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  [No.1215] 【再掲】沈黙するブルー。あるいはマロニエの午後 投稿者:むぎごはん   投稿日:2011/05/22(Sun) 17:32:02   91clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
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「わたしにはできないよ」

私の一番好きなブルーを窓から差し込む柔らかな光にさらしながら、その祝福を全身で受け取るその姿の滑らかさといったら、この世を作りしたもう神に愛されているとしか思えぬほどの見事の曲線だ。彼ら、ヌオー達の美しく滑らかな曲線に魅せられた芸術家は多い。それ故に古今東西のありとあらゆる、水に関する芸術にはヌオーのモチーフが用いられてる。水と豊穣の証として。

「わたしね、叔父さんに憧れて絵描きになったの」

叔父さんは、あなたのお父さんヌオーのパートナーよ。
黙したまま何も語らず、一本の樹木のように佇む後ろ姿をキャンバス越しに見つめる。まろやかな背に映った梢の陰に、スカイブルーが豊かな表情を見せてくれる。

「叔父さんのブルーに憧れて、カスチョリーネのスカイブルーを愛して、ミケランジェロのコバルトブルーに恋をして、そうして私は画家になったのよ」

梢と風のワルツに併せて、マリン、コバルト、プルシアン、セルリアン、ターコイズ、微妙に、しかし鮮やかに変化するヌオーの姿は美しい。美しいというしかない自分の語彙のなさが悲しくなるぐらい美しい。
確かに彼らにはミロカロスのようなわかりやすい華やかな美しさはない。されども、彼らには調和の美しさがあった。躍動と静穏、二つの対立した物を併せ持った美しさ。彼らは不完成であり、また完成した生き物だ。

「ねぇ、豊穣の子。躍動と静穏の器。神の作りしたもう生きた彫像。どうしたら、わたしだけの青が作れるのかしら」

教えてよ、青の王。私はどうすれば良いの。
揺れるマロニエの木立を、白い桟のフランス窓から見詰める彼は何も答えてはくれない。ただ、この世の何よりも尊いであろうブルーとしてそこに存在していた。あらゆる美を静かにまとって。
その静けさに、キャンバスに幾度と無く塗り重ねたブルーがじわりと滲んだ。
冷たい塩水で油絵の具は溶けないはずなのに。







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ありがたいことに再掲希望のお声を頂きましたので、恥ずかしながら再掲させていただきました。
ほんとうにありがとうございました。

【なにしてもいいのよ】


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