おや人の子、またこの九尾の話を聞きに来たのかい?
ならば話そう、これはある豪傑の僧の話。
その僧が生まれたのは城都はエンジュの地
彼は赤子のはずだが、見目は数え年で2つか3つで、髪は肩を隠すほど長く、前歯と奥歯、共に既に生え揃っていたという。
赤子の父はその姿を見た途端、「鬼子」と呼んで殺そうと思い立ったが、それは叔母に止められ、彼女が赤子に幼名を名付けた
その赤子は「鬼若」と名付けられ、名付け親であった叔母に育てられたそうな。
その「鬼若」だが、かなりの暴れん坊でな、エンジュの今は跡地のみとなった寺に入り僧となったが、乱暴が過ぎたために追い出され、播磨国はアサギの地へと赴いたが、そこでも問題を起こしてしまったのだ。
アサギの地に、エンジュにある「焼け落ちた塔」に酷似した建物を見たことがあるか??それは「鬼若」によって炎上した堂塔の後でな、そこでも追い出された「鬼若」は、またエンジュの地に戻り、そこである悲願を立てた。
その悲願とは。千本もの刀を集めるということであった。
それから「鬼若」は、行商人から刀を奪い、帯刀の武者と決闘をし、ついには999の刀を集めた。
そして「鬼若」は最後の一太刀を探し、ある大きな橋の上に辿りついた。
その時の月は見事な眉月(三日月)であった。
「鬼若」の姿を一目見ようと、我は橋の下に流るる小さな川岸から、こっそりと覗いていた。
そして男が橋の上で人を待っておると、遠くから見事な笛の調べが聞こえてきたのだ。
そして現れたのは見目15ほどの、女とも見てとれそうな男であった。
そやつの腰に佩びた見事な太刀を一目見た「鬼若」は、その者と刀を巡り挑んで行った。
しかし相手の男は笛を吹きながらひらりひらりと、まるで揚羽の如く舞い、橋の欄干を飛び交い「鬼若」翻弄しておった。
「鬼若」もそやつの身軽さに負け、彼の千本の刀を集めるという悲願は後1つというところで叶わなかったが、それ以来「鬼若」は、その男に忠誠を尽くして、奪った刀をそのままに、共に宵闇に消えていったよ。
うむ?その「鬼若」と相手の名を知りたいと??
それならば教えてやろう、「鬼若」の名は武蔵坊弁慶
そしてそやつの相手となった者は、幼名は「牛若丸」、名を源義経と言うのだ。
あれから数十の時が経った頃、彼らの最後と思われる噂を幾つも聞いた。
さすがの我も混乱するほどであった、豊縁の地よりもさらに西の地、もしくは深奥の地に逃げ延びたとも言われるが、我もあの橋の上の決闘以来、二人の姿は一度も見てはおらぬ、この狐をも騙す二人には、我も他の獣も関心しておったよ。
+あとがき+
こはるさんに催促はされましたが、私自身続きを書くつもりでいたのですらすらと書けました。
今回は弁慶と義経の二人が出会った話を脚色しました。
この二人は本当に有名ですからね、次は何時の時代のを書こうかしらね。
【書いてもいいのよ】
【描いてもいいのよ】
【批評してもいいのよ】