ポケモンストーリーズ!投稿板
このフォームからは投稿できません。
name
e-mail
url
subject
comment

[新規順タイトル表示] [ツリー表示] [新着順記事] [留意事項] [ワード検索] [過去ログ] [管理用]

  [No.949] 11番目は巳佑をくり出して来た!! 投稿者:巳佑   投稿日:2010/11/10(Wed) 12:28:22   86clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5


★前置き:「行け!! 巳佑!! 『だいばくはつ』だ!!」

というわけで、
皆様の勇姿に続いて私も、
赤裸々(せきらら)に書いてみます!!(汗)

とりあえず今までの小説歴は……。

今まで書いたものは個人的に二種類に分けているのですが……。

『Another story』
これは、自分の好きになったアニメやゲームなどを
パロディ(例えばこの作品のキャラクターで学園生活を書いてみよう的な)
にしてみたりなどした物語で、
今まで長いのから短いのまで六本ぐらい完結させました。

『Original story』
これは自分でキャラクターや世界観を考えて書いてみた物語で
今まで長編(だと思う)一本と短編一本を完結させました。
(長編の方は所要時間5、6年。
 それを書いている間に、あれもこれも書いてみたい!
 といった感じに別の物語をやってしまい、後回しにしてたのですが、
 大学合格を機に一気に完成させました。
 今年の三月中旬ぐらいです。)

ちなみに(上記のとは別に)初めて物語を書くという体験をしたのは
恐らく、小学校6年生の時の授業で、
何か物語を書いてみようというものでした。
……たしか私が書いたのは当時の干支の辰(龍)が四季を旅して、
次の干支の巳にバトンタッチするといった物語だったはず……です。
記憶が間違えてなければ。(汗)

そしてポケモンの物語ですが長編の方はまだ完結作はありません。(汗)
一つはポケモン救助隊をベースにした物語。
もう一つは連載版の方でお世話になっている狐日和です。
(今は狐日和の方を進めています。)

ちなみにAnother storyでは
『ロス・タイム・ライフ』という物語(ドラマで放送されてました)を元にしたモノもあるのですが。
(『ロス・タイム・ライフ』とはオムニバス形式の物語で、
 ある人が死ぬ時に何故かサッカーの審判団が現れるんです。
 そして、その審判団が持っている電光掲示板には制限時間が表示されていて、
 その時間は、その人が今までの人生の中で無駄にしてきた時間みたいで、
 その残された時間の中での、その人の最期の物語……だったはずです。
 間違えてたらごめんなさい。)
それをポケモンの世界で
『ロス・タイム・ライフ ポケモンレンジャー編』とやってみたのが
初めて完結させた(別作品とのコラボですが)ポケモンの物語だと思います。

……それを投下してみても大丈夫でしょうか?
とりあえず、投下してみますね。(汗)


ちなみに、その物語を書いていたのは2009年の五月頃です。
えへへ……私、馬鹿でして。(汗)
『浪人生活二年目』の中、
勉強の傍らでボチボチとノートに書き上げてました。(汗)


(ここまでのことも含んで)49KBもあるので、
少々、長いですが……。
そして、ツッコミどころがたくさんあると思いますが……。
それでは、どうぞ!!


―――――――――――――――――――――――――

「最後まで諦めるな!!」
その言葉はまさしくそうだと俺から見たら、そう思うぜ。
だってよ最後までやってみなきゃ分からねぇだろ?
それに動かなきゃ何も起こらないだろ?
サッカーはボールを蹴らなきゃ始まらないし、
一人一人のプレイヤーが動かなきゃ攻撃も守備も始まらないだろ?
だから、オレも最後までこの戦いを諦めねぇ。

―――――――――――――――――――――――――

「ふぅ〜。疲れた疲れた。今回もお疲れ様、ピカチュウ」
「ピカッ」
とあるポケモンレンジャー施設。
ここは日頃、ポケモン関係の事件……。
例えばトレーナーがポケモンを盗難されたり、
ポケモンが災害にあったり、
他にも色々……。
そういった事件を解決する為に東西南北に奔走する組織の施設。
ポケモンレンジャーと呼ばれる、
まぁ、ポケモンを助ける奴等が集まる場所だという事だ、ここは。
かくいうオレもポケモンレンジャーでまだ4年目のこれからっていうヤツだ。
「ピカピカッ」
俺の肩に乗っているのは俺の唯一のポケモンでパートナーのピカチュウ。
オレが10歳の時、初めて出逢ったポケモンで、
パートナー以上に親友だ。だから気持ちも伝わる。
「メシ食いに行こうぜ。お前もハラが減っただろ?」
「ピカッ」
オレとピカチュウの絆は誰にも負けない自信がある。
ピカチュウの笑った顔を見ると
何故かそんな気持ちがオレの中に広がっていた。

――――――――――――――――――――――――――

場所は変わってレンジャー施設の食堂。
任務でヘトヘトに疲れきったポケモンレンジャー達の憩いの場でもあり、
かっこうのサボり場……おっと、今のは聞かなかった事にしてくれ。
食堂業界歴30年というベテランのおばちゃんから
Bランチ定食と特製ポケモンフーズを受け取って、
オレは適当な場所を見つけて座った。
「はいよピカチュウ。お待たせさん」
「ピカッ★」
オレから特製ポケモンフーズを受け取ったピカチュウは早速、食べ始めた。
むしゃむしゃ食う。
ガツガツ食う。
もうどうにも止まらないって感じ。
あはは。相当、腹減ってたみたいだな。
さ〜てオレもエコに貢献のMy箸(はし)を手にいざ食事……。
「冷たっ!?」
しかし、何か冷たい物を当てられて、
オレは飯(めし)を食うのを妨害されたぁ!!
「ハロ〜♪ 今回もお疲れ様、ゴウ♪ ピカチュウ♪♪」
「やっぱりお前か……! ラン……!」
「ピカッ♪」
ピカチュウの頭を撫でた後、ランはオレの隣に断りもなく座って来た。
彼女はラン。
ショートカットの亜麻色の髪。
背は小柄。
だけど性格は大胆。
見ての通り、相手に断りもなく隣に座ってくるのが証拠だ。
ランともポケモンレンジャーなのだがオレみたいにロードワークではなく、
主に情報などを取り扱うデスクワークの仕事を担当としている。
後、ロードワークのポケモンレンジャーのサポート役としても活躍していて。
ちなみにオレはランのサポートを受けている。
……まぁ、つまりオレとランは相棒だという事だ。
「それよりも……んぐぐ……ゴウ……モグモグ……んぐ……」
口の中にモノを入れながらピーチク、パーチクしゃべってはいけません。
「何だよ」
「んぐ……ふう〜。あっそうそう。今度の休日ってゴウの予定、空いてる?」
ポケモンレンジャーにも戦いの間、束の間(つかのま)の休みがある。
まぁ、万が一の大事件が起こった場合は返上になっちまうけど。
「まぁ……一応、空いているけど……」
おあいにくさま、オレには彼女がいないし。
休日の大体を暇人野郎として過ごしている。
……ごめん。
する事が他にないだけで、
本当の事を言うとピカチュウとトレーニングをしたりしている。
「じゃあさ、今度の買い物に付き合ってよ〜! バーゲンで欲しい服があってさ」
「オレはお前の戦闘兵かっつうの!」
「どうせ暇なんでしょ?」
「……はい、そうです」
否定出来ません。
メチャクチャ悔しいったらありゃしねぇ。
ランの目が笑っていて笑っていない。
「じゃあ、ヨロシクね★」
結局、表現出来ない、ランの殺気に屈してしまったオレであった。

―――――――――――――――――――――――――――

小さな頃。
「夢は何ですか?」とよく聞かれた事が誰にもあると思う。
オレも大人に訊かれて、ものスゴク迷った。
夢ってなんだ?
夢って何をするものなんだ??
そんな悩みがあった、お年頃の昔のオレはある日の事、
(実は)幼なじみだったランのおつかいに付き合わされていた。
そして、その店先で。
「全員、動くじゃねぇ!!」
マスクを被った黒ずくめの男達。
その手には銃を持っていた。
The 強盗事件。
逆らえば殺される――。
その時、その場にいた人達はそう思っただろう、
言われたとおりに皆、一歩も、眉一本も動かさなかった。
泣く子も黙るという言葉を体現しているかのように
オレもランもその場で止まっていた。
その15分ぐらいの頃だった。
「おわっ!?」
「きゃっ!?」
いきなり後ろから抱き抱えられて店の外へ。
そして、そのまま車の中へ。
そこにはあのマスク野郎達。
そして頭に突きつけられたのは銃口。
「動いたら、頭、アイちゃうから気をつけなよ? おチビちゃん?」
泣く子も黙る恐怖がガキなりにもオレの中で伝わった。
いわゆる人質というやつだと気付くのに時間はかからなかった。
このまま死んでしまうのか、オレ。
まだ今日のアニメも見ていないのに――。
ランもきっと絶望を感じていただろう、泣きそうな顔をしていた。
なんだよ、神様。
オレとランはおつかいに来ただけなのに!
ランなんか、明日、誕生日なのに!!
そんな行き場のない怒りと悔しさが溢れていた。
『犯人に告ぐぞ〜!! 
 今スグ、馬鹿な鬼の真似はやめて、素直に降伏しろぉ〜!!』
そんな時だった。
一人の男の声が電波に乗って聞こえて来た。
「オイッ、やべぇぞ!! 
 男一人がドードリオに乗って追いかけて来てるゾ!!」
仲間の一人が慌てたような口調で指を指していた。
『ったく……しょうがねぇな。
 五秒やるから降伏しろよなぁー!!』
「五秒って短くねぇかぁ!?」
……確かに。
この時ばかりはオレも心の中で、そうツッコンでしまっていた。
『5・4・3・2・1・0。
 はい、時間切れ〜!!
 これから強制施行に入るから、そのつもりでな!』 
そう、言葉が届き終わったや否や、急に場の空気が止まった感覚が体に走る。
「おい! どうした!?」
「く、車が動かなくなっちまったぁ!!」
時が止まった感じがしたのはソレが原因だった。
走っていた車は何故だか、何時の間に止まっていた。
オレだけではなくランも目を丸くしていた。
「クソ……!! こうなったら……!! おい、テメェら!!!」
車を止められて黒ずくめのマスク野郎達が逃げる術(すべ)をなくしたかと
オレは思っていたんだが……まだ実はあった事を数十秒後、知る事になる。
「おい!! 動くんじゃねぇぞ! 
 じゃなきゃ、このガキ達の命はねぇぜ!?」
唯一の方法。
それは人質。
オレとランを抱き抱えながら車から出た4人の黒ずくめ野郎達。
もちろん、オレとランの頭には銃口が当てられていた。
当然、セーフティーは外されている。
引き金が引かれたら、その先は地獄だ。
地……獄……なのに……。
「ったく。子供を人質にするなんてよ……
 お前等、卑劣の中の卑劣だよな〜」
この人、全く犯人の言う事、聞いてませんよ!?
馬耳東風ですよ!!??
ドードリオで追いついた謎の男は静かにこちらへと歩み寄って来た。
「お、おいヒトのハナシを聞いてんのカ!? 本当に撃つゾ!?」
「お前等の言う事を聞く事自体なぁ……嫌なんだよ、コッチはな」
逆撫で(さかなで)するような言葉で
黒ずくめのマスク野郎達から
プチッと何かが切れる音が聞こえて来た。
……まさか、理性がブッ飛んだってヤツじゃねぇ……よな……?
「だ……ダマれ! ダマれ!!
 本当にこのガキ達の頭を穴アキにするゾ!!??」
……マジでマジ切れする5秒前?
「撃てるもんなら撃ってみろよ」
衝撃の一言。
「腰抜けなお前等に出来るならな」
プチッ
トドメの一言。
……って、え?
「言ったナ!! 言いやがったナ!!!!
 こんなガキ達、すぐさま、あの世にいかしてやるヨォ!!!!!」
死を覚悟……という前に、
恐怖で何も考えられなかった。
思わず目をつむった。
………………。
…………。
……。
アレッ?
「な、なんで撃てねェンダ!?」
「セーフティーも外しているハズだゼェ!!?? って、うわァ!?」
「は〜い、ちょっと失礼するよ」
おそるおそるオレは目を開けてみた。
すると視界には例のおじさんが現れて来た。
「ちょっとじっとしててくれよ。スグに終わるからさ」
オレ達を安心させるかのように、おじさんは笑ってそう言うと、きびすを返した。
「お前等がなんで撃てなかったのか、教えてやるよ。サーナイト!」
おじさんが誰もいない方に叫んだかと思うと、急に光が現れて、そこからサーナイトが現れた。
まるで天使が舞い下りたかのようであった。
「サイコキネシス。ヨロシク!」
おじさんがそう一言、言った。
刹那――。
「ぐわぁっ!!」「動かネェ!?」「どわぁっ!?」「ギャアッ!?」
四方向から悲鳴があがった。
「いいか。まず一つにサーナイトをあらかじめ出しておき」
おじさんは黒ずくめのマスク野郎達に近づきながら、何処(どこ)からかロープを出した。
「お前等に気付かれないように隠れて」
一人目。
「お前等に気付かれないようにサイコキネシスを」
二人目。
「お前等の銃の引き金にかけておいて撃てなくしといたんだ」
三人目。
「引き金が引かれなきゃ、銃は撃てねぇもんだからな」
四人目。
「サーナイト、ご苦労様。ありがとな」
手慣れた手つきで黒ずくめのマスク野郎達をロープでぐるぐる巻きにしたおじさんが
サーナイトとハイタッチを交わすと、サーナイトと一緒にオレ達の方へと歩み寄った。
「すまなかったな。敵を騙すにはまず味方から、とは言うが、怖がらせちまって」
おじさんが静かに微笑むと今まで怖かったモノがせりあがって来ていたのか、ランは泣き出してしまった。
サーナイトが優しく、ランを抱き締めてくれた。
大丈夫だよ。
もう恐いモノなんかないよ。
と慰めてくれているかのようだった。
「だが、まぁ、もう大丈夫だ。ジュンサーさんも来てくれたようだしな」
気が付けばパトカーが辺りを囲んでいて、
黒ずくめのマスク野郎達はその場で現行犯逮捕、御用となった。
「よく頑張ったな、お前達。カッコ良かったぞ!」
おじさんが勇ましく白い歯を見せて笑ってくれた。
その時、俺の中で何かが吹っきれた。
そして心の中で何かが産まれた。
まだ、オレが幼かった頃、ポケモンレンジャーに命を助けてもらった時の事だった。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

……とまぁ、こんな事件を通じて、
オレは人やポケモンなどを助ける仕事がしたいという夢を持って、
今、現在に至るという事だ。
ランも同じだった
「よぉ〜。相変わらず仲つむまじき夫婦だなぁ、お二人さん」
そう言いながら、オレの隣に座ったのは中年のおじさん。
昔の事を考えていたオレにとっては少し不意打ち気味で少しビックリしたけど。
「アハハ! 隊長ったら、そんなワケないですよ!!」
大笑いをして隊長の冗談をツッコむラン。
……なんだろう。
冗談の話題なのに涙が出そうになるんだけど。
気のせいという事にしておこう。
「全くビックリさせないで下さいよ、隊長」
「まぁ、そう言うなよ。ちょっとしたオチャメ・ジョークじゃねぇか」
……どの年がそう言う!?
と、オレが心の中でツッコミを入れた相手の隊長とはその名の通りで、
ここのポケモンレンジャー施設のリーダー的存在の一人である。
そして、ここだけの話……。
「それに飯は一緒に食った方が楽しいだろ?」
この隊長こそ、
この人こそが、
昔、オレとランを強盗犯から助けてくれた張本人である。
本名はダイチ・サトウ。
40歳一歩手前、妻子持ちである。
「それにしても、昔と比べて任務をこなすのがサマになって来たよな。お前等」
「い、いきなりどうしたんですか、隊長」
会話の急展開というのも隊長の特徴の一つである。
「昔は任務が終わらなくて、飯が食えないよ〜って泣いていたよな〜」
「そうなんですよ〜。ゴウが本当に要領が悪くて悪くて」
……ぐっ、確かに昔はよく失敗しては昼飯を食いそこねて、
結局、相棒であるランも連帯責任というヤツで昼飯にありつけず、
最終的に最終責任という事で決して多くない給料で
よくオレがランにおごっているというのがお決まりのパターンであった。
「……言い返す権力は滅相(めっそう)もございません」
「ハハハッ。素直が一番いいってな♪」
……あまりの恥ずかしさで体が燃えちゃいそうだぜ……!!
そんな赤面あり、イジりありの昼飯が続く……。
『各、ポケモンレンジャーに伝えます!
 各ポケモンレンジャーに伝えます!!』
刹那――。
その放送案内の声と共に少なくとも食堂にいた人達全員に緊張が走ったと思う。
……今のこの放送案内は間違いなく、緊急の時の放送音だったからな。
オレも生つばをゴクリッと喉(のど)で飲みこんでいた。
『ディレエン地方のバルバの森で大規模な大火事が発生!!
 至急、各ポケモンレンジャー達は現地に赴いて指示に従ってください!!!』
告げられた言葉が終わるか終わらないかの所でピカチュウがオレの肩に乗って来た。
そのヤル気に満ちた目にオレも熱いモノを心に感じて来る。
「行くぞ! ゴウ!! ラン!!」
「ウィッス!」
「はい!!」
ポケモンレンジャー総動員の戦いが始まった。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

ポケモンレンジャー施設から急いで出発して約10分。
オレや隊長を含むポケモンレンジャー達はディレエン地方のバルバの森に着いた。
バルバの森は山のような起伏があり、そして、そこには今……。
「……スッゲー燃えさかってるじゃねぇか……!!」
「……ピカッ」
大きな炎に包まれているバルバの森があった。
……さしずめ炎の森という感じが第一印象だ。
消防団も駆けつけており、なんとか消火に努めているが、
予想以上のボヤに手を焼いているようだった。
「よ〜し、全員そろってるな! 時間ねぇから手短に説明すっぞ!!」
隊長が大声で説明し始める。
「今回、俺達のやるべき事は、
 恐らくバルバの森に取り残されたと思われるポケモン達や人の救助!!
 それと……」
隊長が険しい顔をして続ける。
「……目撃者の証言などから、
 今回、このボヤ騒ぎを起こした張本人がバルバの森にいるかもしれない事が判明した」
全員の心に緊張が走った。
天候とかではなく、この大火事を起こした、
いわば犯罪者がいるという事に衝撃が走ったと思われる。
……オレもピカチュウも同じ心境だ。
「今回は救助と共に、そのホシの追跡、出来れば現行犯逮捕を頼む。
 ホシの特徴は身長170センチメートル前後、茶髪に、黒サングラス、黒のコートに青のジーンズ。
 そして……鼻ピアスをしているという事だ」
犯人の特徴も言い終わり、
後は出発するだけの時、隊長は咳ばらいを一つ。
「行く前に一つ、お前等に言っとくぞ」
これは大きな任務に行く前に隊長がやる恒例の儀式、喝入れみたいなもんだ。
「いいか、炎を甘く見るな! 煙をあまり吸うな!
 ……これだけの大火事だ。何が起こるか分からねぇ、いいか?
 絶対に無茶をしない事、そして絶対に死ぬな! 分かったな!?」
いつも隊長がくれる言葉は裏表がない一直線な力があって、
不思議と勇気が湧いて(わいて)来る。
……よし。
心も体も準備万たんだぜ!!
「よし! それじゃあ……」
その一声で皆、身構え、
「全員、出動!!」
任務開始の声と共に走り出した。
「ピカチュウ、行くぜ!!」
「ピカッ!!」
オレとピカチュウも燃えさかるバルバの森へと走り出した。
絶対に助ける!! 
その気持ちを心にしっかりと刻み込みながら。

―――――――――――――――――――――――――――――――――

一人一人、別行動となった救助活動。
「スッゲー熱いな! 大丈夫か!? ピカチュウ!?」
「ピカ!!」
「よし、このまま突っ切るぜ!!」
バルバの森に入った瞬間、そこはもう別次元の世界だった。
炎があっちこっちで燃えさかっているし、温度だって桁違いに暑くなっている。
けど、だからこそ長居は無用だし、立ち止まっている暇はない。
早く取り残されたポケモン達を助けなきゃな!
『ゴウ、聞こえる? ゴウ、聞こえる?』
走っている途中、耳につけた通信機から声が聞こえ始めた。
間違いなくランの声だ。
「ああ、ランか。大丈夫だ。よ〜く聞こえてるよ」
『マイクテスト中、マイクテスト中』
「聞こえているって言ってるだろうが!」
……ったく、こんな時にでも冗談を出すとは。
『ごめんごめん。まぁ、これで緊張も取れたでしょう?』
……まぁ。ランらしいと言えばランらしいかな。
……良く言えばの話だが。
「まぁ、とりあえず今のところ無事だぜ」
『その声を聞けて安心したわ。
 適宜、連絡するから、ゴウの方も何かあったら、スグに連絡しなさいよね!!』
今回の火事の規模を聞かされて、心配しているかもしれないな。
だからオレは安心させる一言を言ってやった。
「……帰ったら、買い物、付き合ってやるから、サポート頼むぜ!」
そう一言、言うと、通信を一回切った。
「……ピカッ」
ピカチュウがなんか照れているようにこっちを見ている。
……そんなクサイセリフだったかな……。
……ってなんだか緊張が解けたのはいいが解けすぎて、
これじゃあ……緊張感がなさすぎだ!
……って隊長に怒られそうだな。
「……き、気を取り直して行くぞ!!」
一言、気合いを自分にピカチュウに入れ、走るスピードをあげていった。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――

バルバの森に入って約20分経過頃。
「……だいぶ奥地に入ったな……」
燃えさかる炎は更に勢いを増し、辺りはその名の通り、炎の海となっていた。
オレとピカチュウは走る足を一旦止め、辺りを確認するように歩く。
「……ここには逃げ遅れたポケモンとかいなそうだな」
オレは一息、安堵(あんど)の息をつく。
ここにはいないという事は、
ここにいるポケモンの殆ど(ほとんど)が避難する事が出来た可能性があるしな。
それに地面にはポケモンらしき足跡が所々に森の外に向かって残っていた。
「……ピカッ!」
さて、次に行こうかと思った、そんな折だった。
ピカチュウが何かに気付いたような声を上げた。
「どうした、ピカチュウ?」
「ピカ、ピカチュッ!」
ピカチュウが必死で指を指している方向を見てみると。
……可愛らしい容姿に、頭の上には左右に花。そしてスカートのように伸びる葉。
…………あれって、キレイハナか?
「……って、大変じゃねぇか!! 行くぜピカチュウ!!」
「ピカッ!!」
オレとピカチュウは一緒に走り始めた。
キレイハナは周りが炎の海の状況に、もしかしたら仲間とはぐれてしまったかもしれない。
すごい困った顔を浮かべていた。
……キレイハナは草タイプのポケモンだ。炎には弱い。
それもキレイハナの足を止めさせている理由の一つかもしれない。
とにもかくにも早くキレイハナを助けなきゃ……!!
「……ピカッ!!」
「……あっ!!」
後10メートルぐらいのところで、
なんと燃えさかっていた一本の木が支えをなくしてしまったらしく、倒れて来た。
……しかもキレイハナに向かって!
「間に合えぇ!!!」
「ピカッ!!!」
とっさにオレとピカチュウは同時に
ヘッドスライディングの用法でキレイハナに向かって飛び込んでいった!
トンッ……!
わずかの差でオレとピカチュウの手はキレイハナの体を強めに押した。
軽い音と共にキレイハナの体は後ろへと飛び、キレイハナはなんとか無事。
問題はオレとピカチュウだが、
なんとか倒れこむ木を避ける事が出来て……。
「なっ……!?」
「ピカッ!?」
倒れこむ一本の木をなんとかキレイハナを助けながらすり抜けたと思ったんだが……。
いつのまにか、
もう一本の燃えさかる木がオレとピカチュウの方へと倒れこんで来た!
すり抜けた先に、
もう一本、木が倒れこんでくるなんて……!!
「うわぁぁぁ!!!」
「ピカァァァ!!!」
耳をふさぎたくなるほどの悲鳴を残してオレとピカチュウは……。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

……死んじまったのか? オレは。
暗い意識の中でオレはそう心の中で呟いていた。
まだ、助けていないポケモンとかいるのに……!
……ランとの約束もまだ交わせていないのに……!!
……ピカチュウは無事だろうか……?
『ピィ――――!!』
様々な悔しさや悲しさやらで頭がごちゃごちゃになっていた、その時だった。
甲高く鋭い笛の音が響き渡った。
……って笛の音?
しかも、何処かで聞いた事があるような……ないような……。
……ていうか、オレ、生きているのか?
そんな、いちるの想いを胸に秘めながらオレは目を開けて……。
「……誰?」
そこにいたのは何処から現れたのか!?
……の謎の男4人組が2組。
「……なんで、サッカーの審判団?」
……その容姿はまさしくサッカーの主審らしき人と副審らしき人に時間係(?)の人。
そして時間係が持っていた電光掲示板には
『2:35』
と示されており、もう一人の時間係が持っていた電光掲示板にも
『2:35』
と示されていた。
「……ピカッ?」
「お、ピカチュウ、大丈夫……」
最後の「か?」という声はオレの喉から出る事はなかった。
オレは夢でも見ているのか?
そう思うのも無理はなかった。
……だって、オレとピカチュウにめがけて倒れて来たハズの大木が
空中で止まっていたから!!
……これってなんだ?
周りの様子を見ても、この倒れて来た大木が
どこかにつっかかった様子もなく、
文字通り、
大木は空中で止まっていた。
オレは物理とかよく分からないからアレだけど……。
これ、重力とか運動の方向とか無視してんだろ!!……というぐらいは分かった。
いったい……ぜんたい……どうなってん……
『ピッ!!』
不可解な状況に軽くパニックを起こしそうになった矢先に
オレの耳に響いた笛の音。
「あっ」
そういえば、こいつらの事、忘れてた。
謎のサッカー審判団。
『ピッピピッ!!』
笛の音に導かれるようにオレとピカチュウは立ち上がった。
「アンタたちは一体、何者なんだ?」
とりあえず最初の一言はこうでなきゃな。
『ピ……! ピピ!!』
……けれど返って来たのは笛の音のみ。
一瞬、ふざけてるのか!? とツッコミを入れようとした寸前で、
オレはハッと何かを思いつき、何とかツッコミの言葉を止めた。
「……もしかして、しゃべる事が出来ねぇとか……?」
『ピッ』
首を縦に振る謎のサッカー審判団。
なる程な。……どうりで最初の質問の時に審判団達の顔が曇ったと思ったぜ。
今日のオレ、もしかしたら、いつにもまして冴えてるかも?
『ピッピ!! ピッ!』
「ん?」
さて、どうやってこの審判団から正体やら何やら掴もう(つかもう)かと考えていたら、
再び、笛の音が鳴り響いた。
「ピカッ」
「ピカチュウ」
そして同時にピカチュウが俺の肩に乗って来た。
『ピッ!!』
四度目の笛の音が鳴ったと思いきや、
審判団が何やら意味深のダンスを始めやがった!
手を動かしたり、指をオレ達の方に指したり……って、
これって、もしかして……。
「ジェスチャーかっ!?」
審判団から首を縦に振るという肯定の答えをもらった。
「よし、分かった。とりあえず、それで説明ヨロシク!!」
本当は……早くミッションの方に戻りたかったのだが、
今はこの状況を理解するのが先決だ。
……そう、オレの体が語っているように思えたからだ。
『ピッ!!』
任された! と言わんばかりに審判団の笛が響く。
よし! こいっ。ジェスチャーは実は自信があったりするぜ。
というのも、ピカチュウが何かを伝えようする時は
よくジェスチャーや色々な百面相をしてくれる時があり、
それ当てっこしたりして、遊んでいる時もあるという、
カッコ良く言うと裏付けされた経験による自信という事だ。

指をまずオレとピカチュウの方に向ける謎のサッカー審判団。
ふむふむ、オレとピカチュウが。

謎のサッカー審判団の指は続いて空中で止まっている大木の方へ。
え〜と、その大木が……じゃなくて「に」かな?

そして大木に向けられた指は胸の方にバッテンを示して、
そして一本の人指し指は

……空へ……?

…………。

……そして、もしかしてバッテンの印は。

………………停止?

……そして、そして、もしかして一本の人差し指が向けられている空は。

……………………………………………………天国?

………………これって、もしかして、オレとピカチュウは。

……………………………………………………………………………………。

…………死んだ、のか?

……信じられねぇ……嘘だろ……?

ピカチュウもオレと同じ答えにたどり着いたのだろう、瞳がこわばっていた。
信じられねぇ……まじで、信じられねぇよ……。
でも……。
「つまり……」
言い出せずにはいられなかった。
「オレとピカチュウは、あの大木によって死んだけど、
 アンタ達のおかげで、今、生きている……」
例の電光掲示板の方に目のやり場を移す。
「ただし、時間制限あり」

『2:25』

「時間になったら、オレとピカチュウは本当に死ぬ……てコトか?」

言い終えた。
……心臓の高鳴りが夢じゃない事を伝えている。
『ピッ』
審判団の首は縦に振られた。
それは、すなわち殉職(じゅんしょく)を意味し、
そして、
オレとピカチュウの死が真実だという揺るぎない答えだった。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

『ゴウ、聞こえる!? ゴウ、応答して!!』

「あぁ、充分、聞こえてんぞ、ラン」

『……やっと出た。
 ちょっと、ゴウ!! アンタ、大丈夫!?
 何かあった!? ケガとかしてんじゃないでしょうね!!』

「……あぁ、なんとかな。どうかしたのか?」

『どうかしたか、じゃないわよ!!
 さっき、通信しようとしたけど、つながんなかったのよ!』

「多分、電波が悪かったんだろ。それより、なんかあったのか?」

『あぁ! そうよ。その事で通信したのよ』

「何が起こったんだ?」

『えぇ、さっき、他のレンジャーが今回の山火事の犯人と接触したらしいのよ』

「まじか!?」

『マジよ。それでその接触の際にGPSを犯人に付けたの。 
 それで、その犯人の位置が今一番、ゴウに近いの!」

「なる程な……。オレがそのホシを追う役になったっていうわけだな」

『……ゴウにしては珍しく冴えているじゃないの』

「珍しいっていうな! 流石って言えよ!!」

『まぁ、それぐらいの元気があるって事は無事ってことよね。安心したわ』

「……ハメやがったな」

『ま、ともかく、誘導していくから指示をよく聞いてよね!』

「あぁ、分かった! …………んで、あのさ、ラン」

『何よ?』

「…………」

『……ちょっと、ゴウ?』

「ヘマするなよ!」

『……アンタにだけは言われたくはないわ!!
 確認があるから、一回切るけど、スグにまた連絡入れるからね!!』

……ここで一旦、通信が切れた。
オレはピカチュウと一緒に燃えさかる山の中を走っていた。
近くには謎の審判団もいる。
……正直、自分が死ぬなんて信じられなくて、
受け入れろ、といっても、
言葉では簡単でも、実際には難しい。
だけど、これは幻でもなければ、夢でもねぇ。
おまけに生きていられる時間は残り………………。
『1:30』
2時間を切っていた。
だったらオレは今を最後まで走り切る。
最後の0時間0分0秒になるまで、この任務を務めてやる!!
それが、オレが出来る唯一の事だと思ったからだ。
ピカチュウも同じ気持ちで、一緒にこうやって最期の根性を見せていた。
ランから連絡があったのはキレイハナを救出し、安全な所へと逃がして、
再び、燃えさかる山の中、バルバの森の中を走り駆けめぐっていた時の事だった。
……オレが死んだって事、ランは知らないんだよな……。
………………。
けど、いまはソレで任務に支障をきたしたらマズイし、
オレとピカチュウは、もう、残り時間が少ない。
犯人を捕まえる為の時間は限られているんだ。
今、オレとピカチュウにしか出来ない事を最期に成し遂げたい。

オレの為にも。
人の為にも。
ポケモンの為にも。
ピカチュウの為にも。

……ランの為にも。

負けるわけにはいかねぇんだ。

「もしもし、ランか?」
プルルと無機質な機械音が響く通信機を手に取る。
『準備は整ったわ。それじゃ……行くわよ?』
「合点、しょうちのすけのラジャー!!」
「ピカチュッ!!」
ランの誘導と共にオレとピカチュウは走り始めた。

諦めねぇ!

その言葉と共に。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

「大丈夫か? ピカチュウ?」
「ピ……ピカ……」
「無理するなって。ホラ、酸素を吸っとけ」
ランの誘導でバルバの森の更に奥地まで来たオレとピカチュウは小休止をとっていた。
奥地の燃えさかり度は入り口のと比べて、ハンパじゃなく、
もう、そこは一面、火の海と言っても過言ではなかった。
火の海の中では酸素がいちじるしく濃度が低くなっていく。
それを示すかのようにピカチュウが苦しそうな顔を見せていたが、
小型の酸素ボンベで新鮮な酸素を送ると、少しだけだが、顔色が良くなった。
……後ろの方では例の審判団がオレ達の事を見守っていた。
……苦しくねぇのかな?
……肩で息をしているけど。
……走り疲れしただけっていうような感じだし。
……ますます、謎の奴(やつ)達だな。
かっこうも何故かサッカーの審判団だし。
『0:45』
オレとピカチュウの残りの命とも言える、
2つの制限時間をチラリと見た。
……残り45分か。
まさしく、サッカーの後半戦ってトコだな。
……って問題はソコじゃなくて。
……残り45分。
なんとか体がもってくれればいいんだけど、と心配しているのは
実は酸素ボンベが今のピカチュウに使っている分で最後だったのだ。
……オレは約1時間前に使って、それっきりであった。
……って弱音を吐いている場合じゃねぇよな。
最後まで諦めねぇ!
……そう決めたんだからな。
「ピカ……」
「もう、大丈夫みたいだな。行けるか? ピカチュウ」
「ピカ! ……ピカ」
一回ヤル気満々の顔を見せてくれたピカチュウだが、
その次は申し訳なそうな顔を見せていた。
「……もしかして、最後の酸素ボンベを使って、ごめん……とか?」
「ピカッ」
こくりとうなずくピカチュウ。
いつもは明るいヤツなんだが、責任感の強いところもあるからな、ピカチュウは。
「水くさい事、言うなよ。仲間は支えあうもんだろ?
 オレ達、親友だろ? オレの事、信じてくれよ。
 オレもピカチュウを信じてるんだからさ」
「……ピカ!」
オレの言葉はピカチュウの心に届いたようで、ピカチュウは笑顔で答えた。
そうさ、オレとピカチュウは小さい頃から一緒に笑ったり泣いたりして来たんだ。
親友なんだ。
……だからピカチュウが困っている時は助けてやりたい。
力になってやりたい。
『ゴウ、ピカチュウ! 大丈夫?
 もうすぐ、犯人と接触するわ!
 ……犯人はナイフを持っているみたいだから、気を付けてよね!!』
「あぁ、分かった! ……それじゃ、行くか、ピカチュウ!!」
「ピカッ!!」
オレとピカチュウは再び走り始めた。
……心配しなくても大丈夫だぜ、ラン。
オレとピカチュウの絆は誰よりも強いんだから。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

「……いた! アイツか!!」
「ピカッ!!」
再び、ランの誘導を頼りに走り続ける事、約5分。
中年おじさんの雰囲気を漂わせる背中が一つ見えた。
「おいっ!! 待て、てめぇ!!」
叫び声、むなしく響いただけで、男の足を止める力とはならなかった。
にゃろう……聞こえてるハズだよな……!?
だが、ここでキレたら三流だ。
……という隊長の受け入りを心に唱えて、
オレは周りを見渡した。
燃えさかる炎に包まれている木々、といった風景が続く。
……少しずつ犯人との差は詰めていっているが、このままじゃキリがねぇ。
逃げ道さえ、塞げば(ふさげば)、一気に追い詰める事が……。
そこまで思ったオレの頭に一寸の電光が走った。
しめた! 木々をうまく使えばいいじゃねぇか!
「ピカチュウ! アイツがいる所から5本先の木に10万ボルトを打てるか!?」
「ピカッ!?」
「木を倒してアイツの逃げ道を塞いでいくんだ!!」
「ピカ!!」
一瞬、オレの突拍子もない意見に驚くピカチュウだったが、
オレの意図が分かると、
任せて! と言わんばかりの顔をした。
ソレを見たオレはこれ以上は何も言わなかった。
それだけピカチュウの事を信じていたからだ。
「ピーカ……」
ピカチュウの赤いほっぺた――電気袋からほとばしる電撃。
「チュッ!!」
ピカチュウのタイミングで放たれた電光は真っすぐに伸びてゆき――。
ドカッ!! と見事、矢で射抜いたように雷は犯人から5本先の木に命中。
「うわっ!!」
そのまま木は支えをなくして転倒した。
轟音(ごうおん)が響き渡って、犯人がビクついて、一回、立ち止まった。
「待ちやがれっつってんだろ!!」
「ピカッ!!」
「ヒぃっ!! く、来るなぁぁ!!」
オレとピカチュウが声を荒げると、犯人は明らかに驚き、ビビりまくっていた。
しかし、その恐怖は犯人の防衛本能、
捕まりたくない! という気持ちを促進させてしまったらしく、
犯人はすぐに他の道を見つけると再び逃走を図った。
「くそっ! まだ逃げる気か!!」
思いっきり舌打ちをしたオレであったが、
ピカチュウが足止めしてくれた時間の差は、
結構、オレ達と犯人の間を詰める事が出来た結果となった。
つまり、歯を喰いしばって、もう一段階スピードをアップさせれば……。
「ま・ち・や・が……」
手を伸ばして犯人の肩を掴む、3秒前……。
「ク……クるなァッ!!」
1秒前に見たのは赤い液体が横一閃に飛び散る様。
「痛っ!!」
犯人が捕まる寸前にナイフをオレに切りつけてきたというのは
鋭い光を見て、スグに分かった。
そういえば、犯人はナイフを持ってるってランが言ってたな……。
犯人が持っているナイフは刃渡り30センチメートルのサバイバルナイフ。
見た限り、切れ味の良さそうな鋭利な光を帯びているエモノだ。
「ピカッ!!」
「あぁ、大丈夫だ、ピカチュウ。それよりも……」
心配そうな顔で駆け寄ってくるピカチュウにオレは安心させるかのように笑顔を見せる。
まぁ、実際に切りつけられた右腕からは血が少し流れ出ているが、深い傷ではない。
……少し、痛いけどな、やっぱり。
まぁ、今、大事な問題は、こっちじゃなくて……。
「テメェが、今回の放火魔って事で……いいよな?」
オレは睨み(にらみ)付けて、犯人に問いかけた。
中肉中背の風貌(ふうぼう)、
印象的な無精ヒゲ、
そして鼻ピアス。
犯人はもう逃げても無駄だと分かったのか、
立ち止まって、オレとピカチュウの方に面(つら)を向かわせているが、
代わりに、例のサバイバルナイフを両手で持って構えていた。
「ア……アンタ、何モンだ!!?」
「オレ? オレはポケモンレンジャーをやっているモンだけど?」
オレが一歩、前へと進むと犯人の手の震えが大きくなっていく。
しかし、ナイフを向ける方向はオレに向いたままだった。
「さてと、テメェの質問に答えてやったんだ。
 今度はテメェがオレの質問に答えてやる、番だよな?」
もう一歩、オレが前へと進むと、犯人の手の震えは更に大きくなっていく。
「テメェが今回の放火魔だよな?」
更にもう一歩、オレが足を前へと踏み出す――。
「わぁァァァァ!!!!」
犯人の恐怖感が臨界点を突破したらしい。
けど、オレは慌てなかった。
もう少しで犯人の真意が聞けそうだったからだ。

「ア、アイツらが悪リィんだァ!!
 おれに仕事を辞めさせやがってよォ!!!」

…………。
……………………。

オレ、怒りで理性が吹っ飛びそうなんだけど。

「……テメェ……それだけで、
 たった、そんだけの事で、この森に火をつけた、つうのか?」
「あぁ! そうダヨ!! なんか、文句でもあんのかぁ!!」
炎の中に消えていくのは身勝手な犯人の意見。
「ピカ……?」
「……んだと……?」
オレと、そして恐らくピカチュウも
心の中で沸々(ふつふつ)と怒りをこみ上げていた。
犯人がどんな経緯で仕事を辞めさせられたのかは分からねぇ。
理不尽な理由かもしれねぇし。
犯人の勤務態度が悪かったかもしれねぇ。
……けどな。
だからって、その怒りをそういう風に――森を火事にするっていうぶつけ方……が
一番、理不尽じゃねぇか!?
「……テメェ……」
森には多くのポケモン達が住んでいるし、
多くのトレーナーが通り道に使っているかもしれねぇ。
……この火事で、もしかしたら、
最悪な結果を迎えた奴がいるかもしれねぇ。
犯人は最悪な事をした。
「ふざけるのも、たいがいにしやがれぇ!!!」
仕事を辞めさせられたという怒りを
放火という殺人で晴らしているも同然だったからだ。
「ひぃっ!!」
オレが走りだしたのに反応して思いっきりナイフを振りまくって来た。
色々な方向に軌道を描くナイフの刃。
デタラメな、むちゃくちゃな武器の扱いだが、
それ故に動きが読みにくい。
だが、それ故にスキが生まれやすい。
「あめぇんだよ!」
相手がナイフを思いっきり振る。
直後にスキが生まれる。
オレはソコに目をつけて犯人の懐(ふところ)に入って一発ストレートを……。
「!?」
しかし、パンチが届く直前にオレの体がぐらついた。
……なんだ、体の自由が、今、きかなかったぞ!?
まるで、貧血を起こして、目まいをさせたかのような感覚だ……。
…………。
もしかして……酸素が足りなくなったのか!?
1時間以上火の中にいて、酸素ボンベを吸わなかった事。
それが、今、仇(あだ)となって、オレの体を襲って来たのか!?
「ピカッ!!」
ピカチュウの叫び声と共に、鳴り響いたのは何かを切る音。
『ズシャッ!!』
オレの左腕を深く切られた音だった。
……危なかっ……た……!!
ピカチュウの叫び声に気付いていなかったら、
間違いなく胸を切られる所だった……!!
なんとかギリギリの所で致命傷を防いだが、一難去ってまた一難。
犯人のナイフの切っ先は間違いなく、
今度はオレの心臓に向かっていた!
おまけにオレは意識がもうろうとしていて、かわしきる事が出来ない……!
ピカチュウが駆け寄って来る音と共に。
犯人のナイフがオレの心臓に向かって――。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

「隊長……!! これ以上は危険ですって!!!」
「いいから、もう少し待ってろ。もうすぐ、助けが来る」
かつての救助活動。
その矢先に起こった事故。
ゴウの体は宙に浮いていた。
隊長の手はゴウの手を繋いでいた。
一歩間違えば、死を招く、断崖絶壁。
「隊長……」
「なんだ、ゴウ?」
ゴクリと響く唾(つば)を飲み込む音。
「その手を放して下さい」
諦めの言葉。
そして、
道連れを防ぐ言葉。
「いやだね」
きっぱりと断りの言葉。
「ですけど……隊長! これ以上は……!!」
説得の言葉。
「るっせぇ!! 最後まで諦めんじゃねぇ!!」
喝の言葉。
「最後までやらなきゃ、まだ分からんだろうが!!」
それは救いの言葉となる。
「いいか、ゴウ! 
 運命っていうのは、
 ソイツの頑張りで変える事が出来るんだ!」
そして放った言葉は
この先
ゴウの熱血な性格を更に熱くする事になる。
「最初っから、もう、負けを認めんじゃねぇ!」

「最後まで諦めるな!! 
 それが生き様っていうもんだろうが!!!!」

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

『ズシャッ!!!』
今度の音は何かを貫通させた音。

「なっ……!?」
「へへ……捕まえたぜ」
ナイフが手のひらから、そして手の甲へと貫通させた音。
そしてその音と同時にナイフが貫通しているオレの左手は
犯人の柄(つか)を握る手を掴んでいた。
「は、離せ……! 離しやがれェ!!!」
ジタバタする犯人。
けど、無駄だ……オレの握力をナメんなよ。
「ピカチュウ! オレの体ごとで構わねぇ! そのまま『でんじは』だ!」
「ピカッ!!」
分かった! と言わんばかりのピカチュウの鳴き声の後。
「ピ〜カ〜……」
ほとばしる電気の音。
「チュッ!!」
そして『でんじは』がオレの体を襲い、
「ウ……うわァァぁァァ!!!!」
『掴んだ手』経由で犯人の体にも『でんじは』が流れ込む!
電撃の音が鳴り止むと、オレは犯人が貫通させたナイフから引き抜く。
血が一瞬、引き抜かれた動きに飛び散る。
オレは唇を血がにじむ程、噛みしめて、
痛みと体のシビれに耐え、
そのまま一歩、二歩、ステップを後ろから前へと体ごと動かし、
「オレは最後まで諦めねぇぜ!!」
叫び声と共にケガをしていない右の拳を
「グぼわぁぁ!!!」
体重を乗せて、犯人の顔面に直撃させた。
犯人の顔から骨が軋む(きしむ)音がハッキリと聞こえる程、
力強く。
「ピカッ!!」
犯人が倒れると同時にオレも倒れた。
ピカチュウが急いで駆け寄って来てくれた。
「あぁ、大丈夫だ。ピカチュウ。悪リィな、心配かけさせちまって」
体のシビれ、そして手の痛みが残っているものの、
オレはなんとか立ち上がってピカチュウに笑顔を見せた。
一方、犯人の方は完全にノビているようで、
今の所、目を覚ます気配はなかった。
……勝負アリってとこだな。
『0:37』
……そして確実にオレとピカチュウの終わりが近づいていた。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

『0:27』
だいぶ消火が進んだ場所にオレとピカチュウがいた。
そう、オレとピカチュウが本来、死んだ場所だ。
例の空中で止まっている大木が夢のように。
けれど、手に走る痛みが嘘ではない事を告げていた。
「ピカ……」
「戻って来たんだな……ココに」
辺りから焦げくさいにおいが漂う中、
オレとピカチュウはゆっくりと自分達が死んだ場所へと歩いていた。
そう、本来、死んだ場所へ……だ。
「いつつ!! ……あっ、ワリィ。ありがとな」
さっきの犯人との戦いでダメージを受けていたオレは足元をよろめいてしまうが、
あの例の審判団が肩を貸してくれた。
……優しい奴ら……なんだな……多分。
あっ、そうそう。
犯人の奴は近くにいたらしいポケモンレンジャーに
ランが連絡を取って確保してもらった。
オレの方はピカチュウと一緒に一回戻ると言って、
先に行かせた。
そして、今。
オレとピカチュウはこの場所にいる。
『プルル……』
さて、死んだ場所に向かおうとした時、
通信音が静かに鳴り響いた。
……最期ぐらい、我がまま言ってもいいよな……?
そう、オレが目で語ると審判団は『どうぞ』といった感じで手の平ををさし出した。
オレはその言葉に甘えさせてもらった。
「……もしもし、ランか?」
オレとランの最後の会話が始まった。

『ちょっと、ゴウ! あんた、今ドコにいるの!? 連絡はくれないし……!』

「あぁ、ワリィ。多分、森を下っていると思うから……そろそろ……かな」

『それなら、いいんだけど……。
 でも! あんたの通信機に備えつけてあったGPSが反応しなくなるし……。
 なんか、あったんじゃないのかな……って』

「多分、犯人とやり合っている時に、
 どこかヘンな所にぶつけたからかもしんねぇな」

『……もし壊れていたら、弁償だから。覚悟しなさいよね』

「……まじか?
 ……なんとかなんねぇかな。
 ホラ! 犯人も捕まえてたんだからさ!!」

『それと、これとは話は別!!』

「やべぇ……!
 もし、弁償だったら、払えねぇかも……給料前だし……!!」

『全く、貯金していないのがワルイんでしょ!』

「……厳しいな……おい」

『まぁ……今回は頑張ってくれたし、アタシからも払ってあげるわよ』

「今回は、じゃなくて、今回も! だろ。
 ……っていうか、ソレでまた昼メシおごって〜
 ……とか言うんじゃねぇだろうな……?」

『そうだけど、いけない事かしら?』

「……いや、喜んで、おごらせてもらいます……」

『分かれば、よろしい』

……そんな、いつもと同じような、
ランが上でオレが下の会話が続いた。
だが、もう、こう会話とも
そしてランとも、
別れる……と思うと、なんか胸が熱くなって来た。
話してて、今更ながら気付いた。
……そういえば、もう死ぬのに、この先の事を話してたな……。
正直に言うと、もちろん……もっと生きたかった。
……この先もポケモンレンジャーとして、
たくさんのポケモンや人を助けたかった……。
でも、もう、この死は回避出来ねぇ、死だ。
……この通信が最期に告げられる言葉なんだな……。
オレは意を決して言葉を出した。

「なぁ、ラン。
 ……一言、言っておかなきゃいけねぇんだけどよ……」

『なによ、改まった感じだけど?』

「この前の約束、買い物に付き合うっつう約束……守れなさそうになった」

『まぁ……約束は約束だし。
 とまでは、流石のワタシも言わないわよ』

「……そうじゃなくてよ」

『なによ?』

「ラン……オレは……オレとピカチュウはもう……」


『プツンッ!!』


「え?」

「死んだんだ」と言う前に通信がなんと切れてしまった。
……なんで切れたんだ? と一瞬、疑問が出て来たんだが、スグに分かった。
……例の審判団が勝手に通信を切ったのだ。
「なに勝手に……!!」
『ピッ!!』
オレは怒った。
最期に告げる言葉だったのに!
もう、ランと話す最後のチャンスだったのに!!
『ピッピピ!!!』
オレの怒りと共に笛の音が鳴り響き、
そして、指でつくったバツ印をオレの前にいきなり指し出された。
オレはそれを見て、(というより審判団の勢いに押されて)
その意味を悟った。
……。
…………どうやら我がままが過ぎたらしい。
「……ピカ」
「気にすんな、ピカチュウ……どうやらオレが悪かったみてぇだから」
心配そうに見上げるピカチュウをオレは静かになだめた。
この制限時間付きの最期の時間は他言無用の約束らしい。
「……あっ、そうだ」
もう最後の言葉を
このまま歯切り悪くさせてしまっていいのだろうか? と。
オレがそう諦めかけた時、
一瞬、頭の中で何かが閃いた(ひらめいた)。
「なぁ……最後に、
 どうしても、アイツに……ランに伝えたい言葉があるんだ。
 ……言葉を録音して残すじゃ……ダメか?」
『ピッ……』
「もちろん、お前達の事とか、
 この時間についても言わねぇって約束する!」
オレがそう言うと、
審判団が何やら相談しあって、やがて――。
『ピッ』
首を縦に振った。
「ありがとな! 恩に着るぜ!」
オレはこの最後の機会をくれた感謝の意味も込めて礼を言った。
「ピカチュウ。ちょっと来てくれ。
 これからちょっと言葉を残すからさ」
ピカチュウを呼びながらオレは再び通信機を取り出した。
この通信機は通信機能だけではなく、
伝言を残しておける録音機能もあるのだ。
オレとピカチュウは静かに――。

『それではピーッという音の後に伝言を残して下さい』

最後の言葉を告げた。

―――――――――――――――――――――――――――

『0:03』

「残り3分か。なぁ、ピカチュウ」
「ピカ……」
残りの時間も後わずかになり、
オレとピカチュウは審判団に先導されて、
あの時、
約2時間30分前と同じ、
倒木につぶされた時と同じかっこうで、
オレとピカチュウは横たわっていた。

『0:02』

「ピカチュウ……」
「ピカ?」
「死ぬ前に一言、
 言っておかなきゃいけねぇコトがあるんだけどよ……」
……もう、あとは死を待つ身なんだが……。
どうしても最期にピカチュウに言いたかった事があった。
……いや、ピカチュウと一緒に話したかったというのもあるが。
「……今まで、オレと一緒に頑張って来てくれて、ありがとな。
 お前と一緒だったから、乗り越えられた問題もあったし。
 ……それと、ごめんな……オレのせいで……」
今回、オレだけではなく、ピカチュウをも巻き込んだのは
間違いなくオレのせい……とオレは思った。
あの時、もっとオレがしっかりしてれば……。
「ピカッ!」
「痛ッ! な、なにすんだよ、ピカチュウ!?」
オレが後悔の念を引いていた時、
突然、
ピカチュウがオレの指を噛んで来た。
小さいけど、それでも鋭い牙は見事にオレの指にささっていた。
「ピカ! ピカピカ! ピカ! ピカチュッ!!」
オレの指から口を離したピカチュウは何やら勢いよく訴えかけて来た。
……なんか、怒ってる感100パーセントなんですけど……。
「ピカッ! ピカチュ!! ピカピカ!」

ピカチュウはちっちゃな手で
オレを指し、
自分も指し、
そして、
心臓の所に自分の手を当てた。

……何年もピカチュウと一緒にいたんだ。
……分からねぇ事はない。
だから、
ピカチュウが何を伝えたいのかが分かった瞬間、
オレは泣きそうになった。

「……オレとピカチュウは親友、だから、いつも一緒。
 ……オレのせいじゃねぇって言いたいんだな?」

……自分一人のせいにして……。
ピカチュウと一緒にいるっていう事を忘れてた。
ピカチュウは本気で思っている。
だから噛みついて来た。
心から、と言わんばかり、叫んだ。
オレのせいじゃない。
オレとピカチュウが頑張った、
その結果、
運悪く死んでしまった。
だから、
オレ一人で抱え込むな。
……そうピカチュウは言いたかったのだ。
「ピカ……」
ピカチュウは静かに微笑むと、
オレの噛まれた跡の指を静かに舐めてくれた。

『やっと……分かってくれたね。
 ……ボクはいつでも、ゴウの親友……なんだから』

一瞬、そんな言葉がピカチュウから聞こえた気がしたが、

今は、ただ、一言、こう言いたかった。

「ありがとな……ピカチュウ」

―――――――――――――――――――――――――――――

『0:01』

時間というのは、
あっという間に過ぎるもんで……。
未だに、オレとピカチュウが死んだ事を信じる事が出来ねぇが……。
犯人とのやり合いで出来たダメージの痛み。
ピカチュウに噛まれた指の痛み。
それらが夢でない事を告げていた。
「……なぁ、ピカチュウ」
「ピカ……?」
「オレ達、死んだ後、どうなんだろうな?」
正直、この後、どうなるのか分からねぇ。
……そういったところ、恐いけど。
「ピカッ、ピカチュッ」
ピカチュウは静かに頭を横に振った。
そして小さな手をオレの手に繋いで来た。
「……分からないけど……一人じゃねぇ。
 ずっと一緒だ……か?」
ピカチュウが静かに微笑んで、うなずいた。
「へへ、そうだよな」
オレは笑って、そう答えると、
ピカチュウの手をゆっくりと握った。
オレ達は今までずっと一緒だった。
だから、
きっと、
これからもずっと一緒だ。
この想いだって諦めなきゃ、絶対に叶う!
そう信じている。
……だって、
諦めない事が物語を始めさせるんだからな。

「ピカチュウ、ずっと、オレ達、親友だぜ!!」
「ピカ!」

『0:00』

『ピッピッピ――!!』

終了のホイッスルが森の中に響き渡った。
少年と電気鼠(でんきねずみ)は最期まで手を繋いでいた。
二人の絆を表すかのような
綺麗な
そして熱い
手と手の繋ぎだった。
少年と電気鼠を包み込む風は
とても優しかった。

一人と一匹の絆が輝いているかのように。

一人と一匹の絆が離れないように。

ゴウとピカチュウの親友の証が
死してもなお、
そこに、
輝き続けていた。

――――――――――――――――――――――――――

ピーッと鳴り響くのは開始の音色。


『ラン聞こえるか? オレだ、ゴウだ』

『ピカッ! ピカッチュッ!!』

『悪リィな、時間があまりなさそうだから……手短に話すな』

『ピカチュッ』

『そのさ……今まで、その、えっとぉ……』

『ピカッ!!』

『分かってるってピカチュウ!
 ……あ、え〜と。
 今まで、その、サポートしてくれて、ありがとな』

『ピカッピカッピカチュッ!』

『お前はいい女だからな。
 後は中身を磨いていくように』

『ピカ……?』

『いいんだよ、ピカチュウ。
 こういうのは、本当の事を言った方がいいもんだ』

『ピカ』

『ま、それは置いといてだな、ラン。
 後、一言だけ言いたい事があるんだけどよ』

『ピカッピカ』

『この先、
 色々と大変な事があるかもしんねぇけど、
 絶対、諦めるなよ!』

『ピカチュッ!!』

『隊長にも
 今までありがとうございましたって言っといてくれ。
 ……最後までオレ達は諦めなかった。
 という一言もヨロシク頼む』

『ピカチュッ!! ピカチュ……』

『……もう時間みたいだな。
 もう一言だけ、最後に言っとくぜ』

『ピカッ』

『……おめぇの事、
 ランの事……好きだぜ』

『ピカチュッ!!』

『それじゃあな、元気でな、ラン』

『ピカッ!!』


ピーッと鳴り響くのは終わりを告げる音色。


『以上、午後4時35分に残った伝言です』


通信機が伝える再生終了の案内。


一部屋に置かれていた
ゴウとピカチュウが残した言葉。
ランは静かにソレを聞いた後、
ゆっくり、立ち上がった。
「……今日も諦めないで、頑張るわよ〜!!」
ランは立ち上がると、
写真一枚、
ポケットの中から取り出した。
「ゴウ、ピカチュウ……アタシも……
 あんた達の事、大好きなんだから……見守っていてよね」
そこに映っていたのは
ゴウとランとピカチュウが笑顔で写っている写真。
……あのバルバの森での放火事件から約半年後。
悲しみはまだ心に残っている。
けれど、
ランはゴウとピカチュウの意志をもらった。
だから、
負けていられない。
そして、
だからこそ、
頑張る事が出来る。
「さて、今日もゴウやピカチュウに笑われないように、
 しっかりしなきゃね!」
そう言葉を出すランは前へと歩き始めた。

ゴウとピカチュウの想いと共に。

諦めない心と共に。

―――――――――――――――――――――――――――


【『だいばくはつ』しながら書いてみました】


この物語を書いたノートから若干、直していたりしますが
(漢字の間違いとかなど)
当時成分95%は含まれていると思います。
改めて、読み返しながらパソコンに打っていると、
「ここは……展開的に無理があるんじゃ……?」と
……読み返す事の大事さが伝わって来た今日この頃です。

ロス・タイム・ライフから
ポケモンレンジャーの熱血な物語を書いてみた結果がこれでした。(汗)
とりあえず改めて、自分の我がままに付き合ってくれた
この物語に「ありがとう」と言っておきます。

そして、ここまで読んで下さった方、
本当にありがとうございました!


それでは失礼しました。


【『だいばくはつ』を恐れないで!!】


- 関連一覧ツリー (★ をクリックするとツリー全体を一括表示します)

- 以下のフォームから自分の投稿記事を修正・削除することができます -
処理 記事No 削除キー