「次の相手は誰かな?」
1人目のバトルが終わり、2人目のバトルが始まろうとしていた。ジムリーダー2番手のケンタは立ち位置に移動し、次の相手を心待ちにしている。
「俺が相手だ!」
そこに、なにやら威勢のいい少年が出てきた。少年は3人の挑戦者の1人であるが、仲間の敗北はまるで気にしていない様子である。
「お、チャレン君が相手か。」
「そうだ。あんたには悪いが、踏み台になってもらうぜ」
「そうかい。ならこちらも全力でいくよ!」
そう言うと、ケンタは左胸ポケットから何かの葉っぱみたいなものを取り出した。
「あの、それナニ?」
「これかい?これはチュリネの頭の葉っぱだよ」
笑いながら質問に答えるケンタに、チャレンは目を丸くした。
「おいおい……あんたまさか、メスしかいないチュリネに手をかけたのか?お前人間じゃねえっ!」
「それは何とも人聞きが悪いな。僕はチュリネを家で育ててるんだけど、人間と同じで葉っぱが伸びるわけ。だから少しだけ手入れして、葉っぱの切れ端を乾燥させただけさ」
「し、信用できねえ。こんな怪しいやつには負けられないな」
ケンタの発言に、改めて勝ちを意識したチャレンであった。
「よし、それじゃあ……」
ふと、ケンタは「チュリネの葉っぱ」と称するものを口に含んだ。初め苦虫を噛んだような表情をしていたが、次第に別の様子を見せるようになった。柔和な顔は姿を消し、目つきの鋭い、厳しい面構えに変化している。
「ふふふふふ、力がみなきってきたのう……」
「な、なんだあの変貌ぶりは!別人ってレベルじゃねーぞ!」
チャレンはケンタの変化にうろたえた。これはチャレン側の2人も同様である。
「ぁあん?つべこべうるせーぞわれ。まあいい……さあ、闇のゲームの始まりじゃ!」
ケンタはそう言い放ち、勢いよくボールを放り投げた。それに釣られてチャレンもボールを投げる。
「チッ、いきなりブルンゲルかよ、ついてないのう」
「まずはゴウカザルが相手か、有利とはいえ油断は禁物だな。……持ち主があんな状態だし」
お互いの先発は、ケンタがゴウカザル、チャレンがブルンゲルである。ブルンゲルはモモンの色をしているメスだ。
「そっちからこないならこっちからいくけぇの、つるぎのまいじゃ!」
「させるな、熱湯攻撃だ!」
チャレンのブルンゲルはゴウカザルの腹目がけて煮え湯を放った。ゴウカザルは右足に熱湯を受けるもののなんとか避けた。そのままどこからか剣を取り出し、振り回しだした。
「ほう、炎タイプに熱さで挑むとは、いい度胸じゃの!ゴウカザル、ストーンエッジ!」
次に動いたのはゴウカザルだ。ゴウカザルが雄叫びをあげると、突如としてブルンゲルの足元から岩の刃が突き上げてきた。突然の攻撃に為す術なく、ブルンゲルは直撃を受けた。土煙が舞い上がり、ブルンゲルの姿は隠れた。
「おらおら、もうおしまいかわれ?やはりわしこそが最強じゃの……」
ケンタが自分に酔いしれていると、土煙の中から黒い塊がとんできた。ゴウカザルは油断していたのか、今度は手痛い一発をもらった。元々ゴウカザルはタフなポケモンではない。起き上がることなく、そのまま気絶してしまった。
「よし、良い判断だブルンゲル!」
「チッ、あじな真似をしてくれるのう。ならば……出てくるんじゃ、ファルコーン!」
1匹目を倒して勢いに乗るチャレンの前に、ケンタは次のポケモンを投入した。赤とベージュのカラーリング、2つに分かれた長い髪、手首から吹き出す炎が特徴的である。
「あれはバシャーモか。あれを倒せばポケモンリーグ……!」
最後のポケモンを前にして、ブルンゲルとチャレンは思わず武者震いをした。
「ふん、寝言は寝て言いんさい。まあいい、ブルンゲルにトドメじゃ、ファルコーン!」
チャレンの様子に目を向けることもせず、ケンタは指示を出した。ファルコンと呼ばれたバシャーモは稲妻を発した右拳をブルンゲルに叩きつけた。ブルンゲルは勢いでジムの壁まで飛ばされ、倒れた。
「ブルンゲル!」
「フハハハハハ!どうしたさっきまでの威勢は。わしはまだまだ腹の虫が収まらんけぇのう……もっとわしを楽しませてくれんとのう」
「ま、まだまだ!勝負だ、ギャラドス!」
チャレンは怖じ気つきながらも、次のポケモンを繰り出した。彼の運命を握るのはギャラドスである。ギャラドスは出てきて早々バシャーモを威嚇した。
「よし、これでこっちが受けるダメージは減るぞ」
「チッ、下らねえことはよく知ってのうあんた。なら、つるぎのまい!」
バシャーモは激しい戦いの舞いを始めた。
「こちらも竜の舞いだ!」
「なんだと……!」
ここで、ギャラドスがいきなりコイキングの如く跳ねた。その光景は、ともすれば笑いを誘いかねないものである。
「これでバシャーモより速く攻撃ができる。俺の勝ちだ!」
「ほぅ、そいつは驚いたのう……まあ落ち着いてこいつを見んさい」
「え?……ぁ、ああああああ!」
チャレンは思わず絶句した。バシャーモが徐々に素早くなっていたのだ。バシャーモの特性は加速だったのである。その動きにギャラドスはついていけてない。
「いくけぇの、ファルコーン!雷パンチ!」
「う、うわー……なーんちゃって」
バシャーモの拳は再び電気を帯び、ギャラドスのあごにクリーンヒットした。その刹那、ギャラドスの懐から何かが光り、電撃が幾分逸れてしまった。
「どうだ、ソクノの実の力は!」
「チッ、小賢しい真似してくれるのわれ!」
「次は無いぞ、電磁波だ!」
ギャラドスはがら空きになっているバシャーモの胴体に弱い電撃を放った。バシャーモは体が痺れたのか、片膝をついた。
「……ふん」
ところがここで誤算が起こった。バシャーモは頭の髪をまさぐると、緑色の木の実を取り出した。そしてそれを喉で飲み込むと、両手首から火炎が吹き出し、再び立ち上がった。
「フハハハハハ、フハハハハハ!トラップ発動、ラムの実!」
「ら、ラムの実だって……?」
チャレンは現在の状況に希望を失ったのか、膝をがっくりと落とした。これにギャラドスも続く。
「遊びは終わりじゃけん、ファルコーン!」
最後までケンタは攻撃の手を緩めない。バシャーモはますます素早くギャラドスに接近し、雷パンチで引導を渡した。
「ふん、口程にもないやつらじゃのう」
決着はついた。ケンタはチャレンを眺めながら、悠々とバシャーモをボールに戻した。
「……とても素晴らしいバトルだったよ、チャレン君。あと少しだったね」
「あ、あれ……元に戻ってる」
「ん、どうしたんだい?」
「いえ……あの調子じゃ、何も覚えてないな。まったく、なんなんだよこのジムは!」
・あつあ通信vol.X
モミジム企画2人目。チュリネの葉っぱを食べて豹変するのはポパイ、口調はバクラさんを元ネタとして引っ張りだしました。その結果こんな流れに……。ちなみに、ジムリーダーのケンタは剣玉から取っているので、剣の舞を主軸とした戦法を採用しました。炎技なんて使ってないなんて聞こえませんよ。
あと、翻訳は正確なものとするため、全面的に翻訳サイトに頼りました。上手くいかない部分は私が補ったので、違和感があるかもしれません。
さて、最後は音色さんを残すのみ。皆さん、どうか最後まで楽しんでください。