人の身体と云うものは真に便利に出来ており、植物の養分と成ることは勿論、放っておけば実を削ぎ、白く小さな欠片となってくれるのです。あの形のまま、残り続けるのは勘弁ですが、少し散らしておけば芸術のちょっとしたアクセントになるもので
貴方もそう思うでしょう。
この建物の最奥の、小さな小さな寝室に、彼女は眠っています。優しく儚げな木漏れ日に照らされて揺れるーーそれはまるで秋千の様に、
ゆらゆらと揺れる彼女、ひらひらと揺れる私。
私は彼女のことを何一つ知らないのです。何故此処に居るのか、何故彼女を目の前にして私が生まれたのかーー理由は分からないけれど彼女は私と何か深い関係があったのではと。私はそう思いました。故に私は彼女を守り、此処を守り、彼女は私が喜べば喜び、悲しめば悲しみーー
赤い瞳の彼女、赤い瞳の私、
白い姿の彼女、黒い姿の私、
吊り下がる彼女、浮遊する私、
とうに死んでいる彼女、とうに死んでいた私、
黙す彼女、嘆く私、
詛う彼女、呪う私、
私は彼女、彼女は私ーー。
光の届かない影の闇が、静かに嗤った。