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102 猫祭り 奏多


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 カロス地方には、魔女の逸話が多く残されている。魔女と言われると、その言葉にどんなイメージを持つだろうか。カロス一の都会のミアレシティで、魔女というイメージについて聞いてみた。回答をまとめると、このようなものだった。
「年老いている女性で、薬草などを調合しており、使い魔を持ち、箒(ほうき)に乗って空を飛ぶ」
 確かに、これは魔女の一般的な姿かもしれない。だが古くは、癒し手や産婆などを請け負っていたといわれている。薬草をから薬を調合し人を助けたり、まじないを使って悪魔を追い払ったりしており、善のイメージが強かった。
 しかし、時が経ち中世の頃のカロス地方では、魔女の善のイメージは逆転していった。他人の子供を殺す、悪魔を呼び寄せるなどという、悪のイメージにすり替わっていった。それゆえ、様々な災厄や不幸は魔女のせいだとされるようになり、地震や洪水などの天災や、家族の病気やけがなど、全て近くに魔女がいるからだとされた。
 そこで始まったのが、魔女狩りである。魔女のイメージに当てはまる人物は、拷問の末、自分が魔女だと認めると処刑されたという。カロス地方では、この不当な裁判で約四千人の無実の人が犠牲になった。
 だが、この魔女狩りの犠牲者は、人間だけではない。魔女とされた人たちと同じように、彼女たちのポケモンも、魔女の使い魔とされて殺されてしまったのだ。特に、黒猫は魔女の使いだと恐れられていたので、オスのニャオニクスは多く殺されてしまったという。
 現在はそういった悲しいことのあった、中世の罪のない女性やポケモンたちのために、定期的に教会では祈りの儀式が行われている。
 祈りの儀式ではないが、クノエシティでは三年に一度、五月の第二日曜日にあるお祭りが開かれる。その名も「猫祭り」という。魔女狩りの影響で、駆除されてしまった猫の供養のために始められたお祭りだという。人々は、様々な猫ポケモンになりきるのだ。猫ポケモンに見立てたドレスを着る人や、着ぐるみを着る人、「CATS」や「カエンジシキング」さながらのフェイスペインティングをする人もいる。さまざまな格好をした人たちが、猫祭りのパレードを盛り上げるのだ。パレードの終わりには、「猫投げ」といわれるものがある。町のシンボルの、大木の上から猫ポケモンのぬいぐるみを落とすのだ。そのぬいぐるみをキャッチできた人は、三年間の幸福をえることが出来るといわる。そのため、大勢の観光客がそれを手に入れようと、押し合いへし合い、会場はすごい熱気に包まれる。
 次回の開催は、二〇一五年。興味のある方は、是非行ってみて、猫祭りを楽しんできてもらいたい。くれぐれも、犠牲になった猫たちのことを忘れずに。