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  [No.1032] 幻影序曲 投稿者:紀成   投稿日:2010/12/13(Mon) 20:27:01   50clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
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昔、一組の幸せな家族がおりました。
父親と母親、それに娘が一人。
小さな家ながらも、慎ましく幸せに暮らしていました。

ところが、ある日のことです。
母親の方の両親がいきなり訪ねて来ました。母親の実家は古くから伝わる由緒正しい家柄で、彼女が結婚する時も大反対されていました。
結局、結婚させてくれなければ縁を切ると言われ、渋々承諾したのですが。
両親はまだ幼い娘を部屋に入れ、ここにいるようにと言いました。
娘は四人の話の内容が分かりませんでした。まだ幼かったためなのか、それとも理解したくなかったのか。
いずれにしろ、両親が娘を出しに来た時には、全てが決まっていたのです。
悲しそうな顔で、両親は娘にこう言いました。

「お前は、今日から御祖父様達の家で暮らすんだ」

後で彼女自身が聞いたことですが、その彼女の母親には、姉がいました。叔母にあたる存在です。
その叔母は妹より先に結婚したのですが、子供を産めない体でした。
だから、妹の子である彼女を迎え入れようと、祖父母は考えたのです。
まだ幼かった彼女には、事情など分かりません。考える暇もないまま、車に乗せられたのです。
外で手を振る両親を見て、彼女は直感しました。

「おとうさんと、おかあさんには、もうにどとあえないんだ」

やがて、車は立派な門の前で止まりました。
和風のとても大きな家です。
驚く彼女に、祖父は言いました。
「今日からここが、お前の家だ」

家には沢山の人がいました。皆整った顔立ちをしています。お母さんに似ている人もいます。
「この人達が、今日からお前の家族だよ」
一人一人の顔を見つめていると、その中にこちらをじっと見ている女の人がいました。
ピンク色の綺麗な着物を着て、撫子の簪をしています。
女の人は、彼女を冷たい目で見ていました。怖い、と彼女は思いました。
「この女の人が、お前のお母さんになるんだよ」

おかあさん。
ということは、答えは一つしかありません。
この人が、叔母にあたる人なのです。

自分の部屋に案内してもらう時、叔母さんは彼女とすれ違い様に言いました。
とても小さい声だったので、普通の人には聞き取れなかったでしょう。
それでも、彼女には聞こえました。はっきりと。
「私に子供さえ産めれば、このカミヤの恥の妹の子を・・あんたを引き取らなくても済んだのに!」

次の日から、厳しい毎日が始まりました。
朝は五時に起きて、水を汲みに行きます。それが終わったら雑巾かけです。長い廊下は、まだ幼い彼女にとっては苦しい物でした。
それが終わったら、召し使いに髪を梳かしてもらいます。その後で朝食。
お母さんにもお父さんにも会えないばかりか、外へ出ることも許されませんでした。
毎日長い廊下を雑巾がけしていましたから、運動不足にはなりませんでしたが。
それだけなら耐えられたでしょう。ですが、彼女にとって一番苦しかったことは、両親に会えないことだけではありませんでした。
何者かが、彼女を殺そうとしてくるのです。食事に薬品を入れたり、夜中に首を締めようとしたり。
いつしか彼女は、信じる者は自分だけになっていきました。
誰かと一緒にいることを嫌い、食事も個室で取ります。時折薬品が入っていたりしましたが、少しずつ口にしていきました。
耐性を付けていったのです。


小学生になった彼女は、ある時『ポケモン』の話を聞きました。
彼らは不思議な生き物で、何十種類、タイプに分かれています。人間の友達はいらないと思っていた彼女ですが、ポケモンがいたら良いと思っていたのは事実でした。
ですが、カミヤはポケモンを嫌っていました。
彼女は反論したら今まで以上に危険な目に遭うと思い、何も口に出しませんでした。


やがて、小学校に入って少しは楽になると思いましたが・・
どうやら『カミヤ』の姓はこの辺りには絶大な影響力を持っているらしく、クラスメイトは彼女をお嬢様扱いして、陰口を叩いたりするのです。
彼女は、だんだん他人を信じないだけでなく、嫌うようになっていきました。


そして、ある日彼女の運命を大きく変える出来事が起きるのです。
それが彼女にとって幸せなことなのかは分かりません。
ですが、彼女はそれを受け入れました。

『それ』を見ていた者は口を揃えてこう言うのです。

「彼女は正に、亡霊の子だ」と。

全ては、

あの日から始まったのでした・・

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『ファントムプレリュード』


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