138 シェイミ餅 レイコ
五月五日はこどもの日。わが子のすこやかな成長を願い、柏餅やちまきを供える家庭も多かろう。どちらも餅に巻かれた葉の香りが食欲をそそる、子どもから大人まで愛されている和菓子である。ところが近年、洋菓子は食べるが和菓子を食べないという若者の「和菓子離れ」が増加しているようだ。消費者庁が去年シンオウ地方で実施した調査によると、端午の節句について「ちまきも柏餅も食べなかった」との回答が、二十代では約六割に上り、前回を5.2%上回る結果となった。理由について、「古臭い」「地味」が最も多く、「風習に縛られたくない」という答えもあった。食の多様化が進むと需要のばらつきが生じるのはもっともであるが、和菓子の人気低迷と伝統行事の衰退はおもむきが異なる。柏餅の消費量が全国一である、ソノオタウンの老舗和菓店を背負って立つ若手代表、天井氷太焉iあまい・こうたろう)氏の描く新たな販売戦略のビジョンに迫った。
―― ソノオタウンでは柏餅のことを、幻のポケモン・シェイミにちなんでシェイミ餅と呼ぶそうですね。
天井氷太燻=i以下、天井氏):むしろ、シェイミ餅が柏餅のルーツじゃないかと思ってるんですがね(笑)。ソノオ歴史資料館の蔵書にもそんなことが書いてありますし。
―― そういえば、シェイミ餅と柏餅とでは見た目が少し違いますね。
天井氏:餅に巻いた葉の上に、グラシデアを摸した練り切りの花を乗せるんです。中身が抹茶餡なのも特徴です。柏餅に比べると、手間ひまがかかっているんです。
―― 味のほうも自信作というわけですか。
天井:もちろん!(笑)最高ですよ。
―― 若者の和菓子離れについてどう思われますか?
天井:そりゃあ私も作る側ですがら、残念この上ないです。といって洋菓子がけっこう好きなので(笑)。しかし味で負けているつもりはありませんよ。
―― 年中行事に和菓子を食べる風習の意識も低下してきているとか。
天井:んー、難しい話です。あまり拘るのも思いますが、普段食べない人にはそういう時こそ便乗して、チャレンジしてもらいたいもんですね。
―― カタログの売り文句だと、シェイミ餅には「感謝」の願いが込められているとか。
天井:おっしゃる通り。シェイミ餅は感謝の象徴なんです。そういうとなんだか大層なことのようですが、普通なことですよ。
―― というと?
天井:たとえば大事な人にお礼をする時に、花を渡したりじゃないですか。ソノオの人にとっては、シェイミ餅が花束と同義なんです。そういう感覚です。
―― なるほど。
天井:花は見て楽しいですが、こっちもお腹のふくれる嬉しい贈り物でしょう。
―― 今後はお祝いにぴったりなギフトとして販売を展開していくとお聞きしました。
天井:メッセージカードの付くサービスを始めてからは、徐々に売り上げも伸びてきてます。和菓子を食べない人が増えてきてるのに、和菓子を送るというのも変な話かもしれません。でもこういう時代を逆手に取ってみようと。
―― つまり?
天井:ウチのは古臭いただの柏餅じゃない、超珍しい幻のポケモンのご尊容だぞ! と。(笑)シェイミとのつながりの深い地域色も出ているので、町起こしブームとも相性が良いと考えました。
―― シェイミ餅の魅力を十分に引き出す方法、ですか。
天井:お客様が感謝する方へシェイミ餅をお贈りされるなら、われわれは購入してくださるお客様に感謝しております。感謝の思いで広がるシェイミ餅の輪です。なんならお一つ、買われてみてはいかがですか。
―― (笑)。本日はありがとうございました。
天井:ありがとうでしゅ。
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