122 農民の歌 奏多
カロス地方の民族楽器に、ミュゼットと呼ばれるものがある。バグパイプのようなものの先端に、ふいご式の風袋がついたものである。ミュゼット・ド・クールや、バロック・ミュゼットの名前で呼ばれる。カロスの貴族社会では、ミュゼットは「農民の楽器」といわれて親しまれていた。
ミュゼットの音色というものは、「田園的」といわれていた。今までのバグパイプとは比べ物にならない、複雑で洗練された構造を持つがゆえに出せる音だといわれている。
カロスの市民層が愛用していて、、この楽器をお祭りや結婚式を盛り上げるために使っていたという。
現在ミアレには、カフェで定期的に演奏会を開いている、ミュゼットニストがひそかに注目されている。彼の名はアシルといい、彼の相棒のニンフィアとのコンビネーションが人気だという。彼のミュゼットの、どこか懐かしい調べと、ニンフィアの可愛らしいダンスが、カフェで演奏を聞いた人たちを元気づけるのだという。
「彼のミュゼットを聞いてると、実家に帰りたくなってくるんだよな」
「この演奏を聞くと、カロスの田園風景が頭に浮かぶんですよ」
演奏を聞いた人は、こんな風に話してくれた。
ミアレに来たときは、カフェで心安らぐミュゼットの調べを聞いて、現実の喧騒を忘れるひと時を過ごすのもいいかもしれない。
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