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  [No.1591] イッシュ神話 鉛の心臓 投稿者:紀成   投稿日:2011/07/12(Tue) 20:00:40   60clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
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イッシュ地方、セッカシティに近い場所にリュウラセンの塔という巨大な塔が建っている。そこに生息するポケモンは、クリムガン、コジョフー、そしてゴビットだ。この話はゴビットと、その進化系であるゴルーグについての話。

昔々、まだセッカシティという名前の街が無かった頃。人とポケモンは今と同じように仲良く暮らしていた。これを執筆する他の書物を漁ってみたが、今から数百年前には既にリュウラセンの塔はあったらしいのでこの話はそれより少し後のこととなる。
二匹の神を崇めるために造った塔。外観も素晴らしいこの塔は、造られた当時からあること無いことの噂が広まるようになっていった。中に財宝があるとか、神に纏わる何かが奉られているとか。
案の定、リュウラセンの塔は盗賊や遺跡荒しに狙われるようになっていった。周りの人間達はそれこそ彼らを追い払ったが、中には爆弾や刃物を持っている者もいてうかつには追い払うことが出来なくなった。

そこで、彼らはこの塔を守ってくれるご神体を造ることにした。水と緑が豊かな土地の書物を参考に、泥で巨大な形を作り、顔を彫った。そして、心臓部分に当時は貴重だった鉛を入れた。
『どうか、この塔を守ってください』
そんな思いで彼らはいくつものご神体を作り、そして一番大きな物を塔の一番上に置いた。

さて、そんな彼らの思いが届いたのかそのご神体は侵入者を追い払うようになった。動きもしないし、ましてや生きてもいない。だが、集団で入り口に立ち、今にも動き出しそうなくらい細かく造られた形は侵入者が不気味と思うのには十分だった。
おかげで今まで追い払っていた人間達も仕事が楽になり、毎日のように彼らに供物を備えるようになった。
だが。

当時、イッシュ全体を震え上がらせていた盗賊団がいた。彼らは今で言う悪タイプポケモンの力を借り、各地の遺跡を襲っては金銀財宝を一つ残らず掻っ攫っていた。何しろ夜にしか動かずおまけに素早かったため、しとめることは至難の技だった。
そんな彼らが次に目をつけたのが、リュウラセンの塔だった。噂話はあまり信じなかったが、その土地に住む者達がわざわざ人形まで造っているのだから、これはきっと何かあると思ったらしい。
ある晩、彼らは塔に入り並んだ人形達を見つけた。下っ端の一人が人形を叩いた。
『おかしら、これ、泥のようですぜ』
『よくもまあこんな手の込んだ物を造ったな。まあいい。上に行くぞ』
彼らは最上階まで上がり、一番大きなご神体に出くわした。今の単位で百九十近くある頭ですら、その全体を見るには見上げなくてはならないくらい、大きかった。

彼らは最上階をくまなく探したが、何も無い。
『ちくしょう、はずれだったのか。腹いせにこの人形を壊してやる』
彼らは全ての人形を壊し、中にあった鉛の心臓を全て盗って行ってしまった。

異変に気付いた土地の者達は塔へ行き、おかしなことに気付いた。
ご神体がそっくり無くなっている。壊されたような跡も、破片も転がっていない。
そして地面には、何かが集団で歩いて行ったような痕が残っていた。同じ大きさが幾つか、そして一回り大きいのが一つ。
『一体どういうことだろう』
彼らは首をかしげるばかりだった。

さて、鉛の心臓を隠した盗賊たちは、夜遅くまで宴をしていた。飲めや歌えの騒ぎ。酒が足りないと下っ端の一人を倉庫へ行かせた。
下っ端は酒を取りに行き、ふと倉庫全体が揺れているような感覚を覚えた。みしみしという音と共に、何かが近づいてきているような―
驚いた下っ端は、酒を持って別の出口から頭達の元へ戻り、このことを知らせた。だが皆笑って、相手にしなかった。
そして全員が酒で眠りこけた頃。

どすん、どすんという地響きがした。隠れ家がみしみしと揺れ、上から物が落ちてくる。一人起き、二人が起きた。
『何だ一体』
めりめりという音と共に、隠れ家の屋根が取り除かれた。
そこには…

さっき壊したはずの人形が、表情の見えない顔で怯えた盗賊たちを見つめていた。

盗賊達は一斉に逃げ出した。だが小さな人形達がその行く手を阻む。半泣き状態になった頭以外の盗賊たちは言った。
『もう悪いことはしません。許してください』
そこへ、眠りこけている頭を巨大な右手で掴んだ人形がやって来た。盗賊たちの中心へ放り投げると、彼らは再び泥の人形に戻っていった。
そして心臓部分から落ちたのは、盗賊たちが奪ったはずの鉛の心臓だった。

塔の者達は人形を再び塔の中へ戻し、供物を供えた。やがて時代が変わり、塔を建設した者達がいなくなっても、彼らは時々動いてはリュウラセンの塔を守っている。
だが今の彼らに鉛の心臓があるかどうかは、定かではない。


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