空を漂うジラーチを追いかけて、暗い山道を抜けてゆく。
周りに明かりはないけれど、空に輝く星々を見ながら進む。
後ろには相棒がついてくる。相棒の尻尾の火はまだ小さくて、道案内には頼りない。
山道を抜け、麓にたどり着くとそこは海岸。浪の音しかしない、時間から取り残されたような海辺だ。
水しぶきが反射して、海中の中の何かが煌めいて、天の川まで来てしまったのかもしれない、と一瞬思う。
そうだ、ジラーチだ。
夜空見上げると、瞳をとじたままのジラーチは海の向こうへと流れていく。
ポケギアを見る。もう七夕は終わっていた。
「そっか、ジラーチは起きなかったね」
相棒に言うが、姿が見えない。探してみると、相棒はジャブジャブと海の中に足を入れて駆け回っていた。
おいおいお前はヒトカゲじゃないか。海水は苦手なはずだろうに。
やれやれと肩をすくめると、相棒を追いかける。
僕が近づくと、ヒトカゲは誇らしげに右手を差し出す。
黄色い欠片だ。そうか、これが光ってたのか。
驚く僕を見た相棒は、満足そうに一鳴きすると、さらに奥に行こうとするので慌てて捕まえる。とっさに尻尾を握ってしまったせいで火傷をしかけて、両手を海水につけると今度は冷たくて、思わず声を上げてしまう。
「ヒット、お前は砂浜にいろよ。すぐに拭いてやるから」
ジラーチはもう見えない。
「そういえば、願い事、何だったんだっけ?」
僕の願いはジラーチに願いを叶えてもらうこと。
あれ? おかしいぞ?
ジラーチを追いかけるのに夢中になるうちに、目的を見失っていたみたいだ。
また一年すれば、七夕が来る。その時までに願い事を見つけておこう。
今年、願い忘れた分、他の人の願いが叶ってるかもしれないじゃないか。
そんなくさいセリフを言って笑われようとしたら、相棒が大きな星と向かい合っていた。野生のヒトデマンにちょっかいを出したらしい。お前、ヒトカゲじゃないか。水タイプは苦手だろうに。
「ヒット! お前が悪いんだから、早く逃げるぞ!」
相棒が追いついてから僕も走り出す。
星を撒いたら帰ろうか、夜空の果てから僕らの街へ。
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七夕に乗りそびれたので、Tekoさんに倣って翌日の話。
来年までさよなら七夕。
しまった、ヒトデマンが現れるのは「うみのむこう」じゃないか(笑)