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  [No.2684] 愛される才能(テスト投稿) 投稿者:リング   投稿日:2012/10/16(Tue) 22:20:38   51clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
タグ:R-18】 【嘘です健全です】 【本当に健全です

「貴方、私を愛していないの? 私とポケモンの、どっちが大切なのよ!?」
「……同じくらい大切なつもりだったけれど、たった今お前の価値下がったわ」
 冷静に返されて、私の恋は終わった。

 *

「というわけなのよ。ひどくない?」
 休憩の最中、憤懣やるかたない私は同じ職場の同僚に相談を持ちかけた。そうよ、あの男……西条祐次(サイジョウ ユウジ)!! ポケモンにテレパシーを仕込みたいだとかいって、私のことをおろそかにする酷いやつよ。
「うーん……確かにその言い方はひどいけれど、そのセリフは女性が男性に言っちゃいけないセリフのトップクラスだし……」
 何よそれ、アイカ! たった一言で私を振る理由になるの!?
「百年の恋も冷めるセリフっていうのはそういうことを言うんじゃないのかな……大体、貴方彼氏を束縛したりとかしてるんじゃないの? 『他の女の子と話しちゃいけない』とか、『メールはすぐ返せ』とか」
「当然でしょ! アイカは心配じゃないって言うの?」
「ユキミ……『当然」って答える時点で、貴女、人に愛される才能はないわよ」
 目の前の同僚、アイカは、ため息交じりにそう言った。
「だーって、貴方って男の人に感謝していないんだもん。愛されたいなら、感謝しなきゃ」
「してないわけないでしょ! いっつも一緒に居てくれたらありがとうって言うし、きちんとお弁当とかだって作ってあげてるし! それなのに、あの人は私の作るものに、『コショウを加えたほうが良いんじゃない?』とか、『出汁が入っていないね……塩味だけじゃ味気ないよ』とか文句言ってくるし」
「お弁当作ることは彼氏に相談した? それとも彼氏にお弁当を作ってくれって言われたの? 押し付けたんじゃなくって? 彼氏はお弁当のメニューとか聞いてくる? 希望のメニューを貴方に伝えたりとかした? そもそも、貴方の彼氏さんってレストランの調理スタッフでしょ? 味について文句を言われたとかいっているけれど……それは文句じゃなくってアドバイスだと思うわよ、彼なりの」
「えっと……」
「そこで言葉に詰まるってことは、彼氏さん貴方のお弁当あんまり楽しみじゃなかったってことかしらね。何を作っても同じって思われてたから、お弁当のメニューなんて聞かなかったし、自分の好物を作ってくれとか頼まなかったんじゃないのかしらね?
  もしくは、食べられるだけでもありがたいけれど、もっと美味しいものを作れるはずだと信じたから優しくアドバイスしたのかもしれないし……貴方被害妄想激しいから、それを文句と勘違いしちゃったんじゃない?」
「なによ、その言い方!?」
「言葉通りよ……そもそも、男の人の愛情を試すのはいいけれど、それで愛情が覚めちゃったら本末転倒じゃない。その時彼氏が、『お前の方が大事だ』って言ったらどうするつもりだったのよ? 飼ってるポケモン捨てさせるの?」
「そうよ、捨てさせるとまではいかないけれど、私以外に時間なんて使わせたくないし、里親に出してもらうつもりだったわ」
「うわー」
「なによ、何が言いたいのよ!?」
「私だったら女のためにポケモン捨てる男なんてごめんだし、そんなの人間の屑だと思うし、彼氏に屑になって欲しいと願う貴方はもっと屑だと思うの。子供がアレルギーだから里親募集するとかならともかくさぁ……」
「アイカ……なんであんたはそんなにひどいこと言うの!?」
「いや、事実だし……酷いのは貴方じゃないかしらね?」
「事実じゃない!」
「そうかしら? そもそも、誰か一人しか愛せない男なんて男として価値ないと思うんだけれど。子供だって愛さなきゃいけないし、友達だって大事にしなきゃいけないし……ポケモンと暮らすことが貴方を愛していないことに繋がるのなら、世の中のポケモン持ちのパパさん、みんな妻も子供も愛していないことになるんですけれど?」
「それとこれとは違うでしょ!」
「どう違うのか、言ってみて……あー、そうだ。このまま口だけで話していても、貴方のような人は言っていることがすぐ矛盾して埒が明かないから、ちょっと紙に纏めるわ。まず、貴方が彼氏を束縛した内容だけれど……」
「もういい、あんたに聞いたのが間違いだった! 理屈っぽくってイライラする。」
「ありゃー……男は理屈で考える生き物よー? 男の気持ちも知らずに理屈を拒絶するとか、やっぱり貴方彼氏の事なんてなーんも理解してあげようとしないのねー。こりゃ男と恋愛なんて無理だ。せいぜい恋させるだけで精いっぱいね」
「うるさい!」
 全く、なんだってのよあの女は! はったおしてやりたくなる!

 #

「あーあ……あいつ、本当になんだったんだろうなぁ」
 惚れた男の弱みとはよく言ったものだが、もうなんであいつのことが好きだったのかわからなくなってきた。あいつに猛烈にアタックされてから、付き合うことを了承したが、それからと言うもの職場の皆で飲みに行くことを制限されたり、話しかけるのすら極力やめるように言われたりもした。
 それは無理だと説得するのにかなり時間をかけたが、その後もあいつの要求はとどまることを知らず。挙句の果てに、付き合っている途中に飼い始めたポケモンにまで嫉妬する始末だ。
「お前は、俺のこと必要としてくれるもんなぁ……」
 俺とあいつとの痴話喧嘩の最中、傍らで眠っているこのゾロア――アイルが思いっきり唸り声をあげて殺気を放っていたのを俺は知っている。襲い掛かったりはしなかったであろうが、あの女にものすごい敵意を持っていたことは肌で感じた。
 あーでも……俺がなんであいつに惚れたのか、ちょっとだけわかる気がする。あの女は、そりゃもう病的なまでに俺を必要としてくれた。それが嬉しかったのだと思う。ただ、必要とした分、見返りも不釣り合いなくらいにハードルが高くって、意味もなくそのハードルを上げた結果があの質問だったのだろう。ポケモンと散歩に出かける間、メールを返信しないだけで怒られるのだから。
 あの女、ユキミは俺を愛しているんじゃなくって、俺に愛してもらいたいだけなのだとわかった時は、恋心も愛着も全部冷めてしまった。

「お前は、無償の愛を持っているもんな。見返りなんて求めないで、ご主人ご主人って尻尾を振ってくれる。悪いところだって受け入れてくれるし、たとえ時間が短くっても、会えるだけで喜んでくれる……何より必要としてくれる。うん、お前が人間ならよかったのにな。雄だけれどさ……」
 相手の悪いところも受け入れてくれる。悪いところを見ないフリするのではなく、受け入れてくれる。それが愛なんじゃないかな。相手の事が好きで好きで仕方なくって、とにかく自分のものにしたいのが恋。
 あの女はきっと、俺の事なんて愛していなかったんだろう。だから俺の都合なんて無視してずけずけと勝手なことを言うことが出来るのだろう。恋は盲目……悪いところなんて掃いて捨てようってやつに引っかかっちゃだめだね。
「いいもーんだ……俺にはアイルがいるし。もともと、進化したら着せ替え人形にするつもりだったけれど……もうお前が恋人でいいや。」
 眠っているゾロアの頬をそっと撫で、人差し指と中指で拾いあげた顎に軽くキスをする。
「お休み、アイル。早く進化できると良いな」
 愛する彼の寝息を聞くと、驚くほどあっさりとした失恋の余韻が徐々に消えていくようだった。


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