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112 ポケモンと黒死病の関わり:魔女が去って病魔が残る リング(HP


PDFバージョン  フォルクローレに採用されると見開きの片側に絵がつきます。


 中世カロスの後半。あまりにも教会の横暴が過ぎたために、カトリック教会の信仰から離れ、新たな宗派を立ち上げたいわゆるプロテスタントと呼ばれる存在がにぎわった。
 それを受けて、自信の権力が危ぶまれると踏んだ当時のカトリック教皇は、プロテスタントを『悪魔と手を組んだ存在だ』として、魔女狩りの名目でプロテスタント狩りを布告しました。魔女狩りの名目で標的にされてはかなわないため、プロテスタント教会の者達も『魔女狩りをする私達は魔女ではない』と言い張るために、魔女狩りを始めてしまいました。
 それまで、魔女というのは医者や産婆であり、占い師や人生相談であり、祈祷師である、いわゆる不思議な力を使って幸せの手助けをする存在というイメージが強かったのですが、その魔女狩りの宣言に伴いイメージは一変する。
 魔女は動物、とくに猫や狐などに変身して空を飛び回り、山や森などの人里離れた場所や、墓場や絞首台などの死と関連付けられた場所に集まり集会を開く。インキュバス(大抵は雄のダークライを指す)と交わり、人の子供をさらっては喰う。などというイメージに書き換えられ平穏に生きていた医者や祈祷師はもちろん、少しでも変わった行動をしていれば一般人でも殺され、時には個人的な逆恨みや嫉妬で魔女に仕立てられた者もいます。魔女裁判にて有罪を受けた者の財産はすべて没収されるため、財産目当ての告発を行う役人まで存在しました。

 その煽りを喰ったのが、マフォクシーやニャオニクスといったポケモンでした。彼らは、魔女の手先、もしくは魔女そのものとされて、それらを飼っている者もまた魔女として処刑されたほか、ポケモンそのものも駆除の対象になりました。
 人里近くに住んでいた個体や、飼われていた個体はその進化前も含めて駆除されてしまったのです。マフォクシーについては、人に飼われることはごくまれであったために被害は軽微であったと言えるでしょうが、都市部に住んでいたニャオニクスは、多くが犠牲になりました。

 さて、その結果起こったことはなんでしょうか? 魔女の手先がいなくなったために、街は平和に――なるなんてことはもちろんありません。ニャオニクスがいなくなった結果、彼らが狩るネズミが増え、ネズミが媒介するノミが増え、ノミが媒介するペスト(黒死病)が増えてしまったのです。
 この恐ろしい病、ペストはニャオニクスにも感染しますが、彼らにはペストへの耐性があるため感染しても発症はせず、人間にペストを媒介することもありません。つまり、ニャオニクスはペストからの守り神であったのです。ペルシアンやブニャットなど他の多種多様な猫系統のポケモンにも同様の事が言え、それらを多く飼っていたインドなどの地域ではペストの被害は抑えられていました。
 魔女の手先を殺したつもりが病魔を蔓延させてしまう。笑い話のようで笑えない、皮肉なお話ですね。