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  [No.963] 空を夢見て空へ跳ぶ 投稿者:MAX   《URL》   投稿日:2010/11/14(Sun) 03:38:52   39clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
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「もし、もし、そこのナックラー君、ナックラー君や」

「やぁやぁ、すりばちをのぞき込むとは物好きな。
 いったい誰かと思ったら、タツベイさんじゃぁありゃせんか。
 今日も砂漠はカンカン照りよ。いったいなんのご用です?」

「いやなに、大した用ではないさ。ちょっと悩みを聞いてほしい。さして深刻なものでなし、身構えなくても結構さ」

「ほうほうほほう。深刻でなしときたものか。そうは見えねぇもんですが、悩みたいったいなんですか」

「うぅん、いつも思うんだがね、ナックラー君。
 君はいつも穴から空を見てばかり、ひとつ、お空に憧れるなど、1度や2度ではないんじゃないか?」

「こいつは異なことを言う。あっしの手足をご存じで?
 頭に比べて短い手足、ヨチヨチ歩きが関の山。見上げるお空に憧れたとて、どころか走ることさえままなりませぬ。
 ときたま何か、お空を通り過ぎてきますが、これほど空しいことも、ございませんってもんでさぁ」

「あぁあぁ、悪いことを聞いた。そう気を悪くしないでおくれ。
 聞いた理由は他でもない、自分が空に憧れるからだ。
 空を見上げて、どう思う? おもしろいとは思わないか?
 夜明けの藍に昼の青。夕暮れ時の紫に、夜には星がちりばめられて、毎日毎日繰り返し。しかし時には雲に隠れて、見上げる自分に雨落とす。
 そこで自分は思ったんだ。
 雲の向こうを見てみたい。
 星を、日を、雲が隠すは何ゆえか。ひとつ、あばいてみせたいと」

「ははぁ、そいつは立派な夢でして。
 しかし翼もなしに、なんとして?」

「そうそうそれが問題だ。
 翼は自分の背にあらず。遠いお空を見上げたものの、頭が重くて転ぶだけ。
 悩みはつまり、それなんだ」

「おやまぁそりゃまた、厳しいもんだ。
 できなきゃつまり、諦めろとしかございません。
 飛ぶもできなきゃ走るもできず、そんなあっしは穴の中。あっしに他はございません。
 それでも空を目指すなら、いっそ誰ぞに運んでもらえと、言い捨てるほかありゃぁせん」

「あぁそうか。やはりそうかと思ってた。
 しかし何とて誰かを求めるか。できれば自分で飛びたいものよ」

「翼も無しになんとしますか。
 それでも飛びたい言うのなら、いっそ未来を信じましょう。
 いずれ翼が出てこよう。その背の翼で空を飛ぼう。信じて今は待ちなせぇ」

「信じて待つか。そうなるか。ならば自分は急がない。
 いずれ来る日とひた信じ、自分は空を見続けよう。空へと向かって跳んでみよう。
 いやはやしかし、ありがとう。おかげで先が明るくなった」

「お役に立てれりゃぁなによりでさぁ。せいぜいご無理はなさらんように。
 しからば、あっしは獲物を待って、ひとつ昼寝としゃれ込もう」

「そういうことなら長居は邪魔か。ここらで自分も失礼しよう」


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