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  [No.869] 語り部九尾 投稿者:NOAH   投稿日:2010/10/28(Thu) 18:21:09   59clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
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おや、人の子がくるとは珍しい。
いつもは獣だけなのだがな。

では、1つ昔話をしよう。
これはまだ我が、この姿になって間もない頃の話であった。

今から500の時の前、その頃の我は1人旅をするのが好きでな、
その時も関東よりも北に150里ほど離れた森に、1人の人の子が泣いておった。

そやつはまだ7つ程の小僧でな、右目に包帯を巻き、残った左目でぐずるように泣いておった。

その小僧の身なりは良いことから、この地を治める領主の子と一目見てわかったのだが、どうやら弟が生まれてから、母親から不憫に扱われておったらしい。

それで我はその小僧に擦り寄った。
なに、取って喰らおうなどとは微塵も思っておらんかったわ。

だがその隻眼が我を捕らえたとき、大きく揺れておった。
そしてそのまま怯えたように見つめておったよ。

我を見て、怯えたように「あやかし?」と呟いた。
なるほどそうきたかと思ったわ、そうその時代、我らは「あやかし」と呼ばれておった。

その時の人は、天下を掌握せんと争う戦乱の世。
今は「ぽけもん」と呼ばれる我らも、このときは人を脅かす「あやかし」であった。

だが我は気にせずその小僧に擦り寄った。
小僧も安心したのか、私に身を預けてひとしきりに泣くと、そのまま寝息を立てておった。

そのあと迎えの従者がくるまで、我はその小僧を見守っておった。
命を狙う者がおれば炎で脅かしたあと、1つ吠えてやればそのまま逃げよった。

だからじゃろう、そのあときた従者が感謝の言葉を述べおった。
どうやら命を狙ってきよった者は、小僧の母が雇った忍びの者らしい。

そして小僧は従者に連れられていきよった。
こちらを隻眼で見てきたが、我はそれを一瞥して、その地を離れた。

それから暫くして、その小僧が一国の主になったらしい。
あれから実の父と母を殺めたが、それでも悔いなく生きておった。

その地を愛し、民を愛しておったからであろう。
幼少の頃に抱いた憎悪を愛情に変え、和平を求め、死が潜む戦場を竜の如く舞ったという。

人の子よ、憎悪を抱いてはならぬ。
その者のように、憎悪を愛情に変えて、生と向き合うことだ。

人の子よ、これは史実であり、神語りではない。
そう、一匹の語り部九尾の戯れ言よ。


+あとがき+

キュウコン独白の小説です。
民俗ではなく歴史です。
ここで出てきた”小僧”は、奥州筆頭である伊達政宗の幼少時代の史実を脚色して書きました。
民俗学系になぜか対抗心が燃えてしまし、日本史系の小説で攻めてみました。
それに歴史好きなんで書いてて楽しかったです♪


【書いてもいいのよ】
【描いてもいいのよ】
【批評してもいいのよ】


  [No.874] 書いてしまった「他の歴史も読みたい」 投稿者:こはる   投稿日:2010/10/28(Thu) 21:37:46   50clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
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「キュウコンに関連する本を探してます! 普通じゃ見かけない趣向のものを!」
 入館してすぐカウンターへ直行した俺は、きっと目をぎらぎらさせていたんだと思う。なにせ、ふだんは優しいおっちゃんが、顔を引きつらせていた。
「具体的にはどんなのをお探しですか?」
「キュウコン教授を納得させられるような本」
「……またですか」
「またです」
 おっちゃんはため息をつきながらも、パソコンを操作してくれる。かたかたと規則正しい音がしばらく続いて、おっちゃんが手を止めた。
「こんなのはどうですか?」
「歴史関連の本? これがキュウコンに関係あるとでも」
「この『語り部九尾』は、歴史分類ではありますけど、一応はキュウコンが標目に入ってますので」
 こちらです、とおっちゃんに案内されたのは、滅多に行かない奥まった場所だ。というか、存在していたんだな、こんなところ。
「はじめてきた」
「できれば、足を伸ばしてもらいたいです」
 おっちゃんはにこやかに言うが、俺にはムリだ。あまりに林立した書架のあいだを歩いてきて、すでに居場所すらわからない。
「あ、ここですね。えっと、この本です」
 差し出されたのは、キュウコンの姿が描かれた濃緑色の本。けっこう分厚いので、重たい。うけとって、ぱらぱらとページをめくってみて、すぐにおっちゃんを見た。これは、人間が言い伝えたキュウコン伝説ではない。
「伝承じゃなさそうだけど」
「史実と照らし合わせて、再編成されてますからね、歴史分類です。キュウコンも伝承の世界ばかりで生きてるんじゃないんですよ」
 おっちゃんが笑いながら去っていくと、俺は書架の間にひとりで立って本をめくる。
 千年生きるというキュウコンが語り残した歴史。
 大陸へと向かった留学生の話、帝になろうとした将軍の話、国を覆った戦乱の話、三英傑の話、平和が訪れた時代の話……。
 それぞれ歴史を、史実を一頭のキュウコンが語り残していく。ポケモンの目から見たこの国の歴史は、さまざまな色味をもっている。人間が語り残した史実とは、ひと味違ったものだ。歴史を振り返るように語られ、そうして、やがてキュウコンの語りがぱたりとやむ。
 ――借りて、読もう。
 ゆっくり読んで、キュウコンの語りに耳を傾けてみよう。一頭のキュウコンが生きた証でもある語り残したものを抱え、俺は気づく。
「――出口、どこ……?」

◇◆◇◆◇◆

 九尾というタイトルに惹かれて読んだら、いつの間にか書いていた。あのね、ほら、他のも読んでみたいなーと思っちゃったんです。オチは気にしないでください(オチが無かったので、つけてみただけ)。
  人間側からみたキュウコン伝承しかないのかしら、と思っていたら、こんな見方もあったのか!って感心してる間に書いちゃったんです。 ほかの史実もよんでみたいのですが……とさりげなく催促したい。というか、すでにしてますね。

 すてきな語りに耳を傾けてみました。そして書かせてもらいました。


  [No.878] 語り部九尾 其ノ二 「鬼若」 投稿者:NOAH   投稿日:2010/10/29(Fri) 18:17:26   47clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
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おや人の子、またこの九尾の話を聞きに来たのかい?
ならば話そう、これはある豪傑の僧の話。

その僧が生まれたのは城都はエンジュの地
彼は赤子のはずだが、見目は数え年で2つか3つで、髪は肩を隠すほど長く、前歯と奥歯、共に既に生え揃っていたという。

赤子の父はその姿を見た途端、「鬼子」と呼んで殺そうと思い立ったが、それは叔母に止められ、彼女が赤子に幼名を名付けた

その赤子は「鬼若」と名付けられ、名付け親であった叔母に育てられたそうな。

その「鬼若」だが、かなりの暴れん坊でな、エンジュの今は跡地のみとなった寺に入り僧となったが、乱暴が過ぎたために追い出され、播磨国はアサギの地へと赴いたが、そこでも問題を起こしてしまったのだ。

アサギの地に、エンジュにある「焼け落ちた塔」に酷似した建物を見たことがあるか??それは「鬼若」によって炎上した堂塔の後でな、そこでも追い出された「鬼若」は、またエンジュの地に戻り、そこである悲願を立てた。

その悲願とは。千本もの刀を集めるということであった。
それから「鬼若」は、行商人から刀を奪い、帯刀の武者と決闘をし、ついには999の刀を集めた。

そして「鬼若」は最後の一太刀を探し、ある大きな橋の上に辿りついた。

その時の月は見事な眉月(三日月)であった。
「鬼若」の姿を一目見ようと、我は橋の下に流るる小さな川岸から、こっそりと覗いていた。

そして男が橋の上で人を待っておると、遠くから見事な笛の調べが聞こえてきたのだ。

そして現れたのは見目15ほどの、女とも見てとれそうな男であった。

そやつの腰に佩びた見事な太刀を一目見た「鬼若」は、その者と刀を巡り挑んで行った。

しかし相手の男は笛を吹きながらひらりひらりと、まるで揚羽の如く舞い、橋の欄干を飛び交い「鬼若」翻弄しておった。

「鬼若」もそやつの身軽さに負け、彼の千本の刀を集めるという悲願は後1つというところで叶わなかったが、それ以来「鬼若」は、その男に忠誠を尽くして、奪った刀をそのままに、共に宵闇に消えていったよ。

うむ?その「鬼若」と相手の名を知りたいと??
それならば教えてやろう、「鬼若」の名は武蔵坊弁慶
そしてそやつの相手となった者は、幼名は「牛若丸」、名を源義経と言うのだ。

あれから数十の時が経った頃、彼らの最後と思われる噂を幾つも聞いた。

さすがの我も混乱するほどであった、豊縁の地よりもさらに西の地、もしくは深奥の地に逃げ延びたとも言われるが、我もあの橋の上の決闘以来、二人の姿は一度も見てはおらぬ、この狐をも騙す二人には、我も他の獣も関心しておったよ。


+あとがき+

こはるさんに催促はされましたが、私自身続きを書くつもりでいたのですらすらと書けました。

今回は弁慶と義経の二人が出会った話を脚色しました。
この二人は本当に有名ですからね、次は何時の時代のを書こうかしらね。

【書いてもいいのよ】
【描いてもいいのよ】
【批評してもいいのよ】


  [No.880] Re: 語り部九尾 其ノ二 「鬼若」 投稿者:こはる   投稿日:2010/10/29(Fri) 20:51:40   61clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
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 わ、わわわわわっ。
 人の子、何度でも九尾様の御許に足を運びますとも!! まさか、催促が通るなどとは夢にも思わず、ちまちま書いていたりしてたのに! 歴史全般を好む私としては、いつの時代が来てもOKです。膝を揃えて、おとなしくお話をお聞きします。

 ……ちまちま書いていたの、載せてみてもよろしいですか?

◇◆◇◆◇◆

 語ることは生きることだとのたまう朋友がいた。ときおり、私のもとにまで足を運んでは、人間たちのことを語っていく。他の獣たちにも、語ってやるらしい。
 変わった九尾だと笑えば、八尾のほうが変わっていると笑い返された。寂しくはないかと訊いてみれば、寂しいのはおまえだろうと言い返される。
 飄々とした老狐のごときと思っても、興味心は子狐のままだ。千年も生きていそうだし、十年しか生きておらぬようにも思える。

 風はきな臭い。世は乱れはじめている。人の子が争いを始めている。
 なに、あの九尾は易々とは死なぬ。語るために生まれてきたような狐だ。此度の争いすら、後生に語り残すだろうさ。


  [No.894] 語り部九尾 其ノ三「青年剣士」 投稿者:NOAH   投稿日:2010/10/31(Sun) 15:11:50   53clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
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おやおや、よくきてくれたねぇ。
我の語りが気に入ってくれたかね?それは良かった。

ならばまた話そう、これはある青年の話だ。

今からだいたい250ほど前の時であったな。
城都はエンジュのある宿屋で、大きな事件が起こった。

その事件とは、当時の政を気に喰わず、王族の者を誘拐したのち、政の中心となる人物を暗殺せんとする者たちの討伐であった。

それを聞きつけた、当時は警察と言ってもよい組織の者たちは、刀を片手にその宿屋へ赴き、そこに巣くう悪しき輩共を討伐、もしくは捕縛しようと派手に乗り込んだ事件でなぁ。

きなくさい風に乗って血の臭いが僅かにしたので行って見てみれば、騒然としておった。

宿屋の中に4人ほど乗り込んだ者がおり、その中の1人はとても鮮やかな剣技であった。

そやつは見目が18〜20程青年でな、なかなかの美青年であった。
暗殺などを企む輩どもが血の海に溺れ、縄で身動きできずにいるなか、その青年に異変が起きよった。

そう、突然血を吐き、胸を抱え込むように倒れたのだよ。
その前に1人、返り血を眼球に浴びてしまい、離脱した者が1人おったので、そやつが抜けたことによっていったん不利になったものの、1人の男が仲間を連れて加勢したために、その事件は事がより肥大する前に解決したのじゃ。

しかしその青年は、それ以来刀を握れなくなったのじゃ。
原因はその当時、不治の病とされていた「結核」でのぉ、その者はのこりの余生を仲間と隔離されて過ごしておった。

我はその姿に寂しさを感じておったよ。
ついこの間まで剣を振るい、悪しき心を持つものをその刀を持って切り捨てた阿修羅の如き姿の見る影もなかった。

そしてそれから半年したのち、そやつは若くして死を迎えた。
短くも立派に生きたという。

その青年だがな、剣の腕はなかなかではあったが、色恋沙汰ではなかなか純情なところかあったようだ。

街医者の娘と親しい関係にあったとされるが、やはり病気のこともあってか、結局は実らずに終わったという。

なんとも切ない話であったわ、せめてその者とは結ばれてほしいという願いもあったよ。

さて、若くして病で死を迎えた青年剣士の名を教えよう。
そやつの名は「沖田総司」、新撰組と呼ばれる部隊で1、2を争う剣豪であったよ。

+あとがき+

さて、今回は新撰組隊士の沖田総司の史実を脚色しましたぁ。
ちなみにサブタイトル適当です、すんません(泣)

しかしこはるさんの書く外伝のような「語り部九狐」がまぁおもしろくって、にやにやしっぱなしですよ。
うふふ〜♪

ではでは、次も頑張って書いていきますよっと。

【書いてもいいのよ】
【描いてもいいのよ】
【批評してもいいのよ】
【告白してもいいのよ】


  [No.900] Re: 語り部九尾 投稿者:No.017   《URL》   投稿日:2010/10/31(Sun) 21:49:26   44clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
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No.017でっす!
語り部九尾読ませていただきました。
思えば歴史の語り手としてこれほど適したポケモンもいないかもしれませんね。

欲を言うとやはりポケモン小説だからポケモンの出番が欲しいかなぁ。
たとえば伊能忠敬とか松尾芭蕉にして、測量してたり旅してたりしてたらポケモンが襲ってきた! さあ大変! とか。
ペリーが見たことのないポケモンを連れてきた、とか。
キュウコンが物語中に乱入する回とかあってもおもしろいかもしれませんね。
まだロコンだったころ、宮廷でエロ小説(笑)書いてた女官がいたとか。
あるいは空海の乗ってた船で一緒に海を渡ってきた、とか。
(九尾の狐は天竺→中国→日本 と移動してたハズ)

あくまで一案ですが。

では!