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128 雷告鳥 穂風湊


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 冬を告げるのがフリーザー、春を運ぶのがファイヤー。そして夏と共にやってくるのがサンダーであるとは「三羽の鳥の伝説」で触れた通りである。しかし季節を司る神と言えど、一羽で全国を廻るのは大変な労力を必要とする。そこでこの三羽に限らないことだが、大抵の神は仕事を補佐する使いを従えていることが多い。例えばファイヤーは同じ炎の属性を持つファイアローを、フリーザーは尻尾の袋に冬が詰まっているとも言われるデリバードを神使としている。ではサンダーの使いは誰なのか。雷の属性を持つ鳥ポケモンはサンダーのほかに見つかっていない。しかしカントー東南部のある村では、次のような話がある。
 毎年六月下旬(新暦)頃、南の島からピジョットが渡ってくる。そして二日以内に雷が鳴り響き、嵐が訪れる。それが去った後は雲一つない快晴となり、夏が始まるのである。
 確かにピジョットの渡りの時期と、嵐が起きる時期は記録を見るとほぼ一致している。この事実と、サンダーが夏を運ぶという言い伝えから、ピジョットは雷告鳥(らいくちょう)、すなわちサンダーの使いとして村に夏と雷を齎(もたら)す鳥とされている。
 ピジョットは雷の属性ではないし、雷系統の技も覚えない。なのでこの話は論理的ではないと主張する人もいるだろう。しかし最近の研究によるとそうとも言い切れない。
 この村から海を渡り南へ進んでいくと、ホロンという比較的大きな島がある。長らく人の手が入っていない地であったが、この島には変わった特徴があった。
 暮らしているポケモン達のタイプが元来のものと異なっているのである。悪に鋼の属性が加わったブラッキーに、エスパータイプのフライゴン、悪・鋼タイプのペルシアン、炎タイプのオオスバメなど属性変化の現象は多種に渡ってみられる。「δ種」と分類される彼らは、ホロン特有の磁場が原因と見られているが、磁場がポケモンの体やタイプにどう影響するのかは現在進行形で調査が進められている。
 この土地で確認されたピジョットも同じくδ種で、雷・鋼のタイプを持っていることが明らかになっている。その群がカントーに渡っていると考えれば、伝承は真実である可能性が高い。
 この他にも、影を音もなく移動するバクフーン、岩をも砕く鋼の尾で外的から村を守ったピカチュウ、降雨と日照を司るラティオスとラティアスの兄妹など、ホロン周辺の伝承は、もしかしたらδ種によるものかもしれないと学者達の間では推測されている。