要な条約の賄賂ともなり得るのだから、ポケモンブリーダーは目の色を変えて強いポケモンを作り出そうとする。
 段ボールの中にはたくさんのボール。種族もバラバラだが、生まれたての強いポケモンが多く詰め込んである。ラクライコイキングフシギダネゾロアデルビルヒコザルラッキーストライクメラルバ。その他もたくさん。みな強いと判定されたポケモンだ。
 強いということは将来有望ということ。ポケモンバトルで活躍することを期待され、こうして密輸されている。
 その中のモンスターボールで、何が起きているか混乱しながらもイーブイは必死で耐えていた。母親から離され、どこだかも解らない空間で揺れていた。空腹を感じるのに、それを満たしてくれるものはなにもない。イーブイは母親を呼ぶように鳴き声を上げた。モンスターボールの中からは伝わらないというのに。


 それから数分後。鳴くのをあきらめ、イーブイが疲れて寝始めた頃。
 突然世界はひっくり返る。モンスターボールが入った段ボールが崩れ、天井に叩き付けられた。その衝撃でボールのスイッチが壊れて開かなくなったもの、セーフティまで壊れて開いてしまったもの、そのまま壊れなかったものがあった。イーブイはその中にセーフティまで壊れて開いてしまった方だった。
「!?」
 自分は泥の上に立っていた。そして目の前には炎上する大きな機械。
 逃げないといけない。本能がイーブイにささやいた。反対方向に走り出すも、たくさんの開かないボールで足を取られる。ボールの中から振動を通して伝わる悲鳴がイーブイをさらにひるませた。
「たすけてたすけて私もあけてここからだしてあついあついいたいよ」
 それらを全て無視してイーブイはなんとかボールの山を走る。けれど逃げ足ではなく、生まれて間もないイーブイが火から逃げられるわけがない。しっぽに火がつくという距離まで追いつかれる。
「こっちこいよ!」
 首根っこをつかまれて、イーブイは炎の猛撃をかわした。
「こっちだよこっち!」
 そのままイーブイは引きずられるように炎から遠ざかる。ときどき浮き上がるように飛ぶ感覚がする。


「危ないところだったね」
 そいつはアーケンと名乗った。派手な鳥という印象を与える。
「どうしてこうなったの?」
 アーケンにくわえられて高いところに避難できた。燃える現場が崖の下に見える。
「僕に聞かれても解らないよ。でも寝て起きたらこうなってたんだ」
 アーケンは伸びをすると、下を見た。
「あんなのじゃ誰も生きてないね」
 そしてイーブイを見るとくちばしをひらく。
「僕たちだけみたいだね」
 事態が飲み込めてないイーブイがアーケンに聞こうとすれば、かわりに腹の虫が鳴る。
「食べるかい? 半分こしよう」
 アーケンは持っていたオレンの実をくちばしで上手に半分に割ると、片方をイーブイに渡した。いいのかと聞くよりも、食べたいという欲求が先だった。口に入れてからいいのかと聞く。
「オレンの実ならそのうちどこかで見つかるよ!」
「うん。そういえば君、アーケンっていったけど、その名札にはなんて書いてあるの?」
「名札? ああ、これFluegerって書いてあるんだ。僕の生まれた国の言葉さ。この国ではアーケンって言うらしいから」
「じゃあFluegerって呼んでいい? 僕も名札にはSchneeって書いてあるの」
「Schneeか、どこの言葉なんだろうなあ」
「生まれた国に帰れれば、僕たちママに会えるかな」
「そうだね。じゃあSchnee、帰ろう!ここからどうやっていくのか知らないけど帰るよ!」
 アーケンの固いくちばしで発音しづらそうにイーブイの名前を呼んだ。
 楽天的なアーケンのFlueger、一歩ひかえめなイーブイのSchneeは、どちらとも解らない方角へ、自分の元いた国へ帰るために歩きだす。


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手持ちです。
Wi-Fiでかなり勝率の良いコンビ、アーケオスとグレイシア。
外国産なので、きっと密輸業者から逃げ出して来たんだと勝手な妄想。
もっと長い話にしたら、きっと短編じゃ追いつかない!だからさわりだけ書いてみた。
【好きにしてください】【書いてみた】