126 「舞」 穂風湊
先週からライモンドームで特別イベントが開催されています。ポケモン達がミュージカルをすることで人気を集めている施設ですが、この期間中は「舞」をテーマに演劇が行われます。「舞」と言っても具体的には何をするのでしょうか。尋ねてみたところ、各地に伝わるポケモンの「舞」をモチーフにしたとのこと。確かに「舞」と名のつく技は多数あります。それを一つずつ紹介する形で、劇は進められていきます。
緞帳(どんちょう)が上がり始まるのは花びらの舞。爽やかに響くストリングスの音にコーラスが乗せられ、来場者は一気にチェリムやキレイハナの踊りに引き込まれます。劇は盛り上がりを維持したまま、ストライクとギルガルドに主役を交代し、曲のテンポはさらに引き上げられます。激しい木琴の連打と刃がぶつかり合う音で繰り広げられるのは剣の舞。カロスの戦争を意識した、左右二手に分かれての緊張感溢れる演舞は必見です。
続くのは竜の舞と雨乞いの合わせ技。天候、特に雷雲を操る竜神(ハクリュー)に人獣が祈りを捧げると、竜神は空で長い体をしならせ雲を集め、恵みの雨を地上にもたらしました。太鼓、鉄琴、マリンバの打楽器が舞台を盛り上げます。
この後も次々と技が披露されます。求愛と成就を描いた蝶の舞。太陽神ウルガモスを祠る炎の舞。どれもがそれぞれに伝わる地方の特色や歴史が万遍なく描き出されていました。
そしてミュージカルは最後の演目に入ります。舞台が暗転した後、桃色の羽衣を纏ったサーナイトが登場し、ピアノとオカリナそしてバイオリンの静かな小夜曲(セレナーデ)を背景に夜空を優雅に飛び回ります。そこに現れるのは黒いローブを纏ったゾロアーク。彼が舞台脇で横になっているポケモンに近づくと、眠っていた彼らは目を閉じたまま呻き声を上げます。もうお気づきかもしれませんが、この物語はミオシティのクレセリアとダークライの話をなぞっています。悪夢に囚われた街の者達を、クレセリアが三日月の舞によって解呪する。当然ダークライは面白いはずがなく、クレセリアとの接触を試みます。この劇のために作られたオリジナルの新月の舞と三日月の舞の二重奏が繰り広げられ、邂逅、そして互いの存在を意識し始めます。三日三晩の舞踏の末、ダークライは自ら新月島へ帰っていきました。それを見届けるとクレセリアもその隣の島、三日月島へと戻ります。それ以来新月から三日月の間、彼らは密かに舞を楽しんでいると言われています。
このように悪役も良い展開を迎える昔話は珍しいものです。話にロマンを持たせたかった、闇と対比することでクレセリアの舞の美しさを強調したかったなど諸説ありますが、当時の人々が彼らの舞に魅了されたからという理由が一番適切なのかもしれません。この劇を観たならきっとそう感じるでしょう。
特別公演は来月いっぱいまで行われる予定です。ポケモン達が織りなす舞の数々、ぜひその目でお楽しみください。
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