2×××年、俺は日本のT都に生まれた。
全てが電子化で便利な世の中になっていた。
お金の支払いも、物流も、移動手段も、全て電子の力を借りて一発で解決できる。
ポリゴン、というポケモンを大量発生させたこの時代だからこそ可能な技術だった。
歴史を紐解くと、車とか電車とかが走っている絵などを教科書や博物館で見受けられるが、この時代に そんなものは一つもない。
本当に全ては電子で解決されているのだ。
学校の授業も、会社への出勤も、各家に置いてある専用のトランスポーターに乗り込めば、始まりまで後十秒だろうが余裕で間に合うことができる。
繰り返しなるが全ては人間達が大量発生させたポリゴン達による力のおかげなのだ。
それと今の時代、皆、必ず手持ちに一匹はポリゴンを持っていて、データの管理とかを頼んでいたりする。
この世界は便利だ。
だが、なんか俺は怖い気がしてならなかった。
全ては電子という目に見えないものが全てを決めている。
それって、何か不安じゃねぇか?
自分の目で確認できないものは信じられないという言葉があるのだが……その言葉の意味が分かるような気がする。
電子は触ることもできなければ、肉眼では見ることもできない。
匂いもなければ、これといった色も分からない。
なんだろうな、なんだか電子に動かされている……見えない何かに動かされているような気がして、怖いんだよな。
多分、そんな、人間の不安をなくす為に電子を視覚化させ、安心させる為に造られたのがポリゴン、というポケモンなんだろうな。
でも、ポケモンって生き物だろ? そこには感情があるはずだ。
ポリゴンはどんなことを思って、この世界の発展に貢献したのか。
俺の手持ちのポリゴンを見てみる。
でもポリゴンは何も答えない。
けど、その目はなんだか心なしか、悲しそうな目をしているような気がする。
なぁ、ポリゴン、この世界って――。
「けんちゃーん、そろそろご飯よ〜!」
「は〜い!」
「ゲームを終わらして早くきなさ〜い!」
「分かってるよぉ」
少年に乱暴そうに床に置かれた一台の携帯ゲーム機。
電源を切られたゲーム機は何も答えない。何も語らない。
『全て』が電子化。
それは命も含んでいるのではないか?
俺達が今、生きているこの世界はもしかしたら――。
【書いてみました】
Special thanks:久方さん
深夜のチャット中、電子という言葉を出した時、浮かんだ物語です。
お金やら、なんやら電子化が進んでいく今の世界。
もしかしたら、本当に硬貨とか紙幣がこの世から消えるのかなぁ、と思うと不安になる今日この頃です。
なんか、お金の重みとかを表す為にも硬貨や紙幣があるんだと個人的には思っていて、
電子化になったら、お金の重みとか全くとはいかないと思うのですが、ちょっと分からなくなってしまうかなぁ……と心配してしまったわけなのです。
まぁ、便利な世の中になるのは嬉しい限りですが、便利すぎても考え物かな、と思った次第でございます。
深夜での会話で、ぽぽぽぽーんとこの物語が出てきたキッカケの一つとも言ってもいい久方さんに感謝です。
ありがとうございました。