棚の上でカゲボウズが埃を被っていた。
本来黒いはずのカゲボウズが、半分ほど白くなっていた。
さすがに心配になってつつくと、くるっと寝返りをうって目をあけた。
「…………」
恨めしげな瞳がただひたすらこっちを見つめている……。
時刻午前七時、久々の早起きの時間を三十分近くふいにして、俺は埃だらけのカゲボウズと見詰め合っていた。
どうすればいいんだろう。
そして俺は今が朝であることに気がついた。
そうだ。窓を開けよう。朝日を浴びよう。そしてリフレッシュした頭でこのカゲボウズをどうするか考えよう。
カーテンを勢いよく開け、窓を開く。
しかし瞬間的にテンションが急降下した。
なぜなら、軒下にずらりとカゲボウズがぶら下がっていたからだ。
「…………」
昨日友人から電話があった。
俺より酒癖の悪いような奴で、一緒に毒男を貫き通すだろうと思っていたそいつがわざわざ、「彼女できたよ^^」と報告してきやがった。ひとしきり惚気てから、「はやくお前にも春がくるといいね」とほざきながら電話を切っていった。
そして午前三時まで眠れなかったのだ。
そうですよね、そりゃあカゲボウズだって並びたくなるよね。わかるよ。うん。わかる。
しかもこいつら、昨日の雨風の中ずっとぶらさがっていたのか、茶色い。雨で濡れた体に風で舞い上がった砂がくっついたらしい。
すごい。カゲボウズって天然で色違いになれちゃうんだね。ほんとすげぇ。
一匹のすそから水が滴っていた。
ふと振り向くと、棚の上から埃まみれのカゲボウズが落下するところだった。
ぽとり。
一瞬きゅっと目をつぶったカゲボウズが、今度は半身の埃をリビングに撒き散らしながら、俺の方へむかって転がってくる。
ころころ。
数分かけて転がってくると、足元へ転がったまま目をあけて、じーっ、とこっちをみつめている。
窓を見上げれば。
雲の流れる速度も異様に速い快晴の空。揺れる茶色のカゲボウズ。
俺は気がつくとタライとホースを持って家の外へ出ていた。
まずは窓のさんにぶらさがっているカゲボウズを収穫します。
引っ張れば取れる。ぷち。
こいつらと、あと埃被ってたのを水張ったタライへ入れる。
そしてホースで一匹づつ洗う。
カラスの濡れ羽色になったカゲボウズを、さすがに洗濯バサミで止めるのは気がひけたので、自力でロープにぶらさがってもらった。
本日晴天、洗濯日和、風は強め。
洗濯ひもの下になびくカゲボウズたち。目をぱちくりしている。
たまに風でひっくりかえってしまう奴がいるので、今日はそいつらを監視しながら昼飯は冷やし中華にしようと考えた。
おわれ
***
全国のカゲボウズスキーのみなさんすみませんごめんなさい。管理人さんごめんなさい。
もはや風になびくカゲボウズしか思いつかなかった私を笑ってやってください。
【批評していいのよ】
【書いてもいいのよ】
【描いてもいいのよ】
ちなみにカゲボウズは陰干しだと思うのですがいかがでしょうか。