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  [No.1157] 和菓子屋本舗幻想黒狐 投稿者:キトラ   投稿日:2011/05/08(Sun) 01:25:02   69clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
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 しっぽをふりふり、人通りの多い街へ行く。飼ってくれている人間からのおつかい。首に唐草模様の風呂敷が巻いてある。その中にお金と品物が書いてあって、指定のところまで行けばいい。
 その名はゾロア。自慢ではないが、人間の他の手持ちの雌にモテモテ。というのも、ライバルとなる雄が水中にいるようなやつだったり、飛んでるやつだったりして、モテるというより、陸上を住処にしている雄がゾロアともう一匹だけのこと。
 今日もゾロアは指定されたお店にやってきた。老舗和菓子屋で、ゾロアが来ると見るとお店の人は唐草模様を取り、代金と手紙を読んだ。店の奥へ行くと、品物をゾロアに結びつけてくれる。そうしてゾロアは人間の元に帰って行く。
「あら、今日は灯夢ちゃんも来たのね」
ゾロアと入れ替わるようにロコンがやってきた。今までの雌とは違う、洗練された大和撫子。ゾロアは足をとめて釘付けになった。ロコンが品物を持って店を出る。その瞬間を逃さず、ゾロアは声をかける。
「な、なあ、俺と付き合わないか!」
大和撫子が振り向いた。狭い世界の雌だったけど、全員がゾロアの誘いに乗っていたし、今回も絶対行けると思っている。それだけの自信がゾロアにはあった。
「ウチ?」
独特の言葉のイントネーション。品のある言い方はあそこの雌にはない!ゾロアは確信した。
「ウチは今、彼氏は募集してへんで?」
ほな、またなとロコンは歩いて行く。その後ろ姿を信じられないという目でゾロアは見送った。


「うわーーーーん、初めて振られたんだぁ!!!!」
その夜。兄貴分のライチュウにゾロアは今日あったことを全部話した。大和撫子なロコン、そしてふられたこと。ふられた今もなお、全く忘れられない。オレンスカッシュを冷蔵庫から勝手に持ち出して暴れていた。
「・・・ゾロア、そうやって男は成長するんだ。まだ若いんだから他に女はいくらでもいるさ」
「いねえよぉ、俺にはあの子しかいねえよぉ!!!!」
ライチュウはモモンネクターを飲んでいる。恋の病は時間で落ち着く場合と、落ち着かない場合がある。
「そうか、ゾロア、忘れられない時はとことんアタックしてとことん振られろ」
「でもどうやって!初めてみるロコンだったんだぜ!」
「和菓子屋で会ったんだろ。もしかしてそのロコンは和菓子が好きなのかもしれない。買ってた種類は?」
「みたらし団子三つ」
「毎日、みたらし団子を渡してプレゼント攻撃するのも良い手かもしれんぞ」
「そうか!」
落ち込んでいたのが嘘のよう。いきなり起き上がり、目を輝かせる。
「俺がみたらし団子を作ればいいんだ!でもどうやって作るんだろう」
「・・・調べてみるか?」
ライチュウは器用に人間のノートパソコンを開く。唯一、文字が読めるし人間と会話も出来ている。どこで知ったのかは謎である。
「えーと、料理ブログでトップのきとかげクッキングファイルによれば、『白玉粉、とかで団子をつくって、お湯に入れて浮いてきたらすくい上げる。たれはみりん・醤油に砂糖、お水。でもって水溶き片栗粉を入れてとろーりと仕上げる』だって」
「え!?それだけ!?」
「あと読めない。人間に読んでもらおうぜ」
ライチュウはブックマークに入れると、パソコンの電源を切る。
「焦るなよ。恋は焦ってもいいことない。また明日な」
サッサと寝床にはいるライチュウ。文字が読めないことをうらめしく思った。
「そうだ、人間と話せるようにならなきゃ。バイリンガルになるんだ」
寝床につく。隣では言いよってくる雌たちがいるが、ゾロアの目には入らない。あの大和撫子ロコンのみ。
「名前、そういえば灯夢ちゃん、とかおばちゃん呼んでたなあ、あの子の名前なのかなあ」
中々寝付けない。何度も寝返りを打ってるうちに、いつの間にか眠った。

 次の朝。人間はいきなりライチュウとゾロアに正面から頼み事をされた。惚れたロコンのためにそこまでしたいというゾロアの希望と、なんて書いてあるか解らないというライチュウの要望。
「まずゾロア。みたらし団子つくっても、会えなかったらどうするんだ?そしてライチュウ、人のパソコンを使ってもいいけど、書き込むなよ」
なんと朝、料理ブログの管理人からメールが届いていたという。
「これはチャンスだと考えるんだ、毎日みたらしを作って、その内『ゾロアくんのみたらしでないと食べられへんわぁ♪』と言わせるんだ!っていうメールが来てたぞ。覚えのないメールは緊張するから、書き込むなら一言いってくれ」
その後、ぶつぶつ人間は言っていたが、ゾロアの耳にはよく解らない。その間もずっとどう渡そうか考えていた。そして昨日のことを思い出しているうちに、あることを思い出す。
「ライチュウ、ライチュウ。俺も団子作って売ればいいんだよ!そしたら会いに行かなくても来てくれるじゃないか!」
この突飛なアイディアにライチュウはあきれたが、一応人間には伝えた。もちろん、人間はダメだという。
「そもそも、お前は四足歩行。料理を作るには手が最低2本ないといけない。その手はいつも清潔でなければ営業はだめなの」
じゃあこうすればいい、とゾロアはイリュージョンを使って目の前の人間そっくりになる。
「だからイリュージョンつかっても、結局は四足歩行してるでしょ。歩かないで商売できるのか!」
少し考えた後、ゾロアは後ろ足で立つ。そして、前足をテーブルに置き、後ろ足で移動できる範囲で移動して、前足は常に清潔、と訴える。それには人間も考えた。
「・・・まあそこまでやりたいなら止めない。けど、人間の世界は毛が入ってただけで大騒ぎだからな、気をつけろよ」

 宣伝、呼び込み、団子の焼ける匂い、みたらしの香り。やれることはなんでもやった。ゾロアは奥の厨房で団子を作っている。店頭が見えるようにガラス張りで。
「お、ここが新規開店の団子屋さんかあ、一個もらおうかな」
「まいど!90円になります!」
人件費はほぼゼロ。人間が手伝ってくれるおかげで、計算とか会話をパスできる。ポケモンたちも手伝ってくれるために料金の内訳は材料費が主。
「おひとつくださいな」
その声は!厨房の奥からゾロアが飛び出した。清楚な声、輝く見た目のロコン。
「灯夢、さん!」
「どちらさん・・・ああ、あんさんあのときの」
「ど、どうです!?灯夢さんのために、みたらし団子を・・・」
「ウチのために?ウチはみたらしには厳しいで?」
灯夢の目が光ったように思えた。それすらも今のゾロアには嬉しすぎる反応だった。そして灯夢はできたてのみたらし団子を一口いれた。
「んむ、焦げ加減が甘い、みたらしの甘さが足りん……55点やな。もっと修行が必要やなあ」
そのまま灯夢は店を後にする。少し歩いたところで、振り返った。
「そもそも、店の名前がないのでは、評価もしようがありまへんなあ」
そして振り向かずに灯夢は人ごみにまぎれる。彼女に言われたことがこだまして心に刺さる。この味は人間は中々といってくれた。ライチュウもよくわからないと言いつつ良いと言った。けれど灯夢の満足レベルが高すぎる。唖然と、消えていく灯夢の後ろ姿をいつまでも追い続けた。

 初日にしてはそこそこの売り上げを記録し、人間はほめてくれた。しかしゾロアは厳しい評価をされたことが納得できず、しかも店の名前がないことが気になる。そもそも、ちゃんとした個ポケモンの名前がない!
「なあなあ、俺たちにもちゃんと名前つけてよ!それで店の名前かえようぜ!」
ゾロアが訴えると、人間は解らないという顔をしていた。
「団子屋、じゃダメなの?」
「だめー!もっとインパクトあって、記憶に残るような・・・」
ふと人間、ライチュウの視線がゾロアに集まる。それに気付いて、どうした、と後ずさり。
「和菓子屋本舗幻想黒狐、だな。言い出しっぺの名前をつける法則」
ただの特性とゾロアを漢字にしただけの名前。ライチュウはそれでいいそれで、と大喜び。
「んで、ゾロアはクロミツ、ライチュウは金柑とでも名乗っとけ。嫌ならそのままでよし」
こうして、和菓子屋本舗幻想黒狐は団子一筋の和菓子屋として始まった。


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チャットで話していたログを元に構成されました。
ネタとくださった皆様、ありがとうございます。
最後に、お名前をお借りしたきとかげさん、灯夢さんを使わせていただいた巳祐さん、ありがとうございました

【なにしてもいいのよ】


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