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22 七色航路 穂風湊


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 あなたの最初のパートナーは誰だろうか。
 研究所からもらえる最初の三匹のうちの一匹、もしくは幼い頃から仲良くしてきたポケモン、と答える人がほとんどだろう。
 その他に、町の風習に従ってという答えもある。
 シルベタウンはその一例だ。

 シルベは七本もの街道が町の中央に収束する放射環状路型の都市で、東西南北、様々な商人が往来している。そのため各地方の商品が市場に並び、シルベに来れば並大抵のものは揃う。
 またシルベといえばもう一つ有名なものがある。
 シルベ出身のトレーナーのほとんどがイーブイの進化を連れている、という話は耳にしたことがあるのではないだろうか。
 一体なぜなのだろうか。
 それはとある行事が理由となっていた。

 その昔、シルベから旅立とうとする一人の青年がいた。相棒のイーブイと世界を見て回ろう、そう決意したのだった。しかしどの街道へ向かおうか。青年は最初の一歩で悩んでいた。
 街道の先はそれぞれ違う町へつながっている。どの道を選ぶかによって、これからの旅が決まると言ってもいい。そう思うとなかなか一つに絞れなかった。
 町の中央の広場で悩んでいた青年は、ふとパートナーのイーブイに視線を向け――閃いた。イーブイに決めてもらおう。信頼できる相棒が決めた道ならば決して後悔しない、と。
 そう思い立つと、青年は市場へ走りいくつかの道具を集め、また戻ってきた。そしてそれらを円形に並べ始めた。
 北に水の石、北東に雷の石、東に炎の石、南東に太陽のリボン、南西に月光のリボン、西に苔むした岩、そして北西に凍結した岩。これらは全てイーブイの進化に必要な道具だ。そして置いた方角はそれぞれ街道に対応している。
 イーブイが手に取った道具の方角へ進もうと青年は考えたのだった。
 青年はイーブイを円の中央に降ろすとこう言った。この機会に進化してから旅立とう。どれか好きな道具を一つ選んでくれ、と。
 イーブイはこくんと頷くと、円形に置かれた道具を見て回った。やがて炎の石の前で止まると、それを咥えて青年の元へ戻ってきた。そしてイーブイは目映い光に包まれるとブースターに進化した。
 それを見た青年は、ブースターを抱え上げ、東の街道へ進んで行くことを決めたのだった。

 これを見ていたのが、同じく旅立ちの一歩で迷っていた青年だ。偶然なことに、彼のパートナーもイーブイだった。そこで彼はこの方法をまね、南東へ向かうことにした。
 そしてこのどちらもが順調な旅を進めることが出来たという。

 その後もこのイーブイの進化占いは度々行われ、いつしか順風満帆な旅をするためには欠かせないものとして、町を挙げて行われるようになった。現在では道具は全て町が負担しているという。

 そしてまた、一人の少年がシルベから旅立とうとしていた。
 道具に囲まれたイーブイを、少年と観衆が野次を飛ばしながら眺めている。
 歓声の中、イーブイは北東に置かれた雷の石に両の前足を乗せた。
 イーブイの体が進化の光に包まれる。その光が収まり現れたのはサンダースだった。
 少年は観衆の輪の中から飛び出すと、サンダースに飛びついた。サンダースの頭を撫で頬ずりをする。ひとしきりのスキンシップを終えると、少年はリュックを背負い直し、サンダースと北東の道へ進んでいった。
 彼もまた良い旅が出来ることを願うばかりだ。

 最近遠くの地方で、新しいイーブイの進化系が見つかったとの噂がある。それによってこの行事に影響は出るのだろうか。今後の対応に注目したい。